表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界からの多重人格者  作者: ますむ君
紫咲の擬態
29/30

第二十七章 超常アソシエーション

 「はぁ、はぁ......」


 背後でレイラの荒い呼吸が聴こえる。

 無理もない。彼はさっき、死ぬ気無しで飛び降り自殺同然のことをやってのけたのだから。

 

 カウントダウンの後、私も全速力でダイブしてレイラの体をキャッチした。結構地面ギリギリだった。

 少しでも休憩したいものだが、そうはいかない。あの爆弾魔の追跡から逃れないと。

 

 「大丈夫? 悪いけど急ぐわよ」


 「急ぐって、どこ行くんだ?」


 少し考える。

 今から行こうとしているのは私の家だ。正確には、家の地下研究所。そこに行って一つ確かめなければならない。


 「えー、空は使えないとして......」


 飛行することも出来るには出来るが、注目を集めるのは避けたい。となると素直に地を行けばいいのだが、残念ながらそれもダメそうだ。何せ、人が多い。

 

 「それにしても、すごい人だな......」


 「軽いパニックね......」


 突然ホテルが大爆発したのだから無理もない。地上は混乱する人々で溢れ、私とレイラは離れ離れにならないようにするので精一杯だ。走ることもままならない。

 地道に進んでいくしかない。


 「ていうか、さっきのアレはなんだったんだ? この世界に魔法はないんじゃなかったのか」


 「ええ、魔法なんてファンタジーなものはないわ。あるのはそれよりずっと真っ黒い不純物。例えば私みたいにね」


 「ふん......」


 それにしても、あの爆弾魔は何者なのだろうか。私と同じ人体改造された常識はずれのデタラメなのはわかる。そうではなく、彼女が果たして芹将二によって造られたのかどうかだ。そうでなかった場合、状況はかなりヤバいと言っていいだろう。

 何故なら、私は芹将二以外の科学者を知らないからだ。

 父以外に、本物のマッドサイエンティストを知らないからだ。

 だから、彼女がどこまで外れてしまっているのかがわからない。私は四肢を変形させ、生態エネルギーを馬鹿みたいに増幅させてプラズマ砲を射つに留まっているが、彼女は更なる次元に進んでいるのかもしれない。

 文字通り、次元を越えているのかもしれない。


 「地下鉄は......使える訳ないか」


 「このまま進んでも大丈夫なんだろうな! 苦労して辿り着いたと思ったら待ち伏せでしたー、なんてオチは嫌だぞ!!」


 「わかんないわよ、そんな事!」


 タイミング良く人ごみを脱せられたので、出来る限りのスピードで走る。私はその気になれば脚を使って加速できるんだけど、レイラは着いてこれないし、目立つし。

 残念ながら、世界記録以上のスピードで走っている人間を普通とは思わないだろう。


   ▼▼


 「だ~、疲れた......」


 「ホントよ、もう......」


 一つ先の駅からバスに乗った。一駅離れれば意外にも人は少なく、混乱に陥っている人間もいなかった。

 

 さてと。

 目的地は自宅。おそらく勝負はそこからだ。

 

