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22歳♂ 何故か女の体に転生しました。  作者: BrokenWing
第二章
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会談への準備

     会談への準備



 その日は、俺、カレン、リムで新しい工房に籠る。

 基本的な使い方はミニ工房と全く一緒だ。

 ただ、炉が大きくなったことにより、以前よりも、多様な物が作れるようになっている。

 購入時、炉の熱源を火力式にするか、気力式にするか悩んだが、俺達の気力量は常人の比では無いので、気力式にした。

 気力の注入係は専らリムである。


「ふむ、ドリルモグは素早さ10%アップと。これは使えるな。」


 現在、俺達はカレンが作ってくれた鉄製品に、魔核を付与し、魔核の性質を見極める作業をしている。


「ダガー出来たっす。鉄の盾はこっちに置いとくっす。」

「おう。」

「アラタ、次はマイティーカレンよ。」

「う~ん、これは微妙だな。命中+5か。」


 やっているうちに、俺もカレンもいつの間にか、スコットが持っていたスキル、道具鑑定を習得し、いちいちアイテムボックスで確認しなくても良くなったのが、本日最大の収穫だ。

 

「よし、主以外の魔核の効果は確認できたと思う。現在、使えそうなのは、ラージスケルトンの攻撃力10%アップ、レッドサイクロプスの防御10%アップ、ノイジーバットの魔力10%アップ、ドリルモグの素早さ10%アップ、ユニコーンデビルの睡眠効果、メニメニアイの混乱効果、ジャイアントトードの暗闇効果、メイジゴブリンの沈黙効果、キラービーの麻痺効果、くらいだな。」


