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異世界からの多重人格者  作者: ますむ君
黒瀬の世界
20/30

第十九章 偽者の王子と悪魔な天使の再戦。

 

 「こりゃあ......一昨日ぶりか、王子様よぉ」


 よくよく考えれば、あれからまだそんなに時間経ってなかったんだな。

 それくらいに濃密な毎日を過ごしているという事か。

 

 ともあれ。

 

 「今度は、そう簡単にはやらせない」


 俺は今、『七天使』(セブンス)ガブリエルと対峙している。


 いや、俺たち、か。

 今の俺の隣にはローズがいた。

 

 できれば俺一人が良かったが、彼女がどうしても、と聞かないので連れてきたのだ。

 赤毛ポニーテールちゃんは、いない。

 彼女はまだ万全に回復してはいないのだ。

 

 「はっ、そりゃあ......ちょっとばかし期待しちゃおうかなァ!!」

 

 「望むところだ!」


 偽者の王子と悪魔な天使。

 罪を背負った者同士の戦いが、再び幕を上げる。


 迷わず『状態透視』(ファインド・アウト)を起動し、相手の魔法を予知する。

 一昨日のガブリエルは魔法をほとんど使わず、聖剣だけで戦っていたのだが......、


 「ワリィな王子様よぉ、今日は聖剣持って来てないんだわ」


   水流系統 コスト6


 いきなりコスト6だと!?


 「だからまぁ、容赦できねぇから心配すんな」


 もはやそれは水ではなかった。

 水は高圧力で噴射すれば、鋼鉄さえも切断することができる。

 ガブリエルの水は、まさにそれ。

 レーザー光線並みの破壊力を持った水が、何本もの束となって襲いかかってくる。

 だが。


 「レイラ、しゃがんで!」


 魔法で自らを強化したローズが、俺の背後から飛び出した。


   氷結魔法 コスト4


 全部を凍らせることはできない。

 だけど、俺の『状態透視』と組み合わせれば、必要最低限の水だけを凍らせることができる!


 「氷結、か。まぁオレの魔法とじゃ相性はいいな。だがよォ、それじゃあダメなんだぜ?」


 ごごごごごごごこごご、ごごごごごごごごごごご、ごごごごごごこ......


 「何!? 地震?」

 

 いや、これは地震なんかじゃない!


 「ローズ!! 避けろ!!」


 「えっ......!?」


 次の瞬間。

 地中から噴き出した激流に、俺たちは呑み込まれた。


 「うぐっ!? ......ぐごっがはっ!」


 「甘いな、まだまだ甘いぜクソ王子」


 「......!?」


 「そんなんじゃあ、オレは楽しめねぇぞ?」


 視る余裕なんてなかった。

 俺はガブリエルの単純な蹴りで吹き飛ばされた。


 「がはっ!?」


 くそ......、この状況をなんとか打開しないと......。


 「レイラ、寒いのは大丈夫なタイプ?」


 いきなりローズが訊いてきた。


 「暑いか寒いかなら寒い方がいいけど......?」


 「じゃあちょっとだけ我慢して」


 「?」


 そんな事を言っている間も、ガブリエルは待ってはくれない。

 水のレーザーが再び襲いかかる!

 俺の視界に現れる水色の弾道予測線。

 

 「ローズ!!」


 「大丈夫よ」


 大丈夫って何がだよ!早くしないと風穴空けられるぞ!

 だが、俺の考えていたようにはならなかった。


 「罪ある者には氷の災禍を」


 ローズの足下には、いつの間にか魔方陣が浮かび上がっていた。

 ていうか......、


 「寒っ!?」


 ヒョオォォォォォォォ!!


 吹き抜ける冷風。

 これはローズの魔法なのか!?


 「チッ、精霊力ごと凍らせやがったのか!?」


 「さすがね天使様、察しが良くて助かるわ」

 

 しかし、これは寒すぎるんじゃないか!?

 油断ゆれば体の先から凍ってしまいそうだ。


 「ローズ行くぞ!!」


 「言われなくても!」


 俺は懐からナイフを取り出す。

 ガブリエルを倒せるとすれば、今しかない!

 

 「この魔法いつまでもつ!?」


 「わかんないわ! 相手が天使だったことなんてないから!」


 「ハッ、オマエそれなりやれるみたいだなァ!! 昨日のジジィもそれなりだったがよぉ!」


 俺はナイフを振るい、ローズは強化された体で直接攻撃をしながら氷結魔法で追い討ちをかける。

 これなら、いける!!

