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この頬からスルスルと流れ音を立てて落ちていったのは

作者: G

この頬からスルスルと流れ音を立てて落ちていったのは














「ねー」

「何だよ」

「何でそんなに怒ってんのー?」

「怒ってねーよ」

「ウソツキ」

「お前な」

「ウソツキ」

「おい」

「ウソツキは泥棒の始まり何だよ」

「もういい」





Σ(`Д`ノ)ノ



もういいって、アンタ!

そりゃ、ないぜ!!














彼は私を睨んでソファーに座って無駄に長い足をくんで本を読み出してしまった。そんな彼を見て思わず笑ってしまいそうになる。スネると彼は可愛い。(怒っているんだろうけど)まあ、怒っている理由はわかっているんだよ。あははははは。でも、彼だって分かってると思ってたんだけどなあ。でも考えたら自分が悪いのかもしれないし。私は自分の気持ちに従っただけで正直に生きているんだ。でも、誰だってそうでしょう。だって全て承知の上だったじゃん。今更何言ってるのよ。ああ、分かんない。分かんない。

私は盛大に溜め息をついて、彼が読んでいる分厚い難しそうな本を取り上げてテーブルに叩き落した。さっきよりも鋭く睨まれた。は、そんな睨んだってアンタは私を傷つける術なんて知らないくせに、何て思っちゃってる自分が自意識過剰でものすごく吐き気がした。




「お前さっきから何なんだよ」

「それはコッチのセリフですよ」

「何が」

「怒ってるんでしょ」

「怒ってる?俺が?」

「浮気したから」

「・・・別に俺には関係ない」

「まあ、そうなんだけど」

「じゃあ、もうどっか行きやがれ」

「やっぱり怒ってるじゃん」




彼は私から目を逸らした。どうやら図星だったみたいだ。やっぱり彼はは分かりやすい性格だと思う。よく同期にからかわれているし。案外、だれより抜けているのかもしれないなんて頭のどっか隅っこらへんで思っていた。

ああ、私と彼は付き合っている。これは誰もが知っているだろう。だけど私は彼が好きなわけではない。好きではない。断じて好きではない。




「何が言いたいんだよ」

「別れよー」

「・・・」

「別れて欲しいんだってば」

「本気?」

「マジです」




それから彼は何も言わなくなった。




「ちょっとー」



やっぱり何も答えない彼に溜め息さえも出なくなって私は、

仕方なく離れた。





「何も言わないのなら肯定とみなすよ」


「終わりだよ、もう」





未だ黙っている彼に背を向けて歩き出す。

地が揺れている感覚に陥った。真っ直ぐ歩けていたか何て全く分からないだけど、だけど何か痛かった。何か痛かったんだ。ゆらゆら揺れる何かに眩暈がする。心が締め付けられるように痛い。というか体全体が痛くて。だってだってだって今私の心にあるのは









妙に生暖かい水が頬にかかった。




「まて」

「何で」

「行くな」

「意味わかんないよ」

「行かないでくれ」




バカな鳥みたいに「待て」とか「行くな」を繰り返す彼は私の後ろにいて、痛い痛いほ彼の腕がお腹辺りに巻きついて、背中が熱い。このままこの腕が離れなかったら私の下っ腹はキュッと引き締まるに違いない。と現実から目をそらせて見たけど痛くて



スルスルと音が鳴っているように頬から落ちて落ちて何が何だか分からなくて、自分の存在自体が何なのか分からなくなってきてしまった。




「俺から離れるな」




この頬からスルスルと流れ音を立てて落ちていったのは君の涙だったのかなあ















私のか?





















(引き締まったお腹が、ぐうと鳴った)











































///////////////////////////////////////////////////////////







私は青かった。

ついでに彼も青かった★













「何やってんの?」

「ああ」

「ほほー!」

「は?」

「あの女の子を見てたのですねー!」

「悪いか」

「いやいやー、青春だねえ」

「青いな」

「そうですねー」

「そっちはさ、どうよ」

「何がですかー?」

「アイツと」

「全然ですよーぎゃはは」







草陰から女の子を見ている彼はとても怖くて、イケメンがストーカーとか笑えない。イケメンでも犯罪ですよ。ていうか見ていられなくて思わず声をかけてしまっていたんだ。だって切なそうな目で女の子をズッと見ているんだよ。あの女の子と彼は親友らしい。いつも一緒にいるところをよく見かける。それなのに今は何だ。何だ。こんな草陰に隠れてみているなんてさ。ちょっと危ない人にしか見えなかった。ていうか、かなり。でも心配してあげるほど、別に私は彼と親しくはないし、だって私には好きな人がいて。ストーカーとなりつつある彼とは、2、3回話をした程度で接点はおかしいほどなかった。まあ、別にいいんだけど。つーか、あなたが眩し過ぎたんだよ。イケメンは罪だ。それなのに何故私が神様みたいなキラキラな存在の彼に声をかけたか何ていうと空が青かったからである。






「このままじゃ一生片思いだよー」

「んな悲しいこと言うな!本当になっちまうだろ!!」

「だってー」

「膨れんなこのタコ」

「ぶっ、たたたたたこ!?あの黒いものを放出する!?」

「え。ま、まあ」

「私そんな迷惑な行為しないよ!」





いつの間にか彼が私のほうを見ていたので、女の子がいなくなったと分かった。イケメンでシャイって誰得なんだろう。





「あ!」

「ん?」

「私いい事思いついた!!」

「何?(めんど)」

「私達が付き合う振りをするなんてどうよ!?(めんど!?)」

「却下」

「えー!」

「それって意味あんの?」

「今まで気にならなかった友達に、恋人が出来て離れていったら、気づく感情もあるでしょう」

「そうか?」

「うんうん!もしそれで脈がなかったら、この作戦は終わりにしたらいいし。彼女と両思いになったら、それでいいじゃん」

「のった!」

「わー(のせやすっ)」

「お前凄いなー」

「えへへ(少女漫画が役に立ちました)」






空は青かった。青くて青くてどんな色も混ざらないぐらいだと思った。だけど、そうじゃなくて私たちの心が青かったから空がそう見えたのかもしれない。青くて青くて晴れた私





「んじゃお互い頑張ろうよ!」

「おう」




それからは、草陰に潜んでいる私たちは、何もしゃべる事がなかった。会話が途切れて変な空気が流れ出す。ん、これは草の匂いか。草だけにくさい。(寒くもならね)




「俺等付き合ってるんだよな」

「うん(今更?)」

「付き合うって何すんの?」

「ぶ」











私たちは青かった


青くて青くて青くて





















/////////////////////////////////////////////////////////////////












「なぁ・・・」




なのに何で今は灰色に染まっているのだろう。

何を間違えたのだろう。パレット買わないと。




「お腹の音やばかったぞ」

「うっさい。ていか離しやがれ」

「いや」

「何で」

「おまえが泣いてるから」

「泣いてないもん」

「ウソツキ」

「違う」

「ウソ」

「ウソツキはそっちでしょ」




腕がかすかに緩くなって振り向いた。




「だって泣いてるのはそっちじゃん」

「お前だって」








いつの間にか青色の私達はいなかった。消えていた。影も形もなくて

灰色だった。



黒を通り越して灰色だった。






「あなたは何色?」

「黒」





そうね、黒に染まりたかった。

でも、きっとスルスルと流れ音を立てて落ちていった水で薄くなるのだ。








































































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