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22歳♂ 何故か女の体に転生しました。  作者: BrokenWing
第一章
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提案

       提案


  

 20階の主部屋で魔核や素材を回収しながら、俺は聞いてみた。


「ミレア、10階の時と同様に、一度地上に出るべきかな?」

「ヤットンさんの情報はこの階層までしかないので、ここからは完全な未知のエリアです。一旦態勢を完全にしてからがいいと思います。」

「そうだな。色々と試したいこともあるし、一度戻るか。」


 俺達は主部屋の扉をくぐり、ワープの小部屋で登録を済ませて魔法陣に乗る。

 外に出ると、いい天気だった。

 早速冒険者風の奴らが二人、俺達を見つけて駆け寄って来る。

 一人は前回も居た奴だがもう一人は初見だ。

 二人とも30歳くらいに見える。屈強とは言えないが、引き締まったいい体をしている。


「お帰りなさい。あれから2日、また早いですね。20階まで行かれたのでしょう?」

「うん、ヤットンの情報もあって、スムーズに進めた。」

「ここで一旦休まれますか?」

「ああ、そうしようと思っていたところだ。」


 気付くと、その2人の背後に真っ黒なローブを纏ったヤットンが居た。

 相変わらず、気配の読めない奴だ。


「それならば、こちらへどうぞ。屋外なもので大したもてなしもできませんが、今日はゆっくりとお休みになられるが良いでしょう。」


 ヤットンは俺達を、前回見た簡易テントに案内する。


 中は割と広く、ソファーが2つと大きめのベッドが2台あった。


「近衛様に教わって、ベッドを用意してみました。野外でベッドなんてと思っておりましたが、使ってみるとなかなかいいですね。私達が使っていたものですが、宜しければどうぞ。」

