奴隷の使い方
奴隷の使い方
朝起きると、何故か横でカレンが寝ている。
俺が伸びをすると、カレンも起きたようだ。
「ん? ここは? 俺は確か工房で・・・。」
「アラタさん、おはよっす。あんなとこで寝たらダメっす!」
「ああ、そうか、じゃあ、ここはカレンの部屋か?」
「そうっす。あたいが運んだっす。」
「うん、ありがとう。ところでカレン。」
「分かってるっす! やったっすね! 流石っす!」
俺は、首に着けたカレンとリムと俺の合作に手をやる。
カレンは鑑定スキルで、こいつのことを知っているようだ。
「うん、そうだ。やったんだよ! できちまったんだよ! そうだ、カレン! こいつの名前を頼む。お前の権利だ!」
「え? あたいでいいんすか? 皆で作った物っす。」
「カレン工房初のオリジナル装備だ。主のお前がつけろ。次からは俺やリムもつけるよ。」
「えへへ。じゃあ、皆で作ったんで、『カレンアラタリム』っす!」
ごふっ!
まんまだな。
やはりこいつに頼んだ俺がアホだったのだろうか?
俺は再び確認してみる。
もう付け替えは不可能なようだ。
「まあ何でもいいよ。うん、ありがとう!」
「じゃあ、ご褒美が欲しいっす!」
カレンの尻尾が俺に巻きついてきた。
俺も、カレンの顔を寄せる。
濃厚に接吻をする。
「あ、あたい・・・。」
「おはようございますにゃ! そろそろ支度の時間ですにゃ!」
ふむ、スワレンファミリー、いつもながら絶妙のタイミングだな。
「おはよう、サラちゃん。風呂は、水残ってるか?」
まあ、昨晩色々とやったんで、まずは身体を流したかった。
「残ってますにゃ。じゃあ、温めてきますにゃ!」
「「それはいい!」っす!」
俺とカレンで湯を沸かしていると、音を聞きつけたのか、全員集まって来た。
「よ~し、もういいだろう。入っていいぞ~。」
「朝風呂もいいですわね。」
「アラタさん、何故カレンさんと一緒なんですか?」
「お姉様方! なんか艶々している気がするわ!」
「あたいはまだっす! サラちゃん恨むっす!」
食事を取り、装備を整え、テレポートで一気に城の前に飛ぶ。
いつもの会議室に入ると、既にカサードが待っていた。
イーライとヤットンも居る。
この日の為に呼ばれたのだろう。
「おはよう、カサードさん。」
「うむ。おはよう、アラタ。イオリは直接行くとの連絡があった。」
「それは残念だな。是非、顔合わせしたかったのに。」
「まあ、そう言うでない。あの娘にも考えがあるやもしれんしの。」
カサードとしても、彼女の行動には文句をつけられないので、少し困り顔だ。
俺達は簡単な打ち合わせと、予定の確認をして、馬車で冒険者ギルドに向かった。
進行役はカサード、そのお付きにイーライ。
従者達の控える、冒険者ギルドにはヤットンのようだ。
契約通り、俺には何の指示も無い。
自由にしていいようだ。
冒険者ギルドに入ると、護衛の兵士達は入り口から先に入らない。
建物内は、全国で管理する冒険者ギルドの管轄なので、一種の治外法権地帯らしい。
ふむ、各国の代表が集まるのなら、公平な場所だ。
兵隊に代わって、今日の為に雇われたと思われる、冒険者が見張りに立っている。
「じゃあ、お前達はここまでだ。行って来る。」
「アラタ、無茶しないでね。」
「お気をつけて。」
「何かあったら、飛んで行くっす!」
オークション会場に入ると、大きな丸いテーブルと、椅子が8脚、用意されていた。
カサードと勇者以外は、後ろで控えるとのことだ。
既に、椅子は5つ埋まっている。
カサードと俺が席に着くと、見計らったように、最後の一人が現れた。
「うん、間に合ってるよね?」
「うむ、イオリ、久しぶりじゃな。お主も早く席に着け。」
「は~い。」
どうやら、この人がナガノさんのようだ。
ロングの黒髪に、切れ長の細い目と眉。
顔立ちはどことなくリムに似ている感じだ。
驚いたことに、彼女は単身で来た。
周りの連中は、全員、重装備の従者を連れているので、浮いて見える。
まあ、自信があるのだろう。
7年前に召喚されたと聞いているので、最低でも20歳は超えているかと思っていたのだが、もっと若く見える。
まあ、この世界での容姿なんか、全くあてにはならないが。
いい例がこの俺だ。
「うむ、皆様、揃われたようじゃな。では、儂はフラッド帝国25代皇帝、カサード・ミスト・ドルトムンク。今日の進行役をさせて頂く。では、まずは各々方、自己紹介とダンジョン攻略の進捗状況をお願いしたい。」
「じゃあ、僕から行くね~。僕は長野伊織。7年前にフラッド帝国で召喚だよ~。顔を合わせた人も多いと思うけど、改めて宜しくね。知っての通り、シスのダンジョン100階で~す。」
これが伝説の勇者?
