適任者
適任者
屋敷に帰ってから、皆で夕食を取る。
クレアが会談場内でのアホ共とのやり取りを皆に教えると、全員血相を変えてしまった。
う~ん、せっかくの食事がこれでは勿体無い。
「あの件はもう済んだ事だ。おかげで、俺のやり方が間違っていなかった事も証明できた。ところで、今気付いたのだが、お前達には今まで休日を取って貰っていなかった。クレアとミレアとリムに至っては、一月近く、働き詰めだ。気付かなくてすまん! ということで、明日は休みだ!」
一大イベントが終了したので、丁度いい機会だろう。
「お休みなら、アラタさんが、倒れていた時に充分に頂きましたわ。」
「いや、皆、俺に付きっきりだったろう。下の世話までさせてしまったようだし。」
「あたいは、アラタさんと一緒にダンジョンに潜ったり、武器作ったりする方が楽しいっす。」
「それ、俺の世界じゃ、仕事中毒とも言うぞ。うん、明日は、ダンジョンと工房への立ち入りは禁止にしよう。」
「でも、いきなり休みと言われてもね~。アラタはどうするの?」
「う~ん、俺も特に考えていないな。この世界の娯楽とかも知らないし。」
「貴族は街の外で魔物狩りに興じたりしますね。」
「ミレア、それ、今までと一緒だろ。まあいい、適当に考えておくよ。そんな訳で、明日は全員自由行動。マリンとサラちゃんもだ。食事も各自で頼む。」
「承知したざます。ありがとうございます。でも、最低限の事はさせて頂くざます。」
「「「「「は~い。」」」」ですにゃ。」
夕食後、サラがすぐに居なくなったと思ったら、風呂場で湯を沸かしてくれていた。
ふむ、今回は先回りか。
毎回つまみ出すのも面倒なので、マリンに相談する。
「お宅の娘さんのことなんですが。」
俺はどっかで聞いたような台詞をぶつけてみる。
「あれは侍女としての仕事ざます。不都合は無いはずざます。サラがお嫌なら、私がするざます。」
う~ん、保護者公認か。
お互い、裸でいる場所には入らないというルールだが、裸で入って来られる事に関するルールは無い。
今までサラは、そのルールの盲点をついていた訳だ。
マリンに代わられると、もっと不味い気がする。
彼女は子持ちとは言え、かなりの美人だ。
そして、既に夫は居ないと聞いている。
間違いが起こってはならない。
「ふむ、じゃあこうしよう。風呂を沸かすのは、その時入る人の仕事だ。これでどうだろう?」
「承知したざます。では、伝えて来るざます。」
マリンはすぐにリビングを出て行った。
うん、これで大丈夫のはずだ。
「じゃあ、俺は今から風呂に行くが、お前達はどうする?」
「当然ご一緒しますわ。」
「聞かれるまでもありません。」
「既に着替えは用意しているわ。」
「沸かすの手伝うっす。」
ふむ、今度はそう来るか。
「今から私が入りますにゃ! 皆さんも入るのなら、私は構わないですにゃ。」
スワレンファミリーめ、考えたな。
女性陣はいいが、これでは俺が入れない。
サラの裸を見たとかで、既成事実にされかねん。
仕方ない。
「よし! クレア、ミレア、リム、お前達の出番だ! その『特殊な』スキルを使うことを許可する! 蹂躙して来い!」
「かしこましたわ! サラちゃんならいけますわ!」
「ふっ、飛んで湯に入る子猫、堪能させて頂きます。」
「あ、あたしはしないわよ!」
「サラちゃん、逃げたほうがいいっすよ~。」
俺がリビングに戻って寛いでいると、タオル一枚のサラが駆け込んで来た。
「ひ、酷いですにゃ! 私にその趣味はないですにゃ!」
流石に懲りただろう。
しかし、目のやり場に困る。
俺は勝利の味を噛みしめながら、そそくさと風呂場に向かう。
「あらあら、サラちゃんには逃げられましたが、本命が来ましたわ。」
「中途半端は身体に良くないです。これで完全燃焼です。」
「お姉様方は昨晩やったでしょ! 今日はあたしの番よ!」
「ご褒美っす! 今朝の続きっす!」
う~ん、さっきの騒動でその気にさせてしまったようだ。
だが、流石に俺も風呂場でいたす気は無い。
ふむ、あの魔法の出番か。
「トラースパラ!」
透明化の時空魔法だ。
多分、この魔法を作った奴の使用目的とは全く逆だろうが。
「あらあら、その魔法、私も覚えたいですわ。」
「お姉様、私は使えます。今度かけますから、一緒に悪用しましょう。」
「アラタ! 隠れたつもりでもアイテムボックスでバレバレよ!」
「なるほど、そこっすね。解除の小太刀は・・・。」
チッ、アイテムボックスの指輪でばれたか。
ならば!
「消えろ!」
今度はアイテムボックスにかけてみる。
ふむ、成功したようだ。
俺は堂々と湯船に浸かる。
これでゆっくり寛げるはずだ。
「アラタ、あたし悲しいわ。」
「リムちゃん、言ってはダメです。」
「え? 何処っすか?」
「あらあら、そこですわね。」
どうやら、湯気や水の屈折率でばれたようだ。
なかなかうまくはいかないものだ。
しかし、彼女達のやる気は削げたようで、魔法が切れても特に襲われることは無かったので、ある意味成功か?
