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22歳♂ 何故か女の体に転生しました。  作者: BrokenWing
第二章
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契約

       契約



 朝、リビングで皆で食事を取っていると、何やら全員の目線が俺に刺さっている。

 リムが切り出して来た。


「アラタ! その、待っていたのに・・・。」


 ん? リムとの待ち合わせの約束とかはしていなかったはずだ。

 しかし、それを契機に、皆が一斉に口を開く。


「そうですわ! 何故来て下さらなかったですの?」

「私も、マリンちゃんの言う通り、扉にハートマークを掛けていました。」

「あたいだって、毛並みを整えて準備できてたっす!」

「私もですにゃ!」


 ふむ、何となく解った。

 そう言えば、朝、廊下に出ると、皆の部屋の扉に変な物が掛かっていたような気がする。

 きっと、マリンに言われて、彼女達からでは無く、俺から行くようにルールが設けられたのだろう。

 う~ん、大奥だな。

 なんか、最後に恐ろしい言葉もあったようだが、そこは流そう。


「あ~、昨日は色々と考え事をしていたんでな。」

「ほら、貴女達、あまり殿方を困らせるものでは無いざます。」

「「「「「は~い。」」」」ですにゃ。」


 ふむ、マリンの教育は着々と進んでいるようだ。


 それはいいのだが、俺は昨晩考えた、魔法の結論についての扱いを迷っている。

 この場で全員に教えてやりたいところなのだが、マリンも居る。

 カサードに知られるのは不味い。

 やはり、ダンジョンで教えるべきだな。



「じゃあ、今日の予定は昨日の通りでいいな?」

「「「「はい。」」」」

「では、カレンとリムは、俺と一緒に工房街で、本格的な鍛冶師道具の購入だ。」

「「はい。」」


 俺達は、先ず購入資金を得る為に、冒険者ギルドに向かう。

 思った通り、俺がスコットの身体になったことを説明するのに少し手間取ったが、白金貨5枚程の量の魔核を処分する。


 鍛冶師の道具は、先日、ミニ工房を買った店で話を聞くと、そこで売ってくれるようだ。

 魔核の付与には大した道具は要らないので、注文はカレンに任せる。

 晩までに、一式、屋敷に運んでくれる手筈となった。

 ついでに、武器や防具の素材である、鉄と聖銀も買い込むと、全部で白金貨3枚ほどの出費だ。


「よし、屋敷に戻って、道具が届くまではミニ工房で修行しよう。」

「はい・・・。あら? ミレア姉様からテレフォンよ。陛下の使いが来ているらしいわ。城まで来て欲しいって。」

「う~ん、仕方無いな。リム、直接城に行くからと伝えてくれ。悪いがカレンは先に帰って、届いたら、配置とかを頼む。城には俺とリムで行く。」

「「はい。」」


 城には俺一人でも良かったのだが、リムも連れて行ったほうが、皆、安心だろうし、交渉事になれば、リムの手腕にも期待できる。

 しかし、一体どういった要件だろう?



「お~、アラタ、呼び立てて済まんのう。」

「いや、カサードさん、風呂の礼も言いたかったし、丁度良かったよ。あの風呂は素晴らしかった。ありがとう。」

「うむ、それは何よりじゃ。それでじゃ、3日後に各国の勇者がこの帝都に来て、勇者同士、親睦を深めたいとの事になってしもうた。」

「ん? 詳しく頼むよ。」


 話によると、このフラッド帝国の周辺の国家、シュール共和国、サンタル王国、そしてイスリーン王国の3国での提案の元、各国の勇者同士で情報を交換し、ダンジョンの攻略に役立てようと言う話が来たそうだ。

 唯一、ダンジョン最下層まで攻略した帝国からすれば、あまり利の無い話だ。


 しかし、相手からすれば、ミツルを引き抜き、ナガノさんを抱える帝国は脅威だ。

 敵情視察が目的だろう。

 断りたかったのだが、その3国が水面下で同盟を組んだようで、下手に断ると戦争にも発展しかねない。


 それで、俺に参加して欲しいとのことだ。


「なるほど。話は分かった。それで、ナガノさんは参加してくれるのかな?」

「イオリは参加するじゃろう。まだ連絡は取れておらんがの。」


 確かに彼女の今までの行動からすれば、こういう機会は逃したくないはずだ。


「なら、俺は必要無いんじゃないのか? ダンジョンの話ならナガノさん以上の人は居ない。俺は会いたいけど。」

「そうもいかんのじゃ。連中は、イオリには当然じゃが、アラタにも興味を持っておる。お主は己の成し遂げた事の価値を知るべきじゃ。」


「俺の成し遂げた事?」

「全く、とぼけおって。召喚されて僅か1週間足らずで、1年経っている橘殿に勝利し、一月かからずに60階層まで到達。イオリも驚いておったわ!」

「う~ん、それは俺がこのリムの身体での2重魂によるイレギュラーの結果と、仲間、いや、家族に恵まれたからだと思う。」


「相変わらず謙虚じゃな。しかし、連中はその秘密を知りたくて仕方が無いようじゃ。」

「しかし、ミツルでも、何の足枷も無く自由にダンジョンを出入り出来ていれば、1年もあれば60階くらい行きそうなんだがな~。」

「それはアラタじゃから言えることじゃ。儂からはそうは見えん。あの者がアラタと同じように潜っておったら、既に死んでおったじゃろう。まあ、それは良い。それで参加してくれるか?」


「戦争とかだったら、嫌だけど、召喚者同士の話し合いなら喜んで参加させて貰うよ。ナガノさんに会えるのなら、尚更だ。ただ、全部話していいのか? 俺の経験を全て話すと、他国の勇者も強くなるかもしれない。それが帝国にとってどういう意味かは誰でも分かる。」


「構わん! アラタの判断に任せるつもりじゃ。」


 これは俺も少し驚いた。

 俺達を人間兵器として考えるのなら、他国にその情報は極力与えたくないはずだ。

 そもそも、会談そのものを断りたかったのだろ?