 どうやら、特殊スキルや魔法を使う魔物の魔核は、その効果が付くものが多いようだ。


「はいっす。おかげであたいの盾は、効果の付かない聖銀よりも、鉄のほうが高性能になったっす。」


 そう、10%アップ系統の魔核は、2個合成させ、20%アップにすると、素晴らしい効果になる。

 ただし、割合系の効果は、別々の装備では重複しない。

 例えば、防御20%アップをつけた盾と鎧を装備しても、40%アップとかにはならない。

 しかし、防御+10の盾と鎧なら、併せて+20となる。

 なので、装備の組み合わせ方を計画的にしないと、無駄が出そうだ。


「よし、そろそろ晩飯だろう。カレンもリムもご苦労様。カレンは明日、いよいよ特殊素材での作成にチャレンジだな。」

「はいっす! お疲れ様っす!」

「あたしも、かろうじて武器作成スキルがついたわ。カレン姉様、ありがとう。」



 今日の晩飯は、クレアとミレアの力作らしい。

 マリンの特訓?の成果を期待しよう。


「ん? 何だこのスープ! このとろみが絶妙の食感だぞ!」

「このお肉、元は分からないけど、脂が乗っていて美味しいわ。流石はお姉様方ね。」

「スープはメニメニアイの目玉、お肉はレッドサイクロプスですわ。」

「あれがこんな料理になるなんて、まさに魔法っすね。」


 元を想像すると、食欲が失せそうだが、これを食べればそんなのは吹っ飛ぶ。

 皆の評価にクレアとミレアはどや顔である。

 マリンも満足そうだ。

 教えた甲斐があったというものだろう。



 食後は、もはや恒例の一家団欒での風呂だ。

 例によって、サラを排除してから皆で浸かる。


 しかし、あの娘・・・、めげんな。


 風呂でゆっくりと寛いだ後は、これまた恒例になりつつある、マリンによる、ティータイムだ。

 今日はコーヒーだった。

 本当にこの世界、何でもあるな。

 そのうちコーラとか出そうだ。


 その晩は、続きをとかせがまれたので、リムと寝る。



 翌日は特に邪魔も入らず、午前中は全員で耐性を上げる特訓をする。

 特訓と言っても、俺が効果を付与した武器で小突いていくだけだが。

 おかげで、全員、現時点で得られる耐性は全て【無効】になった。



 午後は、いよいよ特殊素材を用いてのカレン工房だ。

 まずはスコットが作っていたスケルトンLv5の素材に挑戦する。


「う~ん、鉄は簡単だったっすけど、特殊素材で一から形を作るのは、やっぱ難しいっすね。」

「リム、温度の調整に注意してくれ。一定の温度じゃないと、ひびが入るようだ。」

「はい!」


 それでもカレンは、スコットに追いついたようだ。


「できたっす!」


スケルトンの槍:攻撃力+10


「カレン、おめでとう!」

「やりましたね、カレン姉様!」

「いや~、アラタさんとリムちゃんが居なかったら、多分出来なかったっす。あたいも感謝っす!」



 その日の夕食時、明日の予定を発表する。


「さっき、城から使いが来て、明日の会談の段取りを伝えて来た。」

「全部で何人来るのですか?」

「勇者は俺を含めて7人、シュール共和国から一人、サンタル王国から二人、イスリーン王国から二人、そしてナガノさんだ。」


「思ったより少ないですね。」

「そうだな、ミレア。他国も帝国同様、勇者の育成に失敗しているのかもしれないし、出し惜しみしているだけなのかもしれない。そこは不明だ。」


「それで、アラタ、予定は?」

「朝一に城で簡単な打ち合わせ。その後、冒険者ギルドの地下、あのオークション会場で会談だ。ちなみに、会談に参加できるのは勇者とそのお付きが一人まで。俺はクレアを連れて行くつもりだ。」


「あら? 意外ですわ。てっきりアラタさんは、リムちゃんを連れて行くかと思いましたわ。」

「理由は簡単だ。俺達が会談をしている間、従者は上の冒険者ギルドで待機だ。そこで何かあった場合のことを考えると、現時点で俺に次ぐ能力の、リムを置いておくのが最善と判断したからだ。」

「分かったわ、アラタ。任せて。」


 クレアを連れて行く理由は他にもある。

 防御の要であるカレン、範囲攻撃の要であるミレア、それに万能のリムが加われば、ミツルのパーティー程度なら勝てるだろうとの算段だ。

 もっとも、明日来る勇者達が、ミツル程度とは思えないが。


「それで、クレア、明日、周りは全員人間兵器と思っていいだろう。俺もそんな連中相手に勝てる自信はあまり無い。何が起こるかも予測がつかない。なので、何があっても俺の指示に従って欲しい。逃げろと言ったら、俺を置いて即座に逃げろ。これは命令だ。」


 何しろ俺はまだ召喚されて1月も経っていない、ど新人だ。

 今年召喚された奴以外は大先輩である。

 俺が一番弱いと思っておかないといけない。


「命令なら仕方ありませんわ。でも、そんな指示は出させないように頑張りますわ。」

「うん、ありがとう。次、リム、ミレア、カレン、何かあったらリムの指示に従ってくれ。それで、ヤバそうだと思ったら、即座に建物から出ろ。連中がその気になったら、ギルドホールごと吹っ飛ぶかもしれん。」

「「「はい。」」」


 もっとも、そんな事態になったら、間違いなく戦争になるだろう。

 ナガノさんだって黙っては居ないはずだ。

 しかし、ミツルの例もある。

 どんだけのアホがいるかは未知数だ。



 恒例のサラ排除の儀式を終えて、風呂から上がり、リビングで寛ぐ。

 カレンとリムは、風呂の後も工房でまた頑張っているようだ。


 明日の事を考えると、落ち着かない。

 そこへ、クレアとミレアが紅茶を淹れに来てくれた。

 二人は俺の両脇に座る。


「明日のこと、心配なされていますの?」

「まあ、そんなところだ。」

「心配する必要は無いと思います。アラタさんは勇者様の中でも、一際チートです。」

「そうならいいんだが。ところで、二人共、聞いておきたいことがある。嫌なら答えなくていい。」

「何ですの?」

「聞かなければ分かりません。」


「俺がこの世界に召喚されてから、お前達はリムと一緒にずっと側に居てくれた。お互い、好きでもなきゃ、ここまで続いてなかったはずだ。それで、お前達、いつから俺を好きになってくれたのかなと。俺の場合は、お前達が俺の奴隷になってくれた時だと思う。」


「そうですわね。私はアラタさんがフォートウルフを撃退した時ですわ。」

「ん? 奴隷になる前か。だが、あの時、俺はまだこの世界に来たばかりで、混乱してたと思うぞ? それに、お前達が居なければ、俺は多分死んでいた。」

「あの時、私はこの勇者様ならと確信しましたわ。どれだけの能力を持った人でも、普通、素手で魔物に立ち向かえませんわ。しかも、初めての魔物に対してなんて、それこそありえませんわ。」


