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二十五話 豪奢な客室

目つきが悪くて、神経質そうなオジサンは凄く派手で悪趣味なストライプのスーツを着ていた。真剣そうな顔つきと冗談のような身なりがひどくミスマッチだ。

フユ達が客室に入ってきたのに一瞥をくれるだけで声をかけるでもなく、周りの大人にフユ達のことを聞くわけでもなく、ただ一心に自分の仕事をしていた。

これほど周囲に興味がないのならこの男は何があってもあの机から離れそうにない。


しばらくは部屋の隅にいてさりげなく議員を見張ることにする。

「本当にあれがチェリの言っていた若い議員か?」

「たぶん、そうだろ」

「そんなに若くないな」

アキとのやりとりでケラケラ笑っていたらうるさいぞと怒られた。

「これだから地上鉄道を使うのはいやだったんだ。私は車を出せと言ったろう」

議員はいらだった様子でフユ達を見る。

「貸し切ったというのに、乗員を増やすなど意味がない」

ぶつぶつと大きな独り言だ。議員という割に雄弁家とはほど遠い。

「なんだおっさん、ケンカ売ってんだな?」

そこに暇をもてあましたアキがつっかかる。

一応止めてみるのだが、フユは簡単に押しのけられた。

燃えるアキを背中で庇うように一人の男が立ちふさがった。

穏やかそうな若い男だ。グレーの縦縞スーツが軽やかさを醸し出している。

「彼らを邪険にしないでくださいよ。僕の大事な助っ人ですから」

言いながらさりげなくアキ達を議員から遠ざける。

「大体お前が余計なことを言うから私まで鉄道に乗る羽目になったのだぞ」

「恐れ入ります。ですが僕には車に良い思い出が無くて……申し訳ありません」

「謝ればいい問題ではない」

「ではどうすれば」

「予定を変えて次の駅で車を呼べばいい」

「ですから僕は車が……」

どうしたものかとため息をついている青年に助け船を出そうとフユは一芝居打つことにした。

「僕、電車が大好きなんです。議員さん達と地上鉄道に乗れて感激です」

自分で演じておきながらその下手くそさに恥ずかしくなってくる。

相手はそのわざとらしさに気付いたのか気付いていないのかわからないが、二人で顔を見合わせ、若い方が愛想笑いを浮かべた。

「金の兄議員。たまにはこういうのもいいでしょう」

金の兄と呼ばれた派手なオジサンは鼻で笑って手元の仕事に戻った。

「仕方がない。次の手を打とう」

資料で顔を隠しながら大きな独り言を声に出していた。

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