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22歳♂ 何故か女の体に転生しました。  作者: BrokenWing
第二章
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依頼

        依頼



 翌日、俺達は61階層に降りる通路に居た。

 朝、出る前にサラの猛攻を受け、あわやという場面もあったが、かろうじて俺の唇は守られている。


「次の部屋には、新顔ばかり、3体居る。2体は石で出来たような巨人で、攻撃力がかなりありそうだ。後の1体は女の人型だ。気色悪いことに、髪の毛が蛇だ。」


「その、人型の方が厄介な攻撃をしてきそうですね。」

「ああ、俺の世界の神話で出てくる奴に似ている。確か、石にするとかいう魔女だったか?」

「石になんてされたらどうしようもありませんわ。」

「とにかく、回復はあたしとクレア姉様に任せて。アラタも危ないと思ったら、すぐに撤退してよ。」

「アラタさんが凹られそうになったら、あたいが突っ込んで挑発するっす!」


 俺は、ここに来るまでに、彼女達に、これからは俺が偵察役になる方針を伝えてある。

 カレンとリムは既に納得していたが、予想通り、クレアとミレアには猛反発を受けた。

 俺が趣旨を説明し、リムも手伝ってくれたおかげで、何とか説得でき、今に至る。


「じゃあ、作戦通り頼む。俺が部屋に入ったら、お前達は部屋の入り口で待機。リムは俺のステータスをチェックしながら、回復の指示。ミレアとカレンは俺の合図で攻撃だ。今回は石の巨人から倒そう。」

「「「「はい!」」」」


「じゃあ、ミレア、リム、頼む!」

「はい! アイスガード!」

「はい! オールアップ!」

「よし、行くぞ!」


 俺は、【リフレクトシールド】を翳しながら部屋に突入する!


「チェンジストーン!」


 予想通り、蛇髪女が何か唱えてきやがった!

 意味からすると、やはり石化か?

 しかし、盾が一瞬光り、何事も無い。

 うん、跳ね返せたようだ!


 跳ね返した魔法を相手が喰らってくれればと期待したが、そうそう甘くは無く、奴も無事なようだ。


 魔法を凌げてほっとしたのも、束の間。

 今度は、3mはあろうかという石巨人が、大きな腕を振り上げて、2体同時に迫ってくる!


「取り敢えずは受けてみる!」


 片方の攻撃を躱しながら、もう一方の攻撃を盾で受ける!


「ぐっ!」


 完全に盾で防いだつもりだったが、吹き飛ばされる!

 幸い、ダメージは無かったが、これは多分リムに強化して貰ったおかげだろう。


「まだ耐えられる!」


 俺は視界の端で、今にも突っ込んできそうなカレンを牽制する。


 蛇髪女の方も、魔法が効かないと知ったのか、鋭い爪を光らせてこっちに来やがった!

 あの爪も何か特殊効果がありそうだ。

 石巨人の方も再び腕を振り上げる!


「今度は喰らってはやらん!」


 俺は3体の攻撃を軽く躱しながら、三重苦のナイフを握る。


「まずはお前ら!」


 大振りした隙を逃さず、俺は石巨人2体を連続で薙ぐ!

 さて、どの効果が効く?


 石巨人2体は勢いのまま、壁に向かって走って行った。

 ふむ、暗闇が効いたな。


「アラタ、後ろ!」

「分かってる! リム以外はでかぶつを頼む!」

「「「はい!」」」


 蛇髪女が、背後から爪を立ててくる!

 まあ、爪だけなら喰らっても大したダメージは無さそうだ。


「ん? これは?」


 俺は自分のステータスを見て驚いた。

 凄い勢いで攻撃系ステータスが減っていく!


状態:石化中


 これはヤバい!

 こいつをほっとけば、石になってしまうのだろう。


「アブノーマルキャンセル!」


 よし、リム、ナイスだ!

 状態異常の表示が消え、ステータスが一瞬で元に戻る!


「お返しだ! 喰らえ!」


 俺は三重苦のナイフを蛇髪女に突き刺す!


 奴は、あっけなく倒れた。


 ふむ、睡眠が効いたようだな。

 後の効果は分からんが、取り敢えず無力化できたようだ。


「よし! こいつは残しておく! 全員、先に石巨人だ!」

「「「「はい!」」」」


「ファイアトルネード!」

「サンダーラッシュ!」

「五点連穿!」

「剣の舞!」


 俺が蛇髪女を見張っていると、全員の攻撃の声が聞こえる。

 あれなら、大丈夫だろう。


 ちなみに、この前試した超強力な範囲魔法を使うと、こいつを仕留めてしまいそうなので、今は封印だ。

 危なくなったら、躊躇無く使うが。


 さて、こいつをどうしよう?

