イオリ、来襲!
イオリ、来襲!
翌日の朝、彼女達は一旦帰ってきた。
だが、魔核を置いてすぐに、ダンジョンにとんぼ帰りする。
リム曰く、『まだまだしごき足りないわ。』だそうだ。
別に、彼らの適性を見たいだけで、今、鍛えるつもりは全く無いのだが。
入れ替わりに、ミツルのパーティーがやって来る。
こいつらも、魔法書と鍛冶師の本を返しに来ただけで、これからダンジョンに行くそうだ。
ミツルは順調のようで、次はシスの40階層だと息巻いている。
猪突タイプのミツルなら、既に50階くらい行っていそうだったので、聞いてみると、皇女が慎重らしい。
ふむ、尻に敷かれたか。
まあ、全くの素人を組み入れてのパーティーだ。
色々とやることも多いのだろう。
耐性の付け方や、魔法のヒントを与えると、飛び出して行った。
その後は工房に籠って、今度は色々な素材を試す。
あいにく、今までで試した以上の結果は得られなかった。
サラが来たので、そろそろ夕食かと思ったら、違うようだ。
「勇者長野様が、お見えになられましたにゃ。」
これには驚いた。
イオリの方から会いに来てくれたのは初めてだ。
というか、そもそも、顔を合わす事自体が、まだ二度目だ。
慌てて応接室に通す。
「やっほー、久しぶりだね。アラタ。」
「イオリこそ一体何をしていたんだ? 帝都の屋敷にも居ないらしいじゃないか? ダンジョンに籠っているようでもなさそうだし。」
「う~ん、居場所は秘密。僕が何をしていたのかも秘密。うん、いい匂いだね。今から夕食かな?」
「サラちゃん、イオリの分も頼む。」
「はいですにゃ。」
しかし、イオリは何をしに来たのだろう?
まさか、晩飯にありつく為だけとか言わないだろうな。
「で、今日はいったい?」
「うん、アラタの想像通り、晩飯をたかりに来た。」
ぐはっ!
「それは構わないが、たかるなら、カサードさんの方がいいだろ? あっちは王宮料理だぞ! まあ、会いに来てくれて嬉しいけど。」
「いや~、城の元侍女長がこっちに来ているからね。やっぱり、マリンちゃんのが最高だよ~。」
ぶっ!
この人、何故そこまで知っている!
まあ、カサードとも仲良さそうだし、そういうことも話したのかな。
「ところで、アラタには感謝しているよ。橘君、いい感じじゃないか。」
「あ~、ミツルのことか。最初はどうしようもない奴だと思ったが、俺に負けてから、とても素直になった。あの調子じゃ、次期皇帝もありえるな。」
「うんうん。彼は元々素直だったんだけど、共和国の連中に持ち上げられちゃったからね~。僕も手は出せないし、どうしようかと思っていたところに君だよ。」
ん?
ひっかかるな。
「え? 手は出せないって? イオリがその気になれば、共和国ごと滅ぼせるだろう? 俺の魔法だって、ダンジョン以外で撃ったことはないが、帝都の城くらいなら、数発で灰にできると思う。」
「あ~、ごめん。それも答えられない。でも、アラタならすぐに分かるよ。もう80階でしょ? 後少しじゃないか。」
「う~ん、なんか、イオリは秘密の塊だな。まあ言えないなら仕方ない。だが、こっからが大変そうだよ。階層主も、なんか知性があってやり辛い。」
「きゃははは、あれはね~。あっと、ごめんよ。これも言えないな。でも、気にしなくていいよ。所詮は魔物だから。人間と違って、魂は無いよ~。うん、このくらいなら大丈夫なはず。」
「そうなんだ。俺がダンジョンの魔物を狩るのは、俺の為であって、魔物からすればいい迷惑だろうな、と思ったからね。」
「うんうん、問題無いよ~。安心して狩っちゃって。お、食事が出来たようだね。マリンちゃん、久しぶり~! 相変わらずの美人さんだね~。」
「イオリちゃん、ご無沙汰しているざます。今はアラタ様にご厄介になっているざます。はい、お食事の準備が整ったざます。」
イオリは、マリンとも面識があるようなので、4人で食事をする。
サラが質問の嵐を浴びせるが、イオリはダンジョン内の事とかは、はぐらかして行く。
ふむ、何らかの制約がかかっているのは間違いない。
100階まで行った者だけに与えられる、義務のようなものか?
