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異世界からの多重人格者  作者: ますむ君
紫咲の擬態
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第二十三章  戦闘コンバスエイション

 

 この研究室は、馬鹿みたいに広い地下研究所で最も大きな部屋の一つだ。

 一般的な体育館ほどの大きさがある。


 「ふぅ」


 この研究室にいるのは私と、もう一人。


 「どうした、怖じけついたか?」


 加賀隼。

 

 クラス委員長にして、私と同じ紛い物。

 父の手によって改造された、元人間。


 「何言ってんのよ。アンタごときが私に敵う訳がないでしょ?」


 感情の高ぶりに合わせて、右腕が砲口に変わっていく。色はメタリックブルー。体感的な重さは変わらない。


 「ははっ、面白い。どちらにせよ、お前は処分しなくちゃならないみたいだしな。手柄を一つ増やすとするか」


 だんっ!!!


 最初に動いたのは向こう側。

 人間ではありえない、もの凄い速度で突っ込んでくる。


 目視データで時速500キロ。

 だけどそんな事はなんてことない。

 私は標的に右腕を向ける。

 次の瞬間。


 ダガァァァァァン!!!


 右腕からプラズマ砲が発射された。

 戦車の砲撃よりも高火力な必殺のレーザーは真っ直ぐ加賀に直撃した。


 「ま、これ終わる訳ないんだろうけど!!」


 巻き上がる粉塵の中から人間のシルエットが浮かび上がる。

 違う。少し違う。


 現れたのは、人間と巨大な盾のシルエット。

 

 「甘いな。これがお前の本気かよ、同級生」


 ったく、これだからコイツの力は嫌なのよね。

 私の場合は腕や脚、その他身体の部位そのものを機械に変える。

 それに対して加賀は、自分の身体の末節から新たな機構を造り上げる。


 「本気? 何言ってんの。防御しかできなくてヤバいのはそっちでしょ?」


 「はっ、いつまでその口が聞けるかな!!」


 盾が、変形する。グニャリとまるで粘土のように変質する。

 盾から剣へ。防御から攻撃へ。


 何度も言うけど、だから嫌いなのよね。こいつの力は。剣とか、なんかカッコいいし。

 

 「行くぞ」


 だんッ! と加賀が突っ込んでくる。

 初速から時速500キロ。一歩目から最高速度で急接近。


 私は右腕を前方へ伸ばす。二弾目。


 ダガァァァァン!!


 「甘いぜ! 芹よぉ!」


 何!?

 こいつ、私の砲撃を弾きやがった!?

 冗談じゃない。私が撃ったのはプラズマ砲なのよ!?


 「っ!?」


 「俺のターン」


 油断。

 返す刀で斬撃を喰らい、向こうの壁まで吹き飛ばされた。


 「っく......」


 やっぱ甘かったか......。

 右腕一本、プラズマ砲じゃ。

 それにしてもこいつ、こんな高性能だったっけ?


 「加賀.....、あんたまさか、また『実験』したの?」


 すると、加賀はハッ、と鼻で笑って。


 「そうだぜ? もうお前なんて敵じゃない」


 なるほど.......。

 私は立ちあがり、右腕の調子を確かめる。うん、まだ大丈夫。


 「まぁ、それくらいしないと私には敵わないわよね。仕方ない」


 「あ?」


 「だから。それくらいで五分五分ってことよ。ったく、無駄に働かせんじゃないわよ、もう」


 加賀を思いっきり睨みつける。

 さっきのはあんたのターンでいいわよ。

 なら次は私のターン。


 舐めんじゃないわよ。


 「っ!!」


 一発で無理なら弾数増やせばいい。右腕一本、砲口八つ。

 

 「勿論、八連発じゃないわよ? そんな機能備えてないから」


 加賀の剣が再び変形する。剣から盾へ。

 砲口を向ける。


 「八連発じゃないわよ、ガトリング式☆」


 「なあっ!?」


 直後、音が消えた。

 冗談抜きに、こちら側が蒸発しそうな高熱、猛烈な光。

 

 ガトリング式プラズマ砲、とかいうどっかのマッドサイエンティストか兵器商人が作ったバケモノね。

 

