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22歳♂ 何故か女の体に転生しました。  作者: BrokenWing
第二章
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エピローグ

            エピローグ



 翌日、俺達6人は、あの『神の間』で、再びロキとフェンリル、そしてイオリの前に居た。

 昨日と全く同じ面子、同じ配置。

 俺の許婚者達は全員、あのリムですら、かなり緊張しているようだ。


 そう、昨日の返事をする為にだ。


「で、決まったのか? 俺様は、貴様がどんな返事をくれようが、一向に構わないぜ。」


 ロキはにやにやしながら訊いてくる。


 流石は神様張っているだけあるな。何とも凄い自信だ。

 だが、ここで気圧されてはいけない。

 そう、こいつは最初に言った。

 俺達はもはや、この神々と対等だと。


「うん、決まったよ。俺は、ロキさんにお願いがある。」


 これは、昨晩皆で、風呂場でのぼせそうになりながら相談した結論だ。


 すると、イオリが立ち上がった!


「そ、それは、僕とは組めないってこと?!」


 やはりか。


「まあ、結果としてはそうなるけど、別にイオリと組む、組まないとかの問題じゃないんだ。」

「じゃ、じゃあ、何で? 別に、僕もロキが嫌いな訳じゃない。でも、ロキ達は、神と呼ぶには相応しくない! そして、この世界はあまりにも不完全だ。だから、僕が神になって、元の世界以上の、完全な世界にしてあげたいんだ。だから、アラタ、僕に協力して!」


 うん、これは予想していた通りの返事だ。

 彼女には、理想の世界、理想の神があるのだろう。


「う~ん、俺は、この、ロキさんの世界で結構満足しているんだよ。確かに、嫌な事もあったが、おおむね、そこまで悪い世界じゃないと思っている。何よりも、彼女達と知り合えた。もっとも、俺のチートな能力があった結果と言われれば、その通りだが。」


 俺は、そう言って、両隣に座っている、クレアとミレア。そして、隣のソファーの、リム、カレン、サラを、順に見る。

 彼女達は照れたのか、目を伏せてしまった。


「う~。それは、アラタだから言える事だよ! 君は、この世界を知らなさすぎる! この前だって、一歩間違えれば、戦争だよ? カサードさんが好戦的じゃないから、あれで済んだんだ! それに、依然として奴隷制度も無くならないし、貴族の領民に対する虐待も、日常茶飯事。これが、完全な世界と言えるかい?」


 確かに、それは俺も気付いてはいた。あの、二宮達を見れば、この世界の庶民が、権力者達にどういう扱いを受けていたかは、想像に難くない。



 しかし、こんなもん、元の世界でもあった話だ。現在だって、奴隷制度は無くなったものの、ある意味、会社とかに勤める人達は、奴隷と大差ない気がする。


 それに、こういうのは、いきなり変えると、必ずどこかに皺寄せが来る。

 革命だなんだと、理想の国家を作れた国があるだろうか?

更に、その影には、少なからず泣いている人達が居て、その犠牲の上に成り立っている。


 そして、確かに、建国当初は良かったかもしれない。

 だが、数十年経っても、誰も自国に不満がないなんて国は、何処にも無いだろう。


 まあ、それも、俺達の世界の神が力不足だからと言われれば、どうしようもないが。

だが、そもそも、神ってのは、そういう、俺達の望みを叶える為のものなのだろうか?

 もし、その世界に生きている生命全てが、理想の世界を神に求めるのならば、俺は神なんかにはなりたくはない。


 そこに、フェンリルの言った、『神ってのは、見守っているだけ』という言葉が腑に落ちる。

 そう、神は器だけ作ればいいのではなかろうか?

 後は、そこに生きている者達次第だ。


 ここには、既にその器がある。

 確かに、ダンジョンとかは不要なのかもしれない。だが、今や、この世界では共存している感じだ。昼飯に魔物の肉が出て来るくらいだ。

 そして、これこそが、そこに生きている者達のした選択なのではなかろうか?


 こういった話を、俺達は昨日、風呂場で延々と議論した。

 おかげで、サラがまたのぼせてしまった程だ。

 だが、その甲斐あって、皆、この考えに納得してくれた。



「確かに、お世辞にも完全とは言えないだろう。だけど、それは何処だって大差ないよ。俺達の世界だって、あれが完全だとはとても言えない。そもそも、この神様達が完全じゃないんだし。それに、じゃあ聞くけど、イオリは完全な存在なのか?」

