そして修羅場へ
色々な意味で、イブってことで。
そして修羅場へ
少し早い休憩にしたのには、訳がある。
一つ目はクレアとカレンの士気が回復していないことだ。
二人とも、俺を襲ったことを後悔しているようだ。
普段ならこういう厄介なのを倒すと、全員、目に見えてテンションが上がるものなのだが。
しかし、クレアとカレンは、ダメージは喰らっていないはずなのに、顔を上げようとしない。
このままではまずいな。
気分転換が必要だろう。
ちなみに、ミレアは割と上機嫌そうだ。
俺を除いた中で、唯一混乱にかからなかったからだろう。
「皆、野営の準備だ。スコットは今日の武器屋で得た知識を試してくれ。」
「「「「はい。」」」ですにゃ!」
スコットも混乱させられ、若干元気が無さそうだったが、彼の趣味?のおかげで、いい感じに戻ったようだ。
軽い足取りでミニ工房を広げていく。
これで、二つ目の理由はOKだ。
俺はスコットに、武器屋の情報を元に、今日は武器や防具を作成させてやりたかった。
クレアは料理が好きだから、料理をさせると戻るかな?
「クレア、今日は帝都で買い込んだので、美味いのを頼む。」
「はい・・・。」
返事には全く覇気が無かった。
やはりまだダメなようだ。
カレンの趣味とかは、俺はまだ知らないので、カレンも含めてどうしたものか。
え~い! なるようになれ!
俺はミレアが用意してくれた、3人掛けのソファーの真ん中に座る。
「クレア、カレン、ちょっとこっちに来て座れ!」
二人は俺の両脇に腰掛けた。
「二人とも、俺を襲ったことを気にしているんだな?」
「はい・・・。あってはならないことですわ。」
「敵のスキルとはいえ、警告までされていたのにっす・・・。」
「俺はそんなこと気にしてないぞ。あんなもん、どうしようもない。ミレアが喰らわなかったのは、運が良かっただけだ。スコットもしっかり喰らっている。」
「「・・・・。」」
これくらいじゃやはり無理か。
俺は両手を広げて、二人の肩を思いっきり抱き寄せた。
「「!」」
彼女達は一瞬硬直したが、すぐに力を抜いて、俺の小さな胸に顔を埋める。
「俺は前世では大した人間じゃあない。この世界に呼び出されて、チートな能力を貰っただけだ。年もお前達と変わらない。そんな俺の側にお前達が居てくれるだけで、俺はこの世界に来た甲斐があったと思っている。だから、俺はお前達が元気で居てくれるだけでいい。それ以上は望まない。とにかく今日は、皆無事で良かった。」
俺は更に腕に力を込める。
いかん!
自分でも、何を言っているか分からなくなっている!
これじゃ完全に口説き文句だ!
まあ、俺が彼女達に好意を持っているのは否定しない。
だが俺は、この身体じゃ無理だと諦めていたはずだ。
「そ、そんなのずるいですわ! 私の気持ちも知っているくせに! アラタさんからだなんて!」
ん?
これは少し予想外だな。
俺は変態姉妹が興味を持っているのは、このリムの身体だけだと思っているのだが?
カレンも尻尾を俺の腰に巻き付けてきた。
周りを見ると、スコットはこっちを見ないように作業を続けてくれていたが、ミレアはこっちをガン見している。
ん? ん?
いきなりクレアが俺の顔を両手で引き寄せ、俺の唇を奪う!
もういいや。
俺からコクったようなもんだから、仕方無いか。
本当にこの身体なのが恨めしいが、俺も嫌ではないので、目を閉じて身を任せる。
クレアの舌が侵入してきた。
「お姉様! ずるい! 私だって!」
いきなりのミレアの声。
目を開けると、目の前にはミレアが居た!
彼女は強引に俺の顔をクレアから奪い取り、口づけしようとする。
そこで俺は正気に戻った。
「ま、待て! 嫌じゃないが、そんなつもりでも無い!」
このままじゃ不味い!
スコットも居る!
まあ、手遅れだがな。
俺は照れ隠しに、俺の腰に巻き付いていたカレンの尻尾をモフる。
初めてさわったが、素晴らしい感触!
癖になりそうだ。
「きゃん!」
カレンが、彼女に似合わない悲鳴を上げた。
俺は慌てて手を離す。
ふむ、尻尾が弱点か。テンプレだな。
「そ、そんなことされたら、あたいも我慢できないっす!」
今度はカレンが俺の顔を奪い取る!
「いや、だから、そんなつもりじゃないって!」
もはや完全に修羅場だ。
スコットはこちらに背を向けて作業を続けている。
あれはしっかり意識してやがるな。
スコット、すまん!
「ま、まあ、なんだ、お前達のことは好きだが、そ、その、性的なものはこの身体じゃ不可能だ。お、お互い我慢しよう!」
俺はしどろもどろになりながらも、力ずくで彼女達を排除する。
「気は済んだ?!」
頭の中に直接声が響く!
同時に凄まじい眠気が俺を襲う。
ふむ、いいタイミングかもしれん。
ここで逃げる(寝る)のは卑怯かもしれないが、リムなら収めてくれそうな気もする。
「すまん! リム!」
「はいはい、いいから寝なさい!」
夢の中でリムが叫んでいる。
「お姉様達! いい加減にしなさい! スコットさんも居るのよ!」
「え? え? リムさん・・・っすか?」
「こうなれば、リムさんでもいいですわ!」
「飛んで火にいる美少女。頂きます!」
リム、がんばれ~。
俺は夢の中で応援するが、伝わっているかは分からん。
俺もなんか面倒になったので、彼女に任せて意識を断つ。
襲い来る美女軍団を、彼女が縛り上げていく様子が最後だ。
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