ダンジョンへ向けて
ダンジョンへ向けて
俺達が座って話が出来るところを探していると、衛兵とかとは違った鎧に身を包んだ亜人の男が近づいてきた。
「モーテルさんですね?」
ばれたか?! でも、早すぎるだろ?
俺達が身構えると、
「あ、待ってくだせぇ。ウルベンさんの使いでして。探しやしたぜ。」
「ああ、モーテルだ。それで?」
俺達が構えを解くと、そいつは小声で喋り始めた。
「全国の冒険者ギルドにクエストが発注されやした。依頼内容は赤髪と青髪のお嬢さんの捜索、確保といったところで。」
「俺には出てないのか?」
「モーテルさんには出ていませんぜ。でも、『さっさと行けなのだ。』だそうで。」
「分かった。ありがとう! ウルベンさんに宜しく!」
なるほど、何でも屋の冒険者にはこういう使い道もある訳だ。少し油断していたようだ。
俺はすぐに被っていたロッタの帽子をクレアに押し付ける。
ミレアも俺の行動の意味を理解して、アイテムバッグからロッタの帽子を取り出した。
二人とも帽子を深く被ってから、更にコートのフードを被り、胸元を締める。
「ロッタの帽子はまだあるか?」
「残念ながら・・・。」
「いい、お前たちの方が必要だ。とにかく急いで町を出よう。」
「「はい!」」
「テレポートの石はあるか?」
「あと一個だけありますわ。」
「う~ん、それは本当の非常用にとっておこう。今ならまだ間に合うだろう。」
「そうですね。多分ウルベンさんが時間を稼いでくれているはずです。」
俺達は足早に町の門をくぐった。
昨日の衛兵が居た。
絡まれると面倒だなと思ったが、何も言わない。
町から出る奴はノーチェックなのだろう。とにかく助かった。ここで時間を食うわけにはいかない。
「どっちだ?」
「こっちですわ!」
黙ってクレアについていく。
幸いなことに魔物には出会わなかった。
ミレアによると、この街道はダンジョンに行くのに利用されているので、冒険者の往来が多いとのことだ。ある程度狩り尽くされているのだろう。
暫く歩くと街道が林に覆われた。
「よし、林の奥で少し休もう。」
「「はい。」」
林を分け入ると、少し開けた所に出た。
大木を背に皆でへたり込む。
俺は危機感知スキルに期待して、周囲に注意を払ってみたが、特に何も感じられなかった。
「落ち着いたところで作戦会議をしよう。まず、ここからダンジョンは近い?」
「そうですわね。小一時間くらいのところにありますわ。」
「私達がナガノ様に助けられたダンジョンです。」
「それは好都合だ。詳しく聞かせてくれ。」
ミレアが説明してくれた内容によると、
彼女達は3日ほどかけて10階層まで進み、そこで階層主と思われる魔物に会い、二人とも負傷して諦めかけたところを、ナガノさんに救出されたらしい。
このダンジョンは洞窟タイプで、迷路のようになっている。
曲がりくねっていて視界は悪いが、壁が発光しているので、暗さはそれ程感じないという。
中には沢山の小部屋があり、たいていの魔物はそこで待ち伏せている。
各階には必ず、下の階に通じる急勾配の通路があるとのことだ。
「なるほど。ありがとう。」
「ダンジョン内は危険の巣窟ですわ。焦る必要はありませんわ。しっかりと準備をしてから挑みましょう。」
「そうだな。幸いここは魔物が少ないようだ。ここで準備を整えよう。まずはお互いを知ることだろう。クレア、ステータス表示してくれ。」
「はい。」
【ステータス表示】
氏名:クレア 年齢:20歳 性別:女
職業:奴隷〈リムリア・ゼーラ・モーテル〉 レベル:28
体力:91/91
気力:85/85
攻撃力:102
素早さ:98 +1
命中:92
防御:80 +17
知力:63
魔力:70 +1
魔法防御:83
スキル:言語理解3 棍棒3 格闘術1 水魔法1 回復魔法1
家事4 社交術2 特殊性癖2 アイテムボックス196
【装備】
毛皮のコート:防御+10
ロッタの帽子:防御+1 認識阻害弱