何とも明るい、ひょうきんな感じの人だ。
「本当に行ったのかよ? シャミこいてんじゃねえのか?」
「二宮殿、今は自己紹介じゃ。では、次は貴殿にお願いしようかの。」
なんか偉そうな奴だ。
大股を広げて、椅子の背もたれに体重を乗せ、何とも無防備な姿勢だ。
少し大柄、175cmくらいか? 茶髪で精悍な顔つき、聖銀の鎧でがっちり固めている。
「全く面倒くせぇなぁ~。俺は二宮宏武2年前にサンタル王国で召喚だ。そんで、隣のこいつは、近藤洋司去年の召喚だ。ドゥのダンジョン、50階だ! まあ、そこの長野さんが言った事がもし本当なら、多分、俺達が2番だな。おい、ヨウジ、お前の分も纏めてやったんだ。感謝しろよ。」
ふむ、こいつら二人はサンタル王国の勇者と。
しかし、威張っている割にはまだ50階か。
やはり、国の足枷がかかっていて、思うように攻略できないのかもしれない。
ちなみに、二宮に紹介された近藤と言う男は、金髪で少し小柄。
まだ幼い顔だ。
素体が若かったのだろうか?
装備は二宮とお揃いのようだ。
「では、次は僕がしますね。僕は山野勇樹。去年、イスリーン王国で召喚です。ダンジョンはヌフで、まだ30階です。よろしくお願いします。」
青髪で真面目そうな奴だ。
見た感じは中学の優等生って印象だ。
「じゃあ、次はあたしね。あたしは長谷泉希。山野君と一緒のイスリーン王国で、今年召喚よ。あたしはまだダンジョンには潜ってないわ。長野さんが、潜れ潜れってしつこいんだけど、ダンジョンに潜って何かいい事あるの? 危ないだけじゃん。」
ふむ、この子には長野さん、接触済みと。
しかし、潜る気は全く無さそうだな。
ここに来る意味あったのか?
この子も青髪で中学生くらいに見える。
何となく同国の山野と似ている、ありえないとは思うが、兄妹の素体か?
「では、次、大葉殿。」
「ぼ、僕は、大葉佳史。シュール共和国で、こ、今年の召喚です。ダンジョンはセトで、ま、まだ5階です。よ、よろしくお願いします。」
こいつがミツルが言ってた後輩君か。
気弱そうだが、結構がっしりとした身体つき。
銀髪で、ミツルクラスのイケメンだ。
「では、最後、近衛殿。」
「俺は近衛新、色々あって今はこの身体です。今年、フラッド帝国で召喚です。トロワのダンジョンで60階です。」
まあ、先輩が多いし、この言葉遣いでよかろう。
思った通り、会場内がざわつく。
まあ、そらそうだ。
長野さん以外の先輩方を差し置いて、60階だしな~。
まあ、皆、色々縛りがあるんだろうと思うと、カサードの待遇に感謝だな。
いきなり二宮が立ち上がった。
「てめぇ~、何オオシャミこいてんだよ! 証明する物が無えからって、図に乗ってんじゃねぇよ! 長野もそうだが、帝国の勇者は嘘吐きばかっだなぁ~!」
「そ、そうだよ! 今年の召喚で、まだ一月も経って無いのに、60階なんてありえないよ!」
ふむ、同国の近藤の援護射撃か。
しかし、二宮の言う通り、証明する物が無いな。
階層主の魔核でも見せれば納得するだろうか?
