結果発表
結果発表
翌日、日が暮れる前に、皆は帰って来た。
幸い、誰も怪我をしていないので、ほっとする。
全員を応接室通し、報告を聞く。
「で、どうだった?」
「やっぱ、優劣は付けられないっす。」
「そうですね。お二方、まだまだ能力値的には、私達に及びませんが、すぐに追いつくでしょう。」
「耐性をつける作業でめげなかったのは、評価に値するわね。カレン姉様でも、きつそうだったのに。」
「流石に50階層の主には驚かれたようですわね。でも、お二人共、ちゃんとリムちゃんの指示に従って下さいましたわ。」
やはり予想通り、彼女達にも決められなかったようだ。
最初から、どちらも優秀な冒険者だとは分かっていたのだ。
どちらかを切る、という判断は辛いものである。
しかし、リムの『しごき足りない』は、耐性付けのことか。
あいつは、容赦しないから、かなりハードだったろうに。
でも、これなら、どちらかを切るにしても、いい土産にはなるだろう。
「ところで、ポランドさんと、カーンさんの意見はどうなんだ? 俺達のパーティーをどう見る?」
まずはセバン(ポランド)が答える。
「私は素晴らしいパーティーだと思います。特にリムさんのサポート魔法は凄いの一言でした。彼女のような人材が私達のパーティーに居てくれたらと、悔やまれます。」
次に、ポロック(カーン)も答えた。
「僕も同意見です。僕は、カレンさんの盾がこのパーティーの軸だと思いました。僕達の盾だったセバンには悪いけど、あの防御は誰にも真似できないんじゃないかな?」
ふむ、彼等も俺達のパーティーを気に入ってくれたようだ。
益々悩むな。
俺が悩んでいると、リムが聞いて来た。
「アラタ、どちらも入れないという選択肢は無いの?」
「ん? リム、今更だが、何でだ? 戦力が増えるのはいいことじゃないか?」
「ええ、それには異存は無いのだけれど、お二人は、やはりアラタのパーティーには合わない気がするわ。」
「ふむ、合わないという理由は?」
「う~ん、今はうまく言えないわ。そうね、質問させて。お二人は、何の為に危険なダンジョンに潜るのかしら?」
「私は強くなりたいからです。私が強ければ、リーダーを失うこともなかったでしょう。そして、強くなるには、ダンジョンが最適だからです。」
なるほど、セバンは盾職だったので、自分が守れなかったことを後悔しているのだろう。
「僕は名誉というか、生きた証が欲しいんです。ダンジョンの最深部まで到達した男という、称号が欲しいですね。」
ふむ、ポロックは、歴史に名を残し、自信の源にしたいのだろう。
どちらも、充分な理由だと思う。
「じゃあ、アラタは何故潜るの?」
ん? 俺に振るのか?
「前にも言っただろう。俺はダンジョンに潜って、この世界の真実とやらが知りたいだけだ。そして、俺はチート勇者だ。強くて当たり前。そんな俺に相応しい目的だと思っている。」
「そうね。あたしも、アラタの目的はいいと思うわ。そこで、アラタは気付かないかしら?」
あ~、なるほど。
リムの言いたかったのは、これか。
「分かった。俺とこの二人は目的が違うと言うことだな。だが、それなら、お前達はどうなんだ?」
「愚問ね。あたしは、そんなアラタを支えてあげたい。そして側に居たい。それだけよ。お姉様達も一緒じゃないかしら?」
相変わらず、ど直球だな!
思わずこっちが赤面してしまう。
「私は、最初は長野様への恩返しでしたが、今は違いますね。リムちゃんと一緒です。」
「私は、アラタさんとの最初の戦闘で決めてしまいましたわ。アラタさんを守ることが私の使命ですわ。」
「あたいも最初は、ダンジョンに潜りたかっただけっす。でも、いつの間にか、そんなことどうでも良くなったっす。アラタさんと一緒にいたいだけっす。」
思わず全員を抱きしめたくなるが、かろうじて堪える。
「分かったでしょ、アラタ。アラタの目的を達成させてあげるのが、あたし達の目的なのよ。」
うん、マリンの言った事、『俺を中心としたハーレム』とは、正にこれだったのだ。
そして、これに、ミツルとイオリの経験、『目的の違う、兵士や冒険者とは組めない。』が重なる。
奴隷の場合は、『主人の目的を果たす為に居る』という解釈なら、彼女達と一緒だろう。
そして、イオリの奴隷も、イオリに心底惚れていたに違いない。
考えて見れば、スコットもそうだった。
彼は、『俺』を守ろうとして死んだのだ。
結果としては、イオリを守って死んだ兵士と一緒だが、少し違う。
イオリの護衛は、それが名誉とか、仕事とかだったからで、イオリ個人に思うところはなかったはずだ。
そして、今、目の前に居る二人には、明らかに別の目的がある。
彼らの最も大事な物は、俺にはなり得ないだろう。
「うん、分かった。済まない。二人共ここまで付き合わせて、あげくにのろけまで聞かせてしまったが、こういう事のようだ。お詫びとして、今着ている鎧、カレンに渡されたのだろうが、それと併せて、俺が渡した帽子と靴も持って帰って欲しい。売れば、多分一財産になると思うが、二人ならそんなことをせずに、ダンジョンで活かしてくれると期待している。」
ダークウルフの帽子は、サラサに行けば手に入るだろうが、鎧と靴はオリジナルだ。
間違いなく、何処にも売っていない。
そもそも、付与した魔核が出回っていないだろう。
いずれも、最初からどのような結果になろうと、彼らに渡すつもりだったのではあるが。
「そうですか。私も自信があったのですが、残念です。しかし、本当に、この靴と鎧、頂いて宜しいのですか? この【防御力20%アップ】とか、【素早さ20%アップ】なんて効果、初めて見ましたよ?」
「理由は僕も納得しました。やはり、近衛様のパーティーは特殊なようですね。この装備一式、ありがたく使わせて貰いますよ。おい、セバン、これだけの装備を頂いたんだ。今度は僕達が中心になって、パーティーを集めよう!」
うん、それでいい。
いや、そうでなくては困る。
彼等には、今回得た、使わない魔核は全て持ち帰らせた。
まあ、俺達にとっては、目当ての魔核以外は、ゴミみたいなものだ。
それでも、売ればそれなりの金にはなる。
彼らは二人で話し合いながら、屋敷を去って行った。
「ということで、私の出番ですかにゃ?」
「そうざますね。イオリちゃんのお墨付きも頂いているざます。これはもう、サラちゃん以外は考えられないざます。」
出たな! スワレンファミリー!
