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ロリータ?ふぇすてぃばる!



桜舞い散るこの季節。

ここ私立、愛理あいり高校では様々な部活動が新入生勧誘の手立てを考えていた。


もちろん、演劇部も例外じゃない。

今まさに良い案をひねり出しているところだ。


「勧誘の良い案はないか?」


部長がそう言うと、神村が手を挙げた。


「はーい!幸信が女装してビラ配りすればいいと思いまーす!」


「は!?」


こいつ何を馬鹿なことを!

なんで女装なんだ!目は引くかもしれんが、違う意味でも引かれるだろ!



「うぇー、櫻井くんが女装とか・・・」


あんちゃんがあからさまに嫌そうな顔をして俺を一瞬見てきた。

いや、俺だって嫌だよ!いや、やめてよ!そんなに嫌がらないでよ!女装してないのに!



「優歩ちゃん、なかなかの良案だね~、私は面白いと思うな~」


「え、な?!」


「いや、良いかもしれん。インパクトはあるぞ。優歩、意外にも役立ったな」



部長が神村を褒めてる?!


「当たり前よぉ!私にかかればこんなもんさ!

さっ!とりあえず幸信は着替えてみようか!」


「え?櫻井くんの女装決定しちゃったの?」


「いや!ちょっと待て!!俺の異論は認められないのか!?」


「多数決で可決した、異論は認めない」


「ちょ、待てよ!民主主義を間違えてるだろ!」


物凄いスピード可決に感想すら付けられなかった!


「じゃあさっさと着替えてみようか!」


「えぇ?!即決即実行!?」



しかも神村の手にはメイド服が掴まれていた!



「あれ、こんな衣装なんてあったっけ??」


あんちゃんが疑問を投げかける。



確かに、こんな衣装は今まで部室になかったはずだ。


「使うかな~と思って私がこの前持って来たんだ~持って来て正解でしたね~!」


何故こんなものを持ってるんだ・・・


疑問に思ったが、しょうちゃんのことなので普通の常識が通用しない。


「てか、俺がこれ着るの!?流石にサイズとか合わないでしょう!」


しかし、サイズが合わないとかいうのを理由に却下しようとする俺に反撃出来ない一言をしょうちゃんが浴びせてきた。



「櫻井くんにピッタリ合うように特注で作ったんだかね~着なかったら・・・わかってるよね?」



特注!?何で俺のサイズ知ってるの?!とかいう疑問はやっぱり常識外れのしょうちゃんには通じない!


「マジか・・・」


なぜか全裸にさせられそうになりながらもトランクスだけは死守し、メイド服を着た。

てか、パンツまで用意してるあたりどうなってんだ。



まあ流石にやらないとは思うけど全裸は洒落にならないぞ、全く!



「櫻井くん可愛い~!やっぱり似合うよ~!私、感動しちゃった!!」



俺の顔面にメイクをしほどこしながら半ば興奮気味のしょうちゃん。

そして、だいぶひき気味のあんちゃん。

そして、何故か感心したように頷く部長。

そして、腹を抱えて爆笑している神村。



「部長、こんなんでいいんすか・・・?」


「インパクトはありだ。決定だな」



ちなみに、その後もうんうんと頷き続けていた。



「嘘だろ、マジかよ!」


俺は唖然とした!


「幸信ー!『お帰りなさいませ!ご主人様!』って言ってみてよー!」


神村は神村で面倒なことを言ってきた。

そんなのやるわけがない!


「・・・そんなリクエストは受けませんですよ!ご主人様!」


若干乗っちゃった俺も俺だな。


「うぇー気持ち悪いー」



そしてあんちゃんは完全にひいていた。

彼氏がこんなんじゃそりゃ嫌だわな!俺も彼女の立場なら嫌ですよ、ええ!



