覚醒
覚醒
「う! 私は?! ここは?!」
ミレアは生き返った!
やはり思った通りだ!
スコットの時は何が足りなかったのか分からないが、今回は成功だ!
だが、俺の時と同様、別人の魂が入っている可能性がある。
「ミレア! 俺だ! アラタだ! 分かるか?!」
「え? アラタさん・・・。ここは何処ですか? あ、あの魔物は?!」
「大丈夫だ! ミレア! お前は生きている!」
「あ~、ミレア! ミレア! アラタさん! やりましたのね!」
クレアが、泣きじゃくりながらミレアに抱き着く!
俺達はすぐに屋敷に飛んだ。
ミレアを念の為に、彼女の部屋に運んで寝かせる。
ミレアも疲れていたのか、そのまま寝入ってしまった。
うん、大丈夫だ。息をしている。
現在、俺はリビングで、ソファーに座って考えている。
他の連中は、まだ全員ミレアの部屋だ。
マリンがお茶を淹れてくれる。
晩飯はどうするかと聞かれたが、今の俺には食欲が無く、まだいいと断ったが、一応用意はしてくるそうだ。
あの後、全員のステータスを確かめたところ、やはりミレア以外は、【即死耐性中】というのが付いていた。
勿論、俺にもついている。
つまり、あの呪文、【オールデス】は即死攻撃だったのは間違いない。
気になるのは、普通の魔法なら、【反射】の盾の効果で、効かないはずだ。
あの時、ミレアもちゃんと装備していた。
ならば、その前の呪文、確か【ピアス】と言ったか?
あれが鍵だろう。
あの呪文の後、階層主の身体が灰色に明滅したことを考えると、なんらかの効果を自分に与えたと思われる。
「そうか! 【ピアス】は自分の魔法を相手に貫通させることが出来る効果。と考えれば、納得が行く! 俺の武器についている効果の、魔法版だ!」
気が付くと、俺は叫んでしまっていた!
テーブルで食事の用意をしてくれていたマリンが、びっくりして、こちらを向く。
「あ、すまん、流してくれ。」
「承知したざます。」
俺は更に考える。
何故あの階層主は死んだのか?
自分の魔法で死ぬなんて、アホだろ?
もっとも、自分の唱えた魔法が貫通効果で自分に効いてしまったと考えれば、説明はつくが。
もう一つある。
確か、あの階層主は『最後の試練を任されている筈のわらわ』とか、『この階層ってだけでも許せない』とか、『試練の時』とか言っていた。
あの意味をどう取る?
う~ん、謎だ。
もう一度会えれば、教えてくれるだろうか?
ふむ、次は、逃げなければ教えてくれるかもしれんな。
謎と言えば、まだまだある。
何故、ミレアだけが死んだのか?
彼女の魔法防御は、リムの次に高い。
そして、最も低いカレンには効かなかった。
たまたま耐性がつかなかっただけだろうか?
そして、最大の謎はこの俺だ。
あのミレア復活の後、俺にはニュースキル、【光魔法5】がついていた!
闇魔法を使う俺が、光魔法を覚えられるだけでも異常なのに、それがいきなりレベル5だ!
そして、これはサラと同じ現象と考えていいはずだ。
サラは、以前、【火魔法3】なのに、レベルが5必要と思われる魔法を行使し、その後、一気に【火魔法5】になっていた。
俺の場合と併せて考える。
おそらく、あの復活の魔法には、【光魔法5】が必要だったのだろう。
ふむ、逆に考えればどうだ?
魔法レベルが5だから使えるのではなく、その魔法が使えたから魔法レベルが5になったと考えればどうだ?
うん、これなら辻褄が合う。
ん? と、言う事は・・・。
俺の頭の中で何かが弾けた!
俺はサラの言葉を思い出す!
『出来ると思ったら、出来るのですにゃ!』
そう、俺はミレアの時、絶対に成功すると思っていた!
そして、スコットの時は、そこまでの自信は無かった!
「何だ。単純なことじゃないか! これこそが魔法の本質だ! 今まで俺が考えていたことも間違いでは無かった! だが、真の本質は、あの一言だ! これこそが、『この世界の真実』なのかもしれない!」
俺はまたしても叫んでしまう。
今度はマリンも見て見ぬふりだ。
流石にこの世界のまでは大袈裟かもしれないが、俺は確信する。
そう、一番大切なのは、【自信】だ!