 間違いなく厄介な、石化のスキルを持っているので、できれば耐性をつけておきたい。


 俺が考え込んでいると、皆が集まってきた。

 あっちは仕留めたようだ。


「耐性をつける。まずは俺からだ。回復はクレアに任せる。リムは俺の監視。ミレアとカレンは少し離れて待機だ。」

「「「「はい!」」」」


 俺が蹴飛ばすと、一発で起きたようだ。

 猛然と俺に襲い掛かって、爪を振り回す!


 ん? もう付いたか。

 俺はステータスをチェックする。


【石化耐性小】


 後はいつも通りで簡単だ。

 時間はかかったが、全員、耐性中まで頑張った。



 魔核を回収していると、カレンが声をかけてきた。


「これ、人間じゃないっすか?」

「ん?」

「あ! あのお馬鹿勇者の片割れですわ! 確か近藤とか言う奴ですわ!」


 見ると、確かに近藤の顔をした、とてもリアルな灰色の石像が部屋の片隅に転がっていた。

 二宮に置いていかれ、あの攻撃を喰らったと見ていいだろう。

 ステータスをチェックすると、死んではいないようで、ちゃんと表示された。


状態:石化


 危ないことに体力は50を切っていた。

 そして、気力は一桁だ。

 思うに、石化していなかったら、死んでいただろう。


「アラタ、どうする? ほっとく?」

「う~ん、こいつを助ける義理は無いが、見つけてしまった以上、放っておくのもな~。」

「私が叩き壊してあげますわ!」


 見ると、クレアが槍を構えて、今にも飛び掛かりそうだ!


