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22歳♂ 何故か女の体に転生しました。  作者: BrokenWing
第一章
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蘇生2

       蘇生2



 俺は片膝をつき、気力を内側に込め、右手で水晶に触れる。

 念の為に、左手でスコットの手を握る。

 かなり冷たくなっている。


 頭の中ではリムの声が響いている。


「スコットさん! お願い! 帰って来て!」


 周りの皆も、何やらぶつぶつ唱えてくれている。


 俺は生前ゲームとかで得た、あらん限りの蘇生魔法を唱える!

 

「レイズ! リカーム! ザオリク! リナベイト! リボーン! フェニックス!」


 更に、最後に付け足す!


「スコット! この身体に戻って来い! おい閻魔! もし見ているなら手を貸せ!」


 

 何も起こらなかった。


 確かに難しいことは承知している。

 俺自身、半信半疑だったのも事実だ。

 しかし、今までの事を総合すると、出来ても不思議じゃなかったはずだ!


「スコット~ッ!!」


 俺は再び思いを込めて叫ぶ!



 何も起こらない。


 スコットのステータスを確認する。


「!」


 ステータスの表示が薄れだした!


「ヤバい! ヤバい! ヤバい! 間に合え! スコット! スコット! 帰って来い!」



 何も起こらない。


 遂にステータスが表示されなくなった。



 俺は肩を落とした。


 全員が俺に視線を注ぐ。


「済まない。できる限りのことはやった・・・はずだ。だが・・・。」


 俺は再度確認の為に、スコットをアイテムボックスに入れる。


人間の死体×1


 俺はもう一度スコットを取り出し、再び同様に呪文を唱えてみる。

 やはり何も起こらない。

 ステータスも表示されない。


「失敗した!」


 俺はその場にへたり込む。

 スコットの手は握ったままだ。

 もう完全に冷たい。


「その、近衛様を疑う訳ではありませんが、今まで私共祭祀が、全力で研究してきた事でございます。やはり厳しかったのでは?」


 イーライに他意の無いことは分かっていた。


「ダンジョンに潜ったことの無いお前に何が分かる! できるはずだったんだ! スコットは! スコットは!」


 これは八つ当たりというものだな。

 自分でも分かっている。

 だが!

 諦めきれない!

 

「アラタさん! 事実を受け止めるのですわ!」

「そうです! 人間は一度死んだら生き返りません!」

「多分っすけど、それが出来たら、世の中の仕組みが変わってしまう気がするっす。」


 皆、俺の事を思って言ってくれているのだろう。

 スコットが死んで悲しいのは、皆一緒のはずだ。

 何も俺だけじゃない。

 しかし、こいつらはきちんと受け止めている。


 そう、この中で俺が一番弱かったのだ。


 何が勇者だ!

 これだけの力がありながら、俺が最低じゃないか!


「祭祀長、悪かった。手伝ってくれてありがとう。スコットと別れる気持ちを固めたい。済まないが、仲間だけにしてくれ。」

「いえ、お気になさらずに。私も力及ばず申し訳ございません。では、失礼させて頂きます。」


 イーライは、俺達を残して部屋を出て行った。

 先程から、部屋の入り口に警備の兵が来ていたが、そいつらも見えないところに退いたようだ。



「それで、お前達はどうする?」


 全員、俺の質問の意図が読めず、戸惑っているようだ。


「俺はスコットを守り切れなかった。むしろ逆にスコットが俺を守ろうとして、そして死んだ。」

「私達が盾になるのは当たり前ですわ!」

「あの後、どうなったのか知りませんが、スコット君は立派に役目を果たしたのです。」

「あの『命令』さえ無ければ、あたいがやってたっす!」


「いや、そういう意味じゃない。お前達はあの後の主部屋を見ただろう。俺は一人で主を葬れた。それだけの力があったんだ! はっきり言って、スコットの気持ちは無駄だったんだよ!」


 皆はまだ理解できていないようだったので、俺は続ける。


「こんな俺について来たら、お前達も死ぬぞ。クレアとミレアの奴隷契約は解除しよう。カレンはウルベンさんに預かって貰う。多分、それが最善だ。」


 そう、俺はもうこのパーティーを解散させるつもりだ。

 後はリムと2人3脚・・ではないな。二人一体で何とかするつもりだった。


 俺はここで愛想を尽かせて貰いたかった。

 これ以上俺の為に犠牲を出す事に耐えられそうに無い。


「例えアラタさんがどう思っていらっしゃっても、私の気持ちは変わりませんわ!」


 おい! クレア、何を言い出す!


