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22歳♂ 何故か女の体に転生しました。  作者: BrokenWing
第二章
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新居

      新居



 奴隷商を出ると、ヤットンが待っていた。

 相変わらず気配の読めない奴だ。

 俺達がホテルを出る時からついてきていたのだろう。


「おはよう、ヤットン。丁度良かった、この街で不動産というか、家の売買をしているところを教えてくれないか? 昨日も言っていたが、家を買いたい。」


 ヤットンは、帝国に雇われた俺の見張りなのだが、もはや只のガイドだな。

 気は退けるが、便利に使わせて貰っている。


「おはようございます、近衛様。そういうことでしたら、あの店がいいでしょう。」


 ふむ。日本の不動産屋と変わらないな。

 お勧め物件らしき物が、見取り図を添えて貼り出してある。


 俺達は早速カウンターへ行き、家を求めている旨を伝える。

 ひょろっとした体格の初老の男性が迎えてくれる。

 ここの責任者だろうか?


「いらっしゃいませ。では、どのような物件を?」

「5LDK、と言っても分からないか。リビング、台所、手洗い、風呂場があって、寝室用に5部屋あればいい。」

「風呂場というのはございませんが、シャワー室でよろしいでしょうか?」

「うん、それでいい。後、できれば地下室のような、作業できるスペースがあるといい。」

「少々お待ち下さい。」


 男が返事をすると、他の従業員があちこちから資料を持って来る。


「これなどは如何でしょうか? 爵位までは申せませんが、貴族の方がお使いになっていたものです。」

「ふむ。条件は全て満たしているな。8部屋はちと多いが。で、いくらだ?」

「この物件ですと、白金貨で42枚、諸経費を合わせまして、白金貨44枚。端数は切り捨てさせて頂きます。」


「ミレア、どうだ?」

「はい、恐らく領地を持った貴族が、帝都での拠点として使用していたものでしょう。私も相場までは詳しくないですが、問題無いと思います。」


 俺はリムの顔も見る。

 貴族関連ならば、リムも知っているかもしれない。


「そうね。誰が、までは分からないけど、どういった人が、まではミレア姉様の言う通りだと思うわ。おそらく状態はいいはずよ。」


 丁度、予算の白金貨50枚以内だ。

 俺は予算不足でも、気に入ったのがあれば、手持ちの魔核を処分するつもりだったが。

 

「分かった。じゃあ、実際に見せて貰って構わないか?」

「はい、只今ご案内致します。」


 現地に着くと、洒落た洋館だった。広くはないが、庭もある。

 場所は城からは少し離れているが、街の門からは割と近い。

 普段、街を出てダンジョンに入る俺達からすればいい立地だ。

 逆に、城に用がある貴族からすれば、いい立地とは言えないだろう。

 

 中に入ると、1階がリビング、応接室、そして台所とシャワー室、手洗い。


 ちゃんと地下室もあった。

 それなりの広さでレンガの壁だ。

 これなら工房に利用できそうだ。

 ワインセラーのようなものが置いてあったので、酒蔵だったのかもしれない。


 2階は全部寝室で、各部屋、ベッドやクローゼットが置いてあった。

 この世界ではこういう物は、皆残していくらしい。

 

「ふむ。いい感じだ。シャワー室が広いのもいい。あれなら風呂を作れそうだ。皆はどうだ?」


「私は気に入りましたわ。こんなお屋敷、夢のようですわ。」

「素晴らしいと思います。本当にこんなところに住まわせて頂いていいのですか?」

「広すぎるっす。ちょっと落ち着かないっす・・・。」

「あたしはいいと思うわ。狭いけどちゃんと庭もあるし。状態も問題ないわね。」


「じゃあ、決まりだ。早速手続きをさせて貰おう。」


 こんな高額の買い物をするのに、あっさり決めてしまっていいものか少し迷ったが、皆も気に入っているようだし、いいだろう。

 カレンじゃないが、俺も確かに広すぎるとは思う。

 だが、すぐに慣れるはずだ。


 管理に関しても、元侍女が二人居る。

 何とかなるだろう。

 しかし、俺達は大半はダンジョンに居るはずなので、管理してくれる人を別に雇うべきかもしれないな。


 店に戻って、手続きを済ませる。

 俺が勇者だと知って、店の者は全員驚いていたが、納得しているようでもあった。

 それもそうだ。こんな物件、即金でポンと買える奴はそうそう居ないと思う。

 早速今日から住めるようで、鍵を貰う。


 屋敷に着いて中に入ると、俺は皆に指示を下す。


「よし、今日からここが俺達の家だ。まずは足りない物を揃えよう。俺とリムは買い揃える物のリストアップ。クレアは台所を頼む。ミレアとカレンは各部屋の掃除だ。」

「「「「はい!」」」」


 皆で一斉に作業に取り掛かる。

 俺とリムは各部屋を回って、相談しながらメモを取る。

 こういう、秘書のようなことをさせると、リムの右に出る者は居ない。


「よし、じゃあ、俺とリムは買い出しに行って来る。クレア、今晩はここで食事できそうか?」

「そうですわね。多分大丈夫だと思いますわ。ただ、まだ足りない物が出るかもしれませんわ。」

「分かった。何かあればミレアに言って連絡を取ってくれ。」

「かしこまりましたわ。」


 テレフォンの魔法を使えるのは、現時点で俺とリムとミレアだ。

 この魔法は、こうやって別行動する時に重宝する。

 リムは当然として、ミレアが頑張って取得してくれたのは嬉しい。

 時空魔法の素質があったようだ。

 

