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22歳♂ 何故か女の体に転生しました。  作者: BrokenWing
第一章
12/99

盗賊

戦闘シーン、難しいです。

       盗賊



「さて、この魔物は何とかなったが、街道にはまだ多数居るようだ。林の中を歩いて迂回するか、ここで敵が移動するまで待つか?」

「アラタさんの判断に従いますわ。」

「気力もまだ完全に回復していないですし、もう少し様子を見ては如何でしょうか?」

「ふむ、ミレアの案がもっともなようだ。俺も魔法を覚えたいし、ここで様子見だ。どれくらいで回復する?」

「1時間くらいですわ。」

「2時間ほど欲しいです。」

「分かった。それまで俺は魔法書を読むことにしよう。お前らは休憩してくれ。」

「では、私はその間に食事を用意しますわ。その前に少し、あの・・・着替えたいので。」

「ん? どうした?」

「魔物に掴まれた時にその・・・下着がかなり・・。」


 クレアが顔を赤くしてもじもじしている。なるほど、掴まれて、はみ出たわけね。

 しかし、見られるくらいは俺に断る必要もないだろう。何しろ自分から積極的に迫って来るような奴らだ。

 でも、これが女って物なのかな等と勝手に合点した。


「あ~、どうぞご自由に。水は樽があるから使えばいい。俺はあっち向いてるから。」

「ありがとうございます。水は魔法を使いますのでいいですわ。」


 俺はその間、二人から借りていた魔法書を読みだした。

 いつの間にか、二人はアイテムボックスからバーベキューセットのようなものを取り出し、火を熾している。


 まずは回復魔法から始めよう。これはリムが読んでいたので、俺にも大体頭の中に入っている。

 うん、間違っていなかった。

 ヒールの他にディサイレンも覚えた。


 俺は次に闇魔法の本を取り出した。俺の勘が正しければ、俺にも覚えられるはずだ。

 魔法行使の原理は回復魔法と一緒だった。

 俺は読み進めていく。思った通り、俺には理解できるようだ。

 敵一体を数秒間だけひるませることができる、スタントリックというのを覚えた。

 他の攻撃と組み込むと便利そうだな。


 そこで食事が出来たようだ。いい匂いがする。


「食事が出来ましたわ。簡単ですが味は保証しますわ。」

「うん、旨そうだ。頂きます。」


 食事はシチューだった。道具屋で買ったもので作ったのだろう。結構肉が多かったので、聞いてみると、この世界では、野菜のほうが肉より高いとのことだ。

なるほど、魔物の肉なわけね。


「ご馳走様。美味しかったよ。」

「お粗末様でした。喜んで頂けて何よりですわ。」

「お姉様の料理はいつも美味しいです。私も頑張ります。」


 食事の片付けをして、それではそろそろ移動しようかと辺りの気配を読む。

 しかし、街道にはまだ居るようだ。


「日が暮れるまでにダンジョンに入りたいが、まだ居るようだ。」

「困りましたわね。強行突破します?」

「そうですね。今の私達ならば、普通の魔物相手ならそうそう遅れは取らないかと。」

「問題は数だ。多分12匹居る。」


 俺は作戦を立てようと二人に聞いた。


「先程の戦闘で変わったステータスはないか?」

「私はレベルが2上がって、各能力が7~10伸びましたわ。一体でレベルが2も上がるなんて、相当高いレベルの魔物だったのですわ。」

「私もレベルが2上がって、お姉様と同様、6~9伸びました。今までならレベルが1上がっても2~3くらいしか伸びなかったで、何らかの恩恵を受けているようです。あと、火魔法のスキルが3になりました。」

「お~、それは良かった! それで、ミレアは新しい魔法とか使えるのか?」

「多分使えるはずなのですが、呪文を知りません。私の魔法書には3レベル以上の魔法は載っていませんので。」


「残念だが、仕方無い。俺はレベルが5上がって、ステータスが50~70上がった。危機感知と格闘術が2になって、剣術スキルが取れたようだ。」

「凄いですわ! 流石はアラタさんですわ!」

「勇者様の成長スピードがこれ程とは・・。1レベルあたりの成長も、私達の倍以上ですね。」

「確かにそうだな。しかし、これは推測だが、二重魂のせいもあると思う。」


「よし、現状は分かった。それで、作戦だが・・・。」


 そこまで言ったところで、俺の危機感知に反応があった。


「まずいな。奴らがこっちに向かって来た。感づかれたか?!」


 二人は立ち上がり、緊張した面持ちで身構えた。


「数は相手のほうが多い。俺が囮になって、敵を引き付ける! 林を抜けてきた所を、クレアが木陰から叩く! ミレアは少し離れたところから、魔法で狙撃を頼む!」

「「はい!」」


 俺は音を立てないように用心しながら林に分け入る。

 まずいな、散開しやがった。包囲するつもりか。

 俺に最も近い端の奴から叩こうと、歩を進めると、声が聞こえてきた。


「赤髪の姉ちゃんは俺が貰う! 金髪ロリのほうはボスが欲しがってたからな。お前らは青髪で我慢しろ!」

「おいおい、勝手に決めんなよ! 金髪は別として、早いもん勝ちだろうが!」

「うるせえ! 俺が教えてやったんだから、俺が一番だ!」


 魔物と思っていたが、人間か!

