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22歳♂ 何故か女の体に転生しました。  作者: BrokenWing
第二章
91/99

百人前

         百人前



「素材になりそうな、牙も回収し終わったな。じゃあ、次の奴だ。二つ先の小部屋にまた新顔だ。ドラゴンはまだ気づいていないようで、近寄って来ない。」

「どんな奴ですか? 新種だったら、今度こそ私に命名させて下さい。」


 今のうちから考えておくつもりだな。

 まあ、変なのでなければいいのだが。


「う~ん、多分、内陸のお前達は知らないと思うが、カニという生物の超巨大版だ。横幅が4mくらいある。でっかい鋏のついた腕が二本と足が八本。とにかく硬そうだ。また、もし、生物の特性が活かされているのなら、水魔法は効かないだろう。」

「カニですにゃ? 知ってますにゃ! 美味しいですにゃ!」


 ん? 猫に蟹は与えてはならないと、昔聞いた気がするが。

 この世界の亜人、適当だな。


「知っているなら、話が早い。とにかく、それの黒くてでかい奴だ。でもって、あの鋏は凶悪そうなので、対策が必要だな。」


 見た感じ、サラくらいなら簡単に真っ二つにされそうだ。


「それで、どうなされますの? 4mの鍋はありませんわ。」


 クレア、お前は最近、キャラがぶれて来ている気がするぞ。


「取り敢えず、さっきと同じで行こう。俺が【忍び足の靴】を着けて偵察。お前達は部屋の手前で待機だ。」

「「「「「はい!」」」」ですにゃ!」


 全員を通路で待たせ、俺はそろそろと部屋に入る。

 うん、気付かれていない。

 通路で待機している仲間にも気づいていないようで、巨大な蟹は、部屋の中央で微動だにしない。


 じゃ、まずはいつも通りだ。

 俺は、巨蟹に近寄って、【サラの剣山】を突き立てようとした。


 その瞬間!

 地面が割れた!


 チッ!

 スワレントラップだ!

 危機感知では、こいつの小さな赤点が、巨蟹と完全に重なっていやがった!


 激しい痛みが俺を襲う!

 俺は、完全に巨大蝿取草に掴まった!

 かろうじて、首だけが外に出ている状態。

 しかし、身体は完全に拘束され、身動き一つ取れない!


 腹に穴でも開いているのだろう。

 下半身に、生温かい、水分の感触がある。

 ステータスを確認すると、体力が、既に半分を切っている!

 しかも、まだ減り続けている!

 この調子じゃ、一分も持たないだろう。


 更に、複数の耐性表示が、激しく点滅している!

 様々なバッドステータスの塊のような攻撃だったのだ!


 仕方ない!


 俺は大声を上げて、助けを呼ぼうとした。

が、留まる。

 ここで、大声を上げれば、巨蟹にも気づかれるだろう。

 幸い、あいつはまだ微動だにしていない。


 今ここで、あいつまで参戦させる訳には行かない!


「ヒール!」


 俺は、小声で自分に回復呪文をかける!

 しかし、変化が無い!

 痛みも消えない!


 そうか!

 俺は【反射】効果のついた、【リフレクトシールド】を装備していたんだ!

 これは、未知の魔物を相手にする時の必需品である。

 慌てて、手を離そうとするが、完全に締め付けられていて、離れない!


「あれは、一体何ですの?!」


 しめた! 仲間が気付いてくれたようだ!

 現在、俺は【認識阻害大】の影響で、仲間からも見えない存在になっている。

 スワレントラップも、普段は全く見えない。

 しかし、スワレントラップは、顎を閉じると、見えるようになる。

 俺が見えなくても、この大顎が見えれば、何が起こっているかは一目瞭然なはずだ!


「アラタ! 今行く! 縮地!」


 馬鹿、リム!

 リムが持っている杖は、【石化】効果の付いた奴に違いない。

 しかし、今の、認識阻害をしていないお前じゃ、蟹に発見される!

 


 案の上、巨蟹はリムに気付いて、鋏を振り上げる!

 しかし、リムは全く意に介さず、杖をスワレントラップ目掛けて振るった!


「「「アラタさん! リムちゃん!」」」

「ヤバいっす! 挑発!」


 異変に気付いた仲間が、全員、一斉に駆け込んで来た!


 チッ!

 巨蟹に挑発は効かないようだ!

 大きな鋏がリム目掛けて振り下ろされる!


「リム!」


 リムが巨大鋏に捕まるのと、杖がスワレントラップに当たるのは、ほぼ同時だった!

 急速に、身体の締め付けが無くなる!

 やっとの思いで、【リフレクトシールド】を離す!


 更に俺は、リムを見る!

 よし、幸い【リフレクトシールド】は装備していない!

 ステータスを見ると、リムの体力が凄いスピードで減って行っている!

 もう、100も無い!


 まずは回復しなければ!

 

「ヒール!」


 俺は迷わずリムを選択して、ヒールをかける!

 俺のことは後回しだ!

 俺もかなりヤバいはずなのだが、まだ死んではいないし、動ける!

 まだ、脱出するには至らないが、それも時間の問題だ!

