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異世界からの多重人格者  作者: ますむ君
黒瀬の世界
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第一章  どうやら、異世界に来てしまったようです。

   △▽


 ん......?何で俺は寝てるんだ?

 

 しかも何だか今日のベッドは硬いな......、ってええ!これ草じゃねえかよ。

 じゃあ何で俺は地面に寝ころがってるんだ?

 それ以前に、


 「ここ、どこ?」


 空を見上げる俺の視界には、緑色に萌えるたくさんの葉。

 くるりと周囲を見渡せば、俺は現在たくさんの木々に囲まれていることがよくわかる。

 

 俺はこんな場所知らねぇぞ。静かで勉強に集中できそうな良いところだけど。いくらなんでも森の中にまで勉強しに行くほど狂ってはいない。......たぶん。


 うむ、まずはなぜ俺はこんなところにいるのか、だ。

 

 はッ!?


 まさか、記憶喪失とやらじゃなかろうな......。

 だ、大丈夫。俺の名前は黒瀬君鳥。好きなことは読書で嫌いなものは全人類。

 OK、記憶喪失ではないようだな。

 えーと、じゃあなぜこの理解不能な状況が発生してる?

 

 ああ!思い出したぞ。

 突然頭の中から声がして、何か入れ替わってって頼まれて、そしたら突然意識が薄れて......。

 そう、俺は多重人格だったんだ。

 じゃあ、俺は本当に頭の中の『もう一人の人格』と入れ替わったのか?

 てことは、ここはその『もう一人の人格』の世界なのか?

 

 「もしかして、異世界に来ちゃったのか、俺」

 

 愕然と呟く。誰も聞いてはいないのだが。

 まあいい、とりあえず状況確認だ。それから人を探そう。

 ったく、何でこんな森の中に出てきちゃったのだろうか。これじゃあ人一人いないかもしれない。

 じっとしてても仕方ないし、ちょっと歩いてみるか。


   ▼▼


 かれこれ一時間ほど歩いただろうか。結局、森から脱け出すことは叶わなかった。

 どこまで歩いても木、木、木。人間はおろか、動物の姿もない。

 

 しかし、その一時間でわかったこともある。

 まず、俺の学生カバンが消失していた。その中には携帯電話もあったのだが。

 次に、俺の着ている服が変わっていた。頭の声の言ってることが正しければ、俺と頭の中のヤツが入れ替わったことになる。

 

 ということは、俺のそれなりにカッコいい顔とか身長とかも変わっているのだろうか。何か鏡のような物があればいいのだが、どこまで歩いても湖や水溜まりはなかった。

 結局のところ、この状況を打開する方法は見つかっていない。

  

 いよいよ雲行きが怪しくなってきたな。

 問題は、どれだけ行けばこの森を脱け出せるか、だ。

 一応現在俺は遭難しているので、今後の食料のこととか寝場所とかを真剣に考えねばならない。

 

 しかし、動物が全くいないし、川もないから魚を捕ることもできない。

 俺の無人島ライフが早くもゲームオーバーとなってしまうのか!?


 いや、何やってんだよ、俺は。

 とりあえず、食料を探さないと......。

 ああ、これならぼっち高校生ライフのほうが良かったよ。マジでオンリーワンじゃん。元に戻りたいなぁ、と思った俺だったが、


 がさっ


 と、遠くの方から草の擦れる音がした。

 に、人間か!? いや、動物か?

 どっちでもいいよ、どっちでもとりあえずは助かるから!


 がさがさざざざざざ


 ん?集団か?多い方が安全かつ頼りやすいからGOODだ。

 すぐに声が聴こえてきた。

 

 「おい、あと5キロくらいだ。だが油断はするな、近いということはそれだけ敵兵との接触の可能性が高まるからな」


 敵兵? なんだ、この人たちは兵隊かなにかなのか?

 いや、それだとちょっとおかしい。

 

 「いいか、先攻部隊が着くまで待機だ。下手に動くと灰にされるぞ!」


 おそらく、コイツがこの部隊のリーダーなのだろう。しかし、なんでこいつらは武器を全く持っていないんだ? 俺がおかしいと思ったのはこの事だ。偵察隊だったとしても何かしらの武器はもっているはずだ。


 最近は銃火器も軽量化されてるのか。ということは、あのホルダーあたりに入っているのか......?

 いやいや、そんなことはどうでもいい。重要なのは、この兵隊さんたちが俺を保護してくれるかどうかだ。

 下手に動いて瞬殺! ってのもありえる。

 

 それ以前に、敵兵とか部隊とか、ここは一体どこなんだ? 本当に異世界だよな。だけど兵隊さんたちは日本語喋ってるぞ。

 いい加減、わからないことが増えてきたな......。


 そして次の瞬間、俺をさらに混乱させる事態が起きた。


 突然、俺とは反対側から飛び出してきた三人の兵隊さん。おそらく、敵兵とやらだろう。

 そして、向かい合った総勢6人の兵隊さんたちによる壮絶な銃撃戦が繰り広げられ......なかった。

 まだ銃撃戦の方が良かったかもしれない。


 なぜなら、突然兵隊さんの掌から火の渦が噴き出したからだ。

 瞬く間に炎は草木に燃え移り、軽く山火事状態になってしまっている。


 なっ......!? 明らかに炎は掌から出たぞ! 小型の火炎放射器みたいなのを使っているわけではない。そしてさらに、


 敵兵さんの足下から電撃が放たれた。

 ズバチィッ! と命の危機を感じる音を響かせ、兵隊さんに一人に直撃する。

 兵隊さんはビクンビクンと体を痙攣させてから、動かなくなった。

 

 ええっ......!? 一体どういう原理だ、今の電撃は!?


 俺が驚いている間も戦闘は続いている。どこからともなく炎が現れ、水流がうねり、電撃が爆ぜる。

 まるでファンタジー映画の魔法を見ている気分だった。やってることは全然ファンタジーじゃないけど。

 

 いや、本当にこれは魔法なんじゃないのか? こんな物理法則、俺は知らない。

 だがここは、異世界だ。ファンタジー時空が展開されている可能性も十分ある。


   ▼▼

 

 しばらく俺は、異常な魔法戦闘を唖然と見つめていた。

 約十分間ほど魔法を撃ち合ったところで、敵兵さんは撤退し、勝者の兵隊さんたちはそのまま先へと進んで行った。


 マジかよ。マジで魔法じゃねえかよ。

 どうやら俺は、本当にファンタジーな異世界に来てしまったようだ。 

 

  

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