自分を信じる強さだ!
うん、合点が行く!
あの時、ミレア以外が死ななかったのは、彼女達には、『死なない』という自信があったのだ!
その結果が【即死耐性中】だ!
そして、ミレアには、きっとそれが足りなかった。
彼女は、俺の仲間の中では、最も冷静で、理論派だ。
全く根拠の無い、『死なない』なんてのは、考えられなかったのだろう。
階層主とか、まだ謎は残っているが、俺は一気にすっきりして、立ち上がる!
「マリン、ありがとう! サラちゃんが居なければ、気付けなかった! サラちゃんを俺に託してくれた、マリンのおかげだ!」
俺は興奮して思わず、お茶の器を下げに来たマリンに抱きついてしまった!
マリンは顔を真っ赤にして俯き、小声で喋った。
「え、そんな。でも、嬉しいです。私もまだ30です。まだ産めます。」
げ!
しかも、言葉遣いが完全に変わっている!
これはヤバい!
更に、運の悪いことに、全員入って来た!
どうやら、ミレアが目覚めたようだ。
「アラタ! あなた、遂にマリンちゃんにまで!」
「なんか寝起きで良く分りませんが、非常事態なのは分かります。」
「あらあら、アラタさん、守備範囲が広いのですわね。」
「これは負けられないっす! 若さで勝負っす!」
「マリンちゃん、良かったですにゃ!」
うん、ドツボだ。
実の所、俺の理論は、まだ証明されていないのだが、ミレアも起きたし、食欲も出たので、皆で晩飯にする。
当然、食事中は、新理論どころではない!
弁解に必死だ!
リムとミレアの蔑んだ目線が痛い!
しかも、マリンが思わせぶりに、俺の顔を見ながらもじもじしやがる!
結局、誤解は解けたようなのだが、何を食べたかすら覚えていない。
スワレントラップ、恐るべし!
食後の恒例の一家団欒入浴タイムで、ミレアに体調を確認する。
本当は、食事中に確認したかったのだが、それどころでは無かったしな。
それに、ミレアも普段通りだったから、飽くまでも確認だ。
「それで、気分はどうだ? 何か変わったところはないか?」
「いえ、特にありません。気分もいいです。」
聞くと、彼女は、死んでいた間の事は全く覚えていないらしい。
気が付いたら、目の前に俺達が血相変えて集まっていたという認識だ。
実際、彼女が死んでから、蘇生が成功するまでの時間は、5分もかかっていない。
「そうか、なら良かった。ふむ、魂の移転とは違って、そんな大層な術ではないのかもな。」
「いえ、アラタさん、私、一度死んだと聞きましたが。それが本当なら、大層な術どころではないはずですが?」
確かに、死人がほいほい生き返るような術は、ある意味限界を超えている。
だが、俺の中では、もはや筋が通っているのである。
今まで誰も成功しなかったのも当然だ。
気力が500以上ある奴なんて、そうそう居ないはずだ。
もっとも、神殿の水晶を使えば、可能なのかもしれないが。
「とにかくミレアが助かって良かった。今はそれだけだ。」
「本当に良かったですわ。それでアラタさん、あの階層主が使った攻撃は何だったのですの? 何も触れずに人が死ぬなんてありえませんわ!」
「う~ん、クレア、俺の世界のゲームでは、よくあった魔法なんで、俺はそういうものだと、納得してしまっているが。あの石化効果だって、それに近いしな。」