ただ、魔物とかのことは教えてくれなかったが、パーティーのこととかは喋ってくれた。
彼女も最初、城の兵隊が護衛についたそうだが、全く使えなかったらしい。
全員、名誉の為とか、昇進の為とかで潜っているのだから、ある意味仕方無い。
潜る目的が違うのだ。
ある者は彼女の盾になろうとして死に、ある者は己の分をわきまえず、突っ込んで死んだそうだ。
冒険者も試してみたが、大抵の奴は、基本的には金目当て。
自分の能力を過信しないのはいいが、危険も冒さない。
なので、深い層に行くとなると、断られたそうだ。
おまけに、彼女の素体は、見た通り美人なので、妙な気を起こす奴も絶えなかったらしい。
うん、ミツルも似たような事を言っていたな。
この話で、今回の、セバンやポロックのような奴は、滅多に居ない事を思い知る。
そうして、イオリが辿り着いた結論は、命令に逆らわない、奴隷を使うことだ。
俺の場合は、最初からクレアとミレアが進んで奴隷になってくれたおかげで、かなり恵まれていたのである。
「ところで、奴隷で思い出したが、クレアと、ミレア。あいつらの【特殊な】スキルの出元は、イオリ、あんただろう?!」
「きゃはははは! ばれちゃったようだね~。まあ、僕だって人間だしね。それなりの欲は人並みにあるよ。男を入れると面倒だったんだよ~。まあ、彼女達は正式なパーティーじゃなかかったけどね~。勿論、アラタ君ならいつでもOKだよ~ん。」
「既に4人も居るんだ! 遠慮させてくれ。」
どうもこの人と居ると、ペースを崩されっぱなしだ。
予期した通り、これを聞いて、サラが噛みつく。
「え? 長野様とアラタさんって、そういう関係なのですかにゃ? これは全員に相談する必要がありますにゃ!」
「サラちゃん、誤解だ! この人は冗談を言っているだけだ! お互いその気はない!」
「え? 僕はいつでも本気だよ~。何なら今から。」
「アホ! 今日を含めて、まだ二回しか会ってないんだ! 勘弁してくれ!」
「まあ、僕は会って二回って感じがしないんだけどね。今回のところは、サラちゃんに譲るよ。そうだ、サラちゃん、君の才能は特殊だよ~。アラタと組んで頑張れば、リムちゃんを抜けるかもね。」
ん? どういう意味だ?
リムは、俺と同居していた結果、勇者並みのステータスのはずだ。
確かに亜人の攻撃系統の伸びの良さは、カレンで実証されている。
だが、カレンは魔法関連はからっきしだ。
あ~、そういう事か。
サラは、滅多に居ない、魔法の使える亜人なのだった。
しかし、何故、リムのステが俺の仲間の中で最高だと知っている?
そもそも、イオリはリムとの面識は無いはずだ。
そして、さっきから気になっていたが、サラに対しても、既知のような喋り方をしている。
イオリとサラは、お互い自己紹介していたから、今日が初対面のはずだ。
ならば、何故、サラが魔法を使えると知っている?
相変わらず、謎だらけの人だ。
「本当ですかにゃ?! 私、頑張りますにゃ!」
まずい!
サラの新メンバーの話が再燃しそうだ!
「イオリ、悪いが、この娘を焚き付けないでくれ。俺は、サラちゃんをダンジョンに連れて行く気は無い!」
「うんうん、アラタが嫌なら、無理に連れて行く必要は無いよ。でも、これくらいは教えてあげたかったんだ。灯台下暗しってやつをね。」
本当に全て見透かされている気分になる。
この言い方だと、俺が新メンバーの選考をしていることも、知っているかのようだ。
その後、カサードの裏話とかで盛り上がり、イオリは帰って行った。
本当に何をしに来たのだろう?
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