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22歳♂ 何故か女の体に転生しました。  作者: BrokenWing
第二章
66/99

1ヶ月 VS 1年&2年

       1ヶ月 VS 1年&2年



 現在、俺は、以前のミツルを大幅に上回るアホ勇者二人と、60階層のワープの小部屋に居る。


 う~ん、こいつらの場合は、アホという言葉は合わないか?

 馬鹿・・・、でもないな。

 適切な表現方法があれば、誰か教えて欲しいものだ。


「へ~、ここがお前の60階層なんだ。じゃあ、早速案内しろよ!」

「どうせ、20階層あたりでしょう。でも、こいつを途中で一人にしちゃえば・・・。」

「あっはっは! そいつは面白れぇ~! ヨウジも鬼だなぁ~。」


 まあ、やろうとしていることは想像がつく。

 さっきから、なんかチクチクするような違和感があったので、ステータスを見ると、暗闇と沈黙、そして毒の耐性の表示が明滅している。

 攻撃を受けている証拠だろう。


 ちなみに、60階層に飛んでから、カサードにテレフォンで連絡を取り、こいつらの会話をダイジェストで送っている。

 その目的は言わずとも知れよう。


「じゃあ、行きますよ。先輩方、但し、こっから先は俺も行った事ないんで、どんな魔物が出るか知りませんけど。」

「お前はアホかよ! それを調べるのがお前の役割じゃねぇか! おら、さっさと行けよ!」

 

 ふむ、こいつらの奴隷と同じ扱いのようだ。


「ってか、先輩方、さっきからちくちくうざいんで、下手な魔法使うのやめてくれませんかね?」

「なんだよ、耐性持ってたのかよ! あ~、こいつは冗談だ。お前の実力を知りたくてな!」

「だから言ってるじゃないですか。先輩の半分以下のレベルだって。」


 能力値は倍以上だがな。


 ん? 部屋を出た瞬間、ついて来なくなったな。


 俺が振り返ると、小部屋の入り口で、二人が何やらにやにやしている。

 なるほど、入り口を塞いだつもりと。 


「よし、部屋から出たな! これでおめぇ~はもう帰れねぇ! ヨウジ! やっちまうぞ! こいつ、うざいんだよ!」


 確かに、小部屋に入れなければ、一階へのショートカットもテレポートも使えない。


「二宮さんも仕方ないですね~。でも、ここなら証拠も残らないしいいですね。死体を持って帰って報告すれば、また爵位が上がっちゃいますよ。」


 確かには証拠は残らないかも知れないが、カサードには聞かれているぞ。


「そういうこった! 喰らえ! ボルケイノ!」

「殺しちゃってもいいですよね。サンダーラッシュ!」


 俺は両方、あっさり躱す。

 そして、カサードに話しかける。


「カサードさん、こんな感じだ。殺してもいいか?」

「事情は分かるし、儂には止める権限も無いのう。じゃが、できれば生かしておいて欲しいのう。何かに使えるかもしれんでの。」

「分かった。努力する。」


 俺はここでテレフォンを切った。

 俺も当然、簡単に殺すつもりははなから無い。

 しかし、不測の事態が起これば保証は出来ない。


「なんだこいつ! ちょこまかとうざいぞ! こうなりゃ範囲魔法だ! ファイアトルネード!」

「じゃあ、これは? ウィンドカッター!」


 ふむ、これは面倒だ。

 喰らっても、大した事ないだろうが、やはりダメージは極力避けたい。


 俺は、この時の為に作ったと言っても過言ではない、【リフレクトシールド】をアイテムボックスから取り出した。


 俺に迫ってきた炎の渦と、無数の空気の歪みが、見事に反射される!


 ふむ、範囲魔法を反射すると、こうなるのか。


 反射された炎の渦は、二宮、近藤、両方を包み込む!

 近藤のほうは、自分の放った【ウィンドカッター】も相まって、苦痛の悲鳴を上げる!