皮の胸当て:防御+5
皮の靴:素早さ+1
布の服:防御+1
布の下着:魔力+1
【選択可能情報】
職業:冒険者× 侍女×
【所持品】
チェーンフレイル:攻撃+25
金貨×2
銀貨×41
アイテムボックスの中身は、ハンドバッグを覗くような罪悪感があり、流石に遠慮した。
「なるほど、クレアは物理攻撃が得意なようだな。でも、魔法も使える。凄いな。」
「ありがとうございます。でも、魔法はあまり得意じゃありません。」
「いやいや、それでどんな魔法が使えるんだ?」
「水魔法はアクアダーツとウォーターミスト、ウォーターチャージ。回復魔法は小ヒール、ディサイレン、ですわ。」
「どんな効果なんだ?」
「アクアダーツは5本の水の矢を撃ち、ウォーターミストは、霧を発生させて敵の視界を遮りますわ。ウォーターチャージは、水を発生させますが、生活用ですわね。小ヒールは回復小ですが、私の魔力では回復薬には及びません。ディサイレンは味方の魔法詠唱不可の状態を回復させますわ。」
「ありがとう。家事4は料理とかも上手なのか?」
今度はミレアが答えてくれる。
「お姉様の料理は絶品です。ダンジョンは長期戦です。魔物の肉も食べないと持ちませんので、家事スキルは重要です。」
「ふむ、次はミレア、頼む。」
【ステータス表示】
氏名:ミレア 年齢:19歳 性別:女
職業:奴隷〈リムリア・ゼーラ・モーテル〉 レベル:26
体力:72/72
気力:90/90
攻撃力:71
素早さ:88 +1
命中:72
防御:70 +17
知力:85
魔力:86 +5
魔法防御:80
スキル:言語理解4 剣術1 ガード1 火魔法2 風魔法1
家事3 社交術2 特殊性癖2 アイテムボックス223
【装備】
毛皮のコート:防御+10
ロッタの帽子:防御+1 認識阻害弱
皮の胸当て:防御+5
皮の靴:素早さ+1
布の服:防御+1
シルクの下着:魔力+5
【選択可能情報】
職業:冒険者× 侍女×
【所持品】
ショートソード:攻撃+7
金貨×2
銀貨×20
「なるほど、ミレアは魔法が得意そうだな。」
「いえ、まだまだです。使えるのは、先日お見せしたファイアショット。盲目効果が少しあるイビルファイア。範囲攻撃のファイアウォール。風魔法では、敵単体にウィンドカッターです。」
「範囲攻撃とはどれくらいの範囲なんだ?」
「ファイアウォールの場合は長さ10mくらいの炎の壁です。壁の向きは発動時に変えられます。」
「ガード1とは?」
「盾のスキルですね。大型の盾を扱えるようになり、防御力もスキルレベルによって増します。」
「ありがとう。じゃあ、俺のスキルなんだけど、何でも気が付いたことを教えて欲しい。当然だが、他言無用に頼む。」
【ステータス表示】
氏名:リムリア・ゼーラ・モーテル 年齢:15歳 性別:女
職業:冒険者 レベル:3
体力:140/140
気力:190/190
攻撃力:155 +5
素早さ:175 素早さ+1
命中:175
防御:140 +21
知力:235
魔力:195 +1
魔法防御:175
スキル:言語理解5 交渉術2 危機感知1 格闘術1 人物鑑定2
特殊性癖1 回復魔法1 水魔法0 土魔法0 光魔法0 家事2 社交術2
パーティー編成 アイテムボックス585
【選択可能情報】
氏名:アラタ・コノエ 年齢:22歳 性別:男
職業:勇者 貴族
【装備】
毛皮のコート:防御+10
皮のグローブ:攻撃力+5
皮の胸当て:防御+5
皮の靴:素早さ+1
皮の帽子:防御+5
布の服:防御+1
布の下着:魔力+1
【所持品】
ダガー:攻撃力+5
奴隷:クレア ミレア
銀貨×12
奴隷は所持品扱いなんだ・・。
しかし、リムの名前で登録したし、リムの所属のはずでは?
まあ、細かいことは考えないでおこう。お前の物は俺の物・・・か?
もう一つ不審点に気付いた。
確かリムに見せて貰った時、魔法は全部レベル1だったはずだが?