 「なぁ芹、君は何か狙われるようなことをしたのか?」


 「んー、別に彼女に恨みを買われるような事をした覚えはないけど、私の存在そのものが狙わてる、って感じね」


 「ふん......」


 全然興味なさそうだった。なんだコイツ。私が折角国家機密レベルの情報を教えてあげてるってのに......。

 まぁ、変に詮索されても困るんだけど。


 「ねぇ、レイラ」


 ふと、『向こうの世界』について訊きたくなった。異世界というワードには嫌でも興味が沸く。


 「ねぇ、あなたのいた世界ってどんな所だったの?」


 「ふん......」


 レイラは、あからさまに嫌な顔をした。訊いちゃ駄目なことだったか。


 「あの世界は」


 「?」


 教えてくれるんだ......。


 「あの世界を一言で形容するならば、『悲惨』だ」


 「『悲惨』......?」


 「ああ、あの世界は悲惨で、狂っていて、壊れていて、誰も幸せにはなれない」


 誰もが不幸で始まり、不幸で終わる。

 そう言った。

 一体、どういう事なのだろうか。


 「魔法なんて物は誰も幸せにはしない。魔法に頼って、依存して、気付いた時には堕ちている。取り返しのつかない所まで人は不幸になる」


 「......」


 「俺はそれが嫌で、嫌で仕方なかった。だからこの世界に来たんだよ。俺はこの世界に逃げてきたんだよ。今まで守ってきたものを全て捨ててな」


 彼はそう言ったきり、一言も喋らなかった。俯いていて、その表情を知ることはできない。 

 レイラは何も思ったのだろうか。黒瀬君鳥の姿をした彼は、本当はどんな人間なのだろうか。

 どれだけ考えても、答えは出なかった。


 そんな事を考える私とレイラを乗せながら、地下鉄は東京の地下を行く。

 行きつく終着駅は理想郷か、それとも戦場か。

 だが心配はいらない。


 おそらく、いや確実に、後者だ。

 

   ▼▼


 「......っ」


 真っ赤。

 夜空が真っ赤に染まっていた。炎で真っ赤に染まっていた。


 「何があった......?」


 私たちの目の前で燃えているのは、私の家だ。

 地下研究所が派手に爆発したらしい。まだ消防車両は着いていないようだ。

 

 「やられた......」


 「誰にだ?」


 「決まってるでしょ、あの爆弾魔よ」


 アイツの方が少しここにたどり着いたというだけのこと。

 それはともかく、これからどうするか。

 あまりレイラを危険な所に連れまわしたくないが、こればっかりは仕方ない。

 私はレイラの視線に割り込み、言う。


 「ファーストミッション」


 「あ?」


 意味なんてわからなくて良い。カッコつけてるだけ。


 「加賀隼を捜せ」


 「誰だ、その加賀ナントカって」


 加賀隼。

 私や水城、黒瀬君鳥のクラスメイトであり、クラス委員長。真面目で成績優秀、その上スポーツ万能で、顔もそれなりに良い。クラスの女子からは一定の票を集めている。

 そして。


 「加賀は、私と一緒なの。私と同じ、人間モドキよ」


 「ふん......。で、そいつは今どこにいる?」


 「わからない。でもここにいることは確かなの」

 

 手分けして捜す訳にはいかないので、私の後ろにレイラが付いて行くことにした。

 どうしても加賀を見つけないといけない。彼の協力がどうしても必要なのだ。私と彼の仲ははっきり言って犬猿の仲そのものなのだが、昔のよしみで協力してくれるかもしれないし、最悪脅す。


 「左眼、リミットレベル2、解放」


 透視能力。瓦礫に埋もれているなんて事はないだろうが、壁の向こう側まで見ることができるので、一応使っておく。


 「芹、その加賀ってヤツは本当にこんな所にいるのか?」


 「うん、発信機付けてたから」


 「発信機......?」


 と、その時だった。


 「芹、か......?」


 加賀隼。服のところどころは焼かれて破けていて、まさしくボロボロだった。

 良かった。とりあえずは生きていたか。


 「やっぱりしぶといわね、加賀」

 

 「芹、お前、知ってるのか......」


 何がよ。意味ありげに意味わかんないこと言わないでほしいわね。だけどまぁ、答えてあげるわ。

 

 「......爆弾魔ね」


 「ああ、あの女が、一瞬でやったんだ......」


 一瞬、ね。

 やはり彼女には『虚空爆破』以外の能力があると考えて間違いない。

 エリーとか言う爆弾魔。彼女はおそらく『空間移動』を扱える。本当に次元を超えているのだ。


 「で、加賀。わかってるわよね?」


 「っく......、ああ、わかってる。俺とお前であいつらをぶっ潰す」


 「わかってるなら大丈夫よね」


 まずはあの爆弾魔を倒す。父を殺す(・・)のはその後でいい。

 ......。


 ......あれ?

 あいつ、ら?


 「ねぇ加賀、爆弾魔の他に誰かいたの?」


 彼はらしくなく、息を切らしながら言った。


 「あいつらの名は『AS』。Another Striker」

 

 柱の残骸に手を着き、なんとか立ち上がって、こちらを見据えて告げる。


 「芹将二とは違うルートを通じて造られた、人間モドキ共だ」


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