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三十話 チェリだよ。なんてね

「なんで君らがここにいる」

がらっと医務室の扉を開けて、第一声が気むずかしそうな声だった。

気怠そうに白衣を纏い、細い縁の眼鏡は下しか見ないせいで老眼鏡のようにずれている。

ハクはそれまで見たどんな姿勢より悪い姿で立っていた。

「チェリを待ってるの。何か文句でも?」

投げ捨てるように言ったナツだが、ハクを見て首をかしげた。

「後ろにいるのってチェリ? あれ、おかしいな」

ナツの言葉に返事をする代わりに、姿勢を起こし眼鏡を直した。

「チェリのメンテナンスか。そんなもん待っていても仕方ないぞ」

ハクがフユ達の間を素通りしていく。

その後ろから、奥で洗浄を受けているはずのチェリが現れた。

驚いて何も言えないフユ達に向かって、彼女は手を振った。

「はろー。チェリだよ。なーんてね」

「いや。でも。え?」

ナツは目の前の女性と部屋の奥を交互に指差しながら、混乱の形相を示す。

着ている服、身につけている物、髪の長さ、雰囲気。何か声も似ている気がする。

「やっぱり入れ替わってもわかんないんだ。よくできてるよね」

「当然だろ」

ハクは部屋の奥へ続く扉をノックした後、扉にもたれかかった。

入れ替わりという言葉が引っかかる。アキと二三相談した後、本人に尋ねることにした。

「どういう事なんだ」

「あたしはトモ。チェリの元になった人間よ」

そう言って彼女は自分の胸に手を当てた。

「チェリは十干代理の技術を真似て作った試作機なのよ。私の意識をコピーしてあの子が作られたの」

ニッと笑う姿は、ただ単にチェリだった。

「あんな風に、暴力の固まりに人間をとってつけたようなクソでも再現に八年かかった」

「仮にもあたしの分身よ。クソとか言わないで」

目の前の二人が何を言っているのかわからない。

一緒に行動していた女性が、人間ではなかったなんて。

「このあんぽんたんな作成者でも入れ替わりに気付かないくらい彼女はよくできてるわ」

「なんだって?」

「だってそうじゃない。木の弟の奴に閉じ込められているとき助けに行ったのに、あなたあたしのことチェリって呼んでた」

「あれは。ちがう、宿命が……」

話す途中で口をつぐんだハクと目が合う。何か言いたげだがここでは言いにくそうだ。

「……途中で気付いた」

「あっそ」

見下すような態度が少しチェリとの差を感じる。が、もしかしたらチェリもこんな顔をするのかも知れない。

そんな折りに、ハクが慌てた声を上げた。

もたれていた扉が開いたのだ。

「ああ、博士。やっと来てくれた」

赤い白衣の医師が扉の影でククっと意味ありげに笑う。

「なんだ、メンテナンスにしては早いな」

「んなわけ無いし。メンテはまだ。外装洗浄で困ってるんだよね」

もうお手上げとだらりと袖を垂らす。

「洗浄? またペイント弾か」

「アイ様の思いつきも困ったモンだね」

「激しく同意する。道具と頭の中をまとめておけ」

「手伝ってくれるの? サイコーだね」

医師は両手を叩いて喜びを露わにする。

そんな医師の後ろをついていく前に、博士はフユ達の方を見た。


「あれにつぎ込んだ技術も相当だが、この分野では十干代理は先を行っている。彼らの技術が完成するのが今月だ。最後の代理はもっと人間に近い」

「……あれが目指すのは本当に人間かしら」

トモの疑問にそんなもん知るかと捨て台詞を吐いて奥の部屋へ去った。

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