40階層、その後
40階層、その後
「まずは魔核と素材の回収だな。」
と、言ったものの、既に3人共その為に動いていた。
俺は、部屋に散乱している死体に目を向ける。
全部で10人、多分2パーティー分だろう。
数人は扉の前で倒れていた。その時の状況が目に浮かぶので、何ともやり切れない。
聖銀製の高価そうな鎧を纏っているが、それを死体から剥ぎ取る度胸は俺には無い。
武器だけはありがたく頂いておくか。
そう思って、散らばっている武器を回収する。
魔核と素材を回収し終えたスコットが死体を指さす。
「このミイラ、どうしますにゃ?」
「う~ん、迷っていたのだが、やはり地上で弔ってやりたい。身元が分かるものがあればいいのだが。」
武器や防具に名前が書いてある訳もないが、死体を調べてみる。
特にこれと言った特徴も無いが、冒険者の装備品では無さそうだ。
この世界の冒険者は、今まで俺の会った奴だと、基本的には防御力よりも、動き易さを重視している気がする。
勿論、そのパーティー内での役割によっても違うだろうが、このように聖銀製の重装甲で統一された装備は珍しい。
「おそらく、ダンジョンから帰って来ないという勇者様達ではないでしょうか?」
「ああ、ミレア、俺もそう思う。だったら、尚更ここに放って置く訳にもいかないな。」
俺の人物鑑定スキルも死体には効かないようで、死体を調べながら、アイテムボックスにそのまま入れて行く。
所持品表示で名前とかが出ないか期待したのが、【人間の死体】と装備していた防具の名前しか表示されない。
だが、調べていくと、二人がアイテムボックスらしき指輪をしていた。
失礼してそれを指から外す。
「確か、リムはこうやっていたんだっけか?」
俺はその指輪に魔力を込めた気を流す。
「うん、成功だ。」
指輪はリセットされたらしく、中に入っていた物が溢れ出た。
続けてもう一個もリセットした。
遺留品の山を皆で物色する。
あまり気分のいい事ではないが、死体に持たせておいても仕方あるまい。
「魔核と素材、それに既に私達が持っているような装備ばかりですわ。」
「目ぼしい物は・・・このテレポートの石と金銭くらいですかね。」
「装備品は僕の実験用に貰って構わにゃいですにゃ?」
「ああ、スコット。有効に活用してやってくれ。」
ミレアがテレポートの石3個と、金貨12枚、それと沢山の銀貨を俺に渡した。
「あと、これもですにゃ。名前が無いですにゃ。」
スコットが、階層主の魔核と頭2つを俺の前に並べた。
鑑定スキルを持っているから、多分、???と表示されたのだろう。
アイテムボックスに放り込んでみる。
???の魔核×1
???の頭×2
以前、クレアとミレアで倒した奴の時と一緒だ。
つまり、こいつはまだ誰も倒したことのない種類ということだ。
「うん、以前と同様だな。つまり、この階層に到達したのは俺達が初めてということだ!」
俺は少し大袈裟に言ってみた。
「アラタさん、私達、遂にやりましたわ!」
「他の勇者様達には出来なかった事を・・・感無量です。」
「ぼ、僕のような一旦は挫折した人間でも・・・やっぱりアラタさんについて来て良かったです!」
思った通り、皆、かなり嬉しかったようで、興奮の色が隠せない。
俺も少し照れ臭くなったので、フォローする。
「まあ、ナガノさん達にはまだまだ及ばないがな。」
「そんなことありませんわ! この調子で抜いてやるのですわ!」
「アラタさんは召喚されてまだ2週間くらいですよ? 長野様達は攻略までに2年かかったはずです。という事はアラタさんのほうが凄いです。」
「褒められて悪い気はしないが、一応聞いておくぞ。クレア、ミレア、お前達はナガノさんの部下ではなかったのか?」
「今はアラタさんの奴隷ですわ!」
「長野様には命を助けて頂いた恩があります。しかし、それはこうしてアラタさんに同行することによって、返せたと考えています。」
ナガノさんの部下を寝取った、いや、引き抜いたようで少し罪悪感があるが、これはこれでいいのだろう。
俺にとっては何よりも、この仲間の信頼が嬉しい。
ナガノさんも、この姉妹にいつまでも恩着せがましい感情は持っていないはずだと、自分を納得させよう。
「まあ、なんだ、ありがとう。ところでこの魔物の名前なんだが。俺はネーミングセンスゼロだしなぁ~。」
俺は全員を見回す。
「スコット、こいつの名前の命名権は俺達にある。お前決めてみないか?」
「ぼ、僕ですかにゃ? 無茶振りですにゃ!」
クレアとミレアがにやにやしている。
「スコットが付けた名前は、この世界で未来永劫残ることになるぞ?」
俺はスコットの欲を掻き立てると同時に、プレッシャーも与えてみる。
「そ、そうですかにゃ。じゃあ・・・、ツインサイクロプスというのが、この魔物とそっくりなのですにゃ?」
お、乗り気だ。名誉欲が勝ったようだ。
「そうだ。俺とクレアとミレアで倒した新種だった。こいつのほうがかなり強いと思うが、色が違うだけで、この一つ目の双頭といい、体形も一緒だ。多分同種だろう。」
「では、『ダブルジャイアン』はどうですかにゃ?」
言い方を変えただけで、そのまんまだな。こいつも俺と大差ないらしい。
クレアとミレアが俺とスコットを交互に見ながら笑いをこらえてやがる。
「う、うん。それでいいんじゃないかな。スコット、ありがとう。」
アイテムボックスの所持品表示が変わった。
俺達はそこら辺に散らばっていた物を死体から何からアイテムボックスに放り込んでいく。他に目ぼしい物は無いようだ。
「じゃあ、一旦戻ろう。気が進まないが、身元判明に帝都まで戻ることになりそうだ。」
「「「はい。」」ですにゃ。」
入り口のワープの小部屋に着くと、ヤットンの仲間がそこで待機していた。
「よくぞご無事で。お待ちしていました。ヤットンが報告したいことがあるようです。」
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