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22歳♂ 何故か女の体に転生しました。  作者: BrokenWing
第二章
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サラの資質

        サラの資質



 翌朝、早速彼らが来たと、サラがリビングに駆け込んで来た。

 既に、皆の準備は整っている。

 彼等には、玄関で待って貰い、最後の伝達だ。


 俺は、普段着けている、素早さ20%アップ、攻撃力20%アップ、魔力20%アップの効果の付いた首輪を、リムに預ける。


 【弱体化の拳】も渡そうとしたが、接近戦はするつもりがないようで、断られた。

 【三重苦のナイフ】も、特に隠すつもりはないのだが、あまりの効果なので、楽でき過ぎてしまうと、こいつも、断られる。

 もっとも、どの魔物にどの効果が効くかは既に知っているので、他の武器で充分代用できるのだが。


「アラタさんは、もう少し一般的な冒険者の装備を知ったほうがいいっす。こんなチート装備している奴なんて、あたいらだけっす。」

「それに、あたし達が居なくても、アラタが自分の身を守れる、最低限の装備は持っておくべきよ。まあ、今のアラタには、伝説の長野さんくらいしか、敵わないでしょうけど。」


 ふむ、彼女達の本音は、リムが纏めてくれたようだ。

 自分達よりも、俺のことを案じてくれている。

 その気持ちは嬉しいのだが、やはり、気になる。


 子供をお使いに出す、親の気分か?

 どうしても、あれもこれもと持たせたくなってしまう。


「あと、あの変な名前の範囲魔法は、あまり使うなよ。真似されて広まると、あの呪文が正式なものとして定着してしまうぞ。」


 もっとも、魔法の本質を知らない他人が、あの呪文で成功するとは思えないが。


「大丈夫です。お姉様にも小声で唱えるように言われてしまいました。」

「私の愛を隠す必要はありませんわ。でも、命令なら我慢しますわ。」


「ふむ、じゃあ、くれぐれも気を付けてな。ミレアは、テレフォンで報告頼むぞ。」

「「「「はい! 行ってきます!」」」」



 彼女達を送り出した後、俺は工房に籠る。

 家の中が一段落したのか、サラが俺の背後霊となった。

 魔核の付与の作業が物珍しいのだろう。


「それ、私でもできますかにゃ?」

「う~ん、どうだろう。差別する訳じゃないが、亜人には難しいかもしれない。カレンは、鍛冶師としては一流だが、この作業はできないみたいだ。」


 危うく、試して見るかと言いかけて、昨日のマリンの言葉を思い出す。

 いかん!

 この娘をこっちの世界に関わらせてはダメだ!


 しかし、彼女は、俺の考えなんざ知らない訳で。


「やってみたいですにゃ! 私でも出来るかもしれないですにゃ!」

「まあ、無理とは言わないが、難しいと思うぞ。」


 遠回しに否定するが、彼女はお構いなしだ。


「やってみないと分からないですにゃ!」


 う~ん、仕方無い。

 俺は、最初に成功したパターンである、鉄のダガーとゴブリンの魔核を取り出す。

 カレンですら成功しなかったのだ。

 これで諦めてくれることを願うのみ。


「この魔核の中身に自分の気力を込めて、このダガーに移す感じだ。慣れれば簡単だが、その感覚を会得できるかは、個人差があるから、失敗しても気にするな。」

「はいですにゃ。じゃあ、やってみますにゃ!」


 ぬお?


鉄のダガー:攻撃力+6


 成功しやがった!

 ちゃんと、魔核の効果、攻撃力が+1されている!

 

「凄い! サラちゃんは、魔法の才能があるのかもしれない! 初めてで成功するなんて!」

「てへ。出来ると思えば、出来るのですにゃ!」


 亜人は、魔法に関する事は苦手だと思い込んでいたが、これは改めねばならないようだ。


「ところで、サラちゃんは、魔法とかは使えるのかな?」

「水魔法なら、得意ですにゃ。お風呂を入れる時、便利ですにゃ。」


 なんと、魔法も使えるとは!

 なんか、マリンの言葉の重さが増してくる。


 いや、ダメだ!

 ここはこれで打ち切るべきだ!

 彼女をダンジョンになんか、連れて行けない!


「私の言った事に、嘘はないざます。サラちゃんは冒険者としても優秀な素材ざます。混血だからでしょうか。亜人には珍しく、魔法の素質もあるざます。」


 マリン! いつの間に!


