様々な魔物
様々な魔物
ん? 朝か。
「おはよう、リム。」
「おはよう、アラタ。昨晩はスコットさんが武器を作ってくれたわよ。」
「ああ、見たよ。特殊効果のついた武器は貴重だな。あの杖はリムが使うといいよ。」
「うん、そうするわ。やっぱりあたしは貴方と違って、格闘系は少し抵抗あるみたい。」
「なら、剣とか使ってみるか? ミツルが持っていたのがあっただろう。あれも聖銀製だったはずだ。」
「う~ん、スコットさんがいい武器を作ってくれたら、考えてみる。」
「ふむ、スコットが作ってくれたらか。なるほどね。」
「変な勘違いしないでよね! 飽くまでも選択肢の一つなだけよ。」
「あはは、奴は真正のロリコンだ。お前の容姿もギリロリ枠だが、奴からすればお前でもおばさんだろうな。」
「15歳に向かっておばさんとは失礼ね! それにそんなんじゃないって言ってるでしょ!」
「あ~、悪かった。そろそろ起きていいか?」
「特に他にはなかったし。貴方も見ているでしょうから、じゃあね。」
「うん、おやすみ、リム。」
「おやすみなさい、アラタ」
俺が目を覚ますと既に朝食は取ったらしく、クレアとミレアが慌ただしく片付けをしていた。スコットは広げた道具一式をアイテムボックスに収めている。
皆と挨拶を交わして、今日の目標を伝える。
「今日は10階の階層主にチャレンジしよう。これからは、サラサの例からすると、スライムからペインスコーピオンの団体さんに切り替わる可能性が高いな。」
「そうですね。ヤットンさんから聞いていた話より、ペインスコーピオンの出てくる階層が低かったですし。」
「うん、だが、奴はお前の範囲魔法【フローズンウィンド】も有効だし、クレアの【アクアダーツ】が弱点だ。特に問題ないだろう。」
「そうですわ。この階層は私と相性がいいですわ。」
「逆に僕にはイマイチですにゃ。あいつは硬くて僕の矢がそれほど効かないですにゃ。」
「スコットは色々と試してみてくれ。関節とか、口とか。目は堅そうだったが。お前の命中精度ならできそうだ。」
「はいですにゃ。」
クレアはこのダンジョンでは終始機嫌がいい。
新しい武器もうまく使えて、また自分の数少ない攻撃魔法が弱点の敵と遭遇すればそうもなるか。
思った通り、8階層からはサソリばかりになった。しかし、気持ちの準備もできていたし、問題なく駆逐できる。
スコットも、奴が鋏を振り上げた瞬間に、その付け根を狙撃するという神業で瞬殺させる。
ふむ、腋が弱点か。人間臭いな。
10階への降りる通路で次の階層主の情報を確認する。
「ヤットンの話だと、ここの階層主はファイアナーガという、腕のついた蛇の化物だったな?」
「はい。特に弱点も無く、また、火の魔法を放ってくると言っていましたね。」
「いつも通り、俺が【ハイスタン】を唱えてから、皆で凹れればいいのだが。」
「そうですね。期待しています。」
「それでミレア、やはりお引きは居ると思うか?」
「ヤットンさんの話では単体だったとのことですが、サラサの例もあり、用心するに越したことはないかと。」
「そうだな。もしお引きが居たらお前達に任せる。俺はいつも通り主に突っ込むよ。」
「「「はい!」」」
10階に降りるとレーダーに反応があった。やはりお引きが居るようだ。
扉を開けると、蛇の化物と、ペインスコーピオン2体だ。
俺は予定通り【ハイスタン】を唱えてから階層主に突っ込む!
「フローズンウィンド!」
「アクアダーツ!」
「三連射!」
俺の横を矢が掠め、まだ固まっている相手に魔法が炸裂する!
あっという間にお引きのサソリが無力化されたようだ。
「チッ、効いていない!」
意外なことにファイアナーガに【ハイスタン】は効かず、魔法を詠唱してきやがった。
奴の動きを封じ込める前提で突っ込んでいたから堪らない。
もろに喰らってしまった!