「ふむ。俺は無我夢中なだけだったと思うが。」

「そうかもしれませんわね。でも、私にはそれで充分でしたわ。」

「そうか、クレア、ありがとう。」


 俺はクレアを見つめる。

 クレアは俺にしなだれかかる。

 すると、ミレアが割って入ってきた。


「私の事も聞いてからにして下さい。」

「あ、ミレア、済まん。つい。」


「いい雰囲気でしたが、お預けです。私はツインサイクロプスとの時でした。」

「う~ん、俺もあの時は、それこそ必死であまり覚えていないんだよな~。」

「あの時アラタさんは、未知の魔物相手に、最善と思える戦闘をこなし、且つ、初めての魔法でお姉様を助けてくれました。」

「そうだったかな~?」

「はい。私はあの時ですね。この方は強いだけじゃない、と実感しました。」

「なんかくすぐったいな。でも、ありがとう、ミレア。」


「いえ、とんでもないです。では、続きを、その、私にも・・・。」

「ああ、なんか不謹慎かもしれないが、我慢できない。二人共、うん・・、抱かせて欲しい。」


 俺は二人の手を取り、寝室に向かった。



 その晩、二人が寝入った後、俺は妙に寝付けない。

 そうだ! あれをやっておかないと! あれが気になっていたんだ!

 どうせ失敗しても、またダンジョンに潜ればいいだけだ!


 俺は、横で寝息を立てるクレアとミレアを置いて、工房に向かう。


「おや? アラタさん、絶妙のタイミングっすね。」

「そうね、アラタ、間に合って良かったわ。」

「ん? なんだ、お前達、こんな時間まで何をやってたんだ?」


「えへへ。これ見て欲しいっす。本当は武器とかにしたかったんすけど、今のあたい達じゃ、これが精一杯だったっす。」

「でも、凄いのよ、アラタ。カレン姉様が遂にやったわ!」

「どれ、見せてくれ。」


 俺はカレンが差し出す、ネックレスというか、首輪を受け取る。


レッドウィッチの首輪:防御+1 ??  ??  ??


 俺の道具鑑定スキルは上がっていて、装備品に、あと何個特殊能力を付与できるかまで分かるようになっている。


 ふむ、武器屋の主人の情報通りだな。

 後、3個付与できるようだ。

 しかし、これはまさにダイヤの原石だ!


「カレン! リム! 本当にやっちまったようだな! うん、ありがとう。後は俺が付与するだけと言う事だよな。」

「はいっす。後は任せたっす。あたいは寝るっす。」

「ええ、まだ素材はあるから、失敗してもいいわよ。じゃあ、あたしも寝るわね。おやすみなさい、アラタ。」

「おう、任せろ! しかし、失敗したらすまん。じゃあ、二人共、おやすみ。」


 俺は前々から、もしこれに成功したら付与する効果はこれ、と決めていた。


 左手に首輪、右手に魔核を持ち、意識を集中し、気力を込める。

 一つ目、攻撃力20%アップ、うん、成功だ。

 二つ目、ふむ、空いている隙間に流し込む感じだな。

 魔力20%アップ、これもいけたようだ。

 三つ目、空いている隙間が狭い!

 慎重に流し込む。

 素早さ20%アップ、よし! 完璧だ!


 ちょっとしたチート装備の完成だ。


???:防御+1 攻撃力20%アップ 魔力20%アップ 素早さ20%アップ


 ふむ、この世界で全く新しい物のようだ。

 命名タイムだな。

 まあ、これはカレンに付けさせよう。

 これこそ彼女の権利だ。


 早速着けてみる。


「ぶっ!」


 分かっていたことだが、凄い事になった。


 しかし、俺がここに来た目的はこれじゃない。

 俺は実行に移す。


 左手には鉄の盾、右手にはレッドウィッチの魔核。

 レッドウィッチの魔核は、現在2個しか持っていない貴重品だ。

 そして、俺の勘が合っていれば、あの効果がつくはずだ。


 やっぱりな。


リフレクトシールド:防御+15 特殊効果【反射】


 ふむ、これは名前がついているということは、既に持っている奴が居るということだ。

 確かに、レッドウィッチは30階層の主だから、そこまでレアという訳では無いのだろう。


 しかし、これは少し癖のある防具だ。

 こいつを装備したら、如何なる魔法も反射して受け付けないが、同時に魔法で回復も出来ないと言う事だ。

 だが、魔法メインの奴相手には、絶大な効果だろう。

 そして、明日来る人間兵器には、そんなのも居そうだ。



 俺は気がかりを解消し、更に素晴らしい宝を手に入れたせいで、一気に気が緩んだようだ。

 その場で寝てしまったらしい。



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