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異世界からの多重人格者  作者: ますむ君
黒瀬の世界
5/30

第四章  逃避行って基本的に、メインヒロインとするモノですよねぇ。

 「はっ、くっ!」


 あれから10分くらい経っただろうか。俺はまだ逃げきれずにいた。

 先程電流が放たれた地点を「凝視」。視界に映るのは、次の攻撃の合図だ。


   地力魔法 コスト3


 思いっきり真横へ回避。体の節々が悲鳴を上げるが、そんなモノは気にしていられない。次の瞬間、


 ズッゴォォォン!!


 という轟音と共に、先程俺が立っていた地面が突き上がった。

 地力魔法。おそらく地形を操る魔法だろう。

 

 視ては避け、また視ては避ける。俺はずっとこんな事を繰り返している状態だ。今こうして生きていられるのは、「状態透視」に魔法を予知する機能があったからだ。ずっと先の事とか具体的な事はわからないが、例えば「火炎魔法 コスト3」などとどんな魔法がどんな強さで襲ってくるかはわかる。

 それだけで十分。いや、十分過ぎるな。

 おかげで反撃や防御はできなくとも、回避はできる。逃げるのに、反撃や防御は必要ない。回避ができればそれでいい。

 

 それに、魔法が繰り出される頻度が段々少なくなっている。

 俺の約30メートルくらい後ろの木を「凝視」。敵はそこに隠れている。おそらく攻撃頻度減少の原因は、


   精霊力 22%


 これだ。精霊力。たぶん、魔法を使うのに必要なMPみたいなモノだろう。

 つまり、敵のMPは残り20%弱。相手も慎重に魔法を撃っているという訳だ。

 それを乗り切れれば、俺の勝ちだ。

 

 「あと、少し......!」


 動こうとしない足を無理矢理動かす。こちらの稼働率もほとんどない。根性で持ちこたえている状態だ。

 それでも、容赦なく襲いかかる殺意。ただ俺を殺そうとしてくるそれは、魔法自体よりも怖かった。殺意が自分に向けられているという事実が、怖かった。

 

 「クソがッ!ふざけんじゃねよ!何で俺がこんな目にあわなくちゃならねえんだよ!!」

 

 もう限界だ!ここまで頑張ったんだから、逃げる事から逃げたっていいじゃないか!

 一瞬そう思ってしまう。負の考えは自分の思考に致命的な隙を与える。


 ズドッ。


 「ぐがっ!?」


 全身に襲いかかる激痛。俺の背中に、巨大な岩石が激突していた。少し気を抜いたばかりに回避が間に合わなかった。

 倒れ際に敵が、殺意の塊が見えた。もう赤毛ポニーテールちゃんに変装してはいなかった。ローブを羽織っていて、顔は見えない。だが、おそらく笑っている。俺の無様さを見て笑っている。

 

 「く、そ......」


 結局、追い付かれてしまった。無駄な逃避行に終わったか。

 ザクザクと足音を立てながら近づいてくる影。俺は目を瞑る。俺は、ここで死ぬのか。ったく、異世界に来たばっかだっていうのに、何もせずに死ぬとは。本当に情けないな。

 困った事に目を瞑った状態でも、「状態透視」は機能した。目蓋を通してでも、敵のいる方を「凝視」すれば、ステイタスは暗闇に表れた。

 

   電流魔法 コスト4


 感電死、か。できれば老衰で死にたかったな。ま、もうどうせ死ぬんだから関係ないか。でも、せっかくファンタジーワールドに来たんだからさ、お姫様の一人や二人、助けたかったっていうか、なんというか。

 ぼっち脱却のために異世界まで来たっていうのに、結局死ぬ時まで一人。報われないな、俺。

 そして、その時は待ってくれなかった。

 

 ズバチィッ!!


 電流の流れる音。さっきの逃避行で何度も聞いたモノだ。あんなの喰らったら痛いだろうなぁ。いや、痛いとか感じる前に死んでるか。

 

 ....................................................................................................................................................て、あれ?

 

 なんで俺、生きてんの?

 じゃあさっきの派手な効果音は何だったんだ?

 瞳を開ける。視界に飛び込んできたのは、

 

 地面に仰向けに転がりながらピクピク痙攣しているローブの男と。

 それを踏みつけながらニヤニヤ笑っている、赤毛ポニーテールちゃんだった。


 「もう、危機一髪でしたねぇ、レイラ王子」


 開口一番、超笑顔でそう言った赤毛ポニーテールちゃん(本物)に、この状況でかわいいと感じてしまった俺は不純ですね。

 

 「いや、マジで危機一髪......」


 「はははっ、わたしがここに来たからにはもう大丈夫ですよ?王子の身は、責任持って王国へ送り届けますので!」


 は、ははは。もう何だか笑えてくる。やっぱ平和が一番だなぁ......。

 スゲェよ、赤毛ポニーテールちゃん、あんな強敵を一撃で葬っちゃうなんて......。本名は、レフィリア......だっけ?

 まあいい、今はそんな事より、だ。


 「あー、悪い。もう足が一歩も動かん......」


 「あー、えー、す、すみません。助けるの遅くなっちゃて。大丈夫です、浮かべて運びますので」

 

 ふわり、と体が宙に浮かぶ。なんだか幽体離脱してるみたいだな。

 ともあれ、これでやっと俺のファンタジーワールドでのファンタジーライフが始まる。............い、一応確認しとくか。

 という訳で、赤毛ポニーテールちゃんの横顔を「凝視」する。ステイタスは、


   レイチェル=アトラス (16)

   残命値 87%

   損傷状態 nothing

   精霊力 61%

   稼働率 65%

   

   念動魔法 コスト4


 うっ、レイチェルだったっけ?レフィリアじゃなかったっけ?俺はどうも人の名前を覚えるのが苦手だ。

 まあ、16歳だからたぶんあっているはず。

 そう思うと、張り詰めていた集中が途切れ、自然と意識が薄れていった。

 

 俺の異世界生活(戦争中の一国の王子などという謎設定付き)は、こんな感じで最悪なスタートを迎えたのだった。

 ったくどうなるよ......、俺の第二の人生!!

  

 

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