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22歳♂ 何故か女の体に転生しました。  作者: BrokenWing
第二章
92/99

急ぐアラタ

また、装備関連は読み飛ばして下さい。

        急ぐアラタ



 その日は、俺とリムが心配だと皆が言い出し、引き返すべきだとの意見が多かったが、俺もリムも、回復魔法のおかげでぴんぴんしているので、間を取って、この階層で休むことにした。


 念の為に、この階層全ての魔物を狩り尽くす。

 蟹の化物、百人前に関しては、やはり、状態異常は効かなかった。

 しかし、所詮は蟹。

 移動は横にしか出来ず、背後を取れば、硬いものの、全く攻撃を受けない。


 俺がクレアを連れ、リムがサラを連れて、【縮地】で背後を取る。

 そして、カレンが蟹の眼前で踏ん張る。

 泡を吹き出したら、一斉に撤退。

 止めはミレアの【お姉様のお仕置き】で楽勝だ。

 現在の俺達に火は効かないので、前回、俺が使った、【リフレクトシールド】も、実は必要無かった。


 特筆すべきは、百人前とスワレントラップが、常に一体ずつ、同じ部屋に居たことだ。

 魔物同士で連携が取れているのだろうか?

 背中にイソギンチャクを背負っている蟹を思い出す。

 しかし、全くデータの無い、81階で同時に出られていたらと思うとぞっとする。

 


 その晩、皆で百人前を頬張る。

 期待をした程ではなかったが、それでも美味い!

 サラはあの巨大な足一本、完全に食い尽くす!

 ビタミンB1だっけか? 大丈夫か?


 そして、俺は思った通り、説教を喰らう。


「アラタさん! 今後は、アラタさんには、【認識阻害大】は禁止ですわ! もし、リムちゃんが気付かなければ、どうなっていたことか!」


 ヤバい! クレアがミレアの範囲魔法の元ネタ状態だ!


「あの場合は仕方無いだろ? 前回はあれで上手く行った訳だし。」


 しかし、クレアを躱しても、今度はカレンだ。


「やっぱり、偵察はあたいがやるっす! あたいの【無敵】なら、あんなことにはならなかったっす!」

「しかし、30秒しか持たないし、お前、魔法使えないから、試せないし。あ、すまん。」


 イカン! つい、言い過ぎてしまった!

 カレンが涙目になってしまった!

 耳をモフってやって、何とか立ち直らせる。


「じゃあ、偵察役はやはりあたしね。あたしなら、【認識阻害の帽子】を着けても、アラタだけは分かるでしょ?」


 なんか、言い方が意味深だな。

 だが、当然拒否だ!


「今回はお前のおかげで助かったので、感謝はしている。しかし、悪いが、リムでも魔物に気付かれるだろ。」


 そう、魔物に完全に気付かれないのは、今の所、俺だけだ。


「では、私が【リフレクトシールド】を装備して、範囲魔法をぶっ放すというのはどうでしょうか?」

「ミレア、それ、偵察とは言わないぞ。」


 皆、気持ちは嬉しいのだが、具体策に乏しいようだ。


「大丈夫ですにゃ。アラタさんは死なないですにゃ。私が死なせないですにゃ。それより、もう一本いいですかにゃ?」


 この娘の場合、その自信が凄い。

 そして、食欲も凄い。


 結局、90階層までは、今までのパターンから、もう新種は出ないだろという事で、何とか凌ぎ切った。


 俺は、ああなったのが、俺だったからまだ助かったと思っている。

 一撃で、このチートな俺の体力を半分以上持って行かれたんだ!

 俺以外の奴だったなら、死んでいてもおかしくない、ってか死んでいる!


 そこで俺は気付いた。

 一撃で俺の1200以上ある防御の上から、体力の半分、500以上だと?

 ナインティードラゴンの攻撃をもろに喰らっても、100は行かなかったはずだ。

 と言うことは・・・。


「リム! スワレントラップの魔核、後何個ある?!」

「え? 何をそんなに興奮しているの? さっき使ったから、あの後の奴だけよ。3つあるわ。」

「うん、出してくれ。カレン、ダガーくれ。」

「「はい。」っす。」


 俺はスワレントラップの魔核をダガーに付与する。

 魔核には、武器と防具で、違った効果になる奴がたまにある。

 最初試した時は、武器には付かなかった。

 だが、それは奴の攻撃を喰らってなかったので、全くイメージが出来ていなかったからではなかろうか?

