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22歳♂ 何故か女の体に転生しました。  作者: BrokenWing
第二章
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魔法書

      魔法書



「う~ん、時空魔法で使えそうなのは、後はこれくらいか。」


 俺は今、魔法書と格闘している。他の仲間も、各々本と格闘中だ。


「ふむ、こうかな? トラースパラ!」


 俺は自分の身体を見る。

 今試したのは、透明化の時空魔法だ。


「うん、成功のようだ。しかし、これはあまり意味無さそうだな。」

「はい、身体だけ見えなくなって、服だけになり、かなり不気味です。」

「ミレア、お前にもそう見えるか。流石にダンジョン内を素っ裸で移動する勇気は無い。お蔵入り決定か。」


「残念ですね。ですが、非常時、逃げる時とかは使えるかもしれません。」

「魔物から逃げる時に、悠長に服を脱いでる時間があるとは思えないが。せいぜい良からぬ悪戯をする時くらいしか使えんな。」

「はい、期待しています。私も後で挑戦してみます。」


 魔法もだが、会話も全く不毛だったな。


 時空魔法は、どうもダンジョンで有効な魔法が少ないようだ。

 テレフォンは重宝したが、外れが多い。

 

 使えそうなのは、透視の魔法、【シースルー】

 これはダンジョンで、壁越しに敵を確認する時に使えそうだ。

 試したところ、隣の部屋の中がきっちり見えた。


 デメリットは、気力の消費が激しい事と、使った後、しっかり切らないと、壁にぶつかって満足に歩けなくなることだ。

 これも良からぬ用途に使えるが、その使い方は封印すべきだろう。


 それと、遠見の魔法、【ファーサイト】

 これは、文字通り遠くの敵を確認するのに使える。

 【シースルー】と組み合わせることで、かなり有用そうだ。



「それでミレアの方はどうだ?」

「はい、こちらで使えそうなのは、【ファイアトルネード】と、【ホーミングファイア】、【アイスガード】ですね。広い場所で試してみたいです。」

「ふむ、ダンジョンで試し打ちが無難そうだな。【アイスガード】は?」

「これは火系統、氷もですが、攻撃の効果を一定量無効化するようです。これもアラタさんに協力して頂かないと、試せませんね。」

「ふむ、こいつは地下室で何とか試せるか?」


 ちなみに、【ファイアトルネード】は範囲魔法で、【ファイアウォール】と比べて、威力も範囲も倍くらいあるそうだ。

 そして、【ホーミングファイア】は、文字通り、敵に当たるまで火球が追いかける。

 これは、俺も覚えるべきだな。


「カレンはどうだ?」

「なんか、あたいでも鍛冶師になれそうっす! 後でスコットさんの道具貸して欲しいっす!」

「おお~! それはいいな! 後でリム、ミニ工房セットをカレンに頼む。だが、今日は皆、これくらいにしよう。続きはダンジョンに入ってからだ。中の方が色々試せそうだしな。」


