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異世界からの多重人格者  作者: ますむ君
黒瀬の世界
6/30

第五章  いつでもどこでも、朝は忙しいという訳だ。

  

 「魔法には「系統」と「コスト」というモノが存在する訳だが、君自身、クロイツェフの連中に拉致られそうになった時に見たからわかるだろう?

 

 え......、見ていたのか、と?

 もちろん見ていた。君と俺は今や一心同体な訳だからな。どうやら「そっちの世界」を覗くことは可能らしい。

 

 ? なぜ声をかけてくれなかった、と?

 ああ、だから今こうして説明している訳だが。ま、まあ、その話は後回しにしよう。

 

 さて、話を戻すが、まず「系統」について、だ。

 例えば、「火炎魔法」「水流魔法」「電流魔法」。その他にもいろいろと種類がある訳だが、最もメジャーなモノはこの3つだろう。火炎魔法なら火を自由に操れ、電流魔法なら電気を自由に操れる訳だ。

 

 そして、火炎魔法なら、炎を扱う事ならばなんでもできる。灯り用に火を起こすこともできれば、敵に火炎弾を撃ち込むことも。果てには炎の魔剣や炎帝龍なんてモノも召喚できる訳だ。無論、そこには「コスト」という制約がある訳だが。

 

 いや、魔剣なんてモノを召喚できる者などめったにいないぞ?一生で一人会えればラッキーだ。ちなみに、「魔法は一人一種類しか使えません!」なんていう制約はない。これは魔法の発現に関わる基本的な知識な訳だが、魔法は、「その魔法は自分にとって絶対に必要なモノだ!」と強く思うことで発現する。つまり、自分に必要な魔法が複数種あれば複数種の魔法を使えるという訳だな。 

 さっきのヤツだって炎とか電気とかいろいろ操っていただろう?

 

 ......? ジョウタイトウシ? 何だそれは。そんな魔法など聞いたこともないぞ。

 その話も後回しにしよう。次は「コスト」についてだ。

 「コスト」とは、謂わばその魔法の強さ、だ。

 その魔法のコストが大きければ大きいほど、魔法の威力、規模、効力は大きくなる訳だな。

 ちなみに最大コストは7。先程言った魔剣などの類いはこのレベルでないと扱えない。

 まあ、細かい話をすると、大体コスト4くらいが凡人の限界だ。一生努力したっておそらくコスト5程度だろう。

 

 え? じゃあコスト6とか7はどうやったら使えるんだ、と?

 「そっちの世界」では、「王族の血筋」という言葉が存在する。意味はそのままな訳だが、その身に王族の血が流れているかどうかで、使用可能コストは大きく違う。遺伝子の力、必然の才能。そういったところか。

 王族の人間は必ずと言って良いほど、魔法においては天才なのだ。確かに、それでも実力差は存在する訳だが。それでもコスト5は確実に扱える。そこからどう伸びるかは自分次第、という訳だ」


_______________,,,


 ふぁーっ。俺は目を瞑りながら思う。

 

 何だかすごく気持ち良い目覚めだな。こんなに熟睡したのは久しぶりだ......。

 それにほら、今日は目覚まし時計まだ鳴ってないし。おお! 俺もしかして早起きしちゃったのかなー。ほらほらー、「早起きは三文の徳」って言うじゃん? という訳で神様、ボクにお友達を3人ほど下さい。あ、あれなら別に神様がボクのお友達になって頂いてもいいですよ?何言ってんだ俺は。

 

 今日も俺の頭はキレッキレのようで、すぐに「ある事」に気付いてしまった。

 もう一つの可能性があるじゃないか。

 目覚まし時計をセットし忘れたという可能性が!

 

 バッ! と思いっきり毛布を捲り上げる。

 非情にも、外はとっても明るかった。どう考えても寝坊してるじゃねえか!

 ヤバい、ヤバいヤバいヤバい!!

 学校に遅刻するのはとてもマズい。遅刻とかしたら不良って思われちゃうじゃん。俺のお友達との楽しい高校ライフが完全消滅しちゃうじゃん!