 すぐにスワレントラップは石になるだろう。


「チッ!」


 ヒールは成功したのだが、リムの体力は相変わらず減り続けている!

 だが、半分、300くらいにはなったか!

 リムも必死にもがくが、鋏は外れない!


「こっち来いや! オラァーッ!」


 俺は、僅かに動くようになった足先で、必死に【認識阻害大】のついた靴を脱ぎ捨てる!


「ヒール!」


 クレアだな。

 ナイスだ!

 俺の痛みが和らぐ。


 その途端、巨蟹も俺に気付き、リムを挟んだまま、もう一方の鋏を俺に振り上げる!


「させないにゃ! ハイスタン!」


 よし! サラ!

 しかし、巨蟹の身体が一瞬淡い青色に包まれた!


 不味い!

 この色は反射だ!

 サラも【リフレクトシールド】は、今装備していない!

 まともに喰らって、硬直している!


 ヤバい! ヤバい! ヤバい!

 鋏が俺に迫りくる!

 打撃だけなら、小手でガードして耐えられる気がするが、挟まれたら不味い!

 下半身はまだ動かない!

 首ちょんぱは御免だ!


「無敵!」


 いきなり、俺の目の前が真っ暗になる!

 見ると、カレンが巨大鋏に捕まっている!


 俺の身代わりになりやがった!

 しかし、【無敵】を使っているカレンなら、心配は無い。

 30秒程度なら無傷なはずだ!


 蟹の野郎は、文字通り、両手に美女でご満悦だろうが、俺は怒り心頭だ!


 そして、やっと、身体が動くようになったので、俺は、完全に石化したスワレントラップを、身を捩じって割る!


「ヒール! クレアも、リムに回復!」

「はい! ヒール!」

「サラ! 腕の付け根を狙え! 魔法の矢は使うな!」

「はい! 精密三連!」

「縮地!」


 俺は一気に蟹の後ろを取る!


「まずは俺の女を返せ!」


 俺は、そう言うなり、リムを掴んで離さない、右手の鋏に組み付く!

 力任せにへし折ろうとするが、流石に無理か!


「アラタ! 受け取りなさい! オールアップ!」


 リムの奴! 無理しやがって!

 俺とクレアの回復があるとは言え、痛みは凄まじいはずだ!


「これで百人力だな!」


 俺は巨蟹の腕を、付け根からへし折った!

 巨大鋏は、リムを挟んだまま、胴体から外れる!


「う、げほ!」

「リムちゃん! ヒール!」


 再びクレアの声だ!

 これでリムは大丈夫だろう。


「もう一人!」


 カレンは、無敵の効果でダメージは受けていないようだが、やはり鋏から逃れられず、もがいている!

 俺は迷わず、カレンを掴んでいる左の鋏にしがみつく!


 ゴキッ! と、音がして、こっちもあっけなく胴体から外れる!


「これで、足は出ても、手は出まい! 皆、一旦距離を取れ!」

「「「はい!」」」


 すると、巨蟹は口から、泡を吐き始めた!

 ふむ、何をする気だ?


 リムとカレンは、ミレアとクレアに救出され、今は俺以外、全員遠巻きに警戒している。


 泡は直径50cmくらいになり、次々と空中に漂う。

 その一つが、俺に触れた。


 バンッという、乾いた爆音がし、俺は吹き飛ばされた!


「チッ! 即席泡爆弾のようだ! 皆、泡には触れるな! もっと距離を取れ!」

「「「「「はい!」」」」」


 もはや、蟹の口の周りは泡だらけだ!

 無数の泡が巨蟹の周りに漂い、近寄れそうにない!


「ふむ、なら、こういうのはどうだ?」


 俺は【リフレクトシールド】を拾う。


「全員、部屋の外に出ろ!」

「「「「「はい!」」」」」


 皆が、通路に退くのを確認してから、俺も、部屋の入り口まで【縮地】する。

 俺は、【リフレクトシールド】を翳しながら、唱えた。


「地獄の業火!」


 部屋中が炎に包まれる!

 奴の身体は予想通り魔法を反射し、青白く光る!

 そして、俺の盾も同様に光る!

 

 だが、その瞬間、連続した爆音が響き渡る!


 うん、魔法が相殺されるのは予想通り。

 しかし、奴の放った、泡爆弾はそうはいかない。

 もろに誘爆したようだ。


 奴は、口の周りが見事に消し飛び、半月状の穴が開き、遂に力尽きたようだ。



 その後、確認したが、リムも俺も大丈夫だった。

 とは、言っても、ダメージを受けた時の状況は深刻で、リムは骨折していたようだ。

 俺に至っては、やはり腹に大穴が開いていたようだが、今は回復魔法で綺麗に塞がっている。

 この世界の魔法、本当に便利だ。

 そういや、この世界で、医者とか見た事無いな。

 


「良く焼けています。今日の晩御飯は決まりですね。」


 魔核を回収し終えたミレアが、俺に話しかける。


「で、名前は決まったのか? どうせ、また新種だろ?」

「そうですね。百人前ってところでどうでしょう?」


命名:ヒャクニンマエ


 うん、うちのパーティーは健在だ。


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