躍進するカレン工房
躍進するカレン工房
「なので、サラちゃんは今まで通り! 16歳になってから、もう一度良く考えよう。」
「あたしも我慢したのだから、当然よ!」
おい、リム、お前はたったの2日だろ。
「納得いかないですにゃ! 私も一緒に入るですにゃ!」
現在、俺達は夕食を済ませ、風呂場の前で、恒例のサラつまみ出し合戦を演じている。
「サラちゃん、ここは従うざます。4年間で、アラタさんを独り占めできる技術を教えてあげるざます。あの娘達はそのうち子供を作るざます。そうなれば、夜の相手は貴女だけざます。」
ぬお!
元侍女長、怖いぞ!
しかし、これは本当に参った。
自業自得だが、現在ですら限界だ。
これ以上増えるのは流石に無理だ。
大体、10歳年下だぞ?
まあ、肉体的には6歳の差だが。
そしてロリ枠はリムで打ち止めだ!
皆と湯船で寛ぎながら、俺は聞いてみた。
「全く、俺の何処がそんなにいいんだ? サラちゃんとは、それ程接点が無かったはずだが?」
「アラタさんの武勇伝は、城では有名でしょう。召喚されて僅か一週間で、他国の勇者を屈服させたのです。少しは自覚して下さい。で、リムちゃん、そこ譲って欲しいです。」
「そうっす! おまけに二人がかりの先輩勇者まで退け、ナガノさん以来の深層到達。あたいもめろめろっす!」
う~ん、そう言われればそうなのかもしれない。
「マリンちゃんの見る目は確かなようね。ここは陛下に頼んで突き返すべきかしら? そして、ミレア姉様、この場所はあたしの指定席よ。」
おい、リム、突き返すとか物騒だぞ。
しかも、こいつなら口先三寸でやってしまいかねない。
「現状、俺はあの母娘に不満はない。実際、とても助かっている。なので、それは無しだ。」
俺は、不謹慎な事を言った罰として、リムを膝の上から引き剥がす。
待ってましたと、ミレアが滑り込んで来た。
「なるようになりますわ。サラちゃんはいい子ですわ。」
うん、サラがいい子なのは全員一致だ。
後4年もある。
クレアの言う通り、なるようになるだろう。
風呂から上がると、お待ちかねのカレン工房だ。
今回はクレアとミレアも参加し、色々と試させる。
回復系の石は重宝しそうなので、もしクレアが成功するなら、俺の負担はかなり減る。
石に魔法を込める時、普段使うのよりも少し多めに気力を消費するからだ。
という事で、カレンとリムは新素材への挑戦。
クレアとミレアは魔核の付与の練習。
俺は今まで判明していない魔核の確認だ。
階層主の魔核は貴重だが、付けて見ないことには分からないので、片っ端から付けてみる。
「ふむ、使えそうなのは、ファイアナーガの【火耐性中】、ビートルマンの【知力10%アップ】、ダブルジャイアンの【防御半減】、アラクネの【素早さ半減】、ストーンゴーレムの【魔法防御10%アップ】、メデューサの【石化】、くらいかな。」
「やはり、階層主のは有用なのが多いですね。」
「そのようだな。だが、ビートルマンの【知力10%アップ】は惜しいことをした。2つ合成してから付与するべきだった。後1個しかない。」
とは言え、実験には全てダガーか鉄の鎧を使っているので、そこまで惜しいとは思っていない。
失敗作は売って、新しいのを買えばいい。
効果がついているので、それなりの値段で売れるはずだ。
「魔核はまた潜れば手に入るっす。効果が分かっただけで充分っす。低階層の奴なら、冒険者に依頼を出すのもありっす。」
「ふむ。それはいい案だな。金には特に困っていないしな。」
必殺、金に飽かせて買い漁る作戦だ。
相場のバランス?
もはや知ったこっちゃないね。
この世界に来てから、奴隷を売買したり、口止め料を払ったり、道徳観がすり減って来ているな。
「アラタさん、やりました! 見て下さい!」
ミレアがダガーを持って来た。
「ぶっ! これの元は何だ?!」
凄いダガー:攻撃力+35
「そこに転がっていた奴です。多分、ストーンゴーレムです。」
「ストーンゴーレムの魔核は、確か【魔法防御10%アップ】のはずだぞ? 何故に攻撃力が+30?」
「あ、それ、多分、武器屋の親父が言ってた奴っす。付ける装備によって、効果が違うって奴っす。」
ふむ、確かに俺が試した時は鎧だ。
それで、武器だと効果が違うと。
俺の場合は、大体効果に予測をつけてから試している。
ストーンゴーレムは硬かったから、多分防御系だと、たかをくくっていたのも事実だ。
「なるほど、面白いな。しかし、全部試すのは流石に大変だし、階層主のは数が無い。これから手に入る奴は、注意するという事でいいか。しかし、ミレアが成功したのはでかいな。」
ミレアは、これでもかと薄い胸を張っている。
「そうですわね。しかし、ミレアに先を越されたのは悔しいですわ!」
「まあ、クレアも魔法が使えるのだから、そのうち出来るようになるはずだ。今日はもう寝よう。」
「「「「は~い。」」」」
寝る前に水分補給をと、リビングに行くと、マリンがお茶を淹れてくれた。
「ありがとう。じゃあ、マリン、おやすみ。」
「はい、おやすみなさい、アラタ様。それで今日はカレンちゃんざます。」
ぶっ!