 それだけは、絶対に! 阻止しなければならないっ!!

 ベッドから転がり落ち、素早く立ち上がった俺。スピーディーかつ鮮やかな動き。俺スタントマン向いてんじゃねえの?

 

 「......て、あれ?ここ、どこ?」


 この部屋、どう考えても俺の部屋ではない。大体、なんでこんなに広いんだよこの部屋......。

 

 どれくらい広いかと言うと、多分バドミントンのコート並みに広い。バドミントンコートの大きさなんて正確には覚えてないけど。しかしすごいな......、なんのための部屋なんだろう。

 

 いや、そうじゃなくて。

 問題はなぜ俺がこんな所で寝ていたのか、だ。

 キョロキョロと部屋を見渡す。俺が寝ていたベッドになんか俺くらいの大きさのぬいぐるみが転がっていたが大した問題ではないだろう。

 窓、といういか扉を開けると、大きなバルコニーがあった。白いテーブルとイスが2セットずつ置いてある。なんかお城みたいな場所だな、ここ。

 

 扉を閉め、バドミントンのコートを突っ切る。そこにあるのはさらに大きな扉。おそらく部屋の出口と思われる。大体、「部屋の出口」なんて表現普通しねえだろ。どんだけデカいんだよこの部屋。

 

 取り敢えずドアノブを回してみる。

 ガチャガチャ、ガチャガチャ。......開かない。

 ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ!!!


 「あ、開かない......もしかして、閉じ込められてる?」


 そんな馬鹿な。なんで俺が拉致監禁されないといけない? 俺は無実だ!!

 はて、昨日なんかあったか? 

 ええと、昨日もいつも通り学校に行って、結局誰とも話せなくて......。ううう......。

 で、普通に家に帰って......ってあれ?俺、家に帰ったっけ?

 いや待て、俺。何かを見落としているはずだ。

 えーっと、昨日の下校中は今後の高校生活について考えてて......、あっ。


 「ああ、あああ、あああああああああああああッッッ!!!!!」


 思い出した。確かあの時、誰か人生取り替えっこして的な馬鹿なことを考えてたら、頭の中から声がしたんだった! で、気付いたら森の中に倒れてて、その後......、どうしたんだっけ?

 どうやらまだ記憶が戻っていないようだ。と、そこへ。


 「ちょっとぉー、うるさいですよぅ」

 

 は? 今声がしなかったか? い、いやいや。今この部屋には俺しかいない。そしてこの扉は閉まっていて、さっきバルコニーの扉の鍵も閉めた。つまりここは、この部屋は密室だ!!

 なんか刑事ドラマとかならまず殺されそうなシチュエーションだが、おそるおそる声のした方を振り向く。


 「王子ぃー、なんで昨日脱走なんてしたんですかー」


 なんかぬいぐるみが喋ってた。


 「えええ!!なんで!?」


 なんでぬいぐるみが喋ってんの!? いやそうじゃなくて。

 なんで俺のベッドに赤毛でポニーテールな女の子が座ってんの!? 正確には俺のベッドじゃないけど!

 

 「ん、どうかしましたか、王子?」


 いやいやいやいや、ちょっと待って、俺。

 赤毛ポニーテールちゃん、王子とは何でしょうか......、あ。


 「ああ、あああ、ああああああああああああああッッッ!!!」


 「ど、どうしたんですか!?」


 お、思い出した......。俺、ファンタジーワールドに来てたんだった......。で、なんか魔術師っぽいのに襲われて、間一髪で赤毛ポニーテールちゃんに助けてもらったんだったな。で、確か俺は王子だったはず。

 ということは。この部屋は、謂わば王室、なのか?

 始まるのか?俺のニューライフインファンタジーワールドがっ!!!


