表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22歳♂ 何故か女の体に転生しました。  作者: BrokenWing
第二章
70/99

逆襲の母娘

     逆襲の母娘



 朝起きると、驚いたことに、全員が俺の部屋に居た。


「早速、お話を伺いに参りましたわ。」

「昨晩、私とお姉様は今日の準備をしていました。食事の用意は万全です。」

「アラタ、倒れそうになるまでは頑張りすぎよ。今日は屋敷でゆっくりしてなさい。」

「ちなみに、マリンちゃんとサラちゃんは、陛下に挨拶するって出ていったっす。」


 考えてみれば、昨日の俺は、アホの討伐、捕獲と事後処理。

 おまけに会談で演説をぶちかましていたのだった。

 疲れていて当たり前だろう。


「分かった。ありがとう。では、朝食を皆で取ろう。」

「アラタ、もうお昼前よ。皆、朝は済ませたわ。」

「ということで、ブランチですわ。私達もご一緒しますわ。」

「既にリビングに用意してありますので、行きますか?」



「なんか、待たせたようで、悪いな。うん、このピラフは美味い。また腕を上げたな。」

「それはミレアが作りましたわ。」

「そろそろお姉様に追いつけそうです。」

「アラタ、早く話して。」

「武勇伝が聞きたいっす!」



「そうだな、まず、決定的な違いは俺の世界では魔法が無い。」

「え? それは不便ですわね。」

「しかし、この世界でも魔法を使えるのは一部の人間だ。カレンを見ろ。魔法が無くても強いぞ。」

「えへへ。」


「そして、この世界よりも遥かに便利だ。お前達から見れば魔法のような事が、日常茶飯事に行われている。空を飛ぶ乗り物とか、一瞬で都市を壊滅させる兵器とかまである。」

「なんか、想像がつかないです。しかし、都市を一瞬で壊滅って。そんな物騒な世界なんですか?」


「実際、文化水準はこの世界以上のはずなんだが、世界規模で見た場合、戦争が無くなったためしが無い。そういう意味では、この世界の方がマシかもな。昨日の件だって、下手すりゃ戦争だが、なんだかんだでならずに済んでいる。まあ、勇者という抑止力が大きいのかもしれんが。」


 ここで皆が食事を取り終わったので、ソファーに移動する。

 カレンは既に眠そうだ。

 リムが眠気覚ましの為か、コーヒーを淹れてくれた。


「あと、奴隷制度が無いな。昔はあったが、現在奴隷を所持することは全面的に禁止だ。」

「へ~、そんなもんっすかね~。あたいや、止むを得ずの人は別にして、犯罪者は奴隷にするべきっす。」

「うん、俺達は別の方法で犯罪を減らそうとしている。意味的には奴隷と大差無いのかもしれんが。とにかく、人身売買の禁止ってことだ。なので、俺はお前達を売る気は無い。便宜上、奴隷という職業に就いて貰っているという認識だ。」


「確かに、アラタはあたし達をそういう意味では奴隷として扱ってないわね。だから貴方の奴隷になったのだけど。」

「あたいもアラタさんで良かったっす!」

「私もです。でも、酷いことをして欲しかったです。」

「奴隷で思い出しましたわ。昨日のアラタさんには惚れ直しましたわ!」


「え? お姉様、それはどういう?」

「『俺の奴隷は最強だ!』って、会談の最中、言い切って下さいましたわ。あの時程嬉しかったことはありませんわ。」

「いや、当たり前だろう。あのアホ勇者達相手なら、お前達だけでも充分勝てる。」


 ん? なんか皆の顔が赤い。

 これは・・・。


「アラタ・・。」


 リムが俺に飛び込んで来る!

 それを皮切りに、他の奴も一斉に来た!

 俺は皆にもみくちゃにされる!


 ミレアの唇が迫る!

 こいつのこういう時の表情は凄くエロい!

 クレアが服を脱ぎだした。


 ヤバい!

 これは修羅場になる!