「ま、待てクレア! 早まるな! カサードじゃないが、こいつも利用できるかもしれん。」


 とは言ったものの、俺も咄嗟には思いつかない。

 使い辛い奴隷を、これ以上カサードに押し付けるのも可哀想だ。


「取り敢えずは回復させてみよう。どうするかは、話を聞いてからでいいだろう。」

「そうですね。でも、攻撃してきそうなら、容赦はしません。」

「当然だな。だが、アホ1号、二宮よりはマシな感じだったぞ。」

「じゃあ、行くわよ。」


 リムが解除の小太刀で石像をつつくと、みるみる色が変わる。


「うっ、ごふっ、え? 魔物は? そうだ! 逃げなきゃ!」


 近藤はふらふらしながらも立ち上がり、部屋の入り口を目指す。

 目の前に居る俺達は完全に無視だ。


 これは不味いな。

 心が壊れてしまっている可能性がある。

 先程までは怒り心頭モードだったクレアまでが、同情の視線を向けている。


「おい! 近藤! しっかりしろ! 魔物はもう居ない! ここは安全だ!」


 それでも近藤は、よろよろと上の階層への通路を昇って行く。


「流石にこれは放っておけんな。」


 とにかく、ダンジョンから出してやらないと。

 俺達は顔を見合わせてから、黙って、近藤の後を追う。

 彼はワープの小部屋に入ると、何やらぶつぶつ言ったが、そこでへたりこんでしまった。


 戻れないことに気付いたのだろう。

 流石にこれはいたたまれない。


「おい! 二宮は居ない! お前はもう安全だ! 今から外に出してやる!」


 近藤はこっちを見るが、目の焦点が合っているようには見えない。


 さて、どうしたものか。

 今は危害を加えるようにはとても見えないが、腐っても勇者だ。

 正気に戻れば、どうなるか分かったものじゃない。

 ダンジョンから出すのはいいが、問題は何処に出すかだ。

 勇者の事は勇者で、と大見栄を切った以上、カサードに相談するのも気が引ける。


 俺は迷った挙句、取り敢えず、ダンジョンの入り口に飛ぶことを決めた。

 あそこなら、野営テントがあり、運が良ければハウルが待機しているはずだ。

 ほんの短距離だが、今の近藤を歩かせるのは得策ではないので、テレポートだ。


「よし、ダンジョン入り口に飛ぶ。お前達も掴まれ。」

「「「「はい。」」」」


 俺は近藤の腕を掴んで唱える。


「飛べ!」


 外に出ると、当然まだ陽は明るく、早速俺達を見つけたハウルが駆け寄ってくる。

 彼には、ダンジョンに行くことだけ伝えて、送迎は不要と既に言ってあったが、律儀に入り口で待っていたようだ。


「この方は?」

「ヤットンから聞いていると思うが、サンタル王国の勇者だ。俺に置き去りにされ、仲間に裏切られ、かなり厄介な状態だ。おい、近藤! 外だ! もう大丈夫だ!」


 ハウルが慌てて近藤を支える。

 俺が手を離すと、そのまま倒れそうだ。


「取り敢えず、テントのベッドで寝かせましょう。」

「うん、ハウル、頼む。」


 近藤は全く無気力で、されるがままだ。

 見かねたリムがヒールをかけるが、無反応だ。

 テントに運んでベッドに横たわらせると、安心したのか、寝てしまった。


「よし、決めた。こいつはサンタル王国に丸投げする。俺の手には負えない。」

「それだと、アラタ、帝国にとっては不利になるわ。サンタルの戦力は削っておきたいはずよ。」


「これが戦力になると思うか?」

「それもそうですね。この状態が回復しても、アラタさんに負けたことと、間違ったダンジョンの攻略方法を取っていたことは周知の事実です。恐らく、暫くは軟禁でしょう。」

「流石はミレアだ。俺もそう思う。」


「アラタさんを殺そうとした奴っす! こんなの、殺すか奴隷っす!」

「うん、カレン、俺も最初はそう考えた。しかし、こいつにも利用価値がある。戦争抑止力としての勇者だ。サンタルは現在勇者の居ない状態だろう。居てもこいつより強いとは思えない。」


「そうですわね。あの口振りからは、自分達が最強と思っていたようでしたわ。」

「分かったわ、アラタ! このお馬鹿でも、居るだけで、サンタルに攻めようって気になる国が出ないってことね。」

「うん、リム。そう言う事だ。それで、誰かサンタル王国に飛べる奴は居ないか?」


 誰もサンタルには行った事が無いようだ。

 全員首を振る。


「それでアラタ、行けたとしても問題は人選よ。貴方が行ったら、喧嘩を売りに行くようなものね。」


 確かにリムの言う通りだ。

 なるべく穏便に済ませたいが、俺達は、前回の会談で全員面が割れている。


「こういう時こそ、冒険者っす! ギルドに依頼するっす!」

「ふむ、カレン、それはいい案だ! 報酬と行き帰りのテレポートの石を渡せば、やってくれそうだな。」


 俺はカレンと一緒に、早速冒険者ギルドに飛んだ。

 残った者には三重苦のナイフを預け、近藤の監視を頼む。


 ギルドには前回の受付嬢が居た。

 この人には、今はこの身体が勇者であることを既に伝えてある。


「それで、サンタル王国に人を届ける依頼をしたい。経費として、テレポートの石を2個と、報酬として金貨5枚。但し、これには口止め料が含まれている。どうだ?」

「近衛様、その内容ならば破格です。皆、飛びつきますよ。私が受けたいくらいです。」

「じゃあ、貴女には特別手当だ。依頼人の名前は伏せて頼む。数日後、貴女に結果を聞きに来る。くれぐれも内密にな。」


 俺は彼女に金貨を1枚握らせる。

 なに、元は全部アホ勇者の持ち物だ。俺の懐は全く痛まない。

 報酬を高めにしたのは、今すぐやって欲しいのと、もし近藤が暴れた時に対しての、危険手当だ。


「かしこまりました。基準はどう致しましょうか?」

「う~ん、危険が伴う可能性があるので、なるべく熟練した奴がいいのだが。」

「では、Bランク以上にしましょう。」


 彼女が依頼書を貼り出すと、新しい仕事を物色していた連中が、早速輪になる。

 その中から、3人のパーティーが依頼書を剥ぎ取り、受付に行った後、こっちに来た。


「おう! あんたが依頼人かい? え? あ、失礼しました。勇者の従者様ですね。」


 何と、以前絡んで来た冒険者達だ。

 あの時は魔核でびびらせたが、それなりに実力はあったようだ。


「依頼書の通りだ。こっちの名前は伏せて欲しい。それで、早速頼めるか?」

「当然です。で、詳しい話は?」

「ここじゃ無理だ。付き合って貰うぞ。」


 俺はそいつらを連れて野営テントに飛ぶ。

 俺はそこで詳しい話、サンタル王国のなるべく偉そうな奴に、勇者である、近藤を渡して欲しい旨を伝える。


「今は寝ているが、起きると暴れるかもしれん。その時は遠慮無く逃げて構わない。相手には、ダンジョンの外で倒れていたのを拾った、とでも言って渡してくれ。長居は勧めないぞ。」

「分かりやした。で、これは極秘ってことですね?」

「そうだ。完了報告はあの受付嬢に頼む。」


 報酬を渡すと、彼等は寝ている近藤をそっと抱きかかえる。

 俺は、連中がテレポートするのを確認した後、ハウルに振り返る。


「できれば、カサードには黙っていてくれると嬉しいのだが。」

「事情は良く分りませんが、僕が関わるようなことでは無いのは理解できます。僕はここで何も見ていません。」

「うん、それがいいと思う。ありがとう。」


 ハウルにも金貨を1枚握らせる。

 なんか、最近、俺も悪人になってきたようだ。

 もっとも、この世界に順応した結果かもしれんが。


「じゃあ、この件は完了だ。ダンジョンに戻ろう。」

「「「「はい!」」」」


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