不思議なサラ
不思議なサラ
「やっぱりな。スワレントラップの、魔核の効果は【認識阻害中】だ。ロッタの帽子の上位版ってところか。」
「じゃあ、それを2つ合成したら、【認識阻害大】になりそうね。」
「うん、リム、今までのパターンだとそうだな。」
「やってみるわ。」
現在、野営の設置が終わり、ミニ工房を広げて、早速、今日狩った魔物の魔核を試している。
ちなみに、ナインティードラゴンの魔核は【火無効】だった。
これを付与すれば、あいつの、あの凶悪なブレスは無効化できるはずだ。
「ところで、気になっていたんすけど、あのドラゴンの皮、というか鱗っすかね。あれ、使えそうっす! あたいの野生の勘がそう告げているっす!」
カレンの『野生の勘』は以前、玄武の甲羅を素材にするということで、大ヒットを飛ばしている。
ここは従うべきだろう。
「よし、少し先の部屋に死体が放置されていたな。じゃあ、俺とミレアとカレンで取って来よう。クレアとリムとサラちゃんは、先に【ウォーターバースト】の矢を増産してくれ。」
「かしこまりましたわ。」
「分かったわ。」
「はいですにゃ。」
現状、水魔法を石に付与できるのはサラだけである。
リムも、魔核の合成はできるのだから、できそうなものなのだが、どうもあの小さな石に魔法が入ることがイメージできないらしい。
こればかりは、俺が教えても、どうしようもないだろう。
ちなみに、同じ魔法を付与しても、付与した人間の魔力に比例して威力も異なる。
だから、俺とミレアの作った、【ファイアストームの石】だと、俺が作った奴のほうが威力が高い。
なので、もしリムができるのであれば、現在のサラが作る【ウォーターバーストの石】よりも、高威力のものができるはずだ。
そう考えると、俺が水魔法を使えれば最も効率がいいのだが、そう甘くは無い。
だが、本当に俺は、水魔法が使えないのだろうか?
現にサラは、火と水、両方使えているじゃないか?
俺は学んだ。
この世界の魔法はイメージに成功し、それを実現可能な能力があれば、可能だと。
だから、水魔法が使えない俺には無理だと納得してきた。
だが、その能力ってなんだろう?
スキルレベルとか、魔力とかを併せた、適性か?
では、その適正は、生まれた瞬間から決まっているのだろうか?
確かに、サラのステータスの伸びは先天的な物だと思える。
カレンが魔法を使えないのもそうだ。
だが、本当にそうなんだろうか?
俺達が勝手に、そう思い込んでいるだけなのではなかろうか?
亜人は魔法が使えなくて当たり前。
火魔法と水魔法は、同時に覚えられなくて当たり前。
う~ん、知恵熱が出そうだ。
等と考えながら歩いているうちに、ドラゴンの死体が見える。
こいつは、流石にでかすぎて、アイテムボックスに入れるのは、最初から諦めていた。
まあ、現状、俺は6トンも持てるのだから、入らないことはないのかもしれないが。
「取り敢えず、皮を剥ぐっす。使えるかは、工房で確かめるっす。」
「そうだな。」
「了解です。」
俺達は無言で皮を剥ぐ。
ふむ、カレンの勘は当たっている可能性が高そうだ。
俺の世界のゲームでは、大抵、ドラゴンの皮とか牙とかは、優秀な素材だ。
このゲームみたいな世界なら、充分にありえる。
「よし、一通り剥ぎ終わったな。」
「そうっすね。え? え? え~~っ!」
カレンが驚いているので、俺も慌てて鑑定してみる。
ナインティードラゴンの皮:防御+40 ?? ?? ??
ぶっ!
ナニ、この性能?
確かに、ファイアウルフの皮は便利で、最初から空きが一つあった。
ダークウルフの皮は、空きこそ無いが、最初から【火耐性中】がついている。
しかし、これは破格だろう。
「「これって!」」
思わずカレンとはもった。
「最高の素材っす!」
「最高の素材だな。」
ミレアにも伝えると、彼女も目を輝かせる。
「これは、早速加工っす! 今晩は寝られないっす!」
「一度、屋敷に戻るのもありかもしれませんね。」
「いや、ミレア、ちょっと待て。帰るにしても、こいつらをもっと狩ってからだ。それに、俺の勘では、こいつの牙もきっと使えるに違いない。」
俺はそう言って、ドラゴンの牙に手をかける。
剣で折ろうとしたが、うまく行かない。
聖銀の剣程度では、剣のほうが負ける。
仕方無いので、力任せに引き抜く!
原始的な歯医者の気分だ。
ナインティードラゴンの牙:攻撃力+20 ??
