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22歳♂ 何故か女の体に転生しました。  作者: BrokenWing
第二章
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喋る階層主

       喋る階層主



「じゃあ行くぞ。遂に80階層だ。準備はいいな?」

「はいっす。リフレクトシールド、装備したっす。」

「囮の玄武も2体、ちゃんといるわよ。さあ、ついてきなさい。」

「野営の撤収、完了しました。ラインの杖、持ちました。」

「槍は沈黙効果のに変えましたわ。」


 あれから、一日半。

 俺達は、現在79階層で野営を引き払ったところだ。

 俺を先頭に、ぞろぞろと80階層への通路を降りて行く。


「シースルー!」

「魔物は5体のようですね。恐らく階層主一体と、ピンクドラゴン、玄武、カバーエンジェル、ストレイトピッグですかね?」

「うん、ミレア、今確認した。お引きは前回同様、ここまでに会った奴4種類だ。階層主は、頭が豹のような奴だ。でもって、身体が人型。手にかぎ爪みたいなのを装備している。」

「攻撃力重視の魔物のようね。」

「リム、決めつけると、外れた時が面倒だ。俺もそう思うが、とにかく油断せずに行こう。打ち合わせ通りだ。」

「「「「はい!」」」」


「じゃあ、行くわよ。ダブルプロテクト!」


 リムが囮玄武一体に防御力倍増の魔法を唱える。


「次は私ですね。アイスガード!」


 ミレアが更に炎耐性の魔法をかけ、これで囮の防御は万全だ。

 暫くは耐えてくれるだろう。


「開けるぞ!」

「ええ! じゃあ、あなた、行きなさい!」


 俺が扉を開けると同時に、強化された玄武が、のそのそと入っていく。

 俺達は扉の陰から中を覗う。


 早速、中のお引きが囮玄武に反応した!


「おいおい、俺様相手にそらねぇだろ? お前も勇者なら、囮なんか使わずに正面から来いよ。相手してやっからよ。全く、創造主もこっちの身にもなれってもんだ!」


 なんと、階層主が喋りやがった!

 喋ったのはこれで2種類目だな。

 最初は50階層の主だったが、こいつも知的タイプなのか?

 当然、こいつの挑発に乗る訳には行かない。


「悪いな。こっちも仲間の命背負っているんで、そうは行かないんだ。だが、その創造主とやらには興味あるな。」

「そうかい。だが、詳しい事は俺も知らねぇ。まずはその場違いを消すか! 縮地!」


 何と、豹頭は囮玄武の前に、一瞬で間合いを詰めた!

 そして、かぎ爪が振り下ろされる!


「チッ、あの爪には解除効果があるようだな。囮が明滅しなくなった。というか、死体に戻ったぞ。」

「じゃあ、あたしの強化魔法はお預けね。」

「だな。それ以外は、手筈通りで!」

「はい! ファイアショット!」


 相手に反射の魔法がかかっているかを調べる為に、まずは、ミレアに軽めの魔法を唱えて貰う。

 だが、奴は軽く躱す。

 ふむ、避けるという事は、反射の魔法はかかっていないと見ていいな。


「おいおい、そんな悠長なことしてていいのかよ? 俺は小細工が嫌いなんだ! 全力で来やがれ! 縮地!」


 げ!

 いきなり目の前に豹頭が現れた!

 まあ、最初の瞬間移動で予測はついていたが、扉の外にまで出て来るのは想定外だ!

 こうなれば、お望み通りにするしかないな!


「こいつの相手は俺がする! お前達はお引きを頼む! ハイスタン!」

「「「「はい!」」」」

「そう来なくっちゃねぇ~。じゃ、行くぜ!」


 【ハイスタン】は効いていないようで、かぎ爪が俺に向かって振り下ろされる!

 普段の魔物相手になら、その気になれば全て躱せるのだが、これは避けられない!

 小手でかろうじて防御する!


「かってぇなぁ~! だが!」


 今度は蹴りを放ってきた!

 正確に俺の金的を狙って!


 蹴りの方が若干遅いようだが、それでも凄い速さだ!

 俺は咄嗟に右に飛ぶ!


 その隙に仲間は全員部屋の中に駆け込む!


「挑発!」

「落雷!」

「お姉様のお仕置き!」

「五点連穿!」


 うん、お引きの方は大丈夫だろう。

 あいつらの全力の攻撃なら、そう時間はかからないはずだ。

 なら、俺はこいつに集中だ!


「お望み通り、タイマンだな! 喰らえ!」


 俺はお返しとばかりに、奴の金的(あるのか分からんが)に蹴りを放つ!


「当たらねぇなぁ~。」


 チッ、避けられたか!

 俺が攻撃を外したのは、初めてではなかろうか?