「てか部長達は何を着るんですか?!俺にこんな格好させて!自分達は普通に制服とか言ったら俺は一人ストライキ起こしますよ!!?」



若干キレ気味で言ってみた。

勿論演技だが、部長には結構これが効く。



「それもそうだな・・・。でもそれと言ってインパクトのある衣装はないからな」



部長が考え込んでいた。

インパクトのある衣装なんかいろいろあるのに、まさか自分は着たくないのか?

なんだか基本正々堂々公平公正の部長らしくないな。


でもこの疑問はしょうちゃんの言葉で解決した。



「まぁ部長が唸るのも無理ないね~。今ここにあるどんな衣装を着ても絶対観衆の視線は櫻井くんに集中しちゃうから~着ても着なくても変わんないって感じ~」


・・・・・・なるほど、謎が解けた!

てか今、俺どんだけ凄い状態なんだよ!!

外出たくないけど!



鏡が無いから全体像はわからないが、とりあえずこの長めのスカートのふりふりしてる白と黒のコントラストが絶妙だ・・・て、おいおい。



「じゃあ俺がこれを着なければ良いんじゃ?」


すかさずしょうちゃんが首をふった!



「それじゃ私が持って来た意味無くなるじゃない~!」


めっちゃ利己的!!



「てかさ!今更だけど明日は勧誘の一番のし時、入学式なのになんで作戦決まってないの!?」



ごもっともだ!神村にしてはごもっとも過ぎるよ!



「なぜ?それはな、悔しいがこれが現状の演劇部だ」


部長が目つぶって天を仰いだ・・・、

とてもやるせない気持ちなんだろうな。

適当すぎるしな。

そもそも部長が意見押し通そうとしないところが良い点でもあり欠点だからな。



「そ~、これが演劇部クオリティ~入ってから気づいくとか、本当に馬鹿ね優歩~」



演劇部クオリティ・・・まぁそんなのはどうでもいいんだが、神村をことある度に罵倒しているのはなぜなんだ。

そして反撃しない神村にも疑問が残る。



「とりあえず、どうしようか?」



お!久しぶりにあんちゃんが口を開いたぞ。

ここは不肖彼氏の俺様がびしっ!と決めてやるぜ!!



「うーん、ここはしょうちゃんがどうにかするんじゃないかな?俺にこれ着せて辱めようとしてるくらいなんだから、絶対着させるための秘策か何かがあるんだろ?」



腕組んで、ちょっとばかし威張ってみたつもりだけどメイド服ってのがなぁ・・・



「うん!待ってたよ~!!

よくぞ聞いてくれました櫻井くん~!

あったり前だよ~!」


そう言うと携帯を取り出していきなり電話を始めた。



「じぃ~!!例のモノ持って来て~!」



それだけ言うと携帯を閉じた。



「しょうちゃん、まさか・・・?」


「そのまさかだな。」


「おぉ?じいや!?初めて見るかも!」


「流石は小野崎家の長女翔子様!!」



しばらくすると、白髪長身の背筋のぴんとしたジェントルマンなおじいさんが訪れた。



優雅だ!じいや優雅過ぎるよ!!想像通りのじいやだ!


そして、じいやは優しくそれでいて重みのある口調でゆっくりと話し始めた。



「翔子様、例のモノですがここにお持ちしますか?それともお車の方で?」



丁寧にしっかりとした発音でしょうちゃんに語りかけるのと対照的に、本人はほわわんとしした間延びした声で対応する。



「ここで着るよ~、だからついでに櫻井くんを今すぐ部室の外に連れ出して~」



こうして見ると、しょうちゃんは本当にお嬢様なんだなって再確認する。

一見してそこら辺にいる可愛い少女って感じだから忘れていた。


って、・・・あれ?



「俺は学ランに着替えていいよね??」


「早く出て行ってくれる櫻井くん〜?あ!もちろんその格好でね~!」


即答でその返事!考えてあったんだろうなここまで!!