「ふにゃ~。私には出来そうもないですにゃ。」
ふむ、流石のサラでも、出来る気がしないか。
俺の場合は、出来るとは思うが、使う気は全く無い。
チートな俺が言うのもなんだが、あんなもん、反則だ。
「後、この件に関しては、絶対に口外禁止だ。ばれたら、それこそ俺は神様扱いされてしまう。マリンにも言ってあるが、宜しく頼む。」
「「「「「はい。」」」」ですにゃ。」
ただ、マリンの場合は、一応カサードの直属なので、微妙である。
詳しくは何も話していないが、ミレアに何かあったことくらいは、馬鹿でも分かる。
報告するかは、彼女次第だろう。
「ところで、アラタ、何でミレア姉様だけだったの? あの主の言い方では、全員にかけた魔法よね?」
「それは、リム、お前達のステータスが証明している。【即死耐性】を獲得できたからだ。残念ながら、ミレアはたまたま獲得出来なかった。それだけだろう。」
俺はさっきの考えはあえて言わない。
あれを言うと、彼女は落ち込むだろう。
確証も無いしな。
ただ、魔法の本質に関しては、いつか実践して証明するつもりだ。
しかし、その証明方法が分からない。
できると思っているかどうかなんて、本人でも分からないかもしれない。
また、もし出来ると確信していても、他の条件、例えば、気力の込め方や、イメージの造成に成功していなければ、当然無理だろう。
客観的に証明するのは難しそうだ。
風呂から上がった後、俺は全員を呼んで、スコットの墓の前に居る。
俺は、あの時、確信を持てなかったことを悔やみながら、黙祷を捧げる。
勿論、この身体をくれたことへの感謝も忘れない。
「よし、俺の気は済んだ。じゃあ、少し実験だ。カレン、【リフレクトシールド】を持って、そこに立ってくれ。」
「はいっす!」
「まずは普通に。ファイアショット!」
俺の腕から、直径50cmくらいの火球が出現し、カレン目掛けて飛んでいく!
これでも、大分出力を絞ってある。
【リフレクトシールド】が一瞬光り、火球はUターンして俺にぶち当たる!
【火無効】の効果で、ダメージは無いが、これなら周りも分かり易いだろう。
「当然の結果よね。それで、アラタは何がしたいの?」
「リム、焦るな。まあ、黙って見ていろ。と、言っても、成功する保証はないんだがな。」
しかし、俺は確信していた。
あの明滅具合、あの色は時空系統だろう。
闇ならもう少し色が濃いと思う。
まあ、もはや系統なんて、俺にとっては無意味なのだが。
俺はイメージを固め、気力を内側に込める。
「ピアス!」
俺の身体が灰色に明滅しだした!
うん、成功だ!
「え? これって、あの階層主の? 真似できたのですか?」
「ミレア、驚くのはまだ早い。まずはファイアショット!」
先程同様の火球がカレン目掛けて飛ぶ!
今度は盾が光らない!
火球はカレンに当たって消えた。
彼女も【火無効】の装備をしているから、ダメージはないはずだ。
皆が驚いて立ち竦む中、俺は次の魔法の準備をする。
クレアが使っているの見ただけだが、あれ位なら、俺にもできそうだ。
「アクアダーツ!」
俺の目の前から、長さ2m程の、透明な3本の矢が出現し、カレン目掛けて飛んで行く!
ん? ちとでかすぎたか?
カレンは慌てて盾を構える!
しかし、矢は盾をすり抜け、全弾カレンに突き刺さる!