 「だ、大丈夫ですか?」


 すごく心配そうな赤毛ポニーテールちゃん。やっべ、その心配顔(?)結構かわいい......。

 

 いや待て、ここは落ち着くのだ。ここでの選択肢を誤れば、バッドエンド(ぼっち)直行なんていう可能性もある。自分の設定を組み上げられる唯一のチャンスなのだ。ここは慎重にしなければならんな。

 

 では、今ここで俺が取るべき選択肢とは一体何なのか。答えはもう決まっている。

 すぅっ、と大きく息を吸い、きょとんとしている赤毛ポニーテールちゃんに向かって言う。まずは。


 「......、悪い。俺、記憶が無いみたいだ......」


 そう、これだ! 記憶喪失設定は基本である。

 い、いけるか? もうちょっと「? あなたは誰??」くらいにしとけば良かったか?

 

 「ま、マジすか!? いやいやいや、ちょ、ちょっと、ちょっと待って下さい!?わ、私が昨日使ったのは精神に影響を及ぼすような魔法じゃなかったはず......」


 「え、あ、いや......たぶん君のせいじゃないと思うんだけど......」


 いやあ、まさか自分のせいだと思うとは思ってなかった。いや実際あなたのせいではありませんから嘘ですから!

 

 あうあう唸っている赤毛ポニーテールちゃん。なんかもう半泣きである。いや、確かに一大事だよね。自分のせいで国の王子様が記憶喪失なんかになっちゃったらさ。(泣き顔の赤毛ポニーテールちゃんかわいい)


 「どうしよう......、わたしもしかして処刑されちゃう!?」


 「え、あ、マジで?」


 「ほ、ホントに覚えてないの!? レイラ君わたしの事忘れちゃったの?」


 おい、ちょっと待て。なんだその「レイラ君」ってのは。あ、あなたたちってそういう関係だったの? と、いうことは、だ。


 「アイツ、リア充だったのかぁぁあああああああああ!!!!」


 王室に響く俺の咆哮。ふえぇ、と赤毛ポニーテールちゃんは震えている。

 いやどうすんだよ、マジで。てかアイツふざけてんのか? リア充のくせに人生交換しろだと? めっちゃ良いヤツじゃねえかよ!

 

 まあそれはともかくニヤニヤ。今はこの現状ニヤニヤつまり俺の偽記憶喪失の原因をニヤニヤどう説明するかがニヤニヤなのニヤニヤだニヤニヤ。

 

 「ええと、赤毛ポニーテールちゃん?俺腹減ったんだけど......」


 とりあえず話題を逸らしてみる。実際お腹減ったし。メンドクサイ事は後回し。俺の信条の一つだ。


 「そ、そうですね!朝ご飯食べに行きましょう!! 朝ご飯!」


 「お、おう、案内して下さい」


 赤毛ポニーテールちゃんは巨大扉を解錠し、バン! と開け放った。

 そういや、なんで赤毛ポニーテールちゃんは俺のベッドで寝ていたんだ?

 食堂(?)までの道中、なんか「最後の晩餐ー、いえい☆」などと呟いている赤毛ポニーテールちゃんに訊いてみた。

 するとなぜか顔を真っ赤にして、


 「え、えええ、えーと、その、何て言うか、監視役ですかね。昨日は王子が行方不明だぁー、とか言って大変だったんですよ?」


 「そ、そうだったの......。いや、悪い事したな」


 記憶無いけど。いやそんな事より。いくら監視役だからとはいえ、ベッドに入り込んで来る必要性は無いいですよね......って、ハッ! ま、まさか、これが夜這いってやつなのですかい!?

 おいおい、完璧スルーしちゃったじゃねえかよ。


 そうこうしている内に、食堂と思われる大きな扉の前に着いた。赤毛ポニーテールちゃんが何か呪文のようなモノを唱えた。すると、

 

 ガッコオォォォォン!!


 と、すごい音を立てて扉が開かれた。なんかファンタジーっぽくていいなぁ。

 スタスタと赤毛ポニーテールちゃんは部屋の中へ入っていく。その後ろへ付いて行く俺。

 まだ言い訳は思いついていない。なんとしてでも、赤毛ポニーテールちゃんの処刑だけは避けなければならないのだ。

 だってほら、赤毛ポニーテールちゃんって俺の事好きなんでしょ?

 

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