マジか、屈辱を味わうのは明日だけじゃないのか・・・



+++



あの後、あれよあれよという間に俺は部室の外に出されてしまった。


しかもじいやさんはどこかへ行ってしまい、俺は今部室の前で一人佇んでいる。

かろうじてさらさらストレートの黒髪のカツラまで用意してくれていた上に、化粧まで施してくれた俺はぱっと見は俺とはわからないだろう。



・・・ちなみにここは部室棟と呼ばれるところで様々な部活動の部室が集う場所なのだが、なぜか使用部活が演劇部以外は全て運動部なのだ!


え?そんなの別にいいじゃないかって?

いや、別に良いんだけね!通常時ならね?


・・・そう、これが問題なんだ。

運動部の部室が!その周辺とかが!

普通綺麗か?!


否!


きったない空間にふわふわしたフリフリのドレスとかあるか!?


否!


無いだろ!

もしあったなら俺は今こんなにも浮いた存在になってない!



「うわぁ!!」


「えー何??」


「ヤバイヤバイヤバイっ!!」



はい、今も女子バレーボール部が通過しました~

ヤバイのは自分でもわかってますよー。

・・・はぁ、辛いなぁ。メンタルにくるなぁ。



てか、今通ったの同級生じゃね?

やめてね、拡散するのとか。



こういうことですよ!

異質な物体がここにいるんですよ!!



・・・うわっ今度は帰宅部男子かよ!

ゲッ!

しかも同じクラスだった早乙女さおとめ九条くじょう!?


部室棟は帰り道にもなっているため、当然帰宅する生徒たちも通る。



「えっあれ?メイドでは!?

早乙女殿!この前秋葉行って来たばっかりでございましたな??あの方はどうでしょうか?!」


どうってなんだよ。こっち見ないでよ。

イラッとしてちょっと睨んでおく。



「あ・・・っ!ぁあの方は!あの嗜虐的な視線!!さ、最高でござる!!!!」



うわ、逆効果でしたか。



「さ、早乙女殿が食いついた!?た、たしかによく見ると美少女・・・あれは、演劇部・・・リサーチしなければ!!」


て。えぇぇぇえぇええ?!マジかよ!あいつら眼球逝っちゃってるだろ!!リサーチするとか俺に聞こえるような声で言ってんじゃねぇ!!!

てかリサーチって何!?



てかさっさと帰れよ!・・・うわ、まだ見てるし!もうなんかコワイよっ!!



俺がガクガクぶるぶると震えていると、幸か不幸か男子バレーボール部の霧下が現れた!


おっと!lこれはアイツらを懲らしめてやるチャンスだ!

覚悟しやがれ!今からお前らに霧下梓貴というマッチョな男が制裁を下すからな!!ケケケケケっ!


俺は目の前を何事もなく通過しようとする霧下にすかさず話しかけた!



「霧下!助けて!」


「な、何!?」



霧下が驚いている。そりゃそうだ!誰だお前!って感じだろうな。しょうちゃんメイクは尋常じゃない!


でも説明をするという段階を通り越して、俺は今俺を見てやがるアイツらを排除したい!


「アイツらが変な目で見てくるんだ!!ぶん殴っ」


「櫻井く~ん!みんな着替え終わったよ~!その格好で外に放置されて恥ずかしかった?そんな君には滅多に見られない私たちのロリータドレス姿を見せてあげるよ~!ほ~らっ!三人とも部室から出て~!」


俺の言葉を遮りながら早口にまくし立てて、しょうちゃん達が今まで劇ですら見たこともないロリータファッションに身を包んで部室から出てきた!


「しょうちゃん恥ずかしいよーっ!」


「そうだぞ!翔子!この私がこんな格好を人前でするなんて、恥以外のなにものでもない・・・」



「翔子ー!マジでこの服超可愛いんですけど!これ貰っていいの?」



俺のメイド服も凄いと思ったが、こ、これは華やか過ぎるっ・・・!そして可愛すぎる!



170cm以上あるモデル体型の部長が全身黒のゴスロリ!くびれの強調がなんともいえない!


さっきまでの絶対領域を引き継いだしょうちゃん!とりあえずめっちゃふりふりしてる!


