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22歳♂ 何故か女の体に転生しました。  作者: BrokenWing
第一章
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厄介なスキル

          厄介なスキル



 俺は冒険者ギルドを出て、馬車に向かう途中、気になることがあったので、尋ねてみた。


「ところで、カレン、俺達がまだ取得していない耐性で、厄介なものはあるか?」

「そうっすね~。あたいの経験したものでは、もうないっすかね。」

「ヤットンはどうだ? 毒、沈黙、暗闇、麻痺、それ以外に何かあるか?」

「私もそれ以上は思いつきません。ただ、ダークウルフの毛皮の火耐性のように、魔物にしか無いものはありますが。」


「そうか。いや、俺の世界のゲームじゃ、これら以外にも、睡眠とか、混乱とかがあったんだよ。それで気になったんだが、カレンもヤットンも知らないとなると、そういう効果はこの世界には無いのかな?」

「まだ私達はダンジョンの半分も潜れていません。そんな効果、聞いたことありませんが、これから出現する可能性はあるかと。あと、そのアラタさんの世界のゲームとやらの話をもっと聞かせて下さい。」


「そうだな、ミレア。俺の世界で良くあった厄介なのは、これ以外にも石化とか、酷いのは即死なんてのもあった。もっとも、ゲームでは、全滅さえしなければ、死人は生き返ることが可能という設定が大半だったな。現実ではありえないけどな。」

「確かに、完全に空想世界ですね。人は死んだら生き返りません。」


「その通りだ。しかし、俺には一概に空想だと馬鹿にできないんだよ。今俺が直面している状況は、まさにそのゲームの世界そのものに近い。現に、魂の召喚儀式で死体が生き返り、勇者と呼ばれているだろう。」

「そ、それは・・・。しかし、言われてみれば確かにそうですね。魂が別人なのはともかく、身体が再び動き出したことは事実です。」


 リムのこともあるし、この話はここらで切るのがいいかもな。


「まあ、何しろこの世界は俺にとっては分からないことだらけだ。まだ知らない特殊効果も本当にあるかもしれん。そう思って用心するに越した事は無さそうだ。」

「そんなもんなんすかね~?」


 カレンとクレアは今一つ理解できていないようだが、ミレアとヤットン、そしてスコットは俺が言ったことの意味について、深く考えている感じだった。


「変な話をして悪かったな。じゃあ、ヤットン、済まないがまたダンジョンまで頼む。」

「かしこまりました。」


 

 俺達は現在41階層への通路だ。

 今までのパターンだと、魔物の種類が変わるので、想定外の攻撃に備え、俺が先頭に立って進む。

 カレンの盾が便利だとは言っても、実際の防御力は俺のほうがある。


「降りてすぐの部屋に3匹居るな。今まで通り、カレンが【挑発】して、俺が【ハイスタン】で先頭を足止めするから、お前らは臨機応変に頼む。ミレア、レッドウィッチの反射の件もあるので、範囲魔法はまだ使うな。」

「「「「はい!」」」ですにゃ!」


 自分でもちゃんとした指示になっていないのは分かっているが、ご新規さんには、出たとこ勝負なので仕方が無い。

 皆もそれを理解しているから、返事してくれるのだろう。



 部屋に入ると、体中が無数の目で覆われた、直径2mほどの、真っ赤な風船のようなものが3体、俺の目の高さに漂っていた。

 目以外には、口だけついている。

 耳は無いが、耳まで裂けているという表現が合うでかい口だ。


 真っ先にカレンが飛び込んで行く!


「挑発!」

「ハイスタン!」

「ファイアショット!」

「アクアダーツ!」

「5連乱れ撃ち!」


 どんな攻撃をしてくるか分からないので、とにかく先手必勝だ!

 クレアとミレアは俺の言った事を理解して、まずは単体魔法で牽制する。

 動きを止めた先頭の赤風船に魔法が炸裂し、3体同時にスコットの矢が突き刺さる!


 しかし、やはりそれぐらいでは倒れない。


 後ろの2体がブルっと身体を震わせた。

 一瞬、何か身体を包むような、妙な感覚がする。


 これは・・・、あの時の感覚だ。

 初めて俺達が敵の【暗闇】効果のスキルを浴びた時に酷似している!


 慌てて俺は自分のステータスを確認する。


 うん、俺には効いてない!

 だが、一体どういうスキルだ?

 何か喰らったのは間違いない。

 俺は何か耐性を得ていないか、更にステータスを確認しようとした、その時だ。


 カレンが俺に向かってくる。


 おい、戦闘中だぞ! 

 何かあるなら、まずそいつをやっつけてからだろ!