「了解っす。シャワー浴びてくるっす。」

「はい、私も丁度一区切りつきましたわ。じゃあ、カレン、一緒に行きましょう。」

「なら、私はリムちゃんと一緒ですね。少し休憩しましょう。」

「そうですね、ミレア姉様。アラタ、あの覗き魔法使ったらダメよ!」

「アホ! 使うか!」


 サラが紅茶を淹れてくれたので、皆がシャワーに行ったりしている間、それを啜りながら、俺は尚も本を読む。

 次は回復魔法だ。


「ふむ、クレアが言っていたのは、この麻痺解除の【パラライズカット】と状態異常全解除の【アブノーマルキャンセル】か。しかし、これ等は試せないな。」


 そう、俺達は全員かなりの耐性を得ているので、状態異常になることはまず無い。


 実験台になってくれる人が要るな。

 明日の朝、マリンにでも頼んでみるか。


 ここらで俺も眠くなってくる。

 皆はシャワーを浴び終わったようで、サラに紅茶を淹れて貰って寛いでいる。



「じゃあ、俺も明日に備えて寝るとするか。皆、お休み。」

「「「「おやすみなさい、アラタさん。」」」」



 朝起きると、何故か全員俺のベッドで寝ている。

 いつの間にか、潜り込んできていたようだ。

 俺を真ん中に、両隣がリムとミレア、両端がクレアとカレン。

 結構大きなベッドなのだが、満員だ。


 俺は無性に愛おしくなり、起きる時間でもあったので、全員にキスをして起こす。

 最後にしたクレアが濃厚で、そのまま肉弾戦に引き摺り込まれそうになったが、ノックに救われた。


「アラタ様、おはようございます。マリンざます。食事の用意が出来たざます。」

「おはよう、マリン。その、すまん、少し待ってくれ。」


 この光景をマリンに見られると、些か不味い。

 全員、裸ではないが、寝間着やらネグリジェやらで、結構ヤバい。 

 昨日、節度を持ってとか、注意されたばかりなので、説教を喰らいかねない。


「分かっているざます! ここに皆さんの着替えを置いて行くざますから、支度するざます!」


 ふむ、既にばれていたようだ。

 覚悟はしておいたほうがいいだろう。


 着替えを済ませ、顔を洗ってリビングに出頭する。


 マリンとサラが待っていて、挨拶を交わし、全員でテーブルに着く。

 うん、昨日のことを覚えてくれていたようだ。


 予想されていたマリンの説教は無く、代わりに、俺以外の仲間に何やら渡していた。

 恐らくだが、避妊の魔法薬だな。


 食事を終え、リビングで装備を整えながら、全員のステータスをチェックする。

 この前のミツルとの50階層雪辱戦で、それなりに上がっているようだ。



氏名:クレア 年齢:20歳  性別:女

職業:奴隷〈アラタ・コノエ:死後開放〉

レベル:62

体力:272/272

気力:242/242

攻撃力:290

素早さ:280

命中: 271

防御:259

知力:227

魔力:267

魔法防御:263

スキル:言語理解3 危機感知4 家事5 社交術2 特殊性癖3 マッピング

    棍棒4 槍術5 格闘術2 ガード2

    水魔法4 回復魔法5

    毒無効 麻痺耐性大 暗闇無効 沈黙無効 混乱耐性大

    アイテムボックス1655


氏名:ミレア 年齢:19歳 性別:女

職業:奴隷〈アラタ・コノエ:死後開放〉

レベル:61

体力: 247/247

気力: 275/275

攻撃力:242

素早さ:275

命中: 249

防御:243

知力:272

魔力:280

魔法防御:266

スキル:言語理解4 危機感知4 家事3 社交術2 特殊性癖3 マッピング

ガード2 剣術2

    火魔法5 風魔法4 時空魔法1

    毒無効 麻痺耐性大 暗闇無効 沈黙無効 混乱耐性大

    アイテムボックス1708


氏名:カレン・ロール 年齢:21歳 性別:女

職業:奴隷〈アラタ・コノエ:死後譲渡:リムリア・ゼーラ・モーテル〉

レベル:49

体力:230/230

気力:171/171

攻撃力:232

素早さ:223

命中: 224

防御:230

知力:118

魔力:118

魔法防御:128

スキル:言語理解3 危機感知4 マッピング

    剣術4 格闘術3 ガード5

    毒耐性大 麻痺耐性中 暗闇無効 沈黙耐性大 混乱耐性大

    アイテムボックス578


氏名:リムリア 年齢:16歳  性別:女

職業:奴隷〈アラタ・コノエ:死後開放〉

レベル:52

体力:368/368

気力:383/383

攻撃力:376

素早さ:384

命中: 384

防御:368

知力:406

魔力:386

魔法防御:376

スキル:言語理解5 交渉術4 危機感知5 人物鑑定3 特殊性癖2 家事2 社交術2 マッピング

    格闘術5 剣術3

    回復魔法5 水魔法3 土魔法1 光魔法3 時空魔法3

    毒無効 麻痺無効 暗闇無効 沈黙無効 混乱耐性大

    アイテムボックス2007



 ふむ、皆順調のようだ。


 気になっていたリムのステは、俺が離れた時の約半分くらいか。

 それでも仲間の中では断トツか。

 スキルの方はあの当時のままだな。

 

「ンプッ!」


 俺は思わず吹いてしまった!