一瞬視界が真っ赤に染まる! 身体が熱い!
しかし、思ったほどのダメージは無かった。と言うより、ほぼ無傷だ。高い魔法耐性のおかげか?
「ならば!」
俺は奴の胴体に正拳をぶちかます!
拳がめり込んでから何か堅い物に当たったようだが、構わず腕を振り切った。
「ん? 突き抜けた?」
「もうこれくらいでは驚きませんわ。」
「勇者チート・・・凄すぎます・・・。」
「相手はスライムじゃないですにゃ!」
壁に赤黒い球体が当たって落ちた。
ファイアナーガのどてっ腹には穴が開いている。
音を立てて階層主の背後の扉が開く。
「ふう、魔核を取り出す手間が省けたな。」
扉をくぐると今回もワープの小部屋があったので全員登録する。
確認の為に部屋の中央の魔法陣に乗ると、ダンジョン入り口の小部屋に転移できたようだ。
「うん、一旦外の空気を吸うか。」
外に出ると、ヤットンは居らず、代わりに冒険者っぽい恰好の連中が2人居た。
「やや? もしかして勇者近衛様でしょうか?」
「そうだが、お前たちは?」
「私達はヤットンの一応部下です。ここで見張るように頼まれたので。」
「一応部下?」
ヤットンのただの部下ならばいいが、『一応』ってなんだ?
「う~ん、肩書上は部下なんですが、まあ仲間みたいなもんなんで。そこはあまり気にしないでください。」
「そうか。じゃあ、ヤットンに伝えておいてくれ。10階まで行ったが、引き続き潜ると。」
「え! まだ2日目ですよ? もう10階の主を倒したのですか? しかもたった4人で。」
「仲間に恵まれたんでな。」
「そ、そうですか。潜るにしても一度ここで休まれては如何ですか? 足りない物とかありませんか?」
ヤットンの仲間と言うのが指したほうには、簡単だが、雨露が凌げるようなテントが張ってあった。
サラサの冒険者たちが使っていたのと同じだ。
サラサの冒険者と違ってこいつらに下心が無いのは分かる。
俺は迷ったが断わった。
「気持ちだけ頂くよ。補給はまだ必要無いし、何というか緊張感をあまり切らしたくない。」
俺は同意を求めようと振り返ったが、全員上の空だった。
仲間に恵まれたという一言が効いてしまったのだろうか?
「分かりました。ヤットンには伝えておきます。お気を付けて。」
ワープで10階に戻ってから、階層主の部屋はどうなっているかと見ると、意外にもまだ扉は開いていた。
「もう閉まっているかと思ったが?」
「階層主が再生されるまでは扉は閉じないと聞いています。」
「再生にはどれくらいかかるんだろう?」
「詳しくは分かりませんが、噂では3日くらいとか。」
「ふむ、ミレア、ありがとう。まあ、俺達にはあまり関係無さそうだし、いいか。」
11階に降りるとやはり魔物の層が変わっていた。
芋虫の化物だ。
こいつは口から粘々した糸を吐いて来る。
俺は力任せに引き千切れるが、クレアがそれに絡まって面倒なことになった。
何というか少し表現し辛いエロい状態だ。
「あの魔物、捕まえて飼いませんか?」
「ミレア、変態してないで助けろ!」
俺ももう少し見ていたい気がしたが、スコットがダガーで糸を切って事無きを得る。
接近戦でも倒せるのだが、糸が厄介なので、魔法で仕留める事にする。
火の魔法が弱点のようで、俺の【ファイアショット】で一撃で倒せた。
ミレアの【ファイアウォール】だと少し残すようで、スコットの援護で丁度くたばってくれる。
クレアは少しトラウマにでもなったのか、ミレアが削ったところに槍を投げて仕留めていた。
そんな感じでその日は13階まで潜って休憩となった。
ブックマーク登録ありがとうございます!
評価や感想なんぞも頂けると励みになります。m(_ _"m)




