次への準備
次への準備
食事をしながら、俺達の今日の成果、石に攻撃魔法を付与することに成功したことを発表する。
ミレアもサラも、薄い胸を精一杯突き出している。
もっとも、サラのは薄いというより、まだ成熟していないだけのようだが。
俺がサラの胸をガン見したことは皆にばれたようで、マリンの口元が吊り上がる。
クレアとカレンは意に介さないのだが、俺の両隣に座っていたミレアとリムは、俺の方を向いて睨みつける。
「ま、まあ、そんな感じで、サラちゃんが仲間になることを歓迎して、乾杯だ。」
誤魔化しながら、皆に酒を振舞う。
もっとも、リムとサラはジュースだが。
俺も、この世界では酔えないので、ジュースでも良かったのだが、そこは主人として、皆と一緒に酒を飲む。
ん?
サラの顔が赤い。
誰だ? この子猫に酒を飲ませているのは?
見ると、ミレアが出来上がっていて、自分のグラスをサラに飲ませていた。
あげくに、酔った勢いで、俺に抱き着いてくる、
サラまで加勢しそうになってきたので、カレンとリムにガードされるはめになった。
食事を終えて、先に風呂で寛いでいると、当然のように、皆が入って来る。
ミレアが心配だったが、そこまでは酔っていないようだ。
「それで、カレン、できそうか?」
俺は先程考えていた、サラの矢に、魔法を付与した石をつける案を訊いてみる。
「できると思うっす。ただ、使い捨てになるんで、数を用意するのが大変かもっす。」
「石への付与の作業は、俺とミレアでやる。サラはまだ低位の魔法しか使えないからな。まあ、最初はお世話になることもないだろう。しかし、80階以降の未知の魔物相手には大いに期待できるはずだ。」
「確かに、80階まではサラちゃん抜きでもやってこられたのだから、問題ないわね。だとすれば、当面の課題は、サラちゃんのレベル上げね。」
「その通りだ、リム。なので、明日からはサラのパワーレベリングだ。今日と同じく、10階層から潜って、魔核や素材を回収しながら、80階まで駆け足で行こうと思う。」
「それがいいですわ。その間に、連携とかの形も出来上がりますわ。」
「うん、クレア、勿論そのつもりだ。ところで、ミレア~、起きているか~?」
「は、はい、すみません。キスして下されば、大丈夫です。」
ミレアはそう言って、俺の顔に手をかけ、定位置である、俺の膝の上で寛いでいたリムを尻で押しのけ、おれに覆いかぶさる。
ふむ、まだ酔いは醒めてないのか。
少し酒臭い。
しかし、こいつのこういう時の顔は本当にそそられる。
思わず受け入れてしまう。
「ミレア姉様、ずるいわ!」
「あたいも、今日は頑張ったっす!」
「私もですわ!」
「私もですにゃ!」
ん? 何か変な声が混じっているような?
振り返ると、風呂場の入り口にはサラが居た。素っ裸だ!
少し顔が赤い。
まだ酔っているのか?
「おい! サラちゃん! そこから中に入ることを禁ずる!」
「私もパーティーの一員ですにゃ! 皆と一緒の待遇を要求するにゃ!」
ふむ、今度はそう来たか。
「サラちゃん、それは約束違反よ! 色仕掛けに含まれるわ!」
そうだ、リム! もっと言ってやれ!
まあ、今更、サラの裸くらいは、どうといこともないが。
この前、風呂で浮いていたのを担ぎ出された時に、嫌と言うほど見させられているし。
「私はまだ16歳じゃにゃいから、色気は無いはずですにゃ!」
まあ、確かにそれはそうなのだが。
しかし、俺の顔は、リムによって、強引に向きを変えさせられる。
されなくても、背けるつもりだったのだが。
やはり、そういう事への、俺の信用は無いらしい。
「あらあら。お風呂くらい、一緒で構いませんわ。」
おい、クレア、待て!
優しさと甘やかすは一緒では無い!
「そんな小猫、相手にならないっす。」
カレン、確かにお前の胸の破壊力に比べれば、奴のは無力だ。
例えて言うなら、豆鉄砲と戦車砲くらいの違いはある。
だが、それでいいのか?