 今なら、予想がつく。


「やっぱりな! しかし、【貫通】とは! 想像以上だな。当然、【防御半減】以上の効果だと思う。」


 もっとも、【防御半減】は、暫く効果が持続するので、追撃時にはかなり有効だった。

 しかし、防御を無効化する性能なら、それ以上なのは間違いないだろう。


 俺が効果を付与したダガーをテーブルに置くと、皆、手に取ったり、アイテムボックスに入れたりして、確認する。


「では、やはり、一旦帰って、装備を完全にするべきでは? 百人前の【反射】はもう必要無いですが、あぶないぞうの【体力10%アップ】は、つけて損はありません。」


 そう、ミレアの言う通り、食事前にチェックした結果、あぶないぞうの魔核には【体力10%アップ】の効果がついていた。

 合成して20%アップにしてから付与すれば、俺なら体力が200以上、上昇する。

 是非、防具につけたいところである。


 しかし、俺は急ぎたかった。

 最初はそうでは無かったのだが、今は守るべき人が出来た。

 なので、こんな危険なダンジョン、彼女達を連れた状態では、本当は1秒でも居たくは無い。


 『この世界の真実』とやらを知りたいのは、俺の全くのエゴだ。

 最初の目的、『男の身体になる』と、『自分の身を守る為』は既に達成されている。

 今の俺に勝てるのは、イオリくらいなものだろう。

 そして、今の装備や魔核を売れば、一生困らないはずだ。

 それでも、彼女達は、俺の目的を叶える為だけについてきてくれている。


 守るべき人に守られてダンジョンに潜る。

 この矛盾を解消するのは簡単だ。

 俺が潜るのを諦めればいい。

 しかし、今の彼女達がそれを許してくれるとは思えない。


「しかし、一旦帰ると、また83階層まではやり直しだ。まあ、かかる時間にもよるので、全部の魔物が復活しているとは思えないが、それでもロスだ。それに、作るなら人数分用意したい。今じゃ数が足りない。」


 全くこのダンジョンは意地悪だ。

 きりのいい階層でないと帰れないが、魔核や素材は、大抵途中の階層で手に入る。

 結果、リスクを取らないようにすれば、何度も往復することになり、大幅に時間を食わされる。


 なるほど、イオリはそうやって進んだのだ。

 少し進んでは引き返し、装備を整えてから、また少し進む、その繰り返しだったのだろう。

 だから、2年もかかったと考えるべきだ。

 多分、ミツルも同様なはずだ。

 皇女が慎重派なら、尚更だろう。


「アラタ、何を急いでいるの? ダンジョンは逃げないわ。それなら、人数分を確保できたら一旦戻るのが最善よ。」

「そうっすね。新素材も試してみたいっす。これだけの素材、ミニ工房じゃ、やはり厳しいっす。」


 うん、それは分かっている。

 だが、それでは時間がかかり過ぎる。


「アラタさん、あのことを気にしておいでですの?」


 げ!

 クレアは、たまにこういう核心を衝いた質問をする。


 そう、何故俺が急いでいるかの、根本的な理由はそこにある。

 一刻も早くこのダンジョンをクリアし、真実とやらを知る。

 そして、彼女達を奴隷から解放し、妻に娶ってやりたいのだ。

 当然、子作りも含まれる。


「気にしていない訳が無い! 俺は誓ったはずだ! お前達を幸せにすると! だが、この様は何だ? 今日だって、危うくリムを殺しかけた! こんなダンジョン、さっさと終わらせるべきだ! いや、もう止めよう。帰って皆で安全に、楽しく暮らそう。」


 ヤバい!

 思わず感情が噴き出してしまった!


「あらあら、それでは私の目的が果たせませんわ。」

「ん? クレアは俺と結婚して、子供が欲しかったんじゃなかったのか? なら、これでいいはずだろう?」

「アラタ、解ってないわね。あたし達は、アラタの目的を果たさせるのが目的だと言ったでしょ?」

「そうっす! あたいも子供は欲しいっす! でも、そんな事は、二の次っす!」


「なるほど。理解できました。アラタさんは、今日の一件で少しネガティブになっていますね。以前から優しかったですが、今日のアラタさんは少し違います。これは優しさではありませんね。逃げです。この状態では危険です。やはり一旦引き返すべきです。」


 ぐっ!

 多分、ミレアの言う事が全てなのだろう。

 言い返す言葉が無い!