「うぎゃ!」

「な、なんだよ? え? 反射?」

「二宮さん、ここは引きましょう! 僕ら魔法タイプには相性が悪いです!」

「そうだな、ヨウジ! よし、小部屋に入れ!」


 まあ、そうなるわな。


「縮地!」


 俺は二人を追い越して、小部屋の中央に陣取る。


「へ! 馬鹿か! テレポートしちまえば終わりだよ! ヨウジ!」

「はい! テレポート!」


 何も起こらない。


「え? テレポート! テレポート!」


 石を握りしめながら、何度も叫ぶ近藤が凄く滑稽だ。

 しかし、本当にアホだな。


 敵意を持つ者が近くに居る場合は、テレポートは成功しない。

 そして、ダンジョン内でテレポートが出来る場所は、ワープの小部屋しか無い。

 つまり、こいつらが帰るには、この部屋の俺を排除するか、ここを出て、70階層まで潜って主を倒し、ワープの小部屋に行くしかない。


 ちなみに、主部屋は、逆からは開かない。

 この階にある扉の向こうでは、今も子蜘蛛が増殖しているのだろうが。


「おい、もう帰るのか? 俺はまだ案内できていないんだ。お前等から頼んできたんじゃないか。ほら、行くぞ。」

「へ! 反射できるからって、図に乗るんじゃねぇよ! 俺は剣も得意なんだよ!」

「支援します! ブースト!」


 ふむ、雑魚でも、能力値が上がれば厄介だ。

 光魔法、【ブースト】は対象の攻撃力を一時的に上げる。

 ならば、闇魔法なら、逆が出来るのではなかろうか?


「オールダウン!」


 ん? えらく動きが鈍くなった?

 必死に剣を振り回そうとするが、逆に剣に振り回されているように見える。


 二宮のステータスを確認する。

 全部見れた。


「ぶっ!」


 体力と気力以外のステータスが全部1になっている!

 更に確認する。

 なるほど、耐性の穴は睡眠か。魔法の属性は火と闇と土。


「え? 二宮さん、しっかりしてください!」


 剣を持ちながら、ふらふらと踊る二宮に近藤が慌てて駆け寄る。


「とりあえず、ヒール!」


 ふむ、賢明な判断だ。

 しかし、ここでの最善は、多分【アブノーマルキャンセル】だろう。

 試したことないので、効くかは分からんが。


「そのまま暫く踊ってて欲しいんでな。スリープ!」


 近藤がどさっと崩れ落ちる。

 あっけない。


「お前も寝てろ! スリープ!」


 二宮も倒れる。


「さて、どうしたものか。」


 俺は寝息を立てる二人を前に悩んだ。


「あ、そうか、案内しないといけないんだった! だが、その前に。」


 俺はしゃがんで、二人のアイテムボックスを指から外した。

 やはり近藤は、手にテレポートの石を握っていたので、それも回収しておく。

 用心に、ポケットとかもまさぐってみたが、特に何も無かった。

 当然、武器は真っ先に回収済みだ。


「じゃあ、次は俺の回復だな。」


 初めての魔法、【オールダウン】が結構気力を食ったようで、全部で200近く減っていた。


「ソウルドレイン!」


 うん、全回復。

 鑑定スキルで確認すると、吸われた近藤の気力は、哀れ100を切っていた。

 魔法の無駄撃ちをしてカラにするのも手か。


「オールダウン! ソウルドレイン!」


 これで近藤の気力はカラだ。

 回復役を潰しておけば、かなり安全だろう。


「いい加減、起きろ! このアホ共!」


 俺は二人を蹴飛ばす!

 勿論手加減はしている。

 防御が殆ど無い状態で、俺が本気で蹴れば、間違いなく即死だろう。


「ようやく起きたか。じゃあ、行くぞ。」


 ステータスを確認すると、もうオールダウンの効果が切れていた。

 やはり、30秒くらいか。

 二人は一瞬戸惑っていたが、すぐに正気に戻ったようだ。


「てめぇ~! 何舐めたことしてくれてんだよ!」

「そうです! やはり、さっさと殺すべきでした!」


 いや、近藤、お前殺そうとしてたろ?


 しかし、その後の二人の行動がまた笑える。

 武器が無いのに気付いたらしく、必死に腕を振り回している。

 アイテムボックスを使おうとしているのだろう。


「て、てめぇ~! 何してくれやがるんだ! アイテムボックスを何処にやった!」

「お前、本当にアホだな。俺はこの小部屋から普通に一階に帰れる。登録しているからな。」

「え? ということは?」

「お、アホ2号、気付いたか! そう、今、俺がここから帰ると、お前達は10階降りて、70階で登録しないと出られない! さあ、どうする?!」


「ぐだぐだ言ってねぇで、返せよ! お前を殺せば全部解決なんだよ!」

「それ以前に、ここ、まだ20階でしょ? 僕達だけでも30階までなら行けますよ。」


 二宮は蹴りを放って来るが、俺には丸見えだ。

 足を取って、くじいてやる。


「ててっ! おい、ヨウジ、早く回復しやがれ!」

「は、はい! ヒール! あれ?」


 近藤は不思議そうな顔をしている。

 ふむ、気力が無いのに気付いたようだ。


「じゃあ、俺は行っていいか? それともやっぱり案内居るか?」

「へ! だから、お前を殺せば!」

「無理だな!」


 今度は、殴りかかってきたので、腕を極める。

 骨が折れる嫌な感触が伝わる。


「案内は必要無さそうだな。じゃあな!」

「え、ちょ、ちょっと待って!」


 俺は振り返らず、一階へワープした。


 一階の小部屋で更にテレポートを唱える。




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