 良く見ると、置き土産がしっかりとあった!

 しかもレベルが上がっている!


「ンププッ、俺がくたばっていた間に、頑張って『特殊な』スキルを上げてくれたようで何よりだ。」

「そ、それはお姉様達が悪いのよ! あ、あたしのせいじゃないわ!」


 顔を真っ赤にしてリムが抗議する。


「あらあら、でも、そのスキルはもう必要ありませんわ。」


 クレアが俺の腕に手を回す。


「そうですね、お姉様。リムちゃんが可愛いからいけないのです。」


 ミレアも俺の余っている手を取る。

 カレンは溜息をついている。



「デルーク(ヤットン)さんが、お見えになられたざます。勇者橘様もご一緒ざます。」


 ん? ヤットンは今日迎えに来てくれる予定だから当然だが、ミツルは聞いていない。

 一体何の用だろう?


「分かった、応接室に通してくれ。」


 俺達も急いで装備を整え、応接室に向かう。


「おはよう、ヤットン、ミツル。しかし、ミツルはどういった要件だ?」

「おはようございます、近衛様。」

「おはよう、アラタさん。実は相談があるんだ。」


 俺は黙ってミツルの話を聞く。


 ミツルはカサードから、シスのダンジョンで、建前上は攻略というレベルアップを頼まれたらしい。

 それは彼も異存ないのだが、問題はメンバーだ。

 共和国でもそうだったようだが、護衛の兵では役に立たないらしい。

 ミツルは一度、俺の仲間とダンジョンに潜っているから、あいつらとの違いがある程度だが理解できたのだろう。


「本当はアラタさんのパーティーに加えて貰いたいのだけど、陛下が許してくれないんだよ。」

「まあ、そうだろうな。俺達みたいな人間兵器、一緒にするのは危険と考えるのが普通だ。会わせてくれるだけでも太っ腹だと思う。」

「それで、人選のコツとか教えて欲しいんだ。」

「う~ん、ヤットンにアドバイスは貰ったか?」


 俺はヤットンを見る。


「はい、橘様には、冒険者に登録して頂き、パーティーメンバー募集の依頼を出したのですが。」

「ふむ、しかし、信用できそうなのが居なかったと。」

「そうなんだよ。20階より下に潜りたいって言えば、皆逃げ出すし、残る奴は金の話しかしないんだ。」

「確かに報酬は重要だが、そればかりに固執する奴は信用したくないよな~。」


「あと、今日は連れて来て居ないけど、皇女がダンジョンにまでついて来るって聞かないんだよ。」


 ふむ、カサードがミツルに甘くなったのには、その背景があるのか。

 娘婿になるなら信用できると。


「ところで、ミツル、お前爵位は貰ったか?」

「ん? 爵位? 僕は興味無かったのだけど、陛下が押し付けて来たから仕方なく貰ったよ。男爵?とかいう位だけど。」


 なるほど、ミツルには強制的に授与したか。

 ミツルが帝国の所有物という既成事実を作る為と、娘婿候補という理由だろう。

 俺に男爵より上の子爵をくれたのにも納得だ。

 だが、それなら都合がいい。


「ミツル、お前、嫌かもしれないが、奴隷を買え。ちなみに、俺の仲間は全員俺の奴隷だ。勿論、世間一般の奴隷扱いはしていないがな。」

「え? そんなので大丈夫なの?」


「疑問は当然だろうが、騙されたと思って試してみろ。ただし、奴隷は仲間だ。大切にしろ。命を預け合う仲間だとお互い理解しないと、逆効果だからな。そして、もしお前が仲間の信頼を得ることが出来れば、そこらの冒険者よりも戦力になる事は保証する。」

「うん、良く分らないけど、アラタさんが言うならやってみるよ。」


「ヤットン、ダンジョンに連れて行けるような奴隷を選別できるか?」

「はい、そういう事には自信があります。ただ、経費で落とす自信がございません。現在、橘様は無一文状態ですので。」


 げ! リムの奴、ミツルを50階まで付き合わせて、何もやらずにポイしたのか!

