夢の中
閻魔大王、何気にいい奴です。
夢の中
いいもの見せて貰ったおかげではなく、祭祀長の重い話で流石に疲れてしまった俺はあっさりと寝てしまった。
「いい・・・で・・け・・」
心の中で声が聞こえる。
「かっ・・わ・・のか・・さ・・」
何だろう? 女の声だ。
「こんばんは~!」
いきなりはっきりと声が聞こえる。しかしどっかで聞いたことのある男の声だ。
「おんや~、これはこれは・・・」
声の正体に思い当たる節がある。
「お前!閻魔か!」
「うんうん、アフターケアだよ~。」
「てんめぇ~! よりにもよって女の身体って! 調子いいこと抜かしやがって!」
俺は怒り心頭で怒鳴る。
「僕は性別のことは言わなかったけど~、でもこれは流石にきついよね~」
「当たり前だ! 何とかしろ!」
「困ったな~、ここは僕の管轄じゃないんで、どうしようもないよ~」
ここで逃げられたらこっちが困る。
「そこを何とか・・・」
「じゃあ、アドバイスはしてあげるよ~。」
「お~! ありがとうございます! 流石は閻魔様!」
「君、思ったより冷静だね~、僕もアフターケアのつもりで様子見に来たので。じゃあ良く聞いてね~。僕が君の魂を飛ばすまでは問題無かった筈なのよ~、でも、この世界で大きな手違いがあったようだね~。」
「なるほど、で、手違いとはどういった?」
「う~ん、これ、言っちゃっていいのかな~?」
「さっさと教えろ!」
「君が召喚されたその身体に大きな問題があるの~。」
「いやいや、女ということは分かってる。」
「それもだけど、だからと言うべきか・・・」
「いい加減に・・・。」
「ま、僕のせいじゃないしね~。簡単に言うと~、この身体、死んでなかったのよね~。」
「へ?」
「だからぁ~、この身体の魂が残っているの~。ほんの僅かだけど~。性別が逆になったのは多分その影響だろうね~。ある意味、君のエロ根性のなせる業?」
「いやいや、あの場面で、しかも死んでエロってありえないし。」
「あ~、それは冗談だよ~。僕が思うに彼女は助けを求めていた。その結果、ここに送り出した君の魂を無意識に捉えてしまったのだと思う。」
「なるほど・・・って、さっぱり分からんけど、要はこの身体は元の持ち主の魂が残っているってこと?!」
「そうだね~。」
「もしも~し? それって、かなりまずいのでは?」
「うんうん、かなりおかしなことになっているね~。」
「女ってだけでなく、しかも二重魂って・・・!」
「うんうん、なのでアドバイスなのよ~。」
「お願いします。」
「解決方法は簡単だよ~。君がこの身体から出ていけばいい。」
「それって、もう一度死ねってこと?!」
「いや、君が死んでしまうと彼女の魂も道連れだ。」
「じゃ、さっきの祭祀長の話で、俺の魂だけを別の身体に移すっていうことですか?」
「そうそう、そうすれば彼女の魂も肉体も残って万々歳~。」
「で、その方法は? 祭祀長もそれが分からんって感じでした。」
「君達の考え方で、大方は間違ってはないと思う。ただし、君の意思が必要だね~。それも絶対的な意思! 決して揺らがない愛!」
「え、なんか抽象的過ぎません? もう少し具体的に・・・」
「ん~、僕もこの世界は管轄じゃないし、あくまでも感じただけなんで、これ以上は無理かな~。」
「そこを何とか!」
「確信が無いからね~。ただ、君なら出来るような気がするよ~。確信は無いけどね~。」
「使えねぇ~!!」
「ごめんねぇ~。でもアドバイスにはなった筈だよ~。」
「はい、感謝します。よくよく考えてみれば俺って一度死んでいるのに、形はどうあれ、今生きている訳だし。贅沢言ったら罰当たるよな。閻魔大王相手になんですけど。ま、後は自分で何とかしてみます。」
「うんうん、その意気だよ~。あ、彼女の魂は消しちゃダメだよ~。更にまずいことになりそうだから。」
「俺もそんなことは考えてません。」
「良かったよ~。じゃあ、本当のアフターサービスね~。むんっ!」
「なんか、身体が軽くなった気がする。ありがとうございます。」
「うんうん、魂の回復をかけたからね~。君の魂も転生の影響で少しやつれていたようだし。じゃあ、頑張ってね~。」
その言葉を最後に閻魔の声はしなくなった。呼び掛けても応答が無い。
その代わりなのだろうか? 先程一瞬聞こえた女の声が今度ははっきりと。
「話は聞いたわ! 貴方、さっさと出て行って!」
俺は一瞬で理解した。閻魔が言ってた元の持ち主ってのは、こいつのことだ。
「聞いていたなら話は早いな。それが出来ないから困っている。」
「えぇ! 全く厄介ね! でもあの後急に体が軽くなったので、こうして話せるようになったわ。」
なるほど、閻魔の言っていた魂の回復と言うのは彼女にも作用していた訳だ。
「ところで、取り敢えずは自己紹介からかな。俺は近衛新。アラタでいいよ。誠に申し訳ないが、あんたの身体の同居人だ。全く持って不本意だが、よろしく頼む。」
「そうね、さっきの話だと私にも原因があるようだし、仕方ないわ。私の名前はリム。今はそれだけ。貴方流に言うと、全く持って不本意だけど、よろしくね。」
「もっと話したかったけど、色々あって流石に疲れた。ここで落ちていい?」
「えぇ、私は何か元気になったけど。お休みなさい。」
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