カレンの試練
カレンの試練
「皆、おはよう。で、これは一体どういうことなんだ?」
俺が朝起きると、予想していたリムのカレンに対する感想とかの引継ぎは無く、すんなり起きれた。
ベッドの上には、あられもない姿で拘束されている変態姉妹が転がっている。。
まあ、ある程度は夢の記憶があるが、こういうどうでもいいことはあまり覚えていない。
何があったかは、これを見れば、聞くまでも無かったな。
「近衛さん、でいいんすかね? おはようっす。リムさんから聞いたっす。なんか厄介な身体っすね。しかし、そのおかげであのステってことっすかね?」
俺の思惑を知ってか知らずか、俺の問いを軽くスルーしたカレン。
既に聖銀製の防具を着ており、潜る意思を示してくれている。
昨晩、ダンジョンで得た遺品をスコットから貰ったのだろう。
「ん? リムに見せて貰ったのか? まあ、なんだ、俺は二人分の能力が合体していると思っている。ミツルに勝てたのはそういうことだ。ただ、俺に適性の無い魔法だと、リムが使えても、俺には使えないようだ。」
「なるほどっす。ところで、今日はどうされるんすか? 早速潜るんすか?」
「そのつもりだが、まずはあれを何とかしてやってくれ。」
俺は顔を背けてながら、変態姉妹を指さした。
今更、こいつらの裸くらいでどうということは無いのだが、流石にこの姿は目のやり場に困る。
野営テントに使うロープでぐるぐる巻きにされ、ご丁寧にも猿轡までかまされている。
「はいっす。しかし、近衛さんはあまり驚かないんすね? 全裸で縛られている女を見たら、普通びびっるすよ。朝起きた時、あたいはびびったっす。」
「まあ、うん、ダンジョンで特殊攻撃を何度も受けると、耐性がつく、みたいな。で、カレンは何もされなかったのか?」
「いや、あたいは朝起きたら、リムさんとこの姿の先輩方が居ただけで、何事も無かったっす。」
ふむ、亜人には興味無いのかな?
俺ならモフり倒すが。
まあ、最初にリムに特攻して返り討ちに合い、そのままなだけかもな。
カレンは喋りながらも手早くロープをほどいていく。
「「おはようございます、アラタさん。すみませんでした。」」
「あ~、いいから早く服を着ろ! 全く懲りないな。」
「そこに美少女が居れば襲うだけですわ!」
「リムさん、縛り方も上手ですね。癖になりそうです。」
この変態姉妹は全く懲りてないようだ。
念の為にステータスを確認してみる。
【特殊性癖1】
ほっ、伸びてない。
「ところで、お前等、俺はこんな身体だが、一応男だぞ? 羞恥心とか無いのか?」
俺の目の前で堂々と下着を身に着ける姿には、慣れたとは言え、こっちが恥ずかしかしくなる。
もっとも、生前?なら、泣いて喜ぶところだが。
「アラタさんなら構いませんわ。その身体でなくてもですわ。」
「ひょっとして、嬉しいのですか? 今晩は寝ないで下さいね。」
だめだ、こいつら。
そして、この身体が恨めしい。
しかし、リムも【奴隷に対する絶対命令】を行使すればこんな事をせずに済むのにな。
奴も満更ではないのか?