「う~ん、確かに証明する物が無いですね。でも、それって、先輩方も一緒じゃ? 俺から言わせれば、二宮さん、あなたはここでは長野さんの次に長い。50階なんて嘘でしょ? 本当はもうクリアしちゃったんじゃないんですか?」
あ、やってしまった。
相変わらず俺は一言多い。
近藤も立ち上がった。
「い、言わせておけば! 僕達を嘘吐き呼ばわりは許せません! 二宮さんも僕も、それこそ多大な犠牲を払ってやっと50階なんです! それをまだ来て一月も経って無い人に!」
「近藤殿、二宮殿、落ち着いて下され。アラタの召喚国である儂が言うのもなんじゃが、この者は嘘をついておらん。確かに証明する物は無いがの。」
近藤はかろうじて落ち着いたようだが、二宮はまだいきり立っている。
「じゃあ、てめぇ~、どういった編成で挑んでるんだよ! ちなみに、うちはこいつと冒険者2人、後2人は奴隷だ!」
ふむ、編成内容を聞けば、嘘かどうか分かると。
彼らにどういった基準があるのか知らないが、ここは大人しく答えよう。
「俺の仲間は奴隷4人だ。」
「ほ~、奴隷を使うのは確かに鉄板だよな! あいつらが居ないと盾が無いからな。新顔の魔物相手に奴隷をぶつけるのはセオリーだ。しかし、語るに落ちたな! 奴隷4人だけじゃ、戦力にならねぇだろが! あいつら全然成長しねぇし!」
ん? 何を言っているのか意味が分からん。
あ~、なるほど、こいつらは奴隷を偵察に使っているのか。
確かに、奴隷は死ぬと分かっていても、命令されれば従わざるを得ないだろう。
俺の経験では、相手の攻撃方法さえ分かれば、半分以上勝ったと思っていい。
確かに、その手は効率的かもしれない。
俺は絶対にしないがな!
しかし、成長しないってのは?
あ~、あれか、逆信頼補正か。
そんな使い方したら、奴隷の信頼を得られる訳が無い。
そこまで考えたら、何か全て理解できた気がする。
「あ~、先輩、それで今まで何人殺した? 確かに俺も奴隷じゃないが一人失った。もっとも、俺は彼が奴隷だったら死ななかったのにと、今でも後悔している。ちなみにうちの奴隷は最強だ。勿体なくて偵察なんかには使えないな。」
会場内が再びざわつく。
ふむ、奴隷が偵察役というのは、本当に常識のようだ。
「あっはっは~! こいつは最高だね~! 近衛君、僕のクレアとミレアは強いだろ! だけど、それは近衛君のパーティーだからだ! こいつらのパーティーだったら、即死だよ。」
「な、長野さん?」
「なんだよ、長野が仕込んだ奴隷をこいつにやったのかよ。まあ、それなら納得できなくも無いな。だが、60階の嘘は納得できねぇ~! 長野、お前もだよ! お前も2年で100階なんて、ありえね~んだよ!」
なんか、俺は無性にむかついてきた。
まあ、ここまで言われて、我ながら、良く理性を保てたものだ。
「長野さん、悪いが、今は俺がこいつの質問に答えて、そして、こいつに質問しているんだ。で、先輩、何人殺した? お前のパーティーの死者数は?」
「くっだらねぇ~事を偉そうに聞くんじゃねぇよ! 奴隷なんて消耗品じゃねぇか! 冒険者だって同じだ! 金でカタ着くんだよ! んなもん、いちいち数えてねぇよ!」
ふむ、スコットの時と一緒だな。
怒りが頂点に達すると冷静になれる。
今、俺はとても落ち着いているようだ。
気力を内側に込め、【人物鑑定】と念じる。
相手の許可が無いと失礼なので、滅多にやらないが、こいつらならいいだろ。
ふむ、見えた。
このスキルは相手の魔法防御が高いと無理だと聞いていたのだが。
氏名:ヒロム・ニノミヤ 年齢18歳 性別 男
職業:勇者 冒険者 貴族
レベル:80
体力:358/358
気力:375/375
流石に全部は見えないか。
でも、これで充分だ。
しかし、レベル80で体力358って?