大奥取締役、ぶれんな。
俺はいそいそとカレンの寝室に向かう。
翌日は朝から地下室に籠る。
魔核はあらかた調べたのだが、【コノエノホマレ】の魔核だけは何故か付与できず、効果が分からない。
過剰に付与した場合は、武器も魔核も壊れるのだが、両方残っているということは、物理的な理由ではないはずだ。
もっとも、この魔核だけは、何が付くか全く予測できず、成功する自信が無かった。
名前に抵抗があったのも事実だ。
これをオークションで手に入れた、カサードに聞いてみようかとも思ったが、お忍びで落札していたこともあり、遠慮した。
それに、カサードの魔核コレクションの目玉になっているだけだろうし。
「アラタ、貸してみて。あたしがやってみるわ。ダガーでいいわよね?」
「うん、効果が分からないことには使い道が無い。失敗しても構わないぞ。」
リムは他の魔核の付与には成功しているが、俺よりスキルレベルは低い。
まあ、ダメ元だ。
「あら? あっさり出来たわよ? これでどう?」
「え?! どれどれ。」
???:攻撃力+5 特殊効果【魅了】
リムも確認し、どや顔だ。
「凄いぞ、リム! ふむ。魅了か。どんな効果だろう?」
「敵を操るスキルなんじゃない? あの魔物の口振りからしても。」
そういや、あの階層主、『我に従え』とか言っていたな。
ふむ、俺はネクロマンサー(死人使い)、というイメージしかしていなかったが、本質はそういうことだったのだろう。
とにかく、試してみないことには分からない。
俺は魔核の付与に苦戦しているクレアを連れて、ダンジョンに飛ぶ。
彼女の気分転換をしてやるのと、ついでに冒険者ギルドで例の報告を聞くつもりだ。
ダンジョン1階のスライムには効かなかった。
死体に試しても何の変化も無い。
仕方が無いので、ワープを使って11階に行き、ランドワームに試したが、これも効果無し。
「う~ん、ある程度知性がある奴でないと、無理なのかな?」
「じゃあ、21階のポーラーベアでは? サラサ1階のゴブリンという手もありますわ。」
「サラサはちとな。ドリルモグなら成功しそうだが、そこまで潜るのも面倒だ。21階に行こう。」
ポーラーベアには効いた!
命令すると、他の敵に立ち向かってくれる!
しかし、ダメージを受けると効果が切れるのか、こっちに攻撃してくる。
ちなみに、損壊の少ない死体に試してみたら、同様に操れた。
この場合は、ある程度ダメージを受けると死体に戻る。
「うん、クレア、これこそ絶好の盾だ!」
「じゃあ、綺麗な死体をアイテムボックスに保存しますわ。」
俺達は、死体にヒールをかけてからアイテムボックスに放り込む。
重いので、二人共、一体ずつしか持てなかったが、充分だ。
「よし! 帰ったら、リムに武器の名前をつけさせよう。」
「ええ、リムちゃんも喜びますわ。では、次は冒険者ギルですわね?」
冒険者ギルドに立ち寄ると、丁度、例の受付嬢が居たので、報告を聞く。
依頼した冒険者達はきちんと遂行してくれたようだ。
なんでも、サンタル王国の城の兵士長に引き渡せたらしい。
彼等もそこで謝礼とかはねだらず、すぐに引き返したとのことだ。
カレンの言った通り、弁えている。
カサードにはじきにばれるだろうが、今はこれでいいだろう。
あの状態の近藤を、面倒見られる自信も余裕も無い。
せっかくなので、カレンの提案に従い、依頼を出して帰る。
相場に従い、20階層の主、ビートルマンの魔核を金貨40枚。
30階層の主、レッドウィッチの魔核と角を白金貨10枚。
レッドウィッチの角は、一つの装備に2本消費したので、魔核と併せて現在在庫切れだ。
また、それぞれ、受けたパーティーには魔物の攻撃の特徴を伝えるようにした。
この条件なら、受ける冒険者が出る可能性が高いとのことだ。
俺達が戻ると、3人がどや顔だ。
ミレアは例の石に魔法を付与することに成功し、カレンとリムは特殊素材を使って、装備を作れたらしい。
「【アイスガード】を付与することに成功しました!」
試してみると、身体が青白く明滅する。
ファイアショットを試し打ちしたが、ノーダメージだ!
