第二話 俺はどうやら転生者
「全く、急に大声を出さないでちょうだい」
「………はい」
不機嫌な表情で怒る少女の横で、右頬と同じ紅葉型の痕を抑える優斗。大声を出したら、うるさいと言われて叩かれた。現在両頬に紅葉がついている、どういう状態だよ。
(いやでも、これは大声出したくなるよ)
優斗は改めて自分の格好を見返す。明らかに誰ですか状態のイケメン顔。そして服装も変わっていた。白の所々に黄色の線が入った長いコートを羽織り、四つのボタンでとめられている。山吹色の長ズボンを履き、白の靴を履いている。
結論、中二病である。
(俺だけじゃなく、この女の子の格好もそうだ。何故か森にいるし………やっぱり『転生』というものなのか?)
『転生』とは。
死んだ者や何かしらの現象に巻き込まれた者が別の世界に飛ばされること。優斗の世界ではラノベでとてつもないブームを起こしているものだ。しかし転生と一言言ってもそれにはいくつかの種類が存在する。優斗はその大まかを整理していこうと考えた。
(まず、俺は死んだ後に転生させられたんだと思う。そして神様などの存在にも会っていないはずだ。次に転生特典みたいなものがあるかどうかだが………もしかしてこの容姿が?どうなんだろう)
優斗は色々と考えているが、一番気になることがある。それは、この転生に目的が存在するかどうかである。『世界を救うために魔王を倒して下さい!』という展開なのかどうなのか。
「ねぇ、ちょっと」
「うぇ!え、なに?」
ずっと考え事をしていたせいで急に話掛けられ、驚くが返事を返す。
「私はルラ。ルラ・サハケエル。あなたの名前は?」
「俺は坂ぐ………ユウト・サカグチだ!」
いつもの癖で日本名をそのまま名乗ろうとしたが、なんとか相手に合わせて名乗る。どうやら外国名が使われているようだ。
「ユウトって言うのね。あなたなんでこんな所に倒れてたの?しかも手ぶらで、自殺志願者にしか思えないんだけど」
「………えっと、それは」
さて、どうしようかと優斗は頭を悩ます。まず正直に話したらどうなるか。『実は俺は一回死にました。そして異世界からここに何故か眠ってました』と。
(うん、俺なら間違いなく警察か救急車呼ぶね!)
そもそもこの世界に警察や病院が存在しているのか疑問だが、正直に喋ることはできない。しかし嘘をつけるような状況ではない。下手なことを言ったら後から弁解できなくなる。ここは間違えられない重要なところだ。
「じ、じつはなんでここにいるのかわからないんだ。(この世界での)記憶も自分の名前以外はさっぱりでさ」
「………」
当然少女、ルラの目は『こいつ何言ってんだ?』と怪しむものになっている。そしてそのままじ〜と優斗の目を覗き込む。ルラの美人とも言える顔が近くなり、女の子特有の甘い香りが鼻を刺激し、優斗は自分の顔が赤くかっていくのがわかる。
「………うん、どうやら嘘はついてないみたいね」
「………えっ?」
しばらく見つめていたルラだったが、表情を柔らかくし、優斗に微笑む。優斗はあっさりと信じてくれたルラの顔を驚いた顔を見る。
「信じて、くれるの?」
「なに、信じないほうがいいの?」
「い、いや!そういうわけじゃないんだ!ただこんなそと信じてもらえないというか、もし俺だったら信じられないというか………」
「別に、こんな辺境な田舎の村で嘘ついたって仕方ないでしょ。それに、私人の目は見る目あるの。あなたの発言に嘘はないわ!」
「………」
(うん、さっきの発言にうんはないけど………信じてくれた相手には悪いけどこの女の子心配だなぁ)
ルラは立ち上がり、優斗に手を差し出す。どうやら立てということだ。女の子と手をつなぐことにためらいを覚えながらも優斗はその手を掴み、立ち上がる。
「それじゃ、とりあえず私の村に行きましょ。夜の森は暗いし魔物がうろついてて危ないわ。歩ける?」
「うん、歩けるよ。ありがとう。ちなみになんて村なの?」
「『シャーナス村』よ。すごい田舎で他の村とかと離れてるからほとんど知られてない村よ。まぁ、平和で安心するから私は好きだけどね」
「へぇ、そうなんだ」
「さぁ、行きましょう」
ルラか先導に立ち、優斗はその後を歩く。優斗の胸の中には期待と不安の念が混じり合っている。