 とんでもない素早さだ!


 豹頭は、今度は俺の顔面目掛けて、右手の爪を振る!


「させるかよ!」


 確かに凄い速さだが、見えないことはない。

 格闘術スキルのおかげか、身体が勝手に動く!

 俺は左手の小手でその攻撃を受け、更に右回し蹴りを放つ!

 

 綺麗に入った!

 奴は壁に吹っ飛ぶ!


 が、奴はすぐに態勢を立て直し、隙を無くし、俺を睨みつける!


「全く、勝てる気がしねぇよ。お前が退いてくれるんなら、俺様は追わねぇ。どうだ?」


 まさか交渉までしてくるとは!


「奥の扉を開けてくれるのなら、俺はそれでも構わないが?」

「あ~、そいつは無理だ。あの扉は俺様が死なないと開かねぇらしい。」

「じゃあ、決裂だな。悪いが死んで貰う!」

「そのようだな。俺様も死にたくは無いんでな! 最後まで相手してやらぁ!」


 豹頭は、言い終わるとすぐに突進してきた!


「縮地!」


 今度は俺が奴の真横に瞬間移動する!

 効くとは思わないが、三重苦のナイフで斬りつける!


「ケッ! なんか面倒な効果つけてるようだが、俺様にそんな効果は効かないんだよ! だが、いい攻撃だ!」


 奴はすぐさま間合いを取る!

 見ると、脇腹から真っ赤な血を流している。


 現在の俺の攻撃力は特殊効果とかを含めると、軽く1000を超えている。

 只のナイフでも、必殺の武器になる。

 もっとも、素手でも同じだが。


「縮地!」


 再び奴が俺の横に瞬間移動してきた!

 俺の腋腹目掛けて爪が来る!


 今度は避けられなかった。

 というか、わざと喰らった。

 鎧が引き裂かれ、腋腹に爪が食い込む!


 だが、思った通り、そこまでのダメージはない。

 俺のとんでも無い、1000を超える防御力のおかげだ。

 耐えられない痛みでは無い!


 俺はその腕を取る!


「縮地合戦は終わりだ!」


 俺はそのまま腕を極め、へし折った!


「うぎゃ!」


 奴は悲鳴を上げ、距離を取ろうとするが、そうはさせない!

 折った腕を離さず、態勢の崩れたところを足を払う!


「ケッ!」


 奴はそれでも身体を捩じり、俺にかぎ爪を振るう!

 だが、俺が腕を引っ張った結果、空振りに終わる。


 そして俺が腕を離すと、支えを失った豹頭は、あっけなくこけた。


「隙だらけだぞ!」


 俺は、必死に起き上がろうとする豹頭の背中に膝を落とした!


「うぼっ!」


 これは効いたようだ。

 骨の折れる感触が伝わる。


「止めだ!」


 奴はもはや虫の息だが、俺は躊躇わず、全体重を肘に乗せ、首に打ち下ろす!

 再びゴキッという音がした。


 そして、部屋の奥では扉の開く音がする。



「こっちも片付けたっす。」

「流石はアラタさんですわ。階層主を一対一で仕留めるなんて。」

「お疲れ様でした。」

「でも、アラタ、一人で相手するなんて無茶は止めて欲しいわ。」

「まあ、全員無事で良かった。俺の傷も大したこと無い。それに、あいつの相手は多分俺でないと厳しかったと思う。」


 うん、今思えば、あいつの素早さにはカレンやクレアでは太刀打ち出来なかっただろう。

 かろうじて、リムなら何とかと言う所か?

 範囲魔法でも、あの縮地を使われたら、当たったかどうか怪しいものだ。


 しかし、ああいう、こっちの言葉を理解する相手とやるのは、何とも後味が悪い。

 盗賊相手の時は、向こうから襲ってきたので、何とも思わなかったが、今回の奴は少し違う。

 なんか、仕方なく俺達の相手をさせられたような感じだ。


 それに、創造主って何だ?

 この世界の神様か?


 俺が考え込んでいると、皆が魔核を回収し終わったようだ。


「それで、また命名タイムよ。アラタ一人でやっつけたのだから、今回はアラタに譲るわ。」

「う~ん、とにかく素早かったからな。『スピードスター』でいいだろう。」



 ワープの小部屋で登録を済ませ、屋敷にテレポートする。

 俺達が今日帰ることは、既にマリンにテレフォンで伝えてある。

 屋敷の扉を開けると、サラが俺に飛び込んで来た。


「アラタさん、あの魔物の攻撃を躱せるのに、何故サラちゃんは避けられないのですか?」

「そうね、ミレア姉様。これはアラタにもその気があると見ていいようね。」


 俺は再び唇を奪われていた。


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