「え…、そ、それは、確かに完全じゃないかな? で、でも、僕の理想は、僕にとって、完全なものなんだよ。だ、だから……。」


 イオリはしどろもどろに答える。

 ロキとフェンリルは、このやり取りを、少し笑みを浮かべながら黙って見ている。


「完全じゃない者に、いきなり完全な世界が作れるとは思えないぞ?」


 俺は駄目押しをする。


「あ、そ、それは。で、でも。え? う~ん? あれ?」


 イオリは、もはや涙目だ。それに、少し混乱もしているようだ。



「まあ、その件は、そう言った理由で、今の俺達の選択肢には無いんだ。それでだ!」


 俺は、首を傾げているイオリを尻目に、ロキを見据える。


「ようやく本題かよ。で、どうなんだ? この流れじゃ、俺様の眷属になってくれると期待していいみたいだな。貴様のような奴なら大歓迎だぜ!」


 ロキは、にこにこしながら、少し腰を浮かせる。


「いや、さっきも言った通り、俺があるのは、飽くまでもお願いだ。」

「う~ん、わいも期待しとってんけどな~。ほな、この世界のどの理を変えたいんや?」


 ロキは浮かせた尻を再びソファーに落とし、フェンリルが残念そうに聞いてきた。


「いや、それも違う。俺のお願いは、ロキさん、貴方と友達になりたい。」


 そう、これが俺達の出した結論だ!

昨日の感じからは、このロキ達が、そこまで悪い奴には、どうしても思えないのだ。


 ちなみにこれは、サラが提案してくれた。彼女らしい、自由な発想だと思う。

 友達なら、一人一回とかケチくさい事を言わずに、良かれと思う事を、何度でも進言できる。勿論、もしロキが俺達に頼みがあるのなら、この世界の為になる事であれば、喜んで聞くつもりだ。まあ、大して力になれそうな気はしないが。


 元々、彼等の眷属になるつもりも無ければ、戦う気も無い。なので、これが最善と判断したのだ。


 ダメならあっさりと引き下がり、再び、他の願いを考えるまでだ。


 そして、この提案は、彼等にはかなり意外だったようだ。

 フェンリルは、父親の顔を覗き込む。

 ロキは、腕を組んで考え込んでいるようだ。

 イオリは目を丸くしている。


 だが、これは本当にどうなるか分からない。

 何故なら、俺の記憶では、ロキとその眷属は、仲の良かった友達のトール神と、最後には死闘を繰り広げたからだ。


 すると、リムが口を開く。


「昨日の話では、ロキさんとアラタは同格なのよね? ロキさんも、アラタの力を認めると。」


 ふむ、後押ししてくれたようだ。

 しかし、ロキは姿勢を崩さず、尚も考え込む。


 長い沈黙の後、ロキが顔を上げた。


「そうだな。貴様はトールとは違って、知恵も回りそうだ。あいつもあの時は、俺様についておけば良かったものを。まあ、過去の事を愚痴っても仕方無いな! よし、今から、俺様とアラタは友達だぜ!」 


 ロキは立ち上がり、俺に手を差し出した。

 俺も、立ち上がって、その手を力強く握る。


すると、ロキは更に続ける。


「そうと決まれば、早速、俺様がこの世界を、隅々まで案内してやろう。俺様にとっては、自慢の世界だ。それでどうだ?」


 ぐはっ!

 俺も、ロキとこの世界を回るのはいいが、いきなりすぎるだろ!


「あ、ありがとう。だが、ロキ、俺にはまだ先にやりたい事があるんだ。だから、ちょくちょくここには顔を出すけど、この世界を案内して貰うのは、それが済んでからでいいかな?」


 俺はそう言って、許婚者達を見回す。

 そう、先ずは彼女達を娶ってやりたい。

 ここでは時間の流れが無いと聞いているので、ロキを待たせる事に、問題は無いはずだ。


「あ~、それは俺様も少し無粋だったな。よし、俺様は待っていてやるから、存分にいちゃついてくるといいぞ。ふむ、俺様もそうしよう。じゃあな!」


 ロキはそう言うや否や、姿を消した。


 取り残された俺達が唖然としていると、ばつの悪そうな顔でフェンリルが聞いて来た。


「ま、まあ、親父の事はええやろ。ほんで、アラタはんの願いは達成されたっちゅうか、こういう事になった訳で、わいらともよろしゅう頼みますわ。後で、わいの兄妹も紹介するわ。ほんで、残ったんは、女性陣やな。一応聞くけど、なんか望みがあるんやったら、言ってや~。ちゅうても、アラタはんが直接親父に言えば済むことか?」


 まあ、当然そうなるわな。

 それを見越しての、お願いだった訳で。


「そうね。でも、フェンリルさん、今聞いて欲しいわ。」

「ん? リムちゃんか。わいに出来ることやったら、聞くで。」

「じゃあ、アラタを含めた、あたし達全員の存在に関する記憶を、この世界の、マリンちゃん以外の人達から消して欲しいの。できるかしら?」

「マリンちゃん言うたら、そこのサラちゃんの母親やな。ちょっと面倒やけど、できんことは無いな。せやけど、何でまた?」


 うん、当然の疑問だ。


「それは俺が答えるよ。フェンリル、俺達は、もはや貴方達と同じ、神の領域に足を踏み入れてしまった。なので、もうこの世界の一般の人達と、親密に付き合うのは不可能だろう。そこのイオリを見ていれば解る。イオリも、殆ど帝都には戻っていないようだし。だったら、俺達の事を、一旦、この世界の人達の記憶からリセットして欲しいんだ。幸い、サラちゃん以外は、俺達に肉親と呼べる存在はもう無い。そして、これからも貴方達がダンジョンをクリアできる人材を求めるのであれば、俺の存在は、無いほうが都合がいいだろう? 俺も、余計な入れ知恵をしなくて済む。イオリも、俺に訊かれて困っていたみたいだし。」


