君と僕の夜
僕らは臆病だった。
世界が怖かったのだ。
世界から拒絶させられたらと……そう思ったら、前に進めなくなってしまった。
君と出会って、その気持ちは大きく膨らんだ。
だというのに、君は笑って、こういうのだ。
「ねえ、試してみない? 本当に拒絶されるのかどうか、あなたも気になるでしょ?」と。
「気にはなるけど……」
それを知るには、僕の臆病が好奇心に勝たなくてはいけなかった。
そして、今は、臆病の方が優勢だった。
「じゃあ、私と手をつないで試そうよ」
君は手を差し出し、にこりと微笑む。
「つないだだけじゃ、拒絶はないよ」
その手を僕は自分の手に重ねた。
「うん、わかってるよ」
君はにこにこと、続ける。
「でも、これなら、そんなに怖くないでしょ?」
「怖くないけど、なんだか、ちょっと……不思議な感じ」
僕の言葉に君は、その愛らしい瞳を瞬かせて。
「じゃあ、もっともっと、不思議体験しよ!」
「ちょ、ちょっとまっ……」
君が連れてきた場所、そこは僕と初めてであった、ごく普通の公園だった。
「次はブランコね!」
「え?」
君は僕の手を放し、立ち漕ぎでブランコに揺れている。
「ほら、君も!!」
しぶしぶブランコに座って、ゆっくりと漕ぎ出した。
「なんだか、星に手が届きそう!」
片手を伸ばす君に、僕は驚く。
「危ないっ!」
傾く君。それを受け止める僕。
「わ、びっくりした!」
「ビックリしたのは、こっちだよ!!」
「なんだか、ちょっと残念だった。もう少しで届きそうだったのに」
「まだ言ってる」
落ちそうになったというのに、君はそんなそぶりをみせない。
「ねえ、もし……魔法が使えたら、君はなにをする?」
「僕は……」
じっと見つめる君の瞳が、痛いほど伝わる。
「やっぱり言わない」
「えーずるい!!」
「もう、時間だし、帰るよ」
「ちょっと、待ってよー」
君がいなかったら、こう言っていたかもしれない。
「君と夜空を駆けたい」