「只今帰りましたにゃ!」

「ついでに買い物してきましたので、遅くなったざます。」

 

スワレンファミリー、完璧すぎるな。

あのままでは、せっかくの休みなのに、全員体力を使い果たすことになっていたのは間違いない。


「お、お帰り、マリン、サラちゃん。カサードはどうだった?」


 俺は必死に誤魔化すが、この状況を見れば、何が始まろうとしていたかは一目瞭然だ。

 マリンの口元が上がる。


「お邪魔だったざますか?」

「「「「チッ!」」」」



 引き続き、皆に俺の世界の話を聞かせる。

 サラも加わり、皆、興味津々だ。

 マリンがお茶を淹れてくれる。

 休みだからと遠慮したが、これは最低限のことらしい。


「だが、俺はこの世界を結構気に入っている。いい仲間、家族を得られた。これは閻魔に感謝だな。そして、世界は変われど、そこに居る人間は変わらないようだ。アホ勇者達は、文化の違いと能力差だけに目が行き、驕ってしまって気付けなかったのだろう。以前のミツルがまさにその感じだ。俺も気をつけないとな。」


「アラタ様は大丈夫ざます。陛下も信頼されているざます。」

「ええ、そうね。あたしも最初は戸惑ったけど、アラタを見ていて、この人しか居ないと思ったわ。そして、同じ身体なのが恨めしくなったわ。」

「あ、ありがとう。さあ、そろそろ飯にしよう。また、あのホテルのレストランでどうだ? 勿論、マリンとサラちゃんも一緒に。」


「一応夕食も準備はしていたのですが、アイテムボックスに保管しておけば大丈夫です。」

「アラタさんがそうしたいのなら、それがいいですわ。」

「あそこの肉、美味いっす!」

「勿論、行きますにゃ! 外食、久しぶりですにゃ!」

「サラちゃん、はしたないざます! でも、ご一緒させて頂くざます。楽しみざます。」



 レストランでは、俺は相変わらずの魚料理。

 ここのはお気に入りだ。

 クレアとミレアも気に入っているようで、同じのを頼む。

 マリンも追従した。

 カレンとリムとサラは肉料理。

 相変わらず良く食べる。


「そうだ、サラちゃん、お前、アイテムボックス持っていなかったよな? 入手過程は説明できんが、余っている。どうだ?」

「も、勿論頂きますにゃ! そこまで私のことを・・・、嬉しいですにゃ!」


 ん? なんか喜び方が不自然な気がする。

 サラの横に座っているマリンの口元が吊り上がる。


「アラタ! それはダメよ! 早く引っ込めて!」

「え? なんでだ? 売ってもいいが、このほうがいいだろ?」


 サラは俺の差し出したアイテムボックスを、マッハで掴み取る!


「これは不味いですね。やはり排除しておくべきでした。」

「あらあら、アラタさんにもそんな趣味があったとは。少し意外でしたわ。」

「「???」」


「アラタとカレン姉様は知らないと思うけど、この国では、男性が女性に指輪を贈るのには、特別な意味があるのよ!」


 あ~、そういや、俺の世界でもあったな。

 魔法道具としてしか認識していなかった、俺の不注意だ。


「あ~、サラちゃん。それは指輪としてではなく、アイテムボックスとしてプレゼントした。そこは勘違いしないで欲しい。」

「指輪は指輪ですにゃ! その・・、ふつつかですが、宜しくお願いますにゃ。」


 サラは、テーブルに猫耳をついてかしこまる。

 う~ん、参った。

 ここは、やはりあれだろう。


「リム、何とかならんか?」

「ええ、ここは全面的に協力するわ! アラタ、指輪の贈呈は許婚者として認めるという意味よ。」

「うん、それはすぐ分かった。」

「でも、指輪の贈呈から3日以内に、その・・、キスしなければ成立したと認められないのよ! アラタ、貴方はこれから3日間、全力でサラちゃんの唇を阻止しなさい!」

「イエス! マム!」


 ふむ、なんだ簡単じゃないか。

 どうせ明日からはダンジョンだ。

 今回は70階層までを考えているので、多分それくらいはかかる。

 屋敷に居なければ、彼女もどうしようもないはずだ。

 つまり、今晩だけを凌ぎ切ればいい。


 食事が終わり、俺が会計を済ませていると、スワレンファミリーが何やら密談している。

 ふむ、元侍女長がバックについているとなれば油断は出来ない。

 これは厳戒態勢を敷くべきだろう。


「お前達、済まんが、そういう事だ。俺の唇を奴から守ってくれ!」

「「「「はい!」」」」


 屋敷に帰り、リビングで寛いでいると、いつの間にか母娘が消えている。

 ふむ、やはり油断できんな。

 大方、部屋を出た瞬間とかを待ち伏せているに違いない。

 これでは、迂闊に風呂に入れんな。


「クレア、ミレア、風呂場の安全を確保してくれ。発見次第、遠慮なくスキルを使え! 足腰立たなくなるまで、完膚無きまでやれ!」

「「はい!」」


 ミレアからテレフォンで連絡が入る。


「やはり居ました! 湯船の中に潜伏していました!」

「よし、攻撃を許可する!」

「はい! え? マリンちゃん? あ、そこは・・・あ~・・・・。」


 暫くすると、タオル一枚のクレアとミレアが、ふらふらしながら帰って来た。

 顔が真っ赤で目が虚ろだ。

 チッ! どうやら、マリンにやられたようだ!