 聞いたことのある声も混じっている。

 俺は全てを理解した。

 こいつらは盗賊の類だろう。

 俺達が町を出てからつけて来たに違いない。

 林から出てくるのを待ち伏せていたが、痺れを切らしたってとこか。

 聞き覚えのある声は門の衛兵だ。


 腐ってやがる!


 俺が振り返ると、クレアが木の裏から顔だけ出して俺に目を合わせた。

 ミレアも開けた草地の中央で大きく頷いた。

 うん、二人とも事情は理解したようだ。


 相手は俺達の身体が目当てだろうから、殺そうとはしないだろう。

 しかし、捕まれば何をされるかは目に見えている。男相手にやられるなんて真っ平だ!

 

 各個撃破と行きたいところだ。包囲される前に何とかしたい。

 俺は音を殺しながら、最初に決めた奴に近づく


 目が合った!


「見つけたぞ! 金髪だ! こっちだ!」


 相手は大きな剣に鎖帷子を纏った大男だ。何族か知らないが大きな耳をしている。

 俺は無言で木を躱しながら、一気に距離を詰める。


 相手は俺のスピードに戸惑ったようで、慌てて剣を構える。


「遅い!」


 俺は相手の構えた剣の手元を蹴り飛ばした!

 剣がそいつの手を離れて宙を舞う。

 そして、剣を拾おうと横を向いた瞬間を俺は逃さなかった。


「一人目!」


 相手の顔面目掛けて飛び上がり、正拳を叩き込む!

 グキッと骨の折れた感触が伝わる。

 完全に鼻が潰れたな。


「うげ!」


 俺は倒れこむ大男を一瞥してから、次の獲物を探した。

 どうやら全員こっちに向かって来ているようだ。


 ならば・・・。

 あえて音を立てながら、近づく集団に自ら向かう。


「居たぞ! こっちだ!」


 俺は5人程視認して、クレアの隠れている方向に走る。

 男達は、皆亜人のようだ。特徴的な耳と、尻尾をつけている。

 武器は剣、斧、槍、弓とばらばらだ。


 クレアの隠れている木の前で振り返り、俺は挑発してみた。


「こんな小娘相手に5人かよ。お前らそれでも男か?」


 一人が槍を構えて飛び掛かってきた。


 軽く躱して膝蹴りを入れる。

 メリッと潰れる♂の感触。

 俺は自分がそうなったらと思い、眉を顰めた。


 すまんな。新たな人生を歩め。


「もう容赦しねぇ!」


 俺は振り向いて草地へと逃げる。 

 男達は先を争って突っ込んで来た。


「流石ですわ!」


 木陰から鉄球が飛び、先頭の男の顔面を捉える。

 倒れた男に、後続の奴が躓いた。


「ウィンドカッター!」


 男の斧を持った手首から先だけが、地面に落ちた。


「うわ~っ!! 手が!!」


 続いて林を抜けて来た男が弓を構える。

 俺は意識を集中した。


「スタントリック!」


 男は一瞬動きを止めた。

 その隙を逃すクレアではない。

 またしても鉄球が無防備な顔面を捉える!


 容赦ねぇなぁ~等と思いながらも他の敵を探す。

 あと7人居るはずだ。

 一人は用心してか、クレアから離れた木の陰に居た。

 後の6人は固まって、その男と逆側の茂みに隠れているようだ。


「クレア! 右手の木陰に一人居る! ミレア! 左手の茂みに固まっている!」


 クレアは用心しながら、右に回り、獲物を探す。


「ファイアウォール!」


 茂みが業火に包まれる。


「あっ・・つっ!」

「わ~っ!」


 男達が叫びながら茂みから飛び出して来た。


 飛んで火に入る・・・逆か。

 もはや連中の統制は全く無い。

 まあ、最初から大して無かったけど。

 俺は手近な奴から、スタントリックでひるませながら殴り倒していく。

 ミレアも魔法でそれに続く。

 何人か、男を廃業させた感触があった。


 俺の苦しみを思い知れ!