 だが。

 ことごとく避けられてしまう俺とローズの攻撃。

 

 「おっとクソ王子! そんなんじゃ当たんねぇぞ!!」


 「ぐっ!」


 「きゃっ!?」


 鳩尾を蹴られた!?

 俺はそのままローズを巻き込みながら転がる。


 「ったくよぉ」


 「......!?」


 「無駄に寒くしやがって。オレは寒いの嫌いなんだよ」

 

 どうする?

 コイツ、肉弾戦も普通に強いぞ!?

 ガブリエルは首を鳴らしながら近づいてくる。

 俺は天使にナイフを投擲するが、避けられた。

 

 「くっ......!?」


 「そんなに喘ぐなよ、気持ち悪ィな」

 

 脇腹を思い切り蹴られ、ごろごろと地を転がる。

 

 「はぁはぁ......」

 

 くそっ、一体どうすればいいんだよ!

 そこで、ローズが言ってきた。


 「もう一段階温度を下げるわ。大丈夫? 凍傷とかになってない?」


 「ああ、視た限りはな」


 「ちょっとだけ時間稼いで」


 「わかった」


 俺は一気にガブリエルの下へと突っ走る。

 そのままの勢いでナイフを突き刺す!


 「遅ぇな!」


 「チッ!」


 降って来たガブリエルの足を避け、さらにナイフを振るう。

 ゲームの見よう見まねで三連斬!


 「ハァッ!」


 からの顔面にナイフ投擲!

 勿論全て回避されてしまう。

 

 「次はオレの番だぜ?」

 

 俺の攻撃とは比べ物にならないような動き。


 「うごっ!?」


 見事に三連打を叩きこまれた。

 だけど、これで良いんだ。

 時間は稼いだ。後は頼んだぞローズ!


 「罪ある者には氷の災禍を。呪の神の運命に逆らいし者には絶無の獄を」


 再び地に現れた魔方陣。氷の結界。

 一気に温度が低下する。

 ていうか寒っ!

 南極かよここ!


 「ほぉ......これはヤベェな!」


 「ガブリエル! あなたの精霊力は完全に凍結されたわ! おとなしく降参しなさい!」


 俺はガブリエルを視る。


   ガブリエル (16)

   残命値 80%

   損傷状態 精霊力凍結

   精霊力 0%

   稼働率 40%


 確かに精霊力は凍結されてる! これなら魔法を使う事はできない!

 

 だが。

 それでも蒼い天使の笑みは崩れない。


 「嫌だーっよと」


 「なにっ!?」


 ナイフをもう一本取り出し、ガブリエルに突きつける。

 だがこれでも、いや、こんな物じゃ足りる訳がなかった。


 「ちょっとオマエら、『七天使』ガブリエル様をを舐めてねぇか?」


 「この状況で、まだ言うの?」

 

 ダメだこんな物じゃ!

 やはり、俺たち程度で『七天使』を殺せるはずがないのだ。

 ローズにはわからないかもしれないが、一回戦った俺にはわかる!

 天使は告げる。


 「神の意志を伝えてやる」


 一瞬の事だった。

 それは一瞬にして、氷の結界を破壊した。

 

 現れたのは純白の天使の翼。

 出現時の衝撃で、俺たちは吹き飛ばされる。


 「天使の翼!?」


 「ご名答」

 

 ヤバい、あれには勝てない!

 人間じゃ無理なんだよ!


 「さぁて、神様は一体何を望んでるんだろォな」

 

 たかが人間が、神の決めた事を覆せる訳がない。


 「『聖呪の苗木』の滅亡か? それとも、オマエらの死か?」


 「くっ......!」


 あまりにも神々しい翼を前に、俺は動けなくなっていた。

 威圧。

 またあの時のように、動けない。

 

 「んじゃあまずは、王子様の方からぶっ殺すかァ!」


 天使の前にエネルギーが集まる。

 神聖な力が舞い降りる。

 俺は、最後まで動けなかった。


 「死ね、クソ王子」


 それは神聖で、絶対的で、圧倒的で、威圧的で、屈辱的で。

 

 俺は、死ん


 「あああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」


 それは、ローズの叫びだった。

 いつの間にか、ローズが俺の前に立ちはだかっていた。

 止めろ。

 止めてくれ!

 

 「あぁ......ぁぁあ」


 圧倒的な力の奔流が、ローズに直撃し、爆ぜた。

 

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