「流石はアラタさんですわ!」
「勇者スキル、チートですね。ですが、この魔法スキルの0というのは?」
「これは推測だが、俺個人には適性が無く、リムには使えるのだと思う。後で試してみる。」
「初めて見ましたが、アラタさんがそう仰るのなら、きっとそうなのですわ。」
「う~ん、よく分りません。あ、アラタさん、職業は奴隷や盗賊以外ならば、複数選択可能です。」
「え、そうなんだ! 試してみよう。」
【ステータス表示】
氏名:リムリア・ゼーラ・モーテル 年齢:15歳 性別:女
職業:勇者 冒険者 貴族 レベル:3
「お、できた!」
「しかし、貴族なんて職業はいつ取られたのですか? 貴族職は奴隷との相性がいいらしいので嬉しいのですが。」
「リムの持っていた職業だろう。家事にしても、俺は料理はしないし、社交術も思い当たる節が無い。」
「二重魂の結果なのですね。しかし、モーテルさんの過去って?」
「リムの過去に関しては、彼女から言うまでは触れないつもりだ。」
「そのほうがいいですわね。アラタさんはお優しいですわ。」
「そんなもんじゃない。聞く覚悟が無いだけだ・・。」
しまった! 皆黙ってしまった。
「しかし、貴族と奴隷が相性いいとはラッキーだったな。どんな効果があるんだ?」
「噂の範囲なのですが、その・・ある条件で、お互いのステータスの伸びが良くなると聞きましたわ。」
「ある条件?」
「私も詳しくは分かりません。ただ、逆もあるとか聞きます。」
「う~ん、分からないなら置いておこう。あと、ウルベンさんの言っていた、冒険者のメリットとは?」
「私達の知る限りでは、パーティー編成された仲間には、味方の攻撃系の範囲魔法が効かないです。また、回復系の魔法はパーティー内の仲間になら同時にかけられます。もっとも、効果は人数割りになりますが。」
「あと、連続で違う人の攻撃が当たるとダメージを増加させられますわ。」
「なるほど、確かにかなりの効果だ。絶対に冒険者になれと言うのも頷ける。」
「しかし、冒険者は一人居ればパーティー編成できるんだろ? 何故俺が取らないといけないんだろう? お前らが冒険者で、俺がそこに入れて貰う形でも良かったと思うけど。」
「私達も詳しい理由は分かりません。しかし、パーティーリーダーは冒険者、ないしは、パーティー内の冒険者の奴隷でないとできません。」
「う~ん、思いつくのは俺がリーダーになった場合、勇者の補正がかかるとかかな?」
「多分そうですわ! あと、長野様のパーティーは全員奴隷でしたわ。」
「え! それは初耳だな。それでお前ら奴隷になりたかったのか?!」
「はい。そして長野様の従者は奴隷故でしょうか、名前が全く知られていません。」
「そら、偉い人からすれば奴隷がダンジョン攻略したなんて言えないだろうな。しかし、そうなら、お前らには申し訳ない・・。もし攻略できてもお前らの功績は評価されなくなるわけだ・・。」
「私はアラタさんとご一緒できるだけでいいのですわ!」
「全くです! そんなことは攻略してから言ってください!」
「確かにそうだな。ありがとう。とにかく、早速パーティー編成をしよう。」
「そうですわね。では、ステータス表示から【パーティー編成】と念じてください。」
「分かった。」
俺が【ステータス表示】【パーティー編成】と念じると、2人の名前が表示された。
クレアとミレアだ。
「続いて、私達の名前を加入させると念じてください。」
クレア、ミレア加入と念じると、ステータス表示の下に新しい表示が出た。
【パーティー編成中】
パ-ティーリーダー:リムリア・ゼーラ・モーテル 冒険者 勇者 貴族
:アラタ・コノエ 勇者
パーティーメンバー2:クレア 奴隷(冒険者)
パーティーメンバー3:ミレア 奴隷(冒険者)
何となく理解できたような気がする。
これもイレギュラーの結果ということなのだろう。
「解散するにはどうすればいい?」
「簡単ですわ。【パーティー解散】と念じるのですわ。」
言われた通りにすると、【パーティー編成中】の表示が消えた。
俺は少し考えてから自分のステータスをいじる。
【ステータス表示】
氏名:アラタ・コノエ 年齢:22歳 性別:男
職業:勇者 冒険者 貴族 レベル:3
続いて先程の手順で、パーティー編成をする。
【パーティー編成中】
パ-ティーリーダー:アラタ・コノエ 冒険者 勇者 貴族
:リムリア・ゼーラ・モーテル 冒険者 勇者 貴族
パーティーメンバー2:クレア 奴隷(冒険者)
パーティーメンバー3:ミレア 奴隷(冒険者)
うんうん、予想通りの結果だ。
しかし、パーティーは6人までの編成と聞いた。
だが、リムは俺が起きている限り戦力になれない。逆も当然だろう。
つまり、俺のパーティーは、5人までしか組めないということになりそうだ。
二人が驚いた顔をしている。自分のステータスを確認しているのだろう。
「「これは・・いったい・・・。」」
「まあ、そういうことになるのだろう。理由も想像できる。」
「「はあ・・・。」」
「とにかくこうなった。深く考えるな。有効活用できるようにしよう。」
やっと説明回が終わりました。
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