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22歳♂ 何故か女の体に転生しました。  作者: BrokenWing
第一章
43/99

スコット

いよいよ佳境です。

      スコット



「しかし、数が増えると厄介だとは思っていたが、ここまでうざいとは。ほれ、ハイスタン!」

「そうっすね。挑発! はい、こっちっすよ~。」

「お姉様! そっち行きました!」

「ミレア! そこの壁に刺さっているの、やっちゃいなさい!」

「当たらにゃいですにゃ~。」


 俺達は現在49階層。

 ドリルモグの団体さん、7匹とどんぱちしている。

 俺達の目の前を跳弾のごとく飛び交うドリル。


 とにかく動きが素早いので、俺以外はなかなか攻撃が当たらない。

 救いの種は、カレンが挑発すれば、正確にカレン目指してぶっ飛んで来るということだ。

 

 そこで、カレンが走り回りながら挑発を唱え、攻撃を躱す。

 連中は一度飛んだら軌道を変えられないので、躱すのは容易い。

 そして、攻撃を外して、隙が出来た奴を皆で凹るという作戦だ。

 運の悪い奴は、壁や地面に刺さってもがいているので、簡単だ。


 ちなみに、当たるとそれなりの攻撃力があり、聖銀の防具でも、当たり所が悪いと突き破ってくる。

 カレンの盾も既にボコボコになっている。

 

 今晩はスコット、防具の修理で寝られないかもな~。

 等と考えているうちに、遂に下に降りる通路を発見した。



「よし、降りるぞ。遂に50階だ!」

「「「「はい!」」」ですにゃ。」


 扉の前までくると、皆、流石に緊張しているようだ。

 

 いつものように、レーダーで確認すると、一体しか反応が無い。


「ん? 妙だな。お引きが居ないぞ。」

「そうですわね。今までなら必ず3体反応しましたわ。」

「パターンが変わったのですかね?」

「とにかく、油断せずに行こう。いつも通りだ。」

「「「「「はい!」」」」」


 扉を開けると、異様な光景が広がっていた。

 そこいら中にドリルモグの死体が散乱している。

 多すぎて分からないが、50体はあるか?


 主の定位置には、痩せ細った人型の魔物が居た。

 見た感じ、ゴブリンの背を少し高くした感じだ。

 真っ青な身体に赤いローブのようなものを纏っている。


「初めての人間。吾輩は待って居たぞ。」


 驚いたことに喋ってきやがった!

 

 俺は突進しようとする仲間を手で制する。


 こいつは何かヤバい!

 他のとは全く違う!

 俺の勘はそう告げる。


 あいつはここで長い時を待っている間、暇潰しにお引きを狩っていたのではなかろうか?

 無限に出現するお引きを狩り続けた結果が、あの死体の山ではなかろうか?


 ヤバい奴には先手必勝!


「挨拶は抜きだ! 皆、慎重に行くぞ! ハイスタン!」

「はいっす! 挑発!」

「ファイアショット!」

「3連精密!」


 だが、俺達の攻撃は効いている感じでは無かった。

 

 ミレアの魔法はローブに吸収されたように見えた。

 かろうじてスコットの矢が当たったが、大きなダメージがあるようには見えない。


 俺とカレンのスキルが効いていない証拠に、奴は何か唱えだす。


「起きろ! そして我に従え!」


 その言葉と共に、辺りに散らばっていたドリルモグの死体に魔法陣のような模様が浮かび上がり、淡く光り出す!

 

 俺達は驚愕した!

 何十もの死体が一斉に立ち上がり、俺達目掛けて飛んで来たのだ!


「まずい! 撤退だ! 俺が引き付ける! 上の階に逃げろ!」

「聞けませんわ!」

「それはあたいの役目っす!」

「無茶はさせません!」


「『命令』だ! 退け!」


 そう言っている間にも、ドリルが飛び交い、被弾する!

 

 俺は喰らっても大したことないが、仲間は違う。

 当たり所が悪ければ、結構持っていかれるはずだ!


 最前列に居たので、盾で防ぎながらも、それでもドリルを喰らうカレンが通り過ぎるのを見た後、俺も振り返る。


 チッ!

 まだ馬鹿がいやがった!

 スコットだ!

 入り口の扉で、一人で矢を射ながら牽制してやがる!

 

「ヒール!」


 俺は迷わず全員を指定して回復魔法をかける!

 俺の魔力なら、全員指定でも、俺以外ならほぼ半分は回復させられる。


「馬鹿! お前も逃げろ! 俺は耐えれる!」

「嫌ですにゃ。」


 何を馬鹿なことを!

 俺は再び叫ぶ。


「命令だ! スコット!」


 チッ! また喰らってるじゃないか!


「ヒール!」


 今度はスコット単体にかける!


 いくら回復をかけても、それ以上に飛び交うドリルが多すぎる!

 俺なら一発喰らっても、高い防御力のおかげで、せいぜい20~30。

 体力も800近くある。纏めて数十体でも耐えられる。

 しかし、スコットの体力は200ちょいくらいだ。


 恐らく、4~5体が限度!

 全部で50体は居るドリルを相手にできる訳が無い!

 

「言ったはずですにゃ。忠誠を誓うと!」

「馬鹿! 足手纏いだ!」


 もはやスコットは血まみれだ!


「ヒール!」


 俺もかなり喰らっているので、今回は俺とスコットにかける。

 二人なら、スコットの体力も全回復するはずだ。


 来た道を見ると、女3人は既に通路を昇ったようだ。


 俺は後悔した。


 何故スコットを奴隷にしなかった!