「きゃん! 痛いっす! え? でも、それって・・・?」
「済まん! 初めてなんで、威力の調整が出来なかった! ヒール!」
今度はカレンの身体が、一瞬、薄緑色に光る。
これは、ヒールが効いている証拠だ。
相変わらず【リフレクトシールド】は無反応だ。
ここで俺の身体の明滅が終わった。
ふむ、やはり効果は30秒くらいだな。
「アラタ! 説明して欲しいわ! 今のは水魔法、【アクアダーツ】よね! 火魔法が使えるアラタが使えるはずないわ!」
「そうです! サラちゃんじゃあるまいし、不可能なはずです!」
思った通り、うちの魔法職はお冠だ。
「サラちゃんが使えて、俺が使えないのは不公平だろう。」
「いえいえ、アラタさんは存在そのものが不公平です。」
確かにミレアの言う通りかもしれんな。
「これじゃ、説明になっていなかったな。簡単なことだ。魔法の系統なんて、ただの分類みたいなものだったんだよ。前も言ったが、魔法は、イメージをして、気力を込め、それを具現化する作業だ。」
「はい。それで、私も【アラタさんへの愛】が成功しましたわ。」
「クレア、そのネーミングは何とかして欲しいところだが、まあいい。だが、それだけじゃ足りなかったんだ。いや、逆かな? 大前提として、それが『出来る!』『成功する!』って、自信が必要なんだよ。今の俺に言わせれば、魔法レベルなんて、ただの飾りだ。」
全員、きょとんとしている。
ただ、サラだけは違った。
彼女は、やはり既に何か掴んでいるようだ。
大きく頷いた。
俺はそこで、自分のステータスを見る。
水魔法を取得しているはずなので、それを確認したかったのだ。
「ん? なんじゃこりゃ~!」
皆が驚いて俺を取り囲む。
「ちょっと、見てくれ。」
俺は腕を前に出し、皆にステータスを見せる。
「もう、アラタさんのステには驚かないっす。しかし、なんすか? この、攻撃力1110って。でもって、あれ? これは? 初めて見るっす。」
「え? え? アラタさん、またチートに輪をかけましたね。しかし、これは一体?」
「アラタ! あたしも初めて見るわ! 【魔法の極意】って? こんなの、エルフでも居ないはずよ!」
「そうですにゃ! おばあちゃんも、そんな話はしなかったですにゃ! 今度聞きに行きますにゃ!」
そう、俺の魔法スキルと思われるものは全部消え、今や、【魔法の極意】だけになっている。
「う~ん、サラちゃん、それと皆も、この事はあまり広めて欲しくは無いのだが。なんか、厄介事が増えそうな気がするんで。」
祭祀長のイーライなんかにばれたら最悪だ。
質問攻めに遭うのは間違いない。
「仕方無いですにゃ。誰にも言わないですにゃ。」
「うん、助かる。ただ、サラちゃんが自分で獲得した場合は、サラちゃんの判断に任せる。その時は良く考えてくれ。」
「はいですにゃ。」
うん、仲間の中では、このスキルを獲得できるとすれば、サラが最も早いはずだ。
その後、俺はいつものように、マリンのお茶をご馳走になっている。
しかし、他の仲間は全員、リムに連れられてダンジョンに飛んだ。
早速試してみたいのだろう。
俺の考えが正しいなら、カレンでも魔法は使えるはずだ。
ただ、彼女は、気力の込め方を習得できていないようなので、ハードルは高そうだが。
小一時間程して、全員戻ってきた。
顔色から察するに、誰も進展が無かったようだ。
俺は、ひょっとしたらサラくらいはと期待していたのだが。
その晩はミレアを俺の部屋に呼ぶ。
勿論、目的はいたすことでは無く、彼女の気持ちを確かめる為だ。
「それで、お前はどうしたい?」
「はい。あの階層をクリアできていないのは私だけのようですね。なので、再挑戦させて欲しいです。」
「だが、また死ぬかもしれんぞ。俺も、何度も成功するかは保証できない。」
「構いません。いえ、勿論死ぬ気はありません。と言うか、あんな事が出来るアラタさんの側に居る私が死ぬなんて、思えなくなってきました。」
ふむ、これなら大丈夫だろう。
「ああ、俺がお前を死なせない! うん、分かった。でも、明日は丸一日休憩だ。俺も確かめたいことがあるしな。」
すると、クレアが入って来た。
「アラタさん、今回のミレアの事、本当に感謝しますわ。ミレアは、血こそ繋がっていませんが、私の唯一の肉親ですわ。」
なるほど、やはりか。
この姉妹、あまりにも似ていないとは思っていた。
「だが、今回の事もそもそもは俺が原因だ。当たり前の事をしただけ、いや、出来てしまったと言うべきか。そして、クレア、俺達はもう家族だ。ミレアだけじゃなく、他の奴にもそう想ってやって欲しい。」
「勿論ですわ! ミレア、カレン、リムちゃん、サラちゃん、そしてマリンちゃん。全員、私の一番ですわ! 最後にアラタさん、愛していますわ。」
「私もです! もう我慢できません!」
ミレアが俺の顔に手をかけ、唇を重ねる。
そして、そのまま押し倒される。
当然、その後は肉弾戦になってしまった。
ブックマーク登録ありがとうございます!
評価や感想なんぞも頂けると励みになります。m(_ _"m)