 こっちが片付いたので、クレアを探すと、頭の潰れた男を引きずって来た。


 クレア・・・、怖いぞ!


「ミレア、何か縛るものないか?」

「野営に使うロープがあります。」

「十分だ。生きている奴を捕まえよう。」


 俺達はロープを持って散らばり、まだ息のある奴を拘束していく。

 股を押さえて蹲っている奴には少し同情したが、生きているだけマシと諦めて貰おう。

 縛った連中を草地の中央に集める。全部で7人。

 ミレアが反対したが、重症の奴にはヒールをかけてやった。

 逃げた奴が居ないかと、危機感知スキルで辺りの気配を探るが、何も無かった。


「さて、尋問タイムだ。その前にクレア、ミレア、こいつらがアイテムボックスを持ってないかチェックしてくれ。あと、魔法を使える奴が居たら厄介だ。」


 アイテムボックスは高価な物らしいので、盗賊ごときが所持しているとは思えないが、用心はするべきだろう。

 二人が縛った奴らの身体を入念に調べ、猿轡を噛ませる。

 全員調べ終えて、最後に首を振った。


「よし、先ずお前ら何の目的で俺達を襲った?」


 会話を聞いていたから知ってはいるが、一応聞いてみた。

 一人だけ衛兵の鎧を付けていた男の猿轡を外す。


「決まってんだろうが! ひん剝いていいことしたかっただけだよ!」


 こいつは自分の立場は理解できていないらしい。

 ミレアが落ちていた剣を拾って、その男の首に当てる。


「それだけですか?」

「ま、まあ、後はボス次第だ。飽きたら売るつもりだろうよ。」

「じゃあ、そのボスって奴は何処だ?」

「知らねぇな。」


 ミレアが剣を男の股間の先に突き立てた。


「ま、待ってくれ! ボスは多分アジトだ。俺達が帰らなかったら、探しに来ると思う。」

「じゃあ、そのアジトってのは何処だ?」

「ここから街道を2キロ程戻ったところ。少し外れたところに洞窟がある。」

「ふむ、次だ。お前らの組織は何人居る?」

「全員で30人くらいだ。」

「あと20人か厄介だな。」

「へっへ、俺達に狙われたらまず助からねえ。せいぜい用心するんだな。」


 今度はクレアがチェーンフレイルを振りかざした。

 俺はそれを制止しつつ、


「そうさせて貰うよ。しかし、お前らが戻ると俺達が狙われる。それで間違いないか?」


 縛られていた全員の顔が引きつる。


「ミレア、クレア、こいつらはどうするべきだろう?」

「アラタさんを狙っただけで死に値しますわ!」

「死人に口無しです。」


「だそうだ。やっぱそうするか?」


 二人が再び武器を振りかぶった。

 盗賊達は更に怯える。


 こいつらを解放すれば、間違いなくまた襲ってくるだろう。

 仕方が無い。最後の手段だ。


 俺は盗賊達の真ん中に手を突き出した。


「こいつを見ろ!」


 俺は少しいじったステータスの、一部分だけを盗賊に見せるように意識した。


     【ステータス表示】


氏名:アラタ・コノエ 年齢:22歳 性別:男

職業:勇者


「見ての通り、俺は勇者だ。これからダンジョンを攻略しに行く。」


 盗賊達はきょとんとしている。


「訳あって、今は女の身体だが、俺は男だ!」

「は、はぁ・・・」

「ところで、お前らが勇者を襲ったことをばらせば、どうなるだろうな?」

「そ、そんな事されたら俺達はお終いだ! 軍が出張ってくる!」


 ふむ、勇者の看板はこいつらには効くようだ。


「じゃあ、そうされたくなければ、今日の事は全て忘れろ! もしお前らが喋ったと感じたら、遠慮はしない!」

「ゆ、勇者様でしたか。道理で強い訳だ! すみませんでした! 勿論全部忘れます!」

「分かってくれたらそれでいい。」


 俺達は盗賊が持っていた武器と使えそうな防具を回収した後、縄を解いてやった。

 俺達が立ち去ろうとすると、衛兵の奴が近寄って来た。


「勇者コノエ様! もし良かったらですが、ご同行させて頂けませんか?」


 予想外の提案に俺が戸惑っていると、全員が近寄って来て頭を下げた。


「あの~、意味が分からないんだが? お前らみたいな貞操の危機、連れて行く訳ないだろ!」

「いえ、あっし達も反省してます。しかし、是非お力になりたくて。」

「結論は変わらないと思うが、理由を話してくれ。ダンジョンの怖さはお前らも知っているはずだろう?」

「はい、あっしらもダンジョンの危険さはよく知っています。ここに居る全員、元々は冒険者でしたし。」

「え? でも今は盗賊だろ?」