「う~ん、信用してくれるのは嬉しいが、理由を教えて欲しい。」


 カサードは周りの警備の兵や、お付きを見回す。

 どうやら、下がれと指示したようだ。

 全員、部屋から出て行く。

 リムも気を利かせて、退出しようと立ち上がる。


「いや、リムは残って一緒に聞いてくれ。カサードさん、彼女は俺の許婚者いいなずけだ。いいだろ?」

「ふむ、従者、ましてやアラタの伴侶となれば聞く資格もあるのう。」



 カサードは、数年前にナガノさんと契約を結んだそうだ。


 内容は、もし、帝国に勇者が攻めて来たら、ナガノさんが勇者から帝国を守る。

 その見返りは、帝国はナガノさんとその従者の行動には、例え帝国の不利益になっても、口出ししないと言う物だ。

 外交官特権みたいなものか?

 もっとも、ナガノさんを縛ることは不可能と言う事実に、口実をつけたとも取れる。


 そして、この契約は彼女を完全に、対人間兵器として活用する意図だ。

 確かに、人間兵器は人間兵器にしか抑えられないだろう。

 しかし、もしもダンジョンをクリアするような奴、複数で来られたら、一人で防げるとは思えないが?

 俺の経験を教えることによって、そういう奴を作るヒントにもなりかねないぞ?


「イオリの話によるとの、一度ダンジョンをクリアした者には、この世界の政治や権力なぞには興味が無くなると言っておった。理由は教えてくれなんだが、あの様子に嘘はなさそうじゃ。」


 ふむ、もしそれが本当なら、この国に攻めて来るような勇者は、ダンジョンをクリアできていない奴限定となる。

 そんな奴なら、ナガノさん一人でも対処可能と言う事だろう。


「うん、筋は通っている。俺が話さなくても、ナガノさんが話せばそれ以上と。そして、俺達の能力はやはりチートだ。俺も、相手が勇者なら勇者同士で解決するのがいいと思っている。更に、国同士の戦争とかには、勇者が首を突っ込むべきじゃないという考えだ。」

「儂もそう思っておる。もっとも、そう思えるようになったのは、最近じゃが。しかし、他の王どもは、そうは思っておらぬ。なので、儂としても、極力、接触は控えて欲しいところじゃが、イオリがいいなら儂も口出しできん。事実、あやつは接触しているようじゃしの。」


 う~ん、俺には接触して来なかったのだが。

 まあ、クレアとミレアが代理ということか?


 俺は横のリムを見る。


「うん、あたしも陛下のお話は信用できると思うわ。」

「ふむ、アラタに似たのか、物怖じせぬ娘じゃな。そうでなくては、勇者の従者は務まらぬということかの。」

「あ~、カサードさん、リムの場合は元々だよ。前回のミツルの件のようなことをやらかせるのは、こいつしかいない。」


 再び見ると、リムは膨れていた。


「ふぉっふぉっ、良い良い。それでどうじゃ? アラタもイオリと同じ契約を結ぶか? 儂は、アラタなら、そう遠くないうちに攻略できると見ておるでの。」


 ふむ、俺の行動に制限がかからないのは嬉しい。

 更に、これはこの国が戦争になっても、俺は参加しなくていいということだ。

 しかし、勇者が来た場合、俺も戦闘に参加しなければならなくなる。

 ナガノさんが居るこの国を襲おうなんて考える奴は、色々な意味でヤバそうだ。


 俺は少し迷ったが答えた。


「分かった。その契約を結ぼう。リムもいいか?」

「ええ、アラタがいいなら、あたしに異存はないわ。」

「ならば、勇者近衛よ、汝はフラッド帝国が勇者の脅威に曝された時、それを排除する義務を負う。そして、フラッド帝国皇帝は、如何なる時も勇者近衛とその従者の行動を妨げない。尚、この契約は口頭にて交わされ、両者の尊厳によって履行される。それで良いのじゃな?」

「うん、承知した。」


「それでは、アラタ、ここからは儂の頼みじゃ。この契約は、お主の従者と、イオリ以外には口外しないで欲しいのじゃ。他国には、お主達、勇者の威を借りておきたいでの。」


 まあ、当然だろう。

 いざ戦争になっても、勇者を出さない限り、こちらの勇者が出てこないと知れたら、舐められる。

 抑止力として、引き続き利用させてくれってことだな。


「ああ、それも約束するよ。ところで、ミツルは3日後の会談に呼ぶつもりなのか?」

「橘殿に関しては、ほとぼりが冷めるまでは、ダンジョンにでも籠って貰うのがいいじゃろう。共和国の勇者も来るようじゃし。」

「うん、それがいいだろう。」

「では、手間を取らせたの。3日後は儂が進行役の予定じゃ。宜しくの。」



 今日の話で、ナガノさんの事が少し分かった気がする。

 相変わらず謎は多いが、3日後会える事に期待しよう。


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