「やったなミレア! 他のも試してくれ。だが、俺の例もあるから、充分気をつけてな。」
この屋敷を火の海にする訳にはいかない。
ここは釘を刺しておくべきだろう。
「あたい達はこれっす!」
「どれどれ。」
カレンが差し出したのは、ぱっと見、只の鉄の槍だ。
???:攻撃力+15 ?? ??
ぬお!
特殊効果の空きが2個になっている!
「これ、どうやって作った!?」
「昨晩、ユニコーンデビルの角だけで作ろうとしたんすけど、うまく行かなかったっす。で、リムちゃんの提案で、鉄に混ぜたら成功したっす!」
「おい、これは凄いことだぞ! おめでとう!」
二人共、抱き合って喜んでいる。
そう言えば、以前オークションで買った、ブルーイーターの小手もそうだ。
あれも、ぱっと見は只の鉄の小手だが、空きが2個ある。
ユニコーンデビルは俺達しか知らない魔物なので、恐らく他の素材で作ったのだろう。
うん、あれの事も忘れていたので、早速魔核を付与したいところだ。
クレアとミレアは、ここでマリンの手伝いに向かう。
まだまだ侍女としても勉強したいようで、いいことだ。
夕食時、命名タイムとなった。
「じゃあ、先ずはこの魅了効果のダガー、これはリムだな。」
「それはもう決めてあるわ。【魅惑のリム】よ!」
こいつもか!
カレンと工房に籠るようになって、影響を受けたのかもしれない。
突っ込んでも、名前が変わる訳も無く、既に手遅れなので、ここは流そう。
その他の新武器は、以下の通りになった。
全て鉄ベースだが、素材で空きを広げたことと、新たな魔核で素晴らしい性能だ。
弱体化の拳:攻撃力+10 防御+10 特殊効果【防御半減】【素早さ半減】
無双の槍:攻撃力+75 特殊効果【攻撃力20%アップ】
無双の小剣:攻撃力+70 特殊効果【攻撃力20%アップ】
ラインの杖改:特殊効果【魔力+20%アップ】【石化】
ちなみに、ラインの杖改には、最初、メデューサの杖とつけようとしたところ、つけられなかった。
多分、既存の同じ名称の杖があるのだろう。
つけた人はイオリ関係で間違いないはずだ。
「うん、カレン工房、凄い成果だな。今日は無理せず、皆、早めに寝よう。そして、明日は防具を作ろう。」
「はいっす!」
「ええ、楽しみね。」
「私とミレアは、明日も午後はマリンちゃんと一緒ですわ。」
「はい、私とお姉様は午前中お手伝いさせて頂きます。」
そう言えば、今日の肉料理も美味かった。
話に夢中で、素材を聞き忘れたな。
恒例の家族団欒の湯を済ませた後、これまた恒例の、マリンによるティータイム。
「今日はリムちゃんざます。」
これも恒例になりつつある・・・のか?
昨晩は割と早く寝たこともあり、朝早く目覚める。
大きく伸びをすると、横で寝ていたリムを起こしてしまったようだ。
「おはよう、リム。」
「おはよう、アラタ。そ、その・・酷いわ! あたしの弱点を知っているからって!」
確かに俺はリムとの同居時代で、彼女の弱点はかなり知っていると思う。
「ふむ、嫌だったのか?」
リムは返事の代わりにキスしてきた。
そのまま彼女に馬乗りになられて俺も限界だ。
2戦目に突入してしまう。
その後、これまた恒例となりつつある朝風呂を楽しむ。
サラは許婚者の件で満足したのか、来なくなった。
それはそれでいいのだが、入浴前の風物詩が消えたようで、少し寂しい。
その日は昨日の予定通り、防具の作成に励む。
盾は割と簡単なのだが、関節部分の多い鎧は結構面倒だ。
失敗作や魔核の実験作を溶かし、ユニコーンデビルの角を放り込み、鋳型に流し込む。
皆で頑張った甲斐があり、午前中には、全員分の鎧が出来た。
午後はその他の防具に取り組む。
無双の鎧:防御+25 特殊効果【防御20%アップ】【魔法防御20%アップ】
ダークウルフの帽子:防御+5 特殊効果【火耐性中】
俊足の足袋:防御+2 特殊効果【素早さ20%アップ】
麻痺の足袋:防御+2 特殊効果【麻痺】
帽子の方は、ダークウルフのコートを加工し直しただけだが、これだと軽くて動き易い。
靴はファイアウルフの皮をベースにしたものだ。
この素材は、空きが一つあったので、そこに特殊効果を入れてみた。
これも軽くて履き心地がいい。
俺のは、カレンが作ってくれた首輪のおかげで、【素早さ20%アップ】は被るので、迷った結果、麻痺効果にした。
まだ試していないが、これで蹴られると麻痺するという目算だ。
「さあ、準備は整った! また明日からはダンジョンだ!」
「「「「はい!」」」」
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