そのパラソルいらなくなくないか!?そして胸の強調がハンパないぞ神村!


あんちゃん、その頭のリボン似合うな!その、なんていうか、まな板みたいな胸がまたいいね!!



「早乙女殿!こ、これは一体!?」


「すすす、す、凄いでござるよ九条殿!」


「「これは・・・!」」


「「ろ、ロリータフェスティバル!?」」


あー確かにロリータフェスティバルって感じだ。・・・はっ!思わず納得してしまった!



「あのショートカットの栗毛のオレンジのリボンの娘があの中では一番タイプでござる!!」


「確かに可愛いでござるよ!『御主人様御奉仕させて下さい!』とか言いそうでごさるよ!」


「おぉ!我等ヲタクを魔法使いになる呪いから救ってくれそうでごさるな!」


「『いますぐにでも!御奉仕させて下さい御主人様!』って言いそうな感じでござるよ!」



・・・栗毛でオレンジのリボン・・・それは杏瑠のことだった。


コイツら何を言って・・・



いつもだったらちょっとしたことで嫉妬する俺、


なのに、おかしいな、


何も、感じ、ない?




【・・・・・・やる】


変だな、一瞬声が聞こえた気がした。


【・・・やる】


やる?何を?



【・・・ろし・・・やる】







【殺してやる】







ハッキリと、そう聞こえた時には俺の身体は早乙女達の1mちょっと手前にあって、右足を振り上げて思いっきし蹴ろうとしていた。


・・・本能的にこれはヤバイ!と思った。


この時の俺は尋常じゃない速度で早乙女達に突っ込んで行っていたそうだ。二階にあった演劇部の部室から飛び降りて、だ。



いくら筋力が無い俺でも、この速度がエネルギーに換算されたら・・・!


俺は咄嗟とっさに蹴ろうとしていた右足を踏み込んで止まろうとしたが、何せ勢いがあり過ぎた。

これ、1mで止まる気配がない!



おいおい!!俺こんな、止まれないほど速く走れた覚えないぞ!?しかも一瞬記憶まで飛んでたし!!



でも今そんなことはどうでもいい!!とりあえず身体全体がぶぶつかるのは避けたい!



これはもうしゃがみ込むしかない!


しかし、しゃがみ込もうとした瞬間足の下の砂で足が滑り、形はめちゃくちゃだが結果として二人に水面蹴りを食らわせていた!



「「うぎゃっ!?うごほっ!!」」


汚い蹴りだったが、二人はキレイに顔面から倒れてくれた。


・・・コイツらが俺の上にさえ乗っかっていなかったら結果としては良かったのに!



「・・・ってか重ぇよっ!!どけっ!いつまで乗ってんだ!」



俺の強めの言葉に二人が素早く退いたかと思うと、いきなり興奮しながらしゃべりだした。


「戦う女神でござるか!?」


「黒髪鬼畜美少女降臨でござるか!?」


「・・・はぁ?」


わけがわからない。なんだこのヲタクども。


「なんと!ツンデレメイドでござるな!?」


「ツンデレキャラ!キターーーーー!」



何なんだコイツら?!登場からずっと濃すぎるぞ!!?収拾つかねえよ!



「うるせぇ!」


しかしこんな大混乱を鎮めてくれた男がいた!


「・・・おい、お前ら散れ!」


霧下だった!いつの間にか俺の背後にいて2人を睨んでいる。



「ひっ!?あ、貴方様は!!き、霧下殿!?」



「あ、あああ、あの我らが母校愛理中学を占めていた喧嘩番長霧下梓貴殿でござりまするか!?ひぎいぃ!すみません!拙者どもは御家に帰らせていただきまする!!い、行きますぞ九条殿!!」


ぽかーん。とする俺。

はっ!として後ろを見ると、霧下もさっきとは違いぽかーん。としていた。


そしてさらに後ろには口を開けて固まっている無言の演劇部部員達。


な、何はともあれ、この事件は解決したようだな!


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