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22歳♂ 何故か女の体に転生しました。  作者: BrokenWing
第一章
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帝都にて

        帝都にて



 帝都に着くと、ヤットンがあっという間に城に消えた。

 色々と準備をしてくれるのだろう。


 俺は城に入ると、まずは召喚された神殿に向かう。

 ここなら祭祀長が居る可能性が高いし、何よりも遺体を並べても問題ない場所だ。


 俺達が入るのと、祭祀長が来るのと、ほぼ同時だった。


「お帰りなさいませ。近衛様。なんでも、勇者様の御遺体をお持ち帰りになられたとか。」


 流石はヤットンだ。既に話が通っている。


「俺も面識が無いので、勇者かどうかは分からない。が、お前なら確認できるのじゃないか?」

「はい、私は召喚された全ての勇者様を存じております。」

「じゃあ、頼む。」


 俺達はアイテムボックスから40階層に放置されていた遺体を床に並べていく。

 完全にミイラ化しているので、顔の判別がつくかどうか、かなり疑わしい状態だ。

 全部並べ終わって、イーライ(祭祀長)を伺う。


「恐らくですが、この方は5年前に召喚された山形様、そしてこの方は3年目の三木様でしょう。」

「この状態で分かるのか?」

「山形様は特徴的な髪形をなされていました故、三木様はこの左手中指が若干短いので。」


 山形は確かに分かりやすい。俗に言うリーゼントといいう奴だ。

 そして、もう一人、三木の中指は人差し指と同じ長さだった。


「確認感謝する。他の遺体共々、丁重に葬ってやって欲しい。ダンジョンで何年も放置されていたのだから。」

「かしこまりました。お持ち帰り頂き、感謝の念に堪えません。他には何かありませんか?」

「この人達が着けていた、アイテムボックスと武器も回収しているが、それは帝国に返還しなくていいのか?」

「何か特徴のある物や、不要な物ならお預かり致しますが、元々は勇者様に支給された物です。近衛様も勇者様なのですから、そのままお役立て下さい。」


「うん、ありがとう。ところで、魂移転のことなのだが。」


 俺はせっかくなので、聞いてみることにした。以前とは違って、少しは魔法も分かるようになったからだ。


「はい、研究はしておりますが、近衛様の御意向もございまして、容易くは。」

「うん、分かっている。苦労させて済まないな。しかし、今俺が聞きたいのは、具体的に俺をどうやって召喚したかだ。何かヒントにでもなればと思っている。」


 イーライによると、この神殿にある水晶(厳密には水晶ではないのだが)に貯まった魔力を利用して、神官全員で、ある魔法を唱えるとのことだった。


「その魔法の名称と系統を教えてくれ。」


 ひょっとすると俺にも使えるかもしれない。

 効果に関してはもはや確認済なので、系統が解ればと淡い期待をしていた。

 もっとも、召喚ができたからと言っても、新たな犠牲者?を増やすだけなのだが。

 また、時期も8月限定ということもあり、閻魔の話振りだと、地獄から派遣される魂なので、そうそう自由にできるとも思えない。


「魔法名は【サモンソウル】です。系統は現在判明している所では、神官に闇魔法と回復魔法を極めた者が含まれた時、成功したという認識でございます。」


 ふむ、この話だと俺にも可能かもしれない。

 回復魔法は現在レベル4、闇魔法は既に5だ。

 最高レベルが5らしいから、今の調子でダンジョンで鍛えていれば、遠からず極めたということになるだろう。


「なるほど。ありがとう。少し横道に逸れるかもしれないが、死者を復活させる魔法とかは無いのか?」

「我が国ではそのような魔法はまだありません。ただ、私もその魔法には非常に興味を持っておりますので、近衛様のと並行して研究中でございます。」


 確かにそんな便利な魔法、誰もが知りたいはずだ。

 しかし、日本のゲームとかではかなりありふれた魔法なのだが。

 まあ、死者がほいほい蘇るようでは、生きている有難味が薄れるので、これでいいのかもしれない。


「まあ、出来たとしてもかなり難しいだろうな。ところで、この水晶、何処で採れた、どういう鉱物なんだ?」

「私も詳しいことは分かりません。魔力の集中する、この帝都のような所の中心にあるということしか。また、現在はこのように桜色ですが、魔力が満ちると真っ赤に輝きます。」

「う~ん、昔からあったものなのかな?」

「そう聞いております。古より神聖視されておりますので、割って分析することも叶わず、謎のままです。」


「うん、さっぱり分からんが、参考にはなった。ありがとう。引き続き研究も頼む。」

「こんなことでも、もしお役に立てたのであれば光栄です。」


 実は俺はこの水晶に関してはある仮説を立てている。

 あれは巨大な魔結晶なのではなかろうか?