「しつこいようだが、俺にその気は無い! 大体、基礎が出来ていないだろう。俺とリムは別として、カレン、クレア、ミレアは、元冒険者だ。」
「じゃあ、その冒険者になる前は、どうでしたかにゃ? 生まれた時から冒険者だなんて言わせないですにゃ!」
ぬお!
相変わらず、こういう小知恵は回りやがる!
「とにかく勘弁してくれ。その代わり、約束する。もし、このままのメンバーではきつくなった時、その時は必ずサラちゃんにお願いしよう。それでどうだ?」
「仕方無いですにゃ。約束ですにゃ。神様に、強い魔物を出してもらうように、お願いしますにゃ。」
いや、それ、本末転倒だろ!
ところで、この世界の神様ってなんだろう?
「ふむ、神様で思ったのだが、この世界に宗教とか、あるのか?」
「アラタは知らなくて当然よね。教えてあげるわ。」
リムの話によると、この世界で一般的に信仰されている宗教は、二つあるらしい。
一つはこの世界では古くからある、日本神話のような宗教。
土地神とでも言うべきか、作物の豊穣の神様とか、山の神、海の神。変わったところでは、髪の神とかもあるらしい。
祈れば生えるのか?
もう一つは新興宗教とでも言うべきか。
この世界にダンジョンが出現してから、急速に広まった宗教、アウガル教。
詳しいことはリムも知らないそうだが、何でも、昔の神様に取って代わって、この世界を支配し、人間にダンジョンという試練を与えているそうだ。
後者のいきさつからすれば、この二つ、対立しそうなものだが、双方、争いが起こるほど狂信的なものではなく、皆、なんとなく、ありがたがっているという感じらしい。
信者数も、半々くらいのようだ。
ちなみに、帝国の祭り事はアウガル教だ。
だが、祭祀長であるイーライを見ている限り、司祭というよりは研究者だ。
何よりも、皇帝の配下だしな。
まあ、そんな宗教もありなんだろう。
俺の世界のように、教会が力を持ちすぎて、戦争とかが起こらないのならば、それに越した事は無い。
その後の夕食は、昨日、イオリにべた褒めされてなのか、ご馳走だった。
以前、カレンが釣った魚が出される。
もっとも、釣ったというよりは、狩らせたが正しい表現か?
夕食後は恒例の一家団欒バスタイム。
さっきのリムの影響が抜けていないのか、今日は、皆、積極的だ。
まあ、三日ぶりだしな。
だが、ここでいたす気は無い!
俺は、気を逸らすために、サラの話をする。
「皆は、サラちゃん、どう思う? 魔法が使えて、イオリの話によれば、冒険者として、逸材らしい。」
「確かに、あたいら亜人で、魔法を使える奴は滅多にいないっすね。」
「長野様が言うなら、きっとその通りなのですわ。」
「年齢は関係ないですね。逆に、若いうちから鍛えれば、最終的な能力も高くなります。」
「あたしは、サラちゃんの気持ち次第だと思うわ。あの娘が、本当にアラタが好きなら、気が付いたら一緒に潜っている気がするわ。」
ふむ、特に反対意見は無しか。
まあ、今の所は連れて行く気も無いし、必要も無いだろう。
サラの祈りが届かないことを祈ろう。
彼女は、侍女として満足の行く仕事をしてくれている。
それだけで十分だ。
その晩は、普段はマリンの指示があるのだが、今日は特に無い。
なので、俺の寝室に行くと、リムとミレアが待っていた。
「あんな事を言わせた責任は取って貰うわ!」
「私も、その・・、我慢できなくなりました。」
ふむ、そういう事か。
すると、クレアとカレンまでがやって来た!
俺もあの事を思い出して、火がついてしまった!
結局、クレアの魔法を受け入れてしまい、全員相手に頑張ってしまう。
翌朝、マリンが気を利かせたのか、朝、起こしには来ず、全員で風呂に入ってからの、何とも遅い朝食となった。
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