「それで、お前達、明日の予定は決まったか? 皆で行きたいとこがあれば、付き合ってもいいぞ。」
「そうですわね。私は特にございませんわ。」
「同じくです。ですが、今行きたい所はアラタさんの膝の上です。」
「あたしも特に無いわ。そして、ここは譲らないわ。」
「ダンジョンっす! 工房でもいいっす!」
「そうか、俺も特に無いんだよなぁ~。」
「それなら、私はアラタさんの世界の話が聞きたいです。明日一日、良かったら、聞かせて下さい。」
俺はリムをどかして、ミレアを膝に乗っけてやる。
ミレアはご満悦のようだ。
「ふむ、ミレア、それはいいが、大した話はできんぞ。それに、お前達からすれば、それこそ理解出来ない異世界だ。」
「ちょっと、アラタ、酷いわ! でも、あたしも聞きたい。」
「そうですわね。私も聞きたいですわ。」
「アラタさんの世界の魔物はどんなんっすか?」
「ふむ、魔物は居ないが、それくらいならいくらでもしてやる。明日、コーラとポテチ持って、リビングに集合だ。」
「「「「コーラ? ポテチ?」」」」
流石にこの世界には無かったようだ。
風呂を上がって、俺は思い出したことがあり、地下室に向かう。
二宮と近藤のアイテムボックスだ。
あの場では、あいつらの国に届けるとか言ったが、勿論そんなことはできる訳も無く。
少し罪悪感はあるが頂いてしまおう。
ロックを解除する為に気力を込める。
「ん? 流石にあいつらの魔力は、それなりに高かったようだ。解除できんな。」
気が付くと、カレンとリムが入って来た。
明日は入れないから、今晩中に何かするつもりだろう。
「ふむ、丁度良かった。リム、魔力を高める魔法とかないか?」
「魔力だけというのはまだ試してないわ。【オールアップ】でいい?」
「うん、頼む。」
「オールアップ!」
今度は解除できたようだ。
首輪の20%アップ効果とリムの魔法で、俺の魔力は一時的にだが、軽く1000を超える。
「う~ん、どっちがどっちのだか分からないが、大したのは入ってないな。」
「魔核がないっすね。本当にダンジョン潜ってたんすか?」
「恐らくだが、ダンジョンで得た物は全て換金するか、国に管理されていたんだろう。」
「クレア姉様の話からもありえるわね。奴隷は安くないわ。最低でも金貨10枚はすると思うわよ。自転車操業の状態だったのかもね。」
「なるほど、高く売れるのは階層主くらいだしな。二宮に聞けば分かるだろうが、もうあいつには会いたくない。」
「同感っす。」
入っていたのは、予備の武器と防具と思われる物と、金貨数十枚と銀貨。
テレポートの石も1個だけ。
近藤の持っていたのを合わせても2個だ。
その他もミツルの護衛が持っていたのと大差無い。
感想としては、50階まで行ったとは思えない所持品だ。
それこそ、湯水のごとく仲間を犠牲にしていたのだろう。
改めて気分が悪い!
その後は、カレンとリムに合流して、鍛冶師仕事に精を出す。
その結果、レッドウィッチの素材から、簡単ながらも武器を作ることに成功した。
レッドウィッチのナイフ:攻撃力+3 ?? ?? ??
「うん、思った通り、攻撃力自体はカスだな。しかし、特殊効果の付け方次第で大化けするのは間違いないな。」
「そうっすね。何付けるっすか?」
「割合アップ系統の効果は防具に付けて、混乱とかの特殊効果に絞ってみたらどう?」
「うん、リム、それが良さそうだ。だが悩むな。相手に耐性があっても、どれか最低でも一つは効くようなのにしたいな。」
「現在付けられるのは、睡眠、混乱、麻痺、暗闇、沈黙の5つっすね?」
「うん、そこから3つだ。」
俺達は悩んだ挙句、睡眠、暗闇、沈黙にすることにした。
理由は単純で、決まった時の効果が高い奴だ。
「よし! できたぞ! しかし、前回もそうだったが、この作業は疲れる。」
「おめでとうっす!」
「流石はアラタね。それで名前はどうする?」
「う~ん、そうだな。これは未知の魔物相手の時間稼ぎに有効だな。これからは想像できないようなのが出てきそうだしな。ならば俺が持つべきだろうから、俺がつけるか。」
「ん? あ! アラタの考えが分かったわ! その役目はあたしがする! あたしが持つ!」
「チッ! 勘のいい奴め! それは全てのステータスが最も高く、且つ耐性も高いチートな俺の仕事だ!」
「あ! そういうことっすか! ならそれは盾役のあたいっす! あたいがつけるっす!」
「ふっ、もう遅い! 命名! 【三重苦のナイフ】!」
「「あ~っ!!」」
「カレン、リム、気持ちは嬉しい。だが、これからの偵察はやはり俺が適任だ。今までは、お前達がそうさせてくれなかったが、これからは違う。全員が生き残る為にはこれがベストだ! 感情論での異議は受け付けない!」
アホ勇者共とは全く逆の布陣。
そう、良く考えればこれが最善なのだ。
確かに、誰か一人でも生き残ればいいという設定ならば、弱者を犠牲にするのもありだろう。
だが、全員が生き残る前提だと違って来る。
強者が前に出るべきだ!
「そう、悔しいけど反論できないわね。でも・・、でも・・、絶対に無茶しないでね!」
「あたいもまだ未亡人にはなりたくないっす! ヤバくなったら、あたいが前に出るっす!」
「うん、ありがとう。でも、俺も死ぬ気はさらさらない。常に生きて帰ってお前達を抱く! そしてイオリの言っていた、真実って奴を見つけてやる!」
その後は、【リフレクトシールド】をもう一個作り、カレンに持たせる。
俺はそこで限界となり、二人に寄り添われながら寝室に転がり込んだ。
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