「そうと決まれば、ここは引き払いますにゃ。マリンちゃんにも蟹を食べさせてあげたいですにゃ。」


 12歳の子猫に、いいように締められてしまった。

 やはり、今日の俺はどうかしていたのかもしれない。

 皆が、野営セットを片っ端からアイテムボックスに放り込んでいく。



 屋敷に着いたのは、結構遅くなっていたが、マリンが既に風呂を沸かしてくれていた。

 誰かが、連絡を取ってくれたのだろう。


 風呂場で、俺は情けない事に、まだ意気消沈していた。

 しかし、皆はあまり気にしていないのか、風呂の快感に酔いしれているのか、いつも通りだ。

 サラに至っては、泳いでいる。


 そこへミレアが寄って来た。


「あの、さっきは厳しい事を言ってしまいました。でも、私は謝りません。あの場では、あれが最善だったと思っています。」

「いや、俺もこんな状態は良くないのは分かっているつもりだ。気付かせてくれて、ありがとう。」

「それなら心配は要りませんね。早く、いつものアラタさんに戻って、命令して下さい。『行くぞ!』って声を待っています。」


 そう言うと、ミレアは俺に顔を寄せる。

 俺も我慢できなくなる。

 サラが居るが、知ったこっちゃない。

 しかし、三人がうまく壁になってくれた。

 俺はミレアのキスを堪能し、そのまま手を引いて寝室に向かう。



「もっと激しくしてください! 私で気持ちを切り替えて下さい! あ、ま、またです!」


 その晩、俺達は何度も求め合った。



 ミレアを抱いて、一晩で回復したちょろい俺は、少し遅めの朝食を食べながら宣言する。


「うん、心配をかけたようだが、もう大丈夫だ。だが、どうしても時間はかかる。それだけは覚悟して欲しい。」

「私は何があっても、ついて行きますわ!」

「私もよ! でも、スコットさんみたいにはならないわ! その為には、完全な準備が必要よ!」

「そうっす! 今から工房っす!」

「長期戦は覚悟の上ですにゃ! まだ4年もありますにゃ!」


 ん? また何か変なのが居るが、まあいいだろう。

 ちなみに、ミレアは少し疲れた顔をしている。

 昨夜、攻め過ぎたか?



「やはり、この効果の抜き取り作業は難しいな。一つの奴なら簡単だが、2つ以上の奴はどうしても巧くいかない。」


 現在、俺はリビングでサラと一緒に作業をしている。


 皆で色々試した結果、新素材、ナインティードラゴンの牙と、あぶないぞうの牙が、とんでもなく優秀なことが分かった。

 それ単体を加工しても充分武器になるが、二つを溶かして混ぜ、それに更に鉄を混ぜた結果、凄いものが出来上がる。


龍象牙のナイフ:攻撃力+40 ?? ?? ??


 これでも只のダガーだ。

 こいつに効果をつけたらと考えると、わくわくする。

 しかし、流石に魔核が足りないので、こうして、以前作った奴から抜き取っているのである。



 サラも俺の横で一生懸命、自分の矢に魔法を付与している。


「私はやったことにゃいから、分からないですにゃ。でも、出来そうですにゃ。」


 出た! サラの「出来そうですにゃ。」!

 こいつはこの言葉と共に、ありえないことを平然としでかす。

 ちなみに、一個の場合は、横で見ていただけで、さも当然のように成功させやがった!


 ふむ、ここは期待すべきだろう。

 俺は、もう使わない、効果の2つついた鎧と、それにつけた元の魔核のカラを手渡す。


「こいつの効果は、【防御20アップ】と、【魔法防御20%アップ】だ。ベースの素材は、鉄とユニコーンデビルの角。ちょっと前まではこいつの世話になったものだ。」

「要は、別々に移せばいいだけですにゃ。まずは【防御20アップ】ですにゃ。」


 彼女はそう言いながら、右手を鎧に添え、左手に元となった、レッドサイクロプスのカラの魔核を持つ。

 意識を集中し始めたようで、微動だにしなくなる。

 俺は、鑑定スキルを使いながら見ている。


 ぬお!

 やはり成功させやがった!

 鎧の表示が変わり、空きが一つできた状態になっている!

 魔核の方も、たたの【魔核】から、【レッドサイクロプスの魔核改】に戻った!