ふむ、これ単体でも武器になるってところか。
おまけに空きまである。
ならば、うまく武器に加工できれば、性能はいいはずだ。
「まだ使えるか分からんが、とにかくこいつも回収だ。」
「はいっす! 見た限りじゃ、こいつも間違いなく使えるっす!」
「了解です。」
この階層の7体全てのドラゴンの死体から、素材を回収して回る。
カレンは小剣を使って、器用にドラゴンの牙を切り取っている。
まあ、武器の性能も違うし、剣術スキルの違いもある。
俺達は回収した素材を持って、喜々として野営地に戻った。
「お帰りなさいですわ。」
「取り敢えず、20本程作ったわ。でも、サラちゃんの気力が・・。」
見ると、サラがベッドに寝かされている。
魔結晶も使ったようで、透明なクリスタルのようなものが2個、転がっていた。
「まあ、一晩寝かせれば回復するだろう。今はどうすることも・・・、ん? これは試す価値があるな。」
俺は思いついた。
俺の魔法、【サイコドレイン】は、相手から気力を吸収する。
逆もできないだろうか?
まずはサラのステータスを確認する。
気力:35/304
ふむ、殆ど空だ。
魔結晶で一割は回復しているが、それ以上は、自然回復を待つしかないのが普通だ。
俺はイメージを固めて、サラの手を握る。
全員居るし、失敗しても何とかなるはずだ。
そもそも、失敗する気がしない。
「サイコギフト!」
サラがむっくりと起きた。
ステータスを確認する。
気力:440/304
ぐは!
どうやら、やりすぎたようだ。
「いきなり元気になった気がしますにゃ! でも、なんかしんどいですにゃ。」
そら、限度枠以上の気力を注入されたら、逆に辛いだろう。
俺のステータスを確認すると、気力がほぼ半分になっている。
最初、800くらい残っていたから、その半分、400程を与えたのだろう。
これは加減できないと、逆効果かもしれんな。
「ふむ、一時的なものだろうから、心配は無いと思う。そうだ。サラちゃん、魔法のカラ撃ちをすればいい! 今なら、多分、俺達の使っている、上位魔法でも撃ち放題だと思うぞ。」
サラも自分のステータスを確認して、理解したようだ。
立ち上がって、小部屋の外に歩こうとするので、クレアが慌てて付き添う。
「良く分らないですが、また何かチートなことをやらかしたようですね。」
「アラタ、凄いわ! これなら、ほぼ無限に石を作れるわね。」
まあ、はたから見ただけでは、俺が何をしたのかは分からないだろう。
もっとも、ステータスが覗ける、人物鑑定スキルを持っているリムは気付いたようだが。
心配なので、俺達もサラの後を追う。
上位魔法とは言ったが、今のサラの魔法レベルは、火が3、水が4、闇が3の、土が2だ。
恐らく、俺達の使っている最上位と思われるのは無理だろう。
サラは、隣の小部屋に入るやいなや詠唱した!
「マリンちゃんの折檻!」
ぶっ!
詠唱名もだが、魔法にも驚いた!
小部屋の半分弱程だが、炎に包まれる!
サラには魔法の本質を教えてあるから、俺にとっては出鱈目な呪文でも、彼女のイメージにマッチしていれば、成功するのに疑問は無い。
しかし、あの魔法は、俺の【地獄の業火】の真似だ。
どう考えても魔法レベルが足りないだろう?
【火魔法3】では、俺もやっとこ、【ファイアトルネード】だった気がする。
慌てて、サラのステータスを確認する。
げ!
今朝見た時は、確かに【火魔法3】だったはずなのに!
スキル:火魔法5 水魔法4 土魔法2 闇魔法3 時空魔法2
今朝から一度も彼女は火魔法を使っていないはずだ。
ドラゴンには効かないし、スワレントラップは石化で一撃だったからだ。
なのに、何故に、いきなり5?!
「す、凄いな! おめでとう! しかし、あの魔法は、本来レベル5無いと無理だと思っていたし、それに、サラちゃんの魔法レベル、いきなり上がっただろ?」
「良く分らないですにゃ。でも、なんか今なら出来そうな気がしましたにゃ。」
う~ん、理解できん。
しかし、『出来そうな気がした』だけが俺の心に残る。
火魔法を覚えたことも、その一言で片づけられたし、本当に謎だ。
「まあ、サラも回復したし、魔法も成功した。これ以上の事は無いな。うん、飯にしよう。クレア、ミレア、頼む。」
「「はい。」」
クレアとミレアが食事の準備をしてくれている間、サラは引き続き、石への魔法付与の作業。
今度は、気力が有り余っているから、心配無い。
俺とリムとカレンは新素材での鎧の作成。
と、言っても、鱗のついたままの皮を、俺達の身体に合わせて整形して縫い合わせるだけだが。
ナインティードラゴンの服:防御+40 ?? ?? ??
ふむ、名前が付いているという事は、イオリ達も既に作ったのだろう。
「それで、問題は何をつけるかね!」
「そうだな、【防御20%アップ】は鉄板だな。後、【防御+60】も。」
「そうっすね。【魔法防御+20】は、かぶるっすね。じゃあ、【火無効】はどうっすか? あたいとアラタさんは、少し被るっすけど、4人は靴や帽子が開くっす。」
「ふむ、それはいい案だな。しかし、それならこの素材で靴や帽子も作ってしまおう。」
「それがいいわ! 早速作るわよ!」
「乗ってるところ悪いですが、食事ができました。サラちゃんも一旦休憩にしましょう。」
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