殆ど勇者チート使えて無いのでは?
同じレベルなら、きっとうちの仲間のほうが強いぞ?
せめて、貴族を職業に付けなければ、まだマシだったろうに。
まあ、国王に爵位貰って嬉しかったんだろう。
「ふむ、分かった。数えきれない程殺したと。しっかし、先輩、レベル80まで行って、体力358って低すぎませんかね~? 本当に勇者なんですか?」
「キャ~ハッハッ、近衛君、それ言っちゃ可哀想だよ!」
「な! てんめぇ~! どうやって! じゃあ、てめぇはどうなんだよ!」
本当にアホだな。
ステータスを覗き見るスキルの存在を知らないとは。
「俺か? 俺のステータス言ったら、多分、先輩失神しますから伏せておきますよ。明かす義理も無いし。ただ、レベルは先輩の半分も無いですよ? まあ、色々あったんで。」
ちなみに、俺の現状はこうである。
氏名:アラタ・コノエ 年齢:22歳 性別:男
職業: 勇者 貴族 冒険者 鍛冶師
レベル:30
体力: 788/788
気力: 769/769 +20
攻撃力:780 +20 +160
素早さ:797 +159
命中: 815
防御: 772 +40 +162
知力: 813
魔力: 815 +163
魔法防御:790
スキル:言語理解5 交渉術4 危機感知5 人物鑑定4 マッピング
格闘術5 剣術3
回復魔法5 火魔法5 闇魔法5 風魔法4 時空魔法5
武器作成2 防具作成2 道具鑑定4 魔核合成4
毒無効 麻痺無効 暗闇無効 沈黙無効 混乱無効 音波無効
アイテムボックス2445
まあ、体力だけで比べると、約倍。
見せたら、本当にぶっ倒れるかもしれんな。
「てめぇ~、大嘘こくにも程があんだろ! レベル40も無くて60階って物理的に無理なんだよ! じゃあ、お前! 俺達をその60階とやらに案内してくれよ! ここは情報交換の場なんだろ? 俺達に教えてくれよ!」
俺はカサードを見る。
カサードは何も言わず頷いた。
まあ、俺のすることには口出ししないって約束だから、当然か。
次に長野さんを見る。
「近衛君、いいんじゃない? 僕、この子達には期待してないから構わないよ。」
期待してないから構わない?
なんか意味不明だな。
まあいい、一応この場の責任者とナンバー1の許可は取れたと見ていいだろう。
クレアを見ると、彼女は凄い形相で頷いた。
相当怒っているのだろう。
ならば、彼女が暴れる前に、こいつらをどうにかしたほうが良さそうだ。
「分かりました。先輩方、トロワの60階にご案内致しますので、俺に掴まって下さい。言っておきますが、これはダンジョン攻略の一環ですので。」
「ぐだぐだうっせぇんだよ! でも、そう来なくっちゃねぇ~。おい、ヨウジ、行くぞ! お前等もいい機会じゃねぇか、一緒に教えて貰おうぜ!」
近藤は少し躊躇ってから、一瞬虚空に手を突っ込み、二宮と一緒に俺に近寄って来る。
ふむ、テレポートの石を用意したと見ていいだろう。
こいつは二宮よりはまだマシなようだ。
それでも、ついて来る時点でアホなのだが。
他の勇者達は思いっきり首を横に振っている。
うん、それが当たり前だろう。
自分の命を守れるかどうか分からない場所には、行くべきでは無い。
「じゃあ、掴まって下さい。飛びますよ。」
俺は頭の中に表示された名前から、二宮と近藤を選ぶ。
「テレポート!」
ブックマーク登録ありがとうございます!
評価や感想なんぞも頂けると励みになります。m(_ _"m)