「ありがとう、ヤットン。だが、ベッドは自前のを使わせて貰うよ。クレア、ミレア、後で寝る時に、このテントの横にもう一つ仮設テントを張ってくれ。」


 俺はそう言って手近なソファーに腰掛けた。

 クレアが俺の横に座り、ミレアとスコットは正面のソファーに移動する。

 ヤットンはアイテムボックスから椅子を取り出し、正面のソファーの横に陣取った。


「20階まではお前の情報で助かった。それでこれ以後なのだが。」

「申し訳ございません。21階より先は私共も何も存じません。」


 俺はひょっとしたらヤットンならば、潜ったことがあるのではないかと、淡い期待をしていた。


「そうか。しかし、ここも以前より魔物が少し強くなっているようだ。もし知っていても参考程度だっただろう。」

「え? 魔物が強くなっているとはどのように?」

「階層主の部屋には階層主とは別に2体の魔物が居た。これは10階でも同様だった。」

「なんと、私共の時は階層主1体だけでした。これはご迷惑をお掛け致しました。」

「いや、それはいい。サラサもそうだったし、予想は出来ていたからな。」


 やはり、ヤットンはこのダンジョンを潜ったことがあるようだ。

 俺に教えてくれたのは帝国の情報ではなく、ヤットン個人の物だった可能性が高いな。


「ところでヤットン、もう一度尋ねるが、一緒に前人未到のエリアに潜る気は無いか?」

「近衛様は良く見ておられる。大変に魅力的なご提案なのですが、現在は帝国に雇われている身でございます。」

「そうか。無茶を言って済まなかった。」

「いえいえ、お気になさらずに。5年前ならばと思うところもございましたので。」


 思ったとおり、ヤットンは冒険者だったのだろう。

 ということは、外で見張っている連中は、口振りからしてもヤットンの仲間で間違いないはずだ。パーティーごと帝国に雇われたというところか。


 俺としては、このパーティーにはまだ一人空きがあるので、ヤットンのような経験者が是非欲しかったところだったのだが。

 ちなみに普通のパーティーは6人である。俺とリムの特異体質のせいで、この身体は二人分としてカウントされている。


「ただ、私の伝手で紹介できる人物が居るやもしれません。」

「ん? ヤットンの昔の仲間か?」

「仲間と言うよりは顔見知り程度で。数年前に一度一緒に潜っただけでございます。」

「その人は今どこに?」

「この国には居ません。最後に会ったのはサラサ自治領ですね。まだ若造でしたが、素質のある者に見えました。」


「サラサか、あそこには今は行き辛いな。ダンジョンには潜ってみたいところだが。」

「共和国があの後どうなったかは存じませんが、近衛様に対していい感情を持っていないのは間違いございません。」

「でも、あそこはほぼ治外法権だと聞いたが?」

「介入こそしませんが、見張りくらいは置いているでしょう。行けば火種を撒くことになりましょう。」

「そうなるよな。折角の提案だったが、無理なようだ。」

「いえ、私も無理と分かっていて、申し訳ございません。」


 俺はこの話はもう終わりだなと、別の話題に切り替えようとしたが、ヤットンがにやりと笑った。こういう顔もできるんだと、少し意外だ。


「宜しければ、私の仲間をサラサに向かわせましょうか? 勿論帝国とは無関係に。」

「やってくれるのか? で、いくらだ?」

「話が早くて助かります。金貨4枚と言いたいところですが、ここはどうでしょう。お手持ちの魔核では?」


 俺は悩んだ。金貨4枚は出せない金額ではない。しかし、これからもしものことがあれば、キャッシュはあるに越したことはない。


「残念ながら、この前のようなレアな物はもう無いぞ。今あるのは・・・スコット、どうだ?」

「今あるので価値がありそうなのは、さっきの階層主のビートルマンとファイアナーガ、あとはサラサのヒュージビーとダークウルフの魔核ですにゃ。あと、魔核ではにゃいですが、魔結晶なら5個ほど余っていますにゃ。」


 魔結晶と言えば、スコットがちょくちょく拾っていた気がする。

 あれから5個も拾っていたとは。やるな。


「おお~! 魔結晶をお持ちでしたか。街で買えば一つ金貨2枚はします。どうでしょう。それを2つでは? 若しくはその階層主の魔核でも宜しいのですが。」

「魔核はスコットが合成してくれるかもしれないので、貴重かな。じゃあ、魔結晶2つで頼む。」


 俺はスコットから渡された魔結晶の中で大きめのを2個ヤットンに手渡した。

 ミレアに目配せしたら、問題無いと言うように頷かれた。


「お気遣いありがとうございます。では契約成立ということで。ただし、私共に出来る事はその冒険者を探し出し、話をするまででございます。近衛様のパーティーに加わってくれるかはお約束できませんが、宜しいでしょうか?」

「うん、それで頼む。どれくらいかかる?」

「サラサ自治領は隣国とは言え、山一つ越えねばなりません。なので、1週間も見て下されば。テレポートの石は国の管理なのでそうそう手に入らないのです。」

「分かった。いい結果を期待しているよ。」


 ヤットン達はかなり上機嫌のようだ。仲間の一人がお茶を勧めて来る。

 俺はヤットンを100%信用している訳ではないが、ここで騙してくるならむしろ安い出費だろう。


 その日は隣に野営用のテントを張って休んだ。

 ヤットン達が食事の差し入れをくれたが、クレアが作ってくれたほうが美味かったので、皆、口には出さないが不満顔である。


「食事で思い出したが、クレア、あのダークウルフの肉、まだ余っていたっけ?」

「まだありますが、全員【毒無効】になりましたわ。」

「旨いのだが、流石に毒があると知っているから無理に食べる気になれないんだよな~。」

「そうですね。理由を説明してヤットンさん達に差し上げますか?」


 ミレアがいたずらっぽく笑う。


「ミレア、その発想は無かったぞ。でも、あの連中もかなりの冒険者だろうから、それくらい知っているのでは?」

「断られた所で誰も困らにゃいですにゃ。僕が行ってきますにゃ。」


 結果から言えば、彼らには大層感謝された。毒があるのは知っていたが、回復しながら食べることによって、毒耐性を獲得できることは知らなかったようだ。

 スコットの話によると、街で売れば一財産になるかもしれないから、狩に行こうと仲間の一人が張り切っていたとのことだ。


 なんか俺のせいで、この世界の耐性獲得に対する考え方が変わりそうだが、深く考えるのは止めておこう。



 俺は寝る前にリムにヤットン達には、まだ二重魂の事を明かさないように頼んでおいた。

 彼等に他意は無さそうだが、皇帝に漏れるとも限らない。薄々気付いてはいるようだが、あえてこちらの正体を知らせることもない。


 朝起きてからは、念の為にヤットン達から結界石をいくつか譲って貰う。金を払おうとすると、肉のお礼だと断られた。

 ひょっとしたら、結界石くらいは経費で落ちているのかもしれないが、深読みせずに有難く頂いておこう。


 

「この調子だと、次は早くて2日後、遅くても4日くらいかな? 行って来る。」

「「「行ってらっしゃいませ。お気をつけて。」」」


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