 スコットが拾ってくれる魔結晶も赤く輝いている。

 気力の補充になることも、この水晶の使い方と似ていると思う。

 

 何となくだが、ウルベンのさんの『ヒントはダンジョンにある』という言葉に近づいた気がした。


 俺達は神殿を後にして、一度以前俺達が泊まった部屋で休憩する。

 入ると、野営テントにヤットンが持って来ていた家具が再配置されていた。

 皆でソファーに座ってくつろいでいると、ノックと共にヤットンが入って来た。


 二人引き連れている。

 一人は知らない顔。もう一人は良く知った顔だ。


「おお、アラタ、よくぞ無事に帰られた。何でも40階層に到達し、未知の魔核を持ち帰ったそうじゃな。儂も鼻が高い。」

「カサードさん、只今。おかげで何とか生きているよ。それでこの魔核なんだが。」


 俺はダブルジャイアンの魔核を取り出した。普通の魔核よりも透明度が高く、色も鮮やかだ。


「ふむ、これがそうなのじゃな。このような色合いは、イオリが持ち帰った物以来じゃな。」

「それで、装備とかも城の物じゃなく、独自に買い揃えたいのがあって、帝国に買い取って欲しいのだが。」

「うむ。聞いておる。言い値でと言いたいところじゃが、こやつらが無粋な事を申すのでな。」


 カサードは俺の知らない顔に振り返る。

 多分、会計の担当か何かをしている人だろう。

 このカサードを押さえつける苦労が偲ばれる。


「それでじゃ、金貨250枚でどうじゃ?」


 以前のツインサイクロプスよりも50枚上乗せされている。

 ちなみに、雑魚の魔物なら、金貨1枚するかどうかというところだ。


 高く売れるに越したことは無いのだが、俺としてはカレンの代金、金貨70枚以上になればいい。

 この金額なら充分だ。


「その値でいい。実際こんな一品物、値段のつけようが無さそうだし。」

「そうじゃな。しかし、もう少し欲張って欲しかったものじゃが。全くアラタといい、イオリといい。」


 カサードは少し残念そうだが、会計担当はほっとしているようだ。


 カサードさん、娘におねだりされて喜ぶ親馬鹿ですか?

 まあ、俺のことを気に入ってくれているならいいことだ。


 会計担当の男が、持ち歩いていた金庫のようなものから、金貨を取り出す。

 ん? 見たことの無い金貨だ。


「では、白金貨20枚と金貨50枚になります。お納めください。」

「白金貨とは?」

「ああ、ご存知無かったのですね。白金貨は金貨10枚の価値です。」


 ふむ、つまり白金貨は日本円なら1枚約100万相当か。

 落としたら、泣くだけじゃ済まされないな。

 もっとも、最近こういった高額取引を経験したこともあり、俺の金銭感覚はかなり麻痺している。


 俺はアイテムボックスに金を仕舞い、立ち上がろうとすると、


「アラタ、もう行くのか? 1週間ぶりなのじゃぞ? ダンジョンでの話も聞きたいし、一緒に飯でもどうじゃ?」

「カサードさん、悪い。日が暮れるまでに、済ませておきたい用事があるんだ。今度帰って来た時には、喜んで招待させて貰うから。」

「早速装備を揃えたいのじゃな。気持ちは分かるので止めはせぬが、きっとじゃぞ。」

「うん、今日はありがとう。ではまた。」



 俺達が城を出ると、当然のようにヤットンも着いて来た。

 外はもう暗くなりかけている。


「さて、あまり人目に付かないところでテレポートするか。」

「ところで、誰を連れて飛びますか?」


 ミレアの問いに俺は全く考えていなかった。

 言われなければ、ここに居る全員で飛ぶつもりだった。


「そうだな。紹介してくれるヤットンは外せないが、クレアとミレアはサラサでは面が割れすぎている。悪いがお前達は門の馬車で待機だ。」

「残念ですわ。」

「ウルベンさんにご挨拶したかったのですが、仕方ありません。」

「ウルベンさんに会う余裕は無いかもしれないが、もし会えたら宜しく言っておくよ。あそこじゃ俺もお尋ね者なんでな。」


 テレポートの石は40階での遺品を合わせて現在5個ある。

 往復で2個消費するが、現状は問題あるまい。

 それに、この石はそのうち自作できるのではないかと踏んでいる。


 俺はミレアから認識阻害のロッタの帽子を受け取り、路地裏に入る。


「じゃあ、何かあったら、テレフォンで知らせる。ヤットン、スコット、行くぞ。」

 




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