異世界召喚
ほんの少し訂正しました。
異世界召喚
俺はゆっくりと目を開ける。石造りと思われる天井が見える。閻魔の言っていた異世界ってところだろう。
手をついて体を起こす。
妙に体が重い。
辺りを見回すと数人の若い男女が寝ている。
更に後ろを振り返ると、ローブを着た男が駆け寄って来た。
「お~、目覚められましたぞ! さあ、勇者様、こちらに。皆様お待ちかねです。」
俺はローブの男に手を引かれる。
まだ少し朦朧としているが、引かれるままに歩く。
向かう先の扉が開くと、会議室みたいな所だ。
中央に大きな長方形のテーブルがあり、テーブルの中央に立派な帽子を被り、紫のローブを纏った男。
如何にも威厳がありそうだ。
服装から見る限り、神官だろうか?
その両脇に2人ずつ、思いっきり貴族って雰囲気を醸しだしている人が座っていた。
部屋の四方には鎧を着て、剣を持った兵士と思われる人が立っている。
真ん中に座っている神官と思われる男が立ち上がり、
「この度は召喚の儀において、このフラッド帝国によくぞお越し下さいました。ささ、どうぞお席に。あ、その前に身体の方は異常無いですかな?」
俺は下のほうから自分の体を見る。
裸足だ。そして真っ白な細い足だ。脛に毛が生えていない。
徐々に上に目線を上げていく。スカート? いや、ワンピースのようだ。
嫌な予感しかしない。
目の前に膨らみがある。
俺は意を決して、その膨らみに触れてみる。
ちゃんと感触はある。
が、案の定柔らかい。
これは・・・
俺は股間に手を伸ばす。
ない! ♂の証がそこには無い!
絶望感に襲われながら体を振ってみる。
何か髪の毛が鬱陶しい。相当伸びているのだろう。手に取ってみると金髪だ。
俺は理解した。
そう、閻魔の言う通り、向こうの世界が用意した器とやらに転生したのだろう。
しかし!
この体、女だろう・・・!!
「どうかなされましたか? 前回の勇者様も最初はかなり戸惑っておられましたが、すぐに慣れたと仰っておいででした。ですが、ご気分が優れないのであれば、別室にてしばし休まれますかな?」
「あ~、かなりどうかなされています。が、状況を把握したいです。説明して貰えますか?」
「あ、私ごときに敬語は不要です。申し遅れました。私はイーライ・プレト、この国の神事における責任者。祭祀長です。現在貴方様は我が国の召喚儀式において、勇者様として召喚されました。」
「なるほど・・・あ、ここは強調したほうがいいのか。 お・れ・は・近衛新! 22歳! お・と・こ・だ!」
皆、一斉に顔が引きつる。
「鏡を貸して。それと、この体について説明を。」
俺をこの部屋に連れて来た男が慌てて部屋を出る。
おろおろしながら祭祀長が説明する。
「お怒りのお気持ち、お察し致します。確かに勇者様のお身体は、元々は『リム』という15歳の少女の身体。しかし、今までの勇者様で性別の不一致が起こったことはありません。」
そこにさっきの男が鏡を持ってすっ飛んで来たので、それをひったくる。
・・・この顔は・・・確かに女だ。
よく見るとかなりの美人だ。
細長の面立ち、すっと通った鼻筋、切れ長の目に細い眉。そしてストレート ロングの金髪。『リム』・・・ね。
ありえね~、ありえないわ!
日本ならこの少女に言い寄られて悪い気がする男はまず居ないだろう。
鏡を見ながらなのに、なんかドキドキしてきた。
「自分で言うのもなんだけど、すっごい美少女! しかし流石に女は無理! どうにかならない?」
「申し訳ありません。一度魂が宿ってしまうと、どうすることもできません。次の召喚の時になら、あるいは可能やもしれません。」
「次の召喚っていつ!?」
「来年でございます。しかし、今回はイレギュラーなので、用意出来次第・・・それでも恐らくは半年後くらいになります。他国でも聞いたことの無い初めてのケースですので、誠に申し訳ありませんが・・・」
「げげ! 他に可能性は無いの? それともう少し詳しく説明してくれ!」
おれが祭祀長に喰ってかかると、滔々と説明しだした。
なんでも、召喚は毎年1回、8月の満月の夜に行われる。
そして、その召喚の器として、毎回、死んだばかりの数人ずつの若い男女を用意する。
つまり、さっきの部屋で寝ていた人達はその器に用意された死体だろう。
死体の選定基準は12歳~18歳で、儀式の2日前までに死んだ者、生前の身分は関係無い。
遺族の許可が取れ次第、死因に関係無く回復系の魔法をかけまくり、召喚が成功した場合に問題が無いようにする。
ただし、例え新鮮?な死体を10体用意しても、一回の召喚で成功するのは必ず一人。
召喚に成功しなかった時もあったそうだ。
残った死体は丁重に葬られる。
今までの例だと、必ず生前男性だった者は男性の遺体に、女性だった者は女性の遺体に召喚されたらしい。