今度問い詰めてみよう。
アホなやり取りをしているうちに、姉妹が装備を整えたようだ。
俺のは、リムが『身体をいじられたくない』とのことで、俺が起きる前に装備してくれている。
いいタイミングでノックされた。
「おはようございますにゃ。スコットですにゃ。」
「おはよう、スコット。丁度支度が終わったところだ。入ってくれ。」
スコットが来たので、部屋に朝食を持ってこさせる。
食べながら皆で今日の予定を話し合う。
「カレンは帝国のダンジョンは初めてか?」
「今、近衛さんが攻略しているトロワは初めてっす。」
「ん? シスは潜ったのか?」
「はいっす。デルークさん達と一緒に一度だけっす。あの時は12階層で引き返したっす。」
「ふむ、その話はまた聞かせて貰うよ。サラサは何階までいけた?」
ヤットンの推薦だから、問題は無いと思うが、一応彼女の実力を知りたい。
「30階の主とやるつもりだったんすけど、パーティーが解散しちゃったので、28階層までっす。」
「それは凄いな。サラサの20階以後は知らないが、俺の感じだと、ミツルの護衛だけなら20階の主にやられていただろう。」
「共和国の兵隊さんと一緒にしないで欲しいっす。あいつら連携とか全くできてないっす。」
「それは済まなかったな。しかし、うちのパーティーもこう言っては何だが、どうしても俺の力押しになっているところがある。何か気付いたことがあれば遠慮なく教えて欲しい。」
「あたいの意見でいいのなら喜んでっす。変な気を遣って全滅したパーティーの話とかも聞くっすから。」
うん、やはり彼女で良かった。
「じゃあ、最初はお試しってことで、カレンの耐性アップも兼ねて、トロワの1階から行くのはどうだ? ダークウルフの肉があれば10階からでいいんだが。」
ちなみに、カレンの持っている耐性は【毒耐性小】と【暗闇耐性小】だけだ。
「ダークウルフってサラサの10階の主っすよね。あれ、毒があって使えないっすけど。」
「いや、カレン、今は【毒耐性小】だろ?」
「そうっす。」
「俺達は全員、【毒無効】だ。実はあの肉、食うと旨くてな。しかも、食うと耐性が上がるんだよ。」
カレンが吹き出した。
「アハハハハ、そんな話、聞いたことなかったっす。あたいらは耐性は魔物の攻撃を受けると偶然得られる程度にしか考えてなかったすよ。」
「サラサのダンジョンなら、麻痺耐性も得られるので、行きたいところだが、テレポートの石も貴重だしな。」
「馬車を使えば2日かからずに行けますが? 町ならともかく、ダンジョンには警戒線は敷かれてないと思います。」
「ミレアの言う事ももっともだが、時間も惜しいし、やめておこう。耐性は使ってくる魔物が出てからでいいだろう。」
しかし、俺は迷っていた。
暗闇と毒なら魔法で解除出来るが、麻痺はヤバい。
カレンは、麻痺耐性が無い。
サラサで麻痺を使うキラービーの攻撃は喰らわなかったのだろう。
そういった事でも彼女の実力は証明されているのだが、それとこれとは別だ。
もし階層主とかが使ってきたらかなり厄介だ。
結局、心残りだが、トロワの一階からということで決定した。
フロントで鍵を返して、清算すると、ヤットンが待っていた。
ん? これは使えるかも。
「おはよう、ヤットン。相変わらず真面目だな。」
「おはようございます、近衛様と従者の皆様。今からダンジョンですか?」
「ああ、そのつもりだ。ところでヤットン、帝国で麻痺を使う魔物はいないか?」
「居ますね。ここからなら馬車で30分程の森にキラービーが出現します。」
「よし、決まりだ。」
ヤットンに案内して貰った森は、キラービーの他にフォートウルフも出現するようで、ここいらでは上位の魔物の群生地帯らしい。
「と、言う事で、お注射の時間だ。」
俺は羽を毟ったキラービーを抱えてカレンに向かう。
「ちょ、ちょっと待って欲しいっす。心の準備が。」
逃げようとするカレンをミレアが押さえつける。
「カレンさん、慣れると気持ち良くなりますよ。」
「いや、ミレア先輩、あたいにそんな趣味はないっす!」
「駄目です。あと、私はカレンさんより年下なんで、『ミレアちゃん』って呼んで下さい。」
俺は時間の無駄なので、二人纏めて連続でぶっ刺していく。
後ろで見ていたヤットンにも勧めたが、既に耐性は持っていると断られてしまった。
おまけに俺達とかなり距離を取りやがった。
念入りにやったので、全員かなり耐性が上がる。
俺は【麻痺無効】になり、カレンも【麻痺耐性中】、他の3人も大になった。
これで一応は大丈夫だろう。
その後はトロワのダンジョンに向かい、今度はスライムの毒を使う。
結局その日は殆どをカレンの耐性アップに費やし、戦闘と呼べるような敵とはやり合えなかった。
5階層で休憩することになり、今度はスコットが作ってくれた杖の出番だ。
スケルトンの杖改:攻撃+5 特殊効果【暗闇】
魔力を込めて軽く小突く。
カレンは【暗闇耐性小】を持っていたが、用心するに越したことは無いだろう。
食事となったが、カレンはかなり参っているようだ。
「あたいは温かったっす。こんな強烈なパーティー、知らないっす。」
「クレア達にも言われたよ。しかし、命に関わるからな。」
「カレンさんには厳しいかもしれませんが、アラタさんのパーティー編入へのいい洗礼ですわ。」
「はい、尊敬するっす。このパーティーならあたいも安心できるっす。」
「尊敬するのは、アラタさんの本気の戦闘を見てからのほうがいいかもですにゃ。初めての人には心臓に悪いですにゃ。」
「明日は沈黙耐性を得るぞ。しっかり休んでおいてくれ。」
もはやカレンに答える気力は残ってないようだ。
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