 奴隷にしていれば、奴も『命令』には拒否できず、撤退できたはずだ!


 多分、こいつは俺が追い越すまでは、退く気は無い。

 

 仕方無い!


「ヒール!」


 俺はスコットに回復をかけながら追い越す!

 

 だが、その瞬間!



 スコットが倒れた。


 俺はコマ送りのビデオを見る感覚でその光景を焼き付ける。


 馬鹿な! 間に合ったはずだ!

 俺は慌ててスコットのステータスを確認する。



氏名:スコット・オルガン 年齢:18歳 性別:男

職業:冒険者 鍛冶師

レベル:55

体力:0/203

気力:140/170


「!」


 スコットばかりに集中していたが、見れば周りは飛び回るドリルだらけだ!

 俺の体力だって、既に半分を切っている!


「スコット!」


 俺は、当たるドリルには目もくれず、スコットを抱きかかえる。


「ヒール! ヒール! ヒール!」


 スコットは全く動かない。

 体力も0のままだ。


 まずは安全なところへ!


「縮地!」


 俺はスコットを抱いたまま、一気に通路を駆け上る!


 通路を昇り切ると、3人は無事だった。

 ドリルも追って来ない。

 皆、心配そうに俺を見る。

 ステータスで体力を確認すると、全員満タンだ。

 クレアが回復したのだろう。


 だが今はそんなことはどうでもいい!


「スコットが! スコットが!」


 俺は年甲斐も無く、泣きじゃくる。


「ヒール! ヒール! ヒール!」


体力: 0/203


 俺は分かっていた。

 スコットは死んだのだと。


「スコットちゃん! しっかりしなさい!」

「スコット君! まだ行けるはずです!」

「スコットさん! 冗談っすよね!」



 俺は何故か不思議と冷静になった。

 怒りが頂点を通り越すと、人間、冷静になると聞いたことがある。

 おそらく今はその境地なのだろう。


「ヒール!」


 俺は自分に回復をかける。

 

「お前等! スコットを頼む。ちと行って来るわ。」


 全員が俺をはっと見る。

 彼女達も、今から俺が何をしに行くかぐらいは分かっているのだろう。


「『命令』だ! 止めることは許さない。反論も許さない。お前らはここで待っていてくれ。」


 当然、全員止めようとしたはずだが、『命令』には拒否できない。

 黙って俺を睨むだけだ。



「ヒール!」


 通路を降りながら、俺はもう一度自分に回復をかける。

 これで俺の体力は満タンだ。



 50階に戻ると、ドリルは目標を見失っていたのか、一体も飛んでいなかった。

 何体かは、壁や地面に刺さってもがいている。


「やってくれたよな。フリーズダスト!」


 氷の礫が扉までの通路を覆う。

 当然、連中はこれくらいじゃ死なない。

 

俺に気付いて、扉への通路に居た個体が、一斉に俺目掛けて飛んで来る!


「ファイアウォール。」


 何の抑揚も無く、気を込め、機械的に呪文を唱える。


 俺は今更に思った。

 何故攻撃を選ばなかった!

 そうすれば、スコットも!


 何体かは炎の壁にぶち当たり、力なく落ちる。


 そう、こんなに力があるのに!


「ファイアウォール。」


 これで俺目掛けて飛んで来たドリルはほぼ壊滅する。


 俺は削り残した奴を片手で払いながら歩を進める。


 先の部屋の中にはまだ多数残っていた。


「縮地!」


 俺は一気に部屋に躍り込む!


「フリーズダスト。」


 更に抑揚無く唱える。

 部屋の中に氷の礫が乱れ飛ぶ。


 残っていた個体全てが俺目指して飛んで来る!

 俺は、少し避けるだけで、当たってくる奴を無視する。


「フリーズダスト。」


 これで運の悪い奴が再び死んだ。


「き、貴様は一体何者だ?! 人間ごときが! 何故吾輩の贄にならない?!」


 俺は階層主の問いには答えない。


「フリーズダスト。」


 代りに、再び機械的に呪文を唱える。

 これで残るは階層主だけだ。

 俺は悠然と主に歩み寄る。


「そうか! お前が勇者という奴か! だが、吾輩には勝てぬ! この死した奴隷が居る限りはな! 起きろ! そして我に従え!」


 奴がそう叫ぶと、まだ形を留めているドリルモグが淡く光り、再び立ち上がった。


「ふむ。この呪文は効果がちっとばかり面倒なんでな。今まで使ったことは無いが。効くかな?」


 俺は、初期に覚えた闇魔法を思い出していた。

 気力を内側に込める。


「バーサーカー!」


 この魔法は、かけた相手を、物理系統の攻撃のみに限定させるものだ。

 ただし、相手の攻撃力が倍増する。

 しかし、こういう魔法系統に特化したような相手なら無力化できるはずだ。


「ふむ。効くじゃないか。」


 主は俺目掛けて突進して来た!

 ドリル共は命令が無くなった結果か、再び死体に還る。


 俺は主の攻撃を軽く避ける。

 すれ違いざまに、喉にラリアットを喰らわせる。


 奴はあっけなくもんどりうった。


「これくらいで済ませるつもりは無いんでな。耐えろよ?」


 倒れた主に渾身の膝落としを、再度喉に喰らわせる!


 グキッと骨の折れた音がして、奴は全く動かなくなった。


 扉が開いた。


「チッ、もう終わりかよ!」


 俺は捨て台詞を残して、49階層に帰った。


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