 奴も『特殊な』スキルを持っていると見て間違いない!


「う~ん、ダンジョンの凶悪な魔物の方が対処しやすいかもしれん。今日の風呂は諦めるべきか?」

「アラタ、ここで諦めてはダメよ! 屋敷の主人として撤退は許されないわ! カレン姉様も強力して!」

「お、おう。しかし、相手は強敵だ。うちの誇る変態姉妹があのざまだ!」

「当然っす! ここは3人で行くべきっす! あたいが囮になるっす!」

「す、済まんな、カレン。だが、相手は手練れだ。用心しろ!」


 脱衣所に入ると、誰も居ない。

 そこら中に散乱している下着が、戦闘の凄まじさを物語っていた。


「後ろっす! 扉の裏っす! 挑発!」


 盾無くても使えるんかい。

 余計な突っ込みは置いておいて、カレンの冥福を祈ろう。

 彼女は予想通り、マリンに弱点の尻尾をモフり倒されている。


「カレン、済まん! 尊い犠牲だった! リム、この隙にあの子猫さえ排除できれば俺達の勝ちだ!」

「ええ! 任せて! オールアップ!」


 いや、リム、流石に魔法は必要無いと思うぞ。


 マリンはそのままリムに行くかと思いきや、交渉を持ち掛けてきた。


「今、サラちゃんは裸ざます。キスするなら入っていいと、サラちゃんが言っているざます。」

「ふっ、そんな脅しには屈しない! リムがサラちゃんをつまみ出せば済むことだ!」


 そう言いながら、俺は堂々と服を脱ぐ。

 マリンの目線が俺に釘付けになる。

 チャンスだ!


「よし! リム! 今、俺は裸だ!」

「そういう事ね! 分かったわ! 縮地!」


 リムが一瞬でマリンを脱衣所から廊下へ運び去る!

 これでマリンは、裸の俺が居る脱衣所には侵入できない。

 リムが誇らしげに帰って来る。


「後は子猫だけだ! 頼むぞ!」

「ええ! これで生き残りはあたしだけね。」


 ん? その言葉は何か引っかかるぞ。



 しかし、これはどうしたものか。

 リムが素っ裸のサラを抱えてきた。

 話を聞くと、湯船に浮いていたらしい。

 完全にのぼせたようだ。


 仕方が無いのでマリンを呼び、介抱させる。

 リムも回復魔法をかけたが、こういうのにはあまり効果が無いようだ。



「しかし、厳しい戦闘だった。犠牲になったお前達には何と感謝していいやら。」


 俺達は今、湯船で寛いでいる。


「はい。お礼は身体で払って頂きたいのですが・・、その・・、今日はもう無理です。」

「わ、私はアラタさんが最高ですわ! 決してマリンちゃんのテクニックが・・、なんて事はありませんわ!」

「あたい、もうお嫁に行けないっす・・。」

「アラタ、私は感謝の気持ちを受け取れるわよ。」


 俺は、膝の上でご満悦のリムを見ながら思う。

 この死闘に意味があったのだろうか?

 途中からはリムの計画だと思えてしまうのは、俺だけだろうか?



 結局、その晩は、警戒の為、全員俺の部屋で寝た。

 不毛な闘いの結果、クレア、ミレア、カレンは既に爆睡している。

 ルール上、スワレンファミリーは、俺の寝室に入る時には許可を得なければならないので、この状態でも大丈夫だろう。


 俺もなんか疲れてしまったので、早々に寝ることにした。

 当然、リムがせがんで来たのだが、俺の疑念をぶつけると、大人しく俺の横で丸くなった。


 ふむ、確信犯だな。

ブックマーク登録ありがとうございます!

評価や感想なんぞも頂けると励みになります。m(_ _"m)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