サラの武器
サラの武器
「よう、久しぶりだな。話は聞いているぜ。以前はその娘っ子が勇者さんだったが、今は弓使いだった、あんちゃんが勇者さんか。まあ、別人になったのは俺でも分かる。全く、勇者ってのは何でもありだな。」
「まあ、そう言わないで欲しい。それで、今日はヒントを貰いに来た。報酬はまた魔核でいいか?」
俺達は、奴隷商でサラの手続きを済ませた後、以前から世話になっている武器屋に来ている。
目的はサラの武器、弓矢だ。
スコットの使っていたのも、ここで購入したのだが、これからの事を考えて、ランクアップしたい。
当然、ここで手に入るとは思っていないので、何か参考になるものが無いかと来た訳だ。
「まあ、大体想像はつくぜ。そこの亜人のかわい子ちゃんの弓矢だろ。全く、あっという間に成長して、俺が見た事ない、とんでもない装備に全部変わっていやがる。余計な事教えるんじゃなかったぜ。」
主人はそうは言うものの、ご機嫌のようだ。
「ご明察どおりだ。ご主人も知っている思うが、弓は難しいみたいだ。いい素材=攻撃力が高くなる、って訳じゃなさそうだ。」
そう、スコットの弓の素材は、鉄でも聖銀でも無い。
特殊な木を用いているのだろうが、それが分らない。
多分、しなり具合を追求した素材なのだと思う。
ひょっとしたら、俺達の手持ち素材を加工したらできるのかもしれないが、ノーヒントじゃ厳しい。
「あんちゃんに以前売った奴は、『オークの木』ってのが素材だ。加工にひと手間かかるようだが、素材自体はうちにもある。ただ、噂じゃ魔物の素材で、それ以上のがあるそうだぜ。なんだったかな~、確か骨とか言いていたような。」
主人は記憶を辿ってくれているようだ。
「ふむ、この中にありそうか?」
骨と聞いたので、俺はスケルトンの骨をカレンに出させた。
スケルトンLv5、Lv10、そして、ラージスケルトンの骨だ。
ちなみに、スケルトンLv5の骨は既に加工できて、槍とかを作ることに成功している。
他の奴はまだ試していない。
「おう、多分だが、こんな感じの奴だと聞いた気がするぜ。なんせ、聞いただけだし、噂だし、保証はできねぇ。あ、少し思い出したぜ! 後、何か混ぜるらしい! 済まねぇが、これで参考になったか?」
「ふむ、カレン、どうだ?」
「まだ雲の中って感じっすけど、いいヒントみたいっす! とにかく、帰って試すのみっす!」
「まあ、そうするしか無さそうだ。ご主人、ありがとう。じゃあ、この中から選んでくれ。」
俺は、マイティーカレン、メデゥーサ、ユニコーンデビル、の魔核を並べる。
どれも、悪い効果では無いのだが、現状、余りそうな奴だ。
「相変わらず気前のいい勇者さんだ。じゃあ、遠慮なく頂くぜ。そうだな、こいつが良さそうだ。」
主人はメデューサの魔核を選んだ。
相変わらず、見る目がある。
この中では、最も深い層の奴だ。
「じゃあ、また何かあったら来るよ。」
「おう、あんちゃんには、十二分に儲けさせて貰っているから、何でも聞きにきてくれ。またな!」
俺達は武器屋を後にし、屋敷に戻る。
マリンに報告と、武器作成の為だ。
帰ると、マリンが口元を吊り上げて、出迎えて来た。
なんか、悔しい気もするが、こうなってしまっては仕方が無い。
「じゃあ、お前達は、工房の方を頼む。それで、マリン、その、なんだ。」
「分かっているざます。やっぱり、サラちゃんは逸材だったざますね。」
「どうやらそのようだ。そういう事で、サラちゃんを預かることになり、既に俺の奴隷にしてしまった。事後報告になって申し訳ない。それと、前から言っているが、彼女の無事を保証できないことも理解して欲しい。」
「いえ、サラちゃんが望んだことざます。頭を上げて欲しいざます! それに、私の娘がダンジョン攻略のお役に立てるなんて、私も嬉しいざます。」
「そうか。それならいいんだが。あと、屋敷はマリン一人で大丈夫か?」
「維持だけなら私一人で充分ざます。食事とかは、あの娘達にも手伝って貰うざます。」
まあ、そっちの方は特に心配はしていない。
何と言っても元侍女長だ。
俺はマリンを後にし、地下室の工房へ行く。
工房に入ると、全員揃っており、少々手狭だ。
最近では、ミレアが魔核の付与に成功しており、クレアも手伝いくらいなら出来るようになっている。
俺が居なくても、もはや完全に機能するので、嬉しい限りだ。
サラは、皆の作業を興味深く見守っている。
ふむ、なら、丁度いい。
あれを試すか。
「カレン、ミレアとサラちゃんを借りて行くぞ。少し試したいことがある。」
「了解っす。」
「はい、何でしょうか?」
「御供しますにゃ。」
「うん、ミレア、サラちゃん、ここじゃ危なくて出来ないんでな。ダンジョンに飛ぶぞ。」
俺は二人を連れて、ダンジョンの10階のワープの小部屋に飛ぶ。
そして、そこで、既に光らなくなった、ダンジョンの壁の光る石を広げる。
「ミレアはこれに魔法の効果を付与できるよな?」
「はい、【アイスガード】は成功しました。それ以外はまだ試していませんが。」
「うん、今度はこれに攻撃魔法を付与してみたい。そして、もし成功したら、サラちゃんがそれを魔物に投げるという構想だ。」
要はダイナマイトの魔核を敵に投げるのと同じ感覚である。
うまくいけば、敵の中心で炎の渦とかを出現させられるかもしれない。
「なるほど。それは面白そうですね。早速やってみましょう。」
俺は以前、【地獄の業火】を付与しようとして失敗している。
だが、あれは、魔法の力が強大過ぎて、石に入らなかったのではないかと踏んでいる。
すぐに二人で取り掛かる。
サラは横で作業を見守っている。
失敗すると危ないので、少し離れさせる。
ちなみに、サラを連れて来たのには、実験の為だけではない。
そう、以前の魔核付与に成功した実績を買って、この作業も、成功させてしまうのではなかろうかという期待がある。
「ファイアショットはいけるようですね。」
ミレアが石から炎を飛ばしている。
成功したようだ。
俺は闇魔法、【スリープ】を試す。
成功した感触はあるのだが、これは相手が居ないと確かめられない。
「ふむ、俺のはここじゃ判別できないな。じゃあ、サラちゃん、先ずはミレアの作った奴で試してくれ。」
「はいですにゃ。えっと、投げるだけでいいですかにゃ?」
「うん、最初はそれでいい。軽く投げてくれ。」
サラが壁に向かって投げたが、何も起こらない。
発動させるには気力を込めなければならないので、これは想定済みだ。
ミレアが落ちた石を拾ってくる。
「じゃあ、次は思いっきり投げてくれ。」
「了解ですにゃ!」
今度は壁に当たって、石が割れた!