現に、俺はミレアに対しても十二分に欲情したぞ?
まあ、流石にサラにはしないが。
「ふむ、俺は上がるぞ。後はお前達で相談してくれ。うん、サラちゃん、入っていいぞ。そこに居られると出られん。」
なんか、面倒になってきたので、丸投げすることにした。
後はこいつら同志で解決するだろう。
あてが外れて、むくれるサラと擦れ違い、俺は風呂場を後にする。
リビングで、マリンのお茶を楽しんでいると、全員が来た。
ミレアとサラの酔いも醒めているようだ。
「これからの、サラちゃんとアラタの接し方を皆で考えたわ!」
ふむ、こういう時はやはりリムか。
しかし、何故、俺の行動をこいつらに決められてしまうのかという、疑問は残るが。
「お風呂までは残念だけど、認めざるを得ないわ。皆でダンジョンから帰って来た時のお風呂は、もう、無くてはならない憩いの時よ。そこをサラちゃんだけ別、というのはやはり可哀想だわ。」
やはり、彼女達も、俺の世界の風呂は気に入ってくれているようだ。
ダンジョンから帰って、『皆』で寛ぐのはいいものだ。
全ての疲れが吹っ飛ぶ感じだ。
その快感をサラだけダメ、とは、いくらリムでも言えなかったのだろう。
「でも、アラタのベッドにサラちゃんが入るのは認めないわ! これはダンジョン内でもよ! サラちゃんのベッドは、明日、買う事にするわ。」
まあ、そこらが落としどころだろう。
俺もそのつもりは無いしな。
「うん、悪いが俺にはサラちゃんを女としては意識できないので、俺はそれで構わないぞ。」
「む~! 仕方ないですにゃ! お風呂だけで我慢しますにゃ。」
その後は、カレンとリムとクレアとサラで工房に行く。
ミレアは、酔いのせいで疲れたのか、早々に寝たようだ。
俺達は早速、矢の試作に取り掛かる。
スコットの使っていた、鉄の矢の先端を変えるだけの簡単な作業だ。
鏃を外した矢の先端を鋭くしてやることにより、石を割れやすくする。
試作品を、ファイアショットを付与した石で試してみる。
サラが撃つと、ちゃんと石が割れて発動した。
うん、間違っていなかった。
すぐに、ファイアトルネードを付与した奴を10本ほど作る。
今はこれでいいだろう。
そのうち、クレアかリムが付与できるようになれば、バリエーションも増える。
勿論、サラの魔法レベルが上がれば、彼女自身で作れるだろう。
俺が魔法を付与し、カレンがそれを鏃にしている間、リムとクレアとサラは、サラの帽子と靴を作っている。
これは簡単な作業で、クレアとサラが、ファイアウルフの皮を切り、靴と帽子の形に縫い合わせるだけだ。
そこにリムが合成した魔核を付与する。
うん、これで準備は万全のはずだ。
その晩はクレアと共に過ごした。
「あの、そろそろ、子供が欲しいですわ。」
「済まんな、クレア。これが終わって、この世界の真実とやらを知ることができたら、お前達全員を奴隷から解放し、改めて妻として娶るつもりだ。それまでは我慢してくれ。」
「分かっていますわ。急かすような事を言って、申し訳ないですわ。」
「いや、謝ることは無い。俺の知る限りで、俺に最初に惚れてくれたのはお前だ。お前が居なかったら、ミレアもついてきてくれたかは分からない。そういう意味でも、本当に感謝している。」
「ミレアは私が居なくても、アラタさんを好きになっていましたわ。それに、リムちゃんやカレン・・・あ・・・」
俺は最後まで言わさず、クレアの口を口で塞ぐ。
クレアも、舌を絡めて積極的に求めて来た。
翌朝、家具屋に寄って、サラのベッドを買った後、その足でダンジョン10階へ飛ぶ。
「さあ、気合入れるぞ! きりのいいところで屋敷には戻るが、ハイスピードで潜って行くつもりだ。サラちゃんはきついだろうが、耐えてくれ。じゃあ、行くぞ!」
「「「「はい!」」」」ですにゃ!」
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