また、召喚された者は皆、生前は日本人で15歳前後の者ばかりだっそうだ。
なるほど、閻魔の管轄だなと理解する。横に居た鬼の『年齢は少しオーバー』ってのにも合点がいく。
「召喚の儀については、分かった。概念としては魂の無い死体に異世界の魂を植え付けるということでいいの?」
「おお~、正しくその通りでございます。補足するならば、召喚に成功した勇者様には例外無く、この世界の人間よりも各能力値が高く、成長スピード、伸びともに大きく凌駕します。なので、我々も恥を忍んで異世界の貴方様方の魂を召喚させて頂き、勇者様として奉っているのでございます。」
「ふむ、で、ここからが本題だ。俺の魂は他の死体に移すことが出来るの? もう一回殺すってのは無しで。」
閻魔の奴、あんな事言ってたけど、チート能力あるじゃん、とか思いながらも先を促す。
「せっかく召喚に応じて下さった勇者様を、我々が手にかけるなぞあり得ません。私共は勇者様の性別がどちらでも、等しくありがたいのですが、このままだと勇者様には些か不都合なのも事実。お気づきのように召喚の儀とは魂の移し替えそのものでございます。ですが、この世の生者の、それも特定の魂を移した等という例はございません。」
「それで、できそう?」
俺は少しイラっとしながら再度聞いた。
「召喚の儀は、召喚の間にある水晶に貯まった魔力を元に行われております。その魔力は約半年で満ちるのですが、この世界において、召喚は毎年一回と国同士での取り決めがあります。」
「つまり?」
「はい、今回の件はイレギュラーだったと各国に説明し、例外的に半年後に召喚の儀を執り行えるよう説得致します。ただ、その、誠に申し上げにくいのですが、なにぶん前例が無いもので、我が国の総力を挙げて成功するべく研究致しますが、ご期待に添えるかどうかは・・・」
祭祀長は深々と頭を下げた。
「あ~、分かった。できるかどうか分からないっての理解をした。そっちからすれば他人事だろうけど、俺は♂だ。そしてこの体は♀。最善を尽くして!」
「勿論でございます! それでは、この世界においての勇者様についてのご説明を・・・あ、お疲れでしたら少し休まれますか?」
「いや、続けて。」
この世界における勇者の役割とはこういうことだった。
数百年程前から、各地の洞窟など主に地下にダンジョンと呼ばれる魔物の巣窟が10個、突如出現した。
ダンジョン自体は害が無いようなのだが、ダンジョンの影響と思われる魔物が各地に湧き出してくる。
そしてその魔物は人間や家畜を襲う。
仕方が無いので討伐部隊を編成してダンジョンを調べてみたが奥に行くにつれ、魔物は強くなり、全滅してしまった。
それでもダンジョンを抱えた国は、多大な戦力を割いたが返り討ち。
結果、数万人規模の大損害。
遂に各国は匙を投げ、最低限、街に被害が出なければいいくらいに考え出した。
城壁を築き、警備を増やすが、積極的にダンジョンを調べようとはしなくなった。
また、魔力の集中している地点がいくつかあり、その周辺には結界が張られているようで、その範囲には魔物が近寄って来ないということが判明したこともあり、そこを中心に都市が建設され出した。
結果、ますますダンジョン探索はおざなりになった。
しかし、流石に放っておくのも住民の手前顔が立たない。
魔物が出る都市間の交通も不便である。
やむを得ず冒険者という職業を創設し、ダンジョンの探索及び、魔物を退治した者に報奨金を与えるというシステムを各国一致で採用した。
そして現在に至りその冒険者の活躍により、ある程度の魔物と人間の境界線みたいなものが保たれるようになった。
「なるほど、この世界はある程度理解できた。それで勇者はどう関わるの?」
「はい、20年程前に偶然にある鉱石を使って特殊な魔法を使うと、死者が蘇生するという現象が確認されました。蘇生した者にはこの世界での記憶が無く、その代わり全く違う過去や知識、経験を語ります。また能力も生前に比べて上昇しており、成長も著しい。そう、これが勇者様の始まりです。その後、各国は研究を重ね、勇者様を意図的に召喚することに成功しました。」
俺は、恐らくこの時に、この世界の神と閻魔の間に何らかの取引が成されたのではないかと推測した。
「そして、5年前、成長した勇者様のお力は余りに強大であるということが判明致しました。何故ならたった5人の従者を従え、ダンジョンの最深部に到達した方が現れたのです。勿論従えた従者の力も相当なものだったのでしょう。しかし、今まで我が国では一度に100人以上の兵士、延べ10000人を割いても出来なかったことです。一躍勇者様に注目が集まりました。」
確かに単純計算で行くと勇者一人で兵士2000人近くの戦力に匹敵する。凄まじい戦力だ。
だが待てよ?