「カレン! 後にしろ!」


 俺が叫ぶと、カレンは小剣を抜いて、俺に振りかぶってきやがった!


 なるほど。

 俺は事態が呑み込めた。


 人物鑑定スキルでカレンを見ると、【混乱】となっている。


 俺が変なフラグ立てたからか?

 

 カレンは無言で剣を俺に振るう!

 流石の速さだが、俺は軽く避ける。


 さて、どうしたものか?


 そうだ! あの剣だ!


 幸いなことに、あの、【解除】の効果がある小太刀はカレンの腰にぶら下がっている。

 アイテムボックスに入れられていたら、ヤバかったな。


「ハイスタン!」


 俺は迷わずカレンに唱えた!

 そして、腰の小太刀に手を伸ばす。


「!」


 いきなり後ろから刺された!

 かろうじて直撃は逃れたようだが、鎧を貫通し、脇腹から血が噴き出す!

 顔だけ振り返ると、クレアが背後から俺を槍で突き刺していた!


 ちなみに、俺が血を流したのは、この世界ではこれが初めてである。


「お前もか!」


 激しい痛みの中、俺は刺さった槍はそのままに、必死にカレンの小太刀を奪い取る!


 そこでカレンの硬直が切れたようだ。

 再び俺に剣を振るう!


 俺は脇腹の槍のせいで、満足に動けない。

 かろうじて、小手でその剣を弾く。


「まずはカレン!」


 小太刀の背で、魔力を込めながらカレンに振るった!


 カレンは【解除】が効いたと見えて、呆けた顔をしている。

 また喰らうかもしれないが、今はこれでいい。


 次はクレア! と後ろに注意を向けると、刺さっていた槍が抜かれた。


 ヤバい! 再び突かれる!

 俺は慌てて横に飛んだ!


「お姉様! しっかりして!」


 ここでようやく俺は全体を見れた。


 何と、クレアをミレアが羽交い絞めにしている!

 ミレアにあの攻撃は効かなかったのだろう。


 スコットは後ろで滅多やたらに矢を放っている。

 照準をつけていないようで、誰にも当たっていないのが御の字だ。


「ミレア! これで頼む! 俺は元を断つ! カレン、お前はじっとしていろ!」


 そう言って、俺は【解除】の小太刀をミレアに投げる。


 そして、口を開けて襲い掛かって来る風船の化物に突進した!

 怒りのせいか、脇腹の痛みを感じない。


「てめぇ~!」


 先頭の奴に全力で蹴りを入れる!


 蹴りを喰らった風船は、そのまま壁に直撃し、潰れてべったりと張り付いた。


 後ろの一体が再び身体を震えさせ始める!


「させるか! ハイスタン!」


 俺は一気に間合いを詰め、渾身の正拳を叩き込む!


 奴の背中?から、魔核と思しき球が弾け出る!


「アラタさん! 最後の奴は残して下さい! 耐性つけましょう!」


 ミレアの声だ。

 確かにここで耐性を獲得しておかないと、後々かなり困る。

 指摘が無ければ、怒りに任せて全部狩ってしまうところだった。


 振り返ると、全員正気に戻っているようで、お互いの距離を取りながら身構えている。


「分かった! 取り敢えず、ヒール!」


 俺は全員を選択して回復魔法をかける。

 脇腹の痛みが和らいだ。


 残した奴が大口を開ける!


「ふむ。効くかな? ブラインド!」


 奴がくるくる回り出す。


「効いたな。ミレア、お前は耐性ついたか?」

「はい。弱ですが。」

「多分、最初に喰らったのは、全体に効果が出る、混乱のスキルだ。目標を失ったこいつは必ずまた使うはずだ。」


 俺も自分のステータスを確認する。

 やはりな。

 【混乱耐性弱】

 しっかりついていた。


 奴がまた身体を震えさせ始めた。

 俺は人物鑑定で全員のステータスを確認する。


「ミレア! スコットとカレンが喰らった! クレアはスコットを抑えろ!」

「「はい!」」


 俺も【縮地】を使って、カレンを背後から羽交い絞めにする。

 ミレアが二人を解除の小太刀の背で小突くと、二人は呆けた顔に戻る。


 後は簡単だった。

 

 風船の化物は直接攻撃か、その混乱させるスキルしか無いようで、【ブラインド】が切れたら俺がかけ直す。

 身体を震えさせると混乱スキルの合図なので、全員のステータスを見る。


 ほどなくクレアが、続いて、スコット、カレンの順に耐性を得る。


 かなり時間はかかったが、俺達は全員の耐性が中以上になるまでそこで粘った。



「ここは上から敵が来ることもないし、行き止まりみたいなものだな。今日はここで休もう。」


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