 向こう側の壁が丸ごと消えていた。向こうの部屋も、もう一個向こうもぐしゃぐしゃにされている。

 私がやったんだけどね。


 しかし。


 「く......っそ、が......」


 あー、まだ生きてたかー。

 これくらいじゃあ、まだ甘いか。


 「芹ぃぃぃぃぃ!!」


 盾が変形する。というか、背中から翼が現れた。

 うわぉ。

 そしてまた剣。


 「斬り殺す!」


 今度は空中から。

 墜落するジェット機の如く突っ込んできた。

 

 「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇェェェェェェェェ!!!」


 さっと避ける。


 「なぁっ!?」


 どごぉぉぉぉぉぉん!! と、悲惨な音と共に、床に巨大な穴が開いていた。ていうか、衝撃で床が全部落ちちゃった。


 「馬鹿じゃないのー。あんなので小回りきく訳ないじゃん。私だってそれなりのスピード出るんだから、避けるのくらい容易いわよ?」


 ったく、せっかくちょっとだけやるじゃんって思ってやったのに。がっかりさせやがって。

 ま、しゃーない。ここら辺が限界だろうし。


 焼くか。


 左腕も変形させる。両腕甲装、ガトリング式プラズマ砲。


 直後、再び音が消えた。


   ▼▼


 一応、加賀の名誉のために言っとくけど、別に加賀が弱い訳じゃないからね。

 私が強すぎるだけ。

 

 確かに加賀は『なんかよくわかんない魔法を斬るみたいな感じの剣』使ってたけど、それなら裁ききれない弾数で挑めばいいだけの話。超速で動く剣を上回る速度で、撃ちまくればいい。


 にしても、ほんっとこの研究所は丈夫ね。

 崩れたのは上下左右一部屋ずつくらいかな......。

 なんで全壊しないのよ。何発プラズマ砲撃ったと思ってんの?


 とにかく、今は「部品」を回収してさっさと退散しないとね。別に研究所を破壊しに来た訳じゃないし。

 あー、「部品」残ってるかな......。探しますか......。


 数分後。


 「あ。あったあった」


 それは、おおよそジュースの缶程度の大きさのアンプルだ。アンプルにしては大きいけど。

 私はそれを身体の中にしまい、ズタボロになった研究室を後にした。


   ▼▼


 翌日。


 私はあの後、寄り道せずにホテルに戻り、別に汗などかかないんだけど、シャワーを浴びて直ぐに寝た。

 ああ。寝る前にちょっとばかし水城と電話で喋ったけど。


 ともあれ、登校なう。

 

 「本当に大丈夫だったの?」


 「大丈夫よ。水城ってホント心配性よね」


 「いや、冗談じゃないよ」


 まったく、ありがたい事だ。誰かに大事にされるというのは。

 特に私みたいな人間にとってはね。


 まぁ、人間かどうかも怪しいところなんだけど。


 「で、どうするのさっきー?」


 「ん?」


 「ん、じゃなくて! 告白のことだよ!」


 「ああ、その話ね」


 「ああって軽っ!?」


 だって、そんなもんだし。告白など、私にとってはなんの緊張感も、羞恥心もない。

 そしてなにより、仕事上の都合だし。


 校門をくぐり、ささっと下駄箱で靴を履き替える。私たちの教室は一階なので、階段を昇り降りする必要がなくて楽だ。

 ガラガラと、教室のドアを開く。

 と、そこには。


 「あ、おはよう、芹さんと戌亥さん」


 「加賀くん、おっはー!」


 クラス委員長、加賀隼がいた。

 

 あらー、まだ生きてたのあんた。意外と、いや、こうなるのは結構予想してたけどしぶといわね。

 昨日のことなんて、ここでは無かった事だから別にどうでもいいんだけど。


 「委員長いつも朝来るの早いわね」


 「いや習慣なだけだよ。家近いし」


 そう、こんな感じに。

 お互いがお互いに知らない振りをしているのだ。

 こっちの事はこっち。あちら側の事はあちら側の事。日常と非日常の区別くらいつけているのよ。そうしないとやっていけないからね。

 

 キーンコーンカーンコーン。


 「おーう、席すわれよー」


 そうこうしてる内にチャイムが鳴ってしまった。

 急いで席に座って、そこで気付いた。


 あら。黒瀬はどうやら、今日も休みらしい。


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