 確かに、亜人としての攻撃系の伸びに加えて、魔法まで使えるとなれば、冒険者としては一流になれる可能性が高い。

 まあ、詳しい事はカレンにでも聞かなければ分からないが、魔法関連の才能は間違いなくある。

 魔核の付与には、リムだって苦労したのだ。


「だが、マリン、昨日も言った通り、俺にその気はないぞ。」


 しかし、マリンの口元が大きく吊り上がる。

 これは、勝ち誇った時の表情だ!


 サラは、きょとんとしている。

 話題が理解できていないようだ。


「大体、マリンも可愛いサラちゃんを、危険なダンジョンなんかにやりたくないだろう? 現に俺の仲間は一人死んでいる。今日の連中だってそうだ。あいつらも、仲間を失った結果が今回の就活だ。」

「あの方達のパーティーになら、サラちゃんは入れないざます。アラタ様のパーティーだからざます。あの娘達を見ていれば分かるざます。今日だって、ピクニック気分ざます。」


 確かに、今日の目的地は一度クリアした階層だから、彼女達にしてみれば楽勝モードだろう。

 だが、不測の事態は常にある。

 危険な事には変わりない。


「大体、俺のパーティーに入るということは、俺の奴隷になるという事でもあるぞ。何を好き好んで、そんな無茶。」

「アラタさんの奴隷なら構わないですにゃ。」


 ぐはっ!


「いや、サラちゃん、そんな問題じゃない。君はここで安全に暮らしていればいい。ダンジョンなんかに潜る必要は全く無い!」

「アラタさんのお側に居たいですにゃ。そこがダンジョンだって気にしないですにゃ。」


 こいつもか!

 しかも、マリンと何の話をしていたか、完全にばれたようだ。

 まあ、ここまで言えば、アホでも分かるか。


「いや、今だってこうして側に居るぞ。とにかく、ダンジョンは危険だ。俺はサラちゃんをパーティーには入れない!」

「サラちゃん、ここは一旦退くざます。感情的になった殿方には、何を言っても無駄ざます。」

「はいですにゃ。でも、もし人数を増やすのなら、私も立候補しますにゃ。」


 嵐は過ぎ去ったようだ。


 その後、魔核の付与の作業を終了し、マリンとサラ、三人で夕食となったが、危惧していた、新メンバーの話にはならなかった。


 食後、久しぶりに一人で風呂に入る。

 いつも賑やかなバスタイムだったので、こうなってみると、広い風呂も何か落ち着かない。

 根が小市民なので、仕方ないな。

 意地になって、貸し切り気分を満喫しようとしていると、ミレアから連絡が入る。


「今は39階層です。これから野営します。」

「そうか、お疲れ様。皆、無事か?」

「当然です。カレンさんがうまくルートを選定してくれるので、彼等も安心しているようです。」


 ミレアの話によると、セバンは盾役もできる剣術使い。

 この階層の魔物でも、充分に盾役として働いてくれるようだ。

 だが、盾役は安定しているカレンに譲り、専らクレアと共に、攻撃に回っているそうだ。


 また、ポロックは弓による、援護射撃の名手。

 スコットに勝るとも劣らないらしい。

 スコットの場合、俺のパーティーに居たことにより、普通の冒険者よりも、成長がかなり早かったはずだ。

 それを考慮すれば、彼らの熟練ぶりが伺える。


 そして、俺が渡した防具もかなり役に立っているらしい。

 特にこの階層には、炎を吐きまくるファイアウルフが居るので、火耐性のある【ダークウルフの帽子】は欠かせない。


 魔法に関しては、セバンが土と回復、ポロックが闇に適性があったとのことだ。

 セバンにはリムが、ポロックには俺が教えれば、かなりの戦力になるはずだ。


「ふむ、問題無いようで何よりだ。最初の目的は次の階層主、ダブルジャイアンの魔核だから、それを狩った後は、リムに任せると伝えてくれ。一旦帰るもよし。そのまま50階まで行くもよしだ。」


 ダブルジャイアンの魔核は【防御半減】効果があるので、是非ともクレアの槍にと思っている。

また、次の40階層から下の魔物、ドリルモグも、【素早さ10%アップ】という優れた効果がある。


「かしこまりました。リムちゃんに伝えておきます。では、失礼します。」


 その晩、一人で寝ようとしていると、ノックが入る。


「一緒に寝たいですにゃ。」

「アホ! 一人で寝ろ!」

「酷いですにゃ! これでも許婚者ですにゃ! このチャンスを・・・、いや、何でもないですにゃ。」


 全く、どいつもこいつも。

 この屋敷には、ピンクのオーラでも溢れているのだろうか?


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