今までの話を総合すると勇者は、元々は若い日本人、こういったダンジョン物のゲームとかは馴染みがある。
そういった感覚でクリアしてしまったのではなかろうか?
「説明の途中で悪けど、その最深部まで攻略されたというダンジョンは、その後どうなったの?」
「ダンジョンは消えず、そのままです。その後の探索でも最深部に居たという主みたいな魔物は復活しておりました。しかし、半年程そのダンジョンの周囲では魔物が出ないという報告を受けております。」
「ふむ、攻略されると暫く魔物が出なくなる・・・半年周期か・・・ということは・・・」
「はい、近衛様にご依頼したいことは我が国のダンジョンの攻略です。」
「だろうなぁ~。呼び出されてちやほやされて、タダで済む訳が無いよな~。死ぬまで戦えってことになるのか・・・はぁ~。。。」
俺が大声でぼやくと、周りの全員が目を伏せた。
「そのお話は明日、陛下の下で。今日はお疲れでしょう。部屋と着替えを用意しております。召使をお付け致しますので、なんなりとご用命下さい。」
俺は侍女に近くの部屋に案内された。
侍女は俺の想像するところの完璧なメイド服であった。
20歳くらいだろうか?
赤髪のロングを後ろで丸く結わえて、かなりの美人である。
クレアと名乗っていた。
部屋は100㎡ほどあった。
広大なベッドには屋根みたいなもんまで付いている。
床は一面に豪華そうな絨毯。
必要最低限ではあろうが家具や机、ソファーもある。
流石にテレビはないが、奥の部屋には洗面器と便所、小さなバスタブもある。
ホテルのスイートって泊まったことないけど、こんな感じだろうかと想像する。
部屋に案内してくれた侍女が簡単に説明してくれ、「ごゆっくり」と部屋の隅にある椅子に腰掛けた。
「ところで・・・」
慌てて侍女が立ち上がる。
「はい、なんでございましょうか?」
「俺はこれから、どちらの性別で振舞えばいいのだろう?」
「そ・・それは近衛様のご自由になさればよろしいかと・・・」
「いやいや、具体的には男便所と女便所、あと、風呂とか」
「お手洗いと浴槽はこの部屋に付いておりますから、ご心配は要らないかと。あと、この世界ではお手洗いは男女で特に別れておりません。お風呂という習慣は勇者様だけの習慣と存じております。もっとも、身分の高い方はご利用なされますが、そういった方々はこの部屋のような個人用ですので。」
「なるほど、しょうもないことを聞いて悪かった。」
「いえいえ、何でも聞いて下さい。それではごゆっくり。」
「どうも・・・って、出ていかないの?」
「あら? お邪魔でしょうか?」
「うん、風呂入りたいし。」
「あらあら、ならば、お身体を洗わせて頂きますわ。」
「いやいや、俺、男だし。って今は女か。」
侍女はにやっと微笑んでから、
「そうです! どうぞご遠慮なさらずに!」
「いやいやいやいや、それでも遠慮する! ってか出てけ!」
「それでは私の仕事になりませんわ! 陛下から、くれぐれもと申し付かっております。さあ、服をお脱がせ致しますわ!」
ヤバイ、目付きがヤバイ! この侍女、美人だなと思って見ていたら、とんだ性癖を持っていたようだ。
「お~い、誰か助けてくれ~!」
外で待機していたのか、すぐさまもう一人の侍女が入ってきた。この人も20歳くらいだろうか? 変態侍女と同様に青髪を後ろで結わえている。タイプは違うがかなりの美人だ。
しかし、俺は気付いた、この女も目がヤバイ!
「おやおや、お姉様一人では無理なご様子。私、ミレアがお助け致します!」
「そっちの助けじゃねぇ~!」
俺は確信した。これ、ドツボだ・・・
「ささ、じっとして下さい! 私共も脱ぎますし、恥ずかしいことはありません!」
「いやいや、おかしいだろ! お前等まで脱がなくていいし!」
「あらあら、脱がないと服が濡れてしまいますわ! それではお仕事に差し支えます!」
多勢に無勢、観念した俺はされるがままになった。
俺のスケベ心があったのも否定はしない。
どんな修羅場であったかはここでは割愛する。
そして、色々と自分の身体に気付いた点も多かったが、そこらへんも割愛する。
後述になるが、クレアは丸顔でぱっちりとした目が可愛らしい。
ミレアは面長で目が細く知的な印象。
体形は、修羅場の記憶ではクレアは165cmくらいで、胸は大きめだった。
ミレアは160cmくらいでスレンダーボディー。
どちらも美人なのだが、髪の色も胸の出方も違うし、姉妹には見えない。
修羅場は良かった?が、収穫もあった。
風呂の後、下着の着け方(主に胸)を教えて貰えた。
見た感じそれ程大きくはないが、やはり固定したほうが動きやすいようだ。
流石に疲れたので寝ると言ったら、夜のお相手もとか訳の分らんことを言い出してきたので追い出した。
はぁ~疲れた。。。
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