地獄の門出
こういうのも面白いかなと書いてみました。生温かく読んで頂ければ幸いです。
地獄の門出
俺は近衛新22歳、♂、某中堅不動産会社営業職、入社4か月のルーキー。
現在俺の目の前には、いかつい顔したおっさん、しかも3mくらいありそうな巨漢。周りの反応を見るに、どうやら閻魔大王とのことらしい。
って、ここ地獄? 俺、死んだの? 地獄に送られる程悪いことしたっけ?
「え~、近衛新君、君の罪状は横領! 金額は500万。これよりどの地獄に送るか審査する!」
いかついおっさんこと閻魔大王が毅然とした表情で俺に言う。
横領? 500万? 全く身に覚えが無い。
「俺はやってないです!」
「あ~、皆そう言うのよね~。全く反省無しって奴だと、結構深い層になっちゃうよ~。」
「いやいや、本当にやってないのに、何その決めつけ? 出るとこ出て白黒つけましょう!」
よくよく考えてみると、ここがその白黒つける場所だったりする。
「も~、面倒臭いな~。そこの君、この人の前世の記憶、モニターに。」
横を見ると大画面のモニターがあった。地獄もハイテク化しているようだ。
早回しで俺の過去が流れる。小学生の時にクラスの女の子のスカートめくったり、授業さぼって昼寝してたり、過去の俺の汚点が晒される。
「ま~、これくらいは問題ないのよね~。ちゃんと反省もしているようだし。」
確かに、スカートめくった子には大泣きされて平謝りしたし、昼寝の後は先生にばれて大目玉を喰らったはずだ。そうこうしているうちに俺の人生の最後のほうになる。
そうだ、思い出した! 最後の記憶の日、俺は先輩と一緒に契約が取れた家に行き、契約金を持って先輩とその家を出た。先輩はその契約金500万を銀行に振り込みに行くから、俺だけ先に帰れって言って、そこで別れたはずだ。その後、俺は電車に乗ろうとしてホームで待っていると、誰かに背中を押されて、電車が目の前に。
俺は理解した。なるほど、これは冤罪だ。
「あ~、君、これ見ると無実だね~。でも、人間界の記録では君が横領したってことになっているのよ。真犯人は君の先輩だろうね~。でも、安心してね~。その人もいつか必ずここに来るから、その時はかなり深いとこに送っちゃうから~。」
安心しろと言われても・・・。俺、多分殺されたんだし。しかも理不尽に!
とは言え、もう死んでしまったものはどうしようもない。取り敢えずは落ち着いて、どうなるか成り行きを見守るしかないだろう。
閻魔は隣に居る鬼を見ながら、
「う~ん、困ったね~。あれ程チェックは完璧にねって、いつも言っているのに~。」
「は! 申し訳ありません! 部下には厳しく叱っておきます! しかし、大王様、この者、どう致しましょう?」
「そうだね~。今から天界に送るのも、借り作ることになるので嫌だし~。」
おいおい、お前等の責任だろ! 何とかしろよ! と心の中で毒づいていると、
「そうだ、大王様、丁度、別次元の天界からの要請にまだ空きがあります。年齢は少しオーバーしていますが、そこにねじ込めば・・・」
「あ~、あれがあったか! タイミングいいね~。 え~っと、近衛君だっけ、今回はこちらの手違いで申し訳ないよ~。もし君が良ければなんだけど・・・」
話は要約するとこうだ。
俺のような、とばっちりで死んだ場合は、本来なら天界とやらで審査を受け、人間界で再び一からやり直すことが普通だそうだ。
その際、少々恵まれた環境の子として生まれるらしい。
でも俺は間違ってここに連れて来られた。
閻魔は天界に借りを作りたくない。
で、ものは相談ということだ。
その内容とは、丁度異世界の神から魂をくれと頼まれているので、俺でどうかということだ。
勿論ある程度のアドヴァンテージはつける。
具体的には現在の記憶の引継ぎと、異世界の言語及び読み書きの理解。
閻魔曰く、地球の知識は異世界には無い物が多いからかなりのアドヴァンテージだそうだ。
「話は分かりました。で、俺はその世界で赤ん坊から始めるんですか? 流石に母乳はきついんですが?」
「いや、器は向こうで用意しているよ~。確か12歳から18歳くらいだっけ~。だから、ちょっと若返り特典もついちゃうよ~。」
「ふむふむ、で、どんな世界なんですか? こっちの常識は通用します?」
「基本的な価値観は一緒だね~。違うのは魔法が使えるのと、文化水準が中世くらいってことぐらいだね~。」
なるほど、ゲームやラノベのお約束って世界だな。
「納得しました。だが、全く知らない世界に行くんです。もう少し何というか、チート能力みたいなものが欲しいですね。」
「いい根性しているね~。流石は営業職ってところ? 僕相手に交渉しようという人、そうそう居ないよ~。だけど記憶の引継ぎ以上は譲れないね~。今まで全員そうだったから~。」
「分かりました。では、契約成立で。」
「うんうん、理解が早くて助かるよ~。じゃあ、飛ばすね~。向こうも待っているみたいだし~。」
次回はアラタにとって、衝撃の女転生です。