そして、そこから炎の玉が出現した!
「こ、これは! アラタさん、流石です! 成功です!」
「うん、予想通りだ。これは使える! 事前に準備しておけば、その場で気力の消費無く、魔法を使えることになる! 問題は、硬い魔物でないと、成功しなそうなことかな。」
「面白そうですにゃ! 私もやってみますにゃ!」
良し! 食いついた!
思った通り、サラは、石への魔法付与を難なくやってのける。
低位の魔法ばかりだが、今はそれで十分だ。
俺とミレアは高位の魔法でも試す。
今度は、通路を降りて、スケルトンLv5で実験してみる。
結果、【ボルケイノ】はうまく行かなかったが、【ファイアトルネード】は成功だ。
魔物が炎の渦に飲み込まれる!
【スリープ】も問題無かったが、これは効果付きのダガーを投げたほうが、良さそうだ。
ただ、予想通り、ミレアの【お姉様のお仕置き】は、石が割れてしまって、付与すること自体ができない。
ファイアトルネードくらいまでが限度のようだ。
それでも、充分すぎると言えよう。
この階層の魔物なら、一撃だ。
また、風魔法は相性が悪いらしく、石には入るのだが、投げて割れた後の効果が安定しない。
「ふう、少し頑張りすぎたにゃ。気力切れですにゃ。」
サラが石への魔法付与の作業をしながら、へたりこんだ。
ステータスを確認すると、気力が5しか残っていない。
慌てて、今までに拾い集めていた魔結晶を持たせる。
魔結晶の赤い光が少し淡くなり、サラの気力が10まで回復した。
初めて試したことになるが、気力の2割程度までを自動的に回復させるようだ。
俺とミレアが【鉱石鑑定】のスキルを得た結果、現在、魔結晶は腐るほどある。
ちなみに俺は、魔結晶に【サイコドレイン】を使うことにより、実質の気力も無尽蔵と言える。
「よし、成功することも分かったし、実験はこれくらいでいいだろう。もう遅いし、帰るか。」
「そうですね。報告したら、皆、驚きますね。」
「私は帰ってからも頑張りますにゃ! 魔法込める作業、面白いですにゃ!」
「いや、サラちゃん、お前はまずは休め。」
まあ、魔結晶を持たせておけば大丈夫だろうが、とにかく彼女にはレベルの底上げが必要だな。
このままでは高位の魔法が使えるようになっても、すぐに気力切れしてしまいそうだ。
工房に戻ると、全員既に作業を終わらせていた。
全員どや顔だ。
まあ、こっちも同じだが。
「かなりのができたっす! ただ、これ、現在のサラちゃんには使えないかもっすけど。」
「ふむ、サラちゃんは、今休ませている。とりあえず見せてくれ。」
俺は、カレンが作った弓を引いてみる。
結構、硬い。
確かにこいつはある程度の筋力が無いと使えないだろう。
鑑定してみる。
サラの弓:攻撃力+85 特殊効果【攻撃力20%アップ】
スコットの弓の攻撃力が15だったことに比べれば、雲泥の差だ!
「うん、凄いじゃないか! サラちゃんには、レベルが上がるまでは今までので我慢して貰って、使えるようなステータスになったら、お前達がプレゼントしてやれ。きっと喜ぶぞ。」
「えへへ。ラージスケルトンの骨に鉄を混ぜてみたっす。そしたら、空きが二つになって、この性能っす!」
「空きには、あたしが【攻撃力20%アップ】と【攻撃力+60】を付けたわ!」
「私もおかげで、武器作成スキルがつきましたわ! これで、除け者にされませんわ!」
うん、いい感じだ。
リムもクレアもスキルアップしたようだし、何よりだ。
しかし、これは矢の方にも工夫できそうだな。
鏃にあの石をつけてみたらどうだろう?
等と考えながらも、ご褒美だ。
俺は全員にキスをしてやる。
今回はミレアが情熱的で、ヤバい!
「お食事の準備が出来たざます。誰か、サラちゃんをお願いざます。」
ふむ、母親一人でも完璧のようだ。
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