「これは凄い! サラちゃん、やったな!」

「てへ。出来ると思えば出来るのですにゃ! じゃあ、他のもやってみますにゃ!」


 これは本当に助かる。

 現在俺の装備品などは、希少な魔核を使っている物が多く、替えが利かないものがあるからだ。


「よし、サラちゃん、今度はこれで頼む! ただ、こいつは効果が3つだ。かなり難しいかもしれないが、なに、失敗すればまた狩に行けばいい。」


 俺は、アイテムボックスから、【無効の首輪】と、その元になった、カラの魔核をテーブルに置く。


 こいつは【火無効】を獲得したことにより、【火耐性大】がかぶってしまっているのである。

 【状態異常無効】という素晴らしい効果がついているので、俺とカレンが使っているが、俺はともかく、カレンの物には、【自動回復】をつけ直してやりたい。


「同じですにゃ。一番気になる奴から外しますにゃ。これの場合は、【状態異常無効】ですにゃ。」


 サラは、先程同様、当たり前のように成功させる。

 う~ん、これこそが才能なのだろうか?

 しかし、何か違う気がする。


 決して、天才とかを認めたくないというのでは無い。

 ただ、彼女の場合、ことわりを持って、成功させている気がするのだ。

 確かに、サラの【魔核付与】のスキルは既に5だ。

 しかし、同じレベルの俺は成功しない。


 この違いは何なのだろうか?


 俺は、皆から、効果を付け替えたい装備を回収してくる。

 サラは、それを簡単そうに外して行く。

 もはや何も言うまい。


 ただ、俺は、この違いはそのうち分かると思っている。

 それこそが、『この世界の真実』のような気がするからだ。



「うん、これが最後だな。これが終わったら、飯にしよう。」

「今日も蟹ですにゃ!」


 サラは、自分の分を済ませ、ご機嫌だ。

 途中、気力切れを起こしそうになったので、何度も俺の気力を吸わせる。

 彼女がその度に、どきっとするような表情になるのが怖かった。

 色気がそろそろ備わって来たか?



 サラのおかげで、皆の装備は、かなりリニューアルできた。

 防具関連は、全員、ほぼ統一仕様だ。

 沢山種類があるように見えるが、腕輪と靴は前回と全く同じで、他も、魔核を入れ替えただけである。


龍象牙の鎧:防御+160 特殊効果【防御20%アップ】

金猪の腕輪改:命中+50 特殊効果【魔法防御20%アップ】【命中20%アップ】

俊足の足袋:防御+2 特殊効果【素早さ20%アップ】

龍皮の帽子:防御+10 魔法防御+60 特殊効果【火無効】【体力20%アップ】

龍皮の帽子改:防御+10 魔法防御+60 特殊効果【火無効】【知力20%アップ】

無効の首輪改:特殊効果【状態異常無効】【自動回復】??


 龍皮の帽子は、攻撃職、クレアとカレンとサラだ。

 改の、【知力20%アップ】がついている奴は、魔法メインの、ミレア、リム、俺が装備する。


 また、無効の首輪改は、あえて空きをつけたままにした。

 これからまた、有用な効果が出てくるかもしれないからだ。

 偵察役の俺と、盾役のカレンが装備する予定である。

 ちなみに、片方には【自動回復】がついていないので、その都度で使い分けるつもりだ。


 武器の方は、空きが増えたおかげで、かなり凄いことになっている。


貫通の拳:攻撃力+55 特殊効果【貫通】【素早さ半減】【攻撃力20%アップ】

クレアの槍改:攻撃力+75 特殊効果【貫通】【素早さ半減】【攻撃力20%アップ】

カレンの小剣改:攻撃力+65 特殊効果【貫通】【素早さ半減】【攻撃力20%アップ】

ミレアの杖改:攻撃力+40 魔力+30 知力+60 特殊効果【魔力20%アップ】

サラの弓:攻撃力+85 特殊効果【攻撃力20%アップ】


 ミレアの杖改は、リムにも全く同じ物を。

 サラの弓に関しては、貫通をつけたいところだが、現状、魔核が足りないのと、素材が見つからない為、前回のままだ。

 魔核が手に入り次第、攻撃力+60を外して、そこにつける予定である。



 食後、皆と風呂に入りながら、改めて自分に気合を入れる。


「明日からはまたダンジョンだ。今回の装備はほぼ完璧。全く不安要素が無い! 一気に90階の主を倒しに行くぞ!」

「「「「「はい!」」」」ですにゃ!」


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