 だが、いくら俺の魔力でも、誰にでも連絡を取れる訳では無い。

 色々試してみたが、親しい人間でないと無理なようだ。

 ちなみに、ヤットンには連絡が取れる。

 まあ、これだけ顔を合わせていれば当然か。

 実際、今も屋敷の前で待機しているしな。



「じゃあ、まずは家具だな。」

「そうね。あたしはアラタのベッドだけは、その・・、えっと、大きめのを用意したほうがいいと思うわ。」


 リム、何を考えているかが丸分かりだぞ。

 

 今のところ、リムに対しては、俺にそういう気は無い。

 だが、彼女達のこともある。

 俺は迷ったが、ここは大人しく従っておいた方が良さそうだ。


 いろいろな店を回って、一通り買い揃える。

 途中、ミレアから連絡が入り、足りない食材とかも頼まれた。

 リムの誕生日祝いということで、クレアが頑張ってくれるようだ。


「さて、丁度家も出来たし、ここで俺の懸念事項を解消させたい。」


 俺は買い物の途中で見つけた、葬儀屋に入る。


「いらっしゃいませ。どなたかご不幸があったのでしょうか?」


 言葉とは裏腹に店の主人はにこやかだ。


「まあ、そんなところだ。ここは墓石とかも扱っているか?」

「勿論です。どのような物をお望みでしょうか?」


 俺は日本にある、キリスト教で使うような墓のイメージを伝える。

 屋敷は洋館風だし、その方が合うだろう。


「なるほど。かしこまりました。一般的なものですね。それならば、後は墓碑銘を入れるだけというものがございますが。」


 主人は、店の一角にある、墓石ばかりを並べたスペースに案内する。


「うん、これがいいな。大きさも丁度いい。それでは、これに彫ってくれるか?」

「かしこまりました。少々お時間を頂きますが、それでも夕方には出来るかと。どちらにお持ち致しましょうか?」


 俺は屋敷の場所を伝え、墓碑銘を指定し、代金を支払う。

 金貨4枚程だった。

 

 なんだかんだで、今日はもう白金貨一枚近く消費している。

 しかし、この、スコットの墓だけは作っておきたかった。

 中に入れる物が無いので、形だけなのは承知している。

 だが、これが無いと、俺がスコットの身体を使っている事に、割り切れない気がするのだ。


「じゃあ、アラタ、買い出しとかはこれで全部終わりね?」

「いや、まだ残っている。リム、着いて来い。」


 俺はリムの手を引いて、アクセサリーショップに入る。


「さっき、通りすがりに良さそうなのを見つけてな。」


 俺は店員に言って、ウィンドウに展示されているものを出して貰う。

 魔結晶に、シルバーの鎖を付けたネックレスだ。

 実用品としての価値もあるだろうが、俺は普通の魔結晶よりも透明感のある色合いが気に入っていた。


 彼女の首に着けて見る。

 うん、思った通りだ。

 真っ白な肌に良く似合う。

 

「え? アラタ、これ、あたしに?」

「ああ、誕生日祝いだ。俺は結局何もしてやれなかったからな。今までのお礼の意味も込めたい。」

「う、嬉しいわ。ありがとう。大事にするわ。と言っても、ダンジョンに着けて行くけどね。」

「ああ、そうしてくれ。いつもそれを着けているお前を見られるなら、俺もその方が嬉しい。」


 はたで聞いたら赤面しそうな文句だな。

 だが、今日のリムを見て、俺も昂っていたのだろう。


「じゃあ、帰るか。我が家へ。」

「ええ!」



 屋敷に帰ると、かなり綺麗になっていた。

 埃を被っていたところが丁寧に拭かれ、作られた当時の色合いを戻したようだ。


 クレアとミレアを残したのは正解だったな。

 あいつらは城でこういった事に慣れているようだし。

 カレンは庭の草を刈ってくれたようだ。


「「「お帰りなさい、アラタさん。リムちゃん。」」」

「只今、皆、ご苦労様。じゃあ、リム、頼む。」

「はい。」


 リムは各部屋を回って、アイテムボックスから今日買った物を取り出して行く。

 それを俺とカレンで配置していく。

 クレアとミレアは台所で食材と格闘してくれている。



「ふう、これで大体形になったな。細かい所は明日やろう。」

「そうですわね。食事の準備もそろそろできますわ。」

「今日はリムちゃんの為にご馳走です。」


 玄関がノックされる。

 墓石が来たようだ。


「うん、そこの庭の隅に頼む。皆、来てくれ。」


 葬儀屋が設置してくれた墓の前に皆で整列する。


「これは、スコットさんのっすよね?」

「ああ、中身は無いが。というか、中身はここだが。俺がこうしたかった。」

「分かるっす。ダンジョンから帰って来なかった奴にも、墓だけ作るっす。」


 『勇者と共にダンジョンに潜り、勇者を支えた男。スコット・オルガン ここに眠る。』


 俺が考えた墓碑銘だが、皆に違和感は無かったようで、少し安心した。


 皆で黙祷を捧げた後、リビングに戻る。


「さあ、リムの誕生日祝いと俺達の家の入手祝だ!」


「皆さん、準備できましたわ。」


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