「あっしらも好き好んで盗賊やってる訳じゃないです。ダンジョン探索に限界を感じてから、楽な方へと・・・。」

「まあ、なんとなく分かるが、それで?」

「はい、こう言っちゃなんですが、こんな女の子がダンジョンに潜るって聞いて、それならあっしらももう一花咲かそうかって気になりまして。」

「俺はお・と・こ・だ! まあ、理由は分かった。悪いが連れて行く気は無い。」

「足手纏いは重々承知ですが、こいつだけでも!」


 衛兵が指さした先にはクレアより少し背の高い、165cmくらいか? 猫のような耳と尻尾をつけた男が居た。


「おい! 失礼だろう! 外せ!」


 衛兵が怒鳴るとその猫耳男は頭から耳を外し、尻尾も取った。


 着脱可能なんかい! と突っ込むより先にその男が答えた。


「ぼ、僕はスコット・オルガンって言いますにゃ。宜しくお願いしますにゃ。亜人の町では人間は舐められるので、変装していたにゃ。」


 猫耳を外してから改めて見ると、銀髪が目立つ以外は、ごく普通の男だ。日本では大してハンサムでもなく、かといって不細工という程でも無い。

 この言葉遣いさえ無ければ、気が弱そうで影の薄そうな奴だ。


「色々と突っ込み所は満載なんだが、なんでこいつなんだ? お前の方が強そうだろう?」


 俺が衛兵を顎で指すと、


「あっしは、まだ衛兵の仕事があります。盗賊の手伝いはしてましたが、盗賊にはなっていません。」

「ふむ、つまりお前は更生できると。」

「はい、これからは真っ当に生きようと思います。」

「で、なんでこいつなんだ?」

「スコットはまだ新入りで、こいつもまだ盗賊じゃないんです。一度盗みを働いてしまうと、暫くは冒険者には戻れません。やった内容にもよりますが、普通、数年は盗賊職を外せないんです。」


 時効ってことか?


「つまり、スコットは冒険者ってことか?」

「はい、まだまだひよっ子ですが。正直、あっしはこいつに盗賊なんて向いてないと思います。虫のいい話ですが、こいつだけでも引き取って頂ければと。他の奴は手遅れですし。」


 見渡すと、他の盗賊達が罰の悪そうな顔をしている。


「話は分かった。取り敢えずステータス見せてみろ。」


     【ステータス表示】

氏名:スコット・オルガン 年齢:18歳  性別:男

職業:冒険者 鍛冶師 レベル:21

体力:74/74

気力:61/61

攻撃力:71 

素早さ:65 +1

命中:82 +1

防御:59 +11

知力:63

魔力:73

魔法防御:70

スキル:言語理解3 弓術2 武器作成2 防具作成1 鉱石鑑定2


    【装備】 

皮の鎧:防御+10

皮の靴:素早さ+1

布の服:防御+1

布の下着:命中+1


 布の下着に命中補正って意味分からんが、それ以外はミレアやクレアを少し弱くした感じか。若干命中が高いので弓が向いているのだろう。

 意外だったのは、鍛冶師という職業と、それに関連すると思われるスキルだ。


「お前、昔は鍛冶師だったのか?」

「そうですにゃ。工房が潰れたので、仕方なく冒険者になったのですにゃ。でも、気が付いたら盗賊の仲間になっていたですにゃ。」

「なるほど、ところでその話し方は何とかならんのか?」

「長年猫人族のふりをしていたから、簡単には直らないですにゃ。」

「ま、まあいい、お前らはどう思う?」


 俺はクレアとミレアに視線を向ける。


「アラタさんが宜しければ、私は構いませんわ。」

「ステータスは悪く無いです。しかし、男は・・・。」

「ぼ、僕なら問題ないですにゃ! ストライクゾーンは12歳までにゃ! 勇者近衛様とお姉様方には忠誠を誓いますにゃ!」


 真正のロリコンかよ!


「う~ん、悩むな。しかし戦力の増強にはなる。」

「あらあら、お姉様だなんて。私は気に入りましたわ。」

「アラタさんに忠誠を誓うと言うならば、問題なさそうですね。」

「じゃあ、決まりだ。スコット、ついて来い! あと、お前ら、死体の処理は任せる。俺に罪悪感は全く無いが、野晒しは流石に気の毒だ。」

「ありがとうございますにゃ!」

「「「「「「はい! 勇者様!」」」」」」


 結果、俺達はくれぐれも今日の事は忘れろと念を押してから、スコットを加えてその場を立ち去った。

 残った盗賊達には衛兵ができる限り仕事を斡旋するような事を言っていた。


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