 そう、俺達がダンジョンを制覇した事を知られると、かなり面倒だ。

 カサードにはそれなりの恩もあるので、あの契約を破棄するつもりはないが、根掘り葉掘り聞かれるのは間違いない。

 そして、その答えによっては、またフェンリル達がダンジョンをいじらないといけなくなってしまう。


 俺がイオリに目線を向けると、彼女も黙って頷いた。

 ふむ、彼女も苦労していたようだ。


「なるほど。それは気付かんかったわ~。ほな、その、マリンちゃん以外やな。」

「うん、面倒だろうけど、頼むよ。」

「かまへんって。アラタはんと親父はもはや友達や。親父も別に文句ないやろ。ほな、やっとくわ。ほんで、今のところはそれだけでええか?」

「うん、ありがとう。じゃあ、俺達はこれで。」


 皆が一斉に腰を上げ、フェンリルとイオリも立ち上がる。

 そして、許婚者達は、満面の笑みで俺に群がる。

 さあ、皆で屋敷にテレポートだ。

 帰ったら、やらなければいけないことが山ほどある。



 だが、これで終わりでは無かったようだ。


「フェンリル! アラタ! ちょっと待った~っ!」

「あ、イオリ、そのなんだ、済まない。君には色々と援助して貰っていたのは知っている。本当にありがとう。だが、今の俺達に、ロキと敵対するつもりは全く無い。」


 俺は、深々とイオリに頭を下げる。


「い、いや、それはもういいんだよ! 僕が勝手にやった事だし。それで、フェンリル、僕も決めたよ!」


 ん? 何を決めたのだろう?


「お、遂にイオリも諦めて、わいらと同じ眷属になる事にしたんか? そら嬉しいな~。」


 ふむ、俺が協力しない以上、彼女はロキには相手にされないと言っていたから、その選択もありだろう。眷属となって、ロキに進言したほうが、少なからず彼女の理想に近づけられるはずだ。それとも、俺と同様に、ロキの友達になりたいのだろうか? だが、それならロキの前で言うべきだ。


「いや、違うよ~。僕のお願いは一つだ! フェンリル、僕をアラタのお嫁さんにして。」


 ぶはっ!

 これは想定外もいいところだ!

 しかし、何故に俺にではなく、フェンリルに?


 あ~、以前、俺が断ったからか。

 もっとも、俺は、あの時、彼女は冗談で、俺をからかっているんだと思っていた。

 しかし、本気だと解ったとしても、答えはノーだ!

 サラを含めると、5人も居るんだ! これ以上は無理だ!


 女性陣も、この提案には驚いたようで、立ち尽くす。


 フェンリルは、にやにやしながら、俺を向く。


「ほんま、あんさん、隅におかれへんな~。せやけど、安心してや~。流石にわいらと同格、しかも親父の友人に、そないな勝手はできへんわ。イオリも、わいやなく、直接アラタはんに頼むんやな~。」


 ほっ。

 これが通ったら、どうしようかと思った。


 すると、イオリは一度頬を膨らませてから、更に続ける。


「まあ、そう言うと思ったけどね~。じゃあ、アラタはどうなんだい? 僕じゃ不満かな? この身体、リムちゃんよりは成長していると思うけどね~。」


 ぶはっ!

 今度は色で来たか!


 イオリは身体をくねらせている。

 確かに、真っ赤なドレスと相まって、とても艶めかしい


「い、いや、気持ちは嬉しいし、イオリが魅力的なのも認めるけれど、もう限界だ。俺の身体が持たない。勘弁してくれ。」

「クレアの魔法があるよね~。」


 ぐはっ!

 どうしてそれを!

 あ~、そうか。イオリは、この世界全てが見える場所があるとか言っていたな。


 ってか、覗くな!


「と、とにかくその話は無理だ! そもそも、イオリだってその気になれば、男には困らないだろ? 何しろ、この世界全ての男が見られるんだ。」

「ん~? 前にも言ったと思うけど、僕より強い人じゃないと嫌だもん。この世界の人間では、間違いなく、アラタがさいきょー。」


 皆が戸惑う中、一人、カレンだけが、うんうんと頷いていやがる!

 こいつら同類かい!


「悪いが、今の俺にその気は無い! 皆、逃げるぞ!」


 俺は迷わず許婚者達を、両手で纏めて抱きかかえる!



「テレポート!」


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