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愛する者と愛される者
窓の外は雨が降っていた。
「今日は雨かー」
独り言のように小さな声で言った。
「昨日あれほど晴れていたのにね」
憂鬱だ。それは雨のせいなのか、同じ空間に姑がいるからなのか、一歳になった娘の機嫌が悪いからか。
夫の実家に嫁いで、一年と八ヶ月。日に日に、体力と精神が擦り減っている気がする。結婚をして、家庭を持つとよくある症状だろう。
「死ぬまでこんな感じなのかなー」
最近では、ほとんど毎日思う。思いすぎて口に出てしまった。そんな時に思い出すのはかつて大好きだった元彼の高田淳人である。結婚生活に憂鬱になって元彼を思い出すなんて、王道すぎて自分に呆れる。
娘が寝たので家事を済ませ、ひと段落したところで椅子に腰を下ろした。煙草に火をつけ、大きく吸い込んで吐く。妊娠を機に止められた煙草も今となっては一日に一箱は吸う。そして、煙を見ながら恋と欲にまみれた日々を思い出す。思い出してはいけない。比べてしまうから。あの時に比べて幸せじゃないと思ってしまうから。