「私もです。私が惚れた『男』はこんなものでは無いはずです。」


 おい! ミレア! 今の俺は女の身体だぞ!


「あたいの尻尾を辱めた責任は取って貰うっす! あたいの主人はアラタさんだけっす!」


 え? カレン、尻尾触るって、そんな重い意味があるの?


 やはり俺は甘かったようだな。

 ここまで巻き込んで、はいさようならとは言えないか。


「お前達の気持ちは分かった。ありがとう。だが、本当にこんな俺でいいのか? 本当に死ぬかもしれないぞ? 何しろ俺は我儘だ。俺が男の身体になりたいが為だけに、お前達を危険に晒しているんだぞ?」


「そんな事、分かっていますわ! だから、その・・・、男性の身体になったら・・・、私を抱いて欲しいですわ。」

「何を今更です。お姉様! 抜け駆けは許さないですよ。」

「あたいも女同志の趣味は無いっす! だから、あたいに子供を作らせる身体になって欲しいっす!」


 こいつら!


「なら決まりだ! もう礼は言わない! これからも俺は今まで通り振舞う! それでいいな!」

「「「はい!」」」


 多分、俺は泣いているのだろう。

 頬に違和感があって鬱陶しい。



「まずはスコットを弔ってやらないとな。」


 俺はスコットの顔をアイテムボックスから出したタオルで拭う。

 俺が主を退治している間に、ある程度は綺麗にしてくれたようだが、よく見ると、所々に血がついている。


 そして、スコットのアイテムボックスを指から外した。

 そのまま一緒に葬ってやりたかったが、俺は彼の研究を引き継ぎたかった。


 気力を込めると、指輪のロックが解除され、中の物が溢れ出す。


 武器、防具、魔核、素材、魔結晶、金貨、銀貨、そしてミニ工房セット。

 明らかに作りかけのような物もある。


 こいつ、頑張っていたんだな。

 安心しろ。後は俺達でやってやる。



「ん? これ何っすかね?」


 カレンがメモのような紙切れを俺に渡した。


「!」


 これは・・・、遺言だ。


「カレン、読んだか?」

「いえ、まだっす。」


「そうか、じゃあ読み上げるぞ。多分俺宛てだが、お前達には証人になって貰おう。」


 日本での遺言開封の手続きだな。


『この手紙が読まれているという事は、僕は死んでいるはずです。アラタさん、こんな盗賊の僕を拾ってくれてありがとうございました。おかげで僕の望みが半分叶いました。最下層までお付き合いしたかったのですが、ごめんなさい。もし、こんな冴えない僕の身体でも、良ければアラタさんに差し上げます。使って下さい。これが新しく出来た、僕のもう半分の望みです。あと、最後になりますが、リムさん、好きでした。では、さようなら。』


「「「「・・・・」」」」


 皆、同様に固まる。

 頭の中ではリムの泣き声が聞こえる。


「これは・・・。あいつは予期していたんだな。」

「それで、どうするつもりですの?」

「スコット君の遺志を尊重されますか?」

「スコットさん・・・男っす!」


 どうもこうも無いだろう。

 これがあいつの望んだ事ならやるだけだ!

 

「やる! 今度こそ成功させる! お前等も手伝え!」

「「「はい!」」」


 俺は泣いているリムに声をかける。


「お前はどうだ? お前が好きだった、お前を好きだったスコットの身体を、俺が乗っ取っても構わないのか?」

「勿論よ! それがスコットさんの遺志なのでしょう! だったら叶えてあげて! 今度こそ失敗は許さないわよ! それに・・・。」


「ん? それに?」

「な、何でもないわ! さっさと出て行け! このおたんちん!」


 おたんちん?

 まあいい、リムもOKならそれでいい。



 俺達は再び水晶とスコットを囲んで輪になっている。

 イーライが欠けたので、皆、大きく手を広げる。


「じゃあ、やるぞ! 今回は俺の魂をスコットに飛ばすように念じてくれ!」

「「「はい!」」」


 俺は再びスコットの手を取り、水晶に手を触れる。


 俺は確信していた。

 これは絶対に成功する!

 何しろ当人の遺志だ!


 気力の量が足りない?

 そんなこと関係ないね。

 今の俺を舐めるなよ。

 俺が出来ると思ったら出来るんだよ!



「俺の魂よ、この身体に移れ! サモンソウル!!」



        第一章 完



 これで第一章終了です。



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