表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
因縁  作者: メンタン
1章 キャリアスタート
7/22

独立

 

 私はここ最近、一人暮らしを始めるため、準備に追われていた。


 だがその準備も、愛知県豊田市への家財道具の移動が終わり、一人暮らしを始める準備はほぼ整ったところだ。

 私が住むアパートは会社から、自動車で15分ほどだろうか。


 実家から最後の荷物を運びだし、遂に実家を離れる際の感慨深さは表現しきれない。


 前日には、両親と晩酌を交わした。苦手なビールも、その日ばかりは美味しく感じたものである。


「はじめぇ、遂に一人暮らしかあ。やっていけるか。大丈夫かあ。なあ、母さん」


 母に話を振るも、母は泣いていた。


 この人たちは本当に変わらない。

 今後私にもこんな暖かな家庭を築けるだろうか。いや、築きたい。そんな思いが自然と溢れた。




 今日は残りの小さい荷物を車に積んで引っ越すことになっている。

 実は、卒業祝いと入社祝いを兼ねて、両親からは自動車を買い与えられていた。

 至って普通の『FAT』と言う車である。排気量が1500ccの5ナンバー車だが、名前とは裏腹に、キビキビ走ってくれる良い車であると感じていた。


 しかし、愛知自動車の城下町でありながら、他社のメーカーの自動車を選んだのは父親の好みであったことは否めない。

 ちなみに桜井係長には、問題がないことを確認済みである。


 さて、ついに実家を離れるときが来てしまった。

 母は泣きすぎて阿鼻叫喚であった。

 父はそれを宥めながら、私に声をかける。


「がんばれよ、サラリーマン」


「うん!」


 そう言って、父と固い握手を交わした。


  行く宛てのない私を拾い、ここまで育ててくれた、そのご恩は絶対に忘れまい。


 私は車に乗り込み、クラクションを小さく鳴らして発進した。

 バックミラーに写る、実家と両親が小さくなっていく。


「ありがとう…」


 私の心からのお礼を、小さく呟いた。




 そのまま、国道23号で四日市方面へと向かう。国道23号は基幹道路の一つといえる道路だと言えるだろう。

 愛知県の道路を覚えるならば国道1号、国道153号、国道23号、国道248号などを覚えておくと何かと便利である。


 1号や23号は三重方面から名古屋を通過し、岡崎や田原方面まで抜ける道路であり、その際には刈谷市や豊田市も通過する。


 私は左車線をゆっくり走った。

 ちなみに愛知県は皆が飛ばす傾向にある気がする。国道23号など右車線は100kmで流れている。


 そんなに焦らなくても良いじゃないかと思ったりもするが…



 しばらく走り、上重原(かみしげはら)ICを降り、刈谷市を抜け豊田市に到着した。


 そこからは、国道155号を十分ほど走れば新居に到着する。

 家の付近には、住宅が立ち並び、アパートも点在している地域だ。

 愛知県には愛知自動車のサプライチェーンが集結している。そのため工場の付近には、アパートやマンションが密集するのである。


 私もその一員となったわけではあるが。


 新居は先日のうちに、水道及び電気の開通。ガスの回線までは済ませており、インターネット回線もプロバイダとは契約済みである。

 新生活の準備は万端であり、特段の懸念事項は見つからない。


 私は駐車場に車を停めて、アパートに入る。

 駐車場は家の前に有り、雨の日でもそう濡れることなく車に乗り込めそうだ。


 アパートは二階建てになっている。

 私はその二階に入居した。間取りは1LDKであり、一人暮らしには十分すぎる広さだった。


 買ったばかりのベッドに座り、ぼうっとしてみる。

 今までは一階から、家族の生活音が聞こえてきたが、今はそれがない。

 雑音と捉えていた、聴覚情報ではあったものの、いざ無くなると寂しさを感じさせるものであった。


 早速軽い掃除や、片付けなどを進めるが、それが終わっても当然にご飯は出てこない。


 母の有り難みを痛感しそうである。





「今日はカップ焼きそばでいいか」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