 鬼だな。


「リム、ドリルモグの魔核を・・・そうだな、10個くらいでいいか。出してくれ。足りないようなら、後は自分で稼げ。お前ならすぐに稼げる。」


 リムが呆れた顔をしながらもテーブルに並べてくれる。

 これは前回のミツルの取り分という事で良いだろう。


「ところでミツル、お前、アイテムボックスは持っているか?」

「え? アイテムボックスって何?」


 まさかとは思ったが、これは重症だ。聞いて良かった。

 多分、今まではお付きの者に全部任せていたのだろう。


「リム、アイテムボックスもだ。この前の勇者の遺品が一つ余っていただろう。」

「全く、アラタはお人好し過ぎるわ! でも、そこがいいのだけど。」


 確かに俺もお人好しだとは思う。

 しかし、この状態でダンジョンに放り込んだら、結果は火を見るより明らかだ。


 リムがアイテムボックスの指輪をミツルに渡す。


「使い方はヤットンに聞け。魔核の売り方もだ。」

「ありがとう、アラタさん。本当に何から何まで。益々僕の愛が深まったよ。」

「あ~、その愛とやらはどうでもいい。だが、くれぐれも言っておく。確かにお前は強い。だが、お前一人じゃ潜れない。仲間と一緒だから潜れるということを忘れると、多分死ぬ。」


 これで俺はミツルと別れ、さっさとダンジョンに行こうかと思ったが、ふと閃いた。


「ミツル、お前、耐性は取得しているか?」

「え? 毒耐性と混乱耐性は取得しているよ。中だけど。」


 クレアがにやつく。俺の意図が分かったようだ。


「じゃあ、授業料代わりに少し付き合ってくれ。」

「ああ、アラタさんの頼みなら喜んで。」


 俺達は地下室にミツルを連れて行き、回復魔法の実験台になって貰った。

 麻痺にする方法はないので、スコットの作ってくれた杖と槍で、暗闇と沈黙状態にする。

 試せるのは【アブノーマルキャンセル】だけだが、それで充分だ。


 うん、成功だ。

 リムにも早速覚えさせる。


 ついでにミレアの【アイスガード】も試す。


 ミレアの身体が青白く光る。

 そこに俺が思いっきり手加減した【ファイアショット】を放つ。


「どうだ?」

「効いているようです。ダメージがありません。」


 リムの【サンダーラッシュ】、クレアの【アクアダーツ】でも試してみたが、これは無効化できないようだ。


 ミツルにもかけて試してみたが、他人にも問題無くかけられるようだ。

 うん、これは使えるな。

 俺も早速覚えた。


「おかげで色々試すことができた。ありがとう。」

「いや、アラタさんの役に立てたのなら僕はそれだけでいいよ。」


「後、もし魔法を覚える気があるなら、うちの侍女に使わなくなった魔法書を預けておくので、借りに来るといい。魔法に関しては、これもヤットンに聞いてくれ。じゃあ、俺達はダンジョンに行く。お前も気を付けてな。」

「うん、ありがとう。」



 俺は使わなくなった魔法書と、金貨10枚をマリンに預けて屋敷を出る。

 外にはヤットンの仲間が待っていた。


「私は橘様と冒険者ギルドで魔核を処分してから、奴隷商に参ります。近衛様は私の仲間がダンジョンまでお送り致します。今日はありがとうございました。」

「うん、ミツルを頼む。あのままじゃ死んでたぞ。」


 ヤットンの方針としては、ある程度きつくなってから教えるつもりだったのかもな。

 ミツルの能力は恐らく承知しているだろうから、今の階層ならまだ大丈夫と判断していたのかもしれない。

 だが、俺のした苦労をミツルもわざわざする必要は無いと思う。

 俺は間違っているのだろうか?



 ん? 何か忘れている気がする。

 そうだ! カサードの娘だ!

 しかし、俺の問題では無いし、手にも余る。

 本当にミツルに惚れているのなら、足手纏いになるので、ダンジョンにはついて来ないだろう。


 多分。



「さあ、久しぶりのダンジョンだ!」


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