魔核と素材
魔核と素材
「さて、まだ早いが、一度帝都に戻るのはどうだろう?」
俺は魔核をとかを回収してくれている皆に提案する。
ダンジョンに潜って6日目、そろそろ外の空気も吸いたいところだ。
また、カレンの武器も少し見繕いたい。
武器屋に行けば、何かいい出物が手に入るかもしれない。
「それがいいですわね。野菜とか切れそうですわ。」
「魔核も素材もだぶついてますにゃ。少し処分したいですにゃ。」
「なら決定だな。」
外に出ると、ヤットンがテントの前に椅子を出して寛いでいた。
俺達を見つけると、すぐに駆け寄って来る。
相変わらず足音がしない。
何かスキルなのだろうか?
「お帰りなさいませ、近衛様、従者の皆様。今日は、何階層まで行かれたのですか?」
「只今、ヤットン。カレンの肩慣らしってところで、まだ40階だ。今日は補給に戻ったので、帝都だ。馬車はあるか?」
「左様でございますか。しかし肩慣らしで40階とは・・・。あ、失礼しました。馬車ならご用意致しますので、少しお待ちください。」
ヤットンはそう言いながら、まじまじとカレンを見る。
彼も元は冒険者だ。
そして昔の知り合いが40階という、未知の領域に踏み入ったことに対して、色々と思いがあるのだろう。
ちなみに、カレンの話だと、この世界の冒険者は、普段は街道とかに出現する魔物を狩って、生計を立てている。
ダンジョンに潜るのは一部の命知らずか、実力のあるパーティーだけらしい。
その実力者達を以てしても、せいぜい30階。
40階まで到達したという話は、全世界でも、数えるほどしか聞いたことが無いらしい。
そう、俺抜きで40階をクリアした彼らは、もはや、超一流と言っても差し支えないのである。
帝都への馬車で、ヤットンに大量の魔核や素材を処分したい旨を伝える。
「それでしたら、武器屋等でも引き取ってくれますが、冒険者ギルドが宜しいでしょう。レアな魔核ならオークションという手もございます。」
「そうか、ありがとう。武器屋には寄るつもりだったから、先に武器屋に寄ろう。」
そう、武器屋の主人には、装備の代金の件や、クレアの武器とか、恩とは言えないまでも、世話になった。
もし彼が欲しい魔核や素材があれば、優先的に譲ってやるつもりだった。
道中、カレンがヤットンの質問責めに遭って参っていたのは、予想通りと言えるだろう。
帝都に着いた俺達は、早速例の武器屋に立ち寄る。
「ご主人、以前は世話になった。あの魔核はどうだった?」
現在カレンは鉄製の小剣をメインに使っている。聖銀製の物は持っていなかったので、クラスアップさせてやりたかったのだ。
背後にヤットンの気配を感じる。
また何か意見してくれるのだろうか?
以前、ここの主人に負けたことへのリベンジか?
「よう、嬢ちゃん。おっと失礼、勇者さん。久しぶりだな。あの魔核はオークションで・・・、おっとまたいけねぇな。まあ、こっちもいい思いさせて貰ったし、お互い様だ。で、今日は何が欲しい?」
なるほど、こいつはあの魔核で結構儲かったのだろう。
「なら良かった。それで今日はこいつの武器を見繕って欲しいのだが。また、もし何かあれば意見が聞きたくてな。」
俺はカレンを前に出す。
「ほう、仲間が増えたって訳かい。これまた別嬪な亜人さんだな。どれ、全員の装備を見せてみな。」
俺達は羽織っていたコートを脱いで、アイテムバッグから武器を出す。
「むう、武器に比べて防具の傷が少ねぇな。原因はその亜人さんの盾か。いい壁役を手に入れたな。あんたもそう思うだろ?」
主人は俺達の後ろに居たヤットンに振る。
「その通りです。この方達はトロワの40階層まで攻略されました。」
自らが紹介したカレンを褒められて、ヤットンも満足気だ。
一方、主人は40階と聞いて驚いたようで、一歩後ずさった。
「それで、いい武器や他に装備とかあるか?」
「そうだな。確かに聖銀製の小剣ならある。しかし、40階は俺達にゃ想像出来ない世界だ。そんなあんたらに助言できることなんて、俺には無さそうだ。」
俺が後ろを向くと、ヤットンも主人と同様、困った顔をしている。
「だが、そうだな。ここに並べてある物だけが、うちの全部って訳でもねぇ。」
そう言って主人はカウンターの裏に手招きした。
「ここにあるのは癖があって、普通の奴には勧められねぇ物ばかりだ。気に入ったのがあれば持って行ってくれ。」
「ふむ、鉄製のが多いな。攻撃や防御の上昇値は低そうだが?」
「そうだ。しかし、特殊効果がついている。例えばこの槍は沈黙効果がついている。」
「ああ、それなら持っている。攻撃力は劣るが、相手によってはかなりの効果だ。」
そう答えて、俺はスコットを見た。
スコットも胸を張る。
「おや、既に持っていたのかい。やはり分かる奴には分かるもんだ。仕入れたはいいが、なかなか掃けなくてな。ここのは全部、安くしてやるぜ。」
「う~ん、正直言って、うちには優秀な職人が居てな。多分、材料さえあれば鉄製のなら作れてしまう。」
「ケッ、そういうことだったのかい。道理で。」
「しかし、物は相談だ。スコット、魔核と素材を出してくれ。」
スコットがだぶついている魔核や素材の一部をカウンターに並べた。
「うちには職人は居るが、知識が無い。色々教えてくれれば、この中から授業料を払う。それでどうだ?」
主人は、魔核や素材をいちいち手に取って確認する。
「こりゃ、宝の山だな。どうせもっといいのも持っているんだろうが、俺にはこいつで充分だ。よし、何が聞きたい?」
主人は、手近にあったファイアウルフの魔核を選んだ。
流石に見る目がある。この中では最も深い層の魔物の物だ。
主人の教えてくれた話によると、鉄製品なら、一個だけ効果をつけられるそうだ。
その効果は、ゴブリンの魔核で攻撃力上昇や、クレアの槍につけた特殊効果とか、自由に選べる。
そして、2つ目を付与すると壊れてしまう。
なので、スコットが最初にやった、魔核同志を合成させてから付与する、というのは非常に効率的だったようだ。
聖銀製品は基本性能に関してはトップだが、一つも付与できない。
なるほど、スコットが作った物に、聖銀製が無かったのはそういうことか。
ただ、何事にも例外はあって、聖銀製品につけることができた、特殊なケースも存在するようだ。
だが、そんな物はオークションでしか手に入らない。
使われた魔核も何の物かは当然分からない。
レアな魔核に馬鹿みたいな値段がつくのはそういった理由だ。
普通の素材には、多くても一個しかつかないが、特殊な素材から作った物には複数付与できるものがある。
レッドウィッチの角等は優秀で、3つも付与できるらしい。
残念ながら、そういった物は一般には出回らない。
また、この特殊な素材は扱いが難しく、まず武器や防具の形にするだけで苦労するらしい。
そして、この特殊素材は、物によっては最初から効果があるらしいが、詳しくは知られて居ない。
ダークウルフの毛皮の火耐性とかがこれに当たる。
更に、これは噂のレベルだが、聖銀より優秀で尚且つ魔核を付与できる素材もあるとのことだ。
付与する魔核の効果については、素材との相性もあり、一概には言えないらしい。
こればかりはやって見ないと何とも言えないとのことだ。
なので、まずは鉄製品で試して、見当をつけてから使うのが定石だそうだ。
ここまでの話で俺は大体理解できた。
スコットがまだ主人に食いついているので、俺は周りの、癖のあるという商品を見て回る。
「カレン、これどうだ?」
俺は一本の片刃の小剣を取った。
日本でなら忍者刀とでも言われそうだ。
カレンが手に取って説明書きを読む。
「鉄の小太刀・改、効果は・・・、【解除】? なんすかこれ?」
「あ~、そいつかい。そいつで攻撃すると、相手にかかっている魔法とかを、全部解除してくれる効果だ。何の魔核の効果かは知らないがな。まあ、使い方次第の奴だ。相手にせっかくマイナス効果を与えても、そいつで切ると消しちまう。逆なら当然有効って奴だ。」
ようやくスコットから解放された主人が答える。
ふむ、やはりか。
こいつは確かに使い所を選びそうだ。
性能表示は、攻撃力+5と最低クラス。
道理で売れない訳だ。
だが、俺達は既に反射の魔法を唱える厄介な奴に遭遇している。
こいつは買いだな。
「じゃあ、聖銀製の小剣とそいつを貰うよ。いくらだ?」
「そうだな。魔核も貰ったし、原価でいいぜ。金貨4枚と銀貨40枚だな。」
俺は支払いを済ませて、聖銀の小剣と鉄の小太刀をカレンに渡す。
カレンが持っていた鉄の小剣は、実験用にとスコットへ渡した。
「ありがとう。いい授業だった。そしていい買い物もできた。」
「おう、客が喜んでくれるなら、こっちもいい商売ができたってもんだぜ。ありがとな